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4−7. 騒動 (6)

 第一騎士団に戻ったスチュアートは、部下に押収物を管理倉庫に提出する様命じて、自分は騎士団長に報告に向かった。


「お前は何をやっている!貴族学院では王子が襲われて、騎士団は対応に追われているのだぞ!?」

「どちらの王子様が狙われたのです?」

「第二王子のフレドリック殿下だ!この不始末、どうつけるつもりだ!?」

「犯人は何者なのです?」

「同じクラスの生徒だ!責任は逃れられんぞ!」


「それ、まず学院の管理責任ですよ。次に学院内の王家が付けた監視・護衛達の責任です。それで、女生徒が暗殺に走った理由は何なのです?急に暴れ出したので?」

「魔法の実技授業の最中に魔法を打って来たとの事だ!学院の管理責任はあるとは言え、第一騎士団の即応体制が取れなかった責任は勝手に動いたお前達にあるんだぞ!?」


「多分、体内魔力を錯乱させる薬を盛られたのでしょうな。その薬物を王都内の薬物商から取り押さえてきました。その薬物商をまず捜査すべきですね。良かったですね。事件の起きた日にもう手がかりを得られて」


 騎士団長はぎょっとした。

「もう、良い!すぐに報告書を提出しろ!」


 事務所に戻るスチュアートは、副官に声をかけた。

「ジム」

「分かっております」

ジムはすぐに騎士団本部を出て行った。


 王宮ではモントローズ公がウィグムント王と宰相を個人的に呼び出した。

「日程が狂うぞ。急用とは何か?」

「フレドリック殿下の暗殺事件に使われたと思われる薬物を第一騎士団が押収しましたが、騎士団長が薬物商・薬物貴族への捜査を妨害する恐れがあります。至急、第一騎士団への介入をお願いいたしたく」


 王は黙考していたが、口を開いた。

「宰相、今、命令を書く。近衛を使って押収薬物を王宮に運び込め」

「分かりました」

「ヴィンセント、他に意見はあるか?」

「薬物が王宮に届き次第、スチュアートと我が家の分析担当とで兄上に説明させていただきます」

「分かった。証拠が届き次第、連絡を入れる」

「よろしくお願いします」


 第一騎士団では騎士団長がまた喚いていた。

「ジョナサン・ヒュームは何をやっている!?いつまで臨時出動を続けているのだ?」

「連絡が取れません。何か手間取っている模様です」

「戻って来たら、すぐ報告する様に言え!」


 スチュアートが副官のジム・オギルビー、この男はモントローズ家が付けた従者なのだが、彼を通じて父ヴィンセントへ王に話を付ける用に依頼したのだ。一方、ジムを通じてジョナサン・ヒュームとウォーレン・キャロウェイに『証拠隠滅の恐れあり、しばらく戻るな』という指示が出た。だから、この二人の隊は途中で検問を開始して、通過する者の記録と共に積荷に錯乱丸がないかのチェックを続けていた為、帰らなかった。


 さて、問題の第一騎士団本部の動きである。管理倉庫の責任者のもとに騎士団長の従者がやって来た。

「本日午後に押収した薬物について、不法な押収の恐れがある。後日責任問題になる可能性があるので、至急処分すべしとの通達です」

「ああ、そんな命令は出ていないと後で誤魔化すために、例により口頭で伝えに来たのだな?」

「いずれにせよ、伝えましたよ」

「分かった。すぐに対応する」


 午後に持ち込まれた証拠は騎士団の裏庭の焼却場に持ち込まれた。何の事はない、穴が掘られていて、そこで木くずと一緒に燃やすのだ。


 証拠の廃却を警戒していたスチュアートは管理倉庫を部下に監視させていたが、どうやら焼却するつもりらしいと知って驚いた。

「馬鹿者!煙にも錯乱効果があるんだぞ!?盾と棒とさすまたを持って突入しろ!」


 スチュアートは部下を連れて裏庭に急いだ。隣の部隊にも声をかけた。

「馬鹿が危険薬物を焼こうとしている!周囲が発狂する可能性があるから、盾を持って応援してくれ!」

「煙が不味いのか?」

「煙を吸うと気が狂ったように暴れるんだ」

「おい、お前ら、口を布で隠して盾を持ってスチュアートに続け!」


 その頃、正面玄関に宰相と近衛の小隊がやって来た。出迎えていた騎士団長の後ろを一団が走って行った。


「おい、お前等、宰相の御前だ、控えよ!」

「そんな暇はない!馬鹿が危険薬物を焼却処分する命令を出したおかげで惨事になる!急いで制止しないと!」


 それを聞いた宰相が眉間に皺を寄せた。

「騎士団長、彼等と同行したい。案内してくれ」


 スチュアート達と宰相達の向かった裏庭ではもう騒動が起こっていた。

「下男だからっていつも馬鹿にしやがって!いつまでも言う事を聞くと思うなよ!」

「同僚なのに家が格上だからって命令してんじゃねぇぞ!」

「お前みたいな愚鈍が同僚だと思うと我慢出来ねぇんだよ!」


 怒声が飛び交う中、男達が殴り合っていた。

「おい、水魔法師は火を消せ!風魔法師はとりあえず煙を上空へ流せ!」


 スチュアートの指示でひとまず現場の煙はなくなった。盾で押さえつけられ、さすまたで取り押さえられ、暴れていた連中は取り押さえられた。


 宰相は騎士団長に向かって言った。

「何故、押収薬物を焼却処分したのか説明してもらおうか」

騎士団長は脂汗をかいていた。

 もうちょっとこの章は続きます。

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