4−6. 騒動 (5)
焼けますのでご注意を。
第一騎士団司令部に貴族学院から一報が入った。第一騎士団長は驚いて、対応をスチュアートに任せようとしたが…
「スチュアート卿は臨時出動申請を出して出動中です」
「こんな時に何をしているんだあいつは!じゃあ、ジョナサン・ヒュームにやらせろ」
「ジョナサン卿も出動中です」
「そろいもそろって役に立たん!仕方ない。第二中隊に対応させよ」
上位貴族の子息を若くして小隊長にしているのは、何かあった時の責任追及を実家の圧力で和らげる為である。その子息がいない以上、中隊長格でないと、王子の危機対応の責任が取れない。騎士団長は実力よりも、責任を押し付けられる相手として出動部隊を決めていた。
貴族学院では剣の授業を中止して、その教官達に皮の盾を持たせてフレドリック王子の防御に向かわせた。それまで特待生ティナはフレドリック達に動きがあれば攻撃し、動きがない間は何か思案している様だった。ところが王子側の応援がやって来たので、迷いが無くなった様だった。
「どうせあんた達からすれば私なんて捨て石なんでしょ!?だったらここで終わらせてやる!」
ティナはフレドリックに向かって駆け出した。盾を持った剣の教官達は距離がある為これを阻止出来ない。だからイアンは魔法攻撃をする決意をした。
「止まれ!」
イアンはウォーターランスを放った。
ティナはファイアーランスで迎撃したが、火力が足りず、また両者の魔法行使力と干渉力の積でイアンの魔力が勝っている為、ウォーターランスはファイアーランスを粉砕してティナに向かった。
「!」
ティナは腕を上げて上半身から顔の辺りを守ろうとしたが、水の勢いに吹き飛ばされた。これを見て教官達は全速力でティナに向かった。皇女もティナに向かって走り出した。
「待て!危険だ!」
フレドリックとイアンの言葉が重なったが、皇女は止まらなかった。
険しい形相で起き上がったティナは喚いた。
「もう王族に振り回されて、怯えながら生きるのは嫌なのよ!終われっ!」
起き上がりながらティナはファイアーランスをフレドリックに放ったが、その途上に皇女がいたから、その聖盾で弾き飛ばされた。
その隙に教官達はティナに近づいた。
「嫌っ!」
ティナはファイアーボールをばら撒いた。それを盾で防ぐ為に教官達の足が止まった。
続いて皇女がティナに向かった。フレドリックも走り出した。
「皇女!危険だ!」
イアン達3人も後を追った。
「あんたみたいな女が来るから私まで苦しむんじゃないっ!」
ティナは再び皇女にファイアーランスを放ったが、予測していた皇女の聖盾に当たって粉砕された。
今度こそ教官達がティナに接触した。皮の盾を押し付けて動けない様にした。教官はティナの口にボロ布を丸めて押し込み、呪文詠唱を出来ない様にした。涙を流しながらあがくティナの後頭部に皇女は手を近づけた。
「これ以上魔法を使うと、脳の損傷が激しくなります。もうお止めなさい」
喋れないティナは顔を歪めて皇女を睨んだ。
近づいて来たフレドリックが口を開いた。
「何故、私や皇女をそこまで敵視するんだ…」
ティナは涙を流しながら首を何度も振ったが、もちろん喋る事は出来なかった。
「興奮状態というより、体内の魔力が暴れています。魔力異常と言うべきなのでしょうが…詳しい人に診てもらわないと分かりません」
「どういう事なんだ?」
フレドリックの言葉に、皇女は答えた。
「いくら興奮しても、体内魔力がこんなに異常状態にはならないと思います。魔力の使いすぎで魔法器官も魔法伝達経路も痛んでいますが、それが原因で魔力異常が起こった訳ではなさそうです」
「すまん、何が言いたいのか分からない」
「つまり、何か薬を盛られたのではないかと…」
ティナは縄で縛られてから立ち上がる様に指示された。他の教官達も魔法演習場に入って来てティナが逃亡出来ない様に監視していたが、突然、演習場の壁に設けてある監視台から光が走った。
皇女は気付いてそちらに聖盾を発生させたが、狙いは皇女やフレドリックではなかった。フレームランスの直撃を受けたティナははじけ飛んだ。
ティナを縛っていた縄を持っていた二人の教官も引き摺られて倒れた。二人の教官は火傷を負いながらも逃げる時間があったが、高温の火魔法の直撃を受けたティナは悲鳴すらあげる暇がなかった。
気付いた教官は叫んだ。
「殿下を守れ!」
フレドリックと皇女を中心に盾を持った教官達が丸く集まって全周を防御したが、追撃は無かった。そのまま教官達は出口に移動して王子と皇女を演習場の外に誘導した。
その間に、フレームランスに焼かれた人肉の臭いが演習場に漂った。もちろん、犯人を追う人手はなかった。
合掌。フレームランスは上位魔法…って設定したか記憶が曖昧ですが。3年生で練習する魔法です。本来は。ヨハンとかお義兄様とかがポンポン放ってましたが連中は異常例です。




