4−3. 騒動 (2)
貴族学院にも、魔力の優れた平民が特待生として通う事がある。現在の1年1組にも、下位貴族より強い魔力を持つ特待生の少女がいた。
この国でも10才の時に殆どの子供が魔力検査を受け、各地の領主が魔力持ちに簡易教育を行う事になっていた。24年前から魔法師が不足しているから、一定以上の魔力を持つ者は貴族学院の魔法教育を受ける義務があった。その中でも下位貴族より魔力が強いと思われる少女ティナは、特待生として1年1組に所属していた。
もちろん、成績が上位であり続ける事が条件だが、特待生には寮費免除の上、服飾費などの小遣いが出た。ちなみに普通の平民の生徒は、領主と国が寮費を折半しており、その返済の為に卒業後には領主に仕える義務があった。
この日の昼食後、食堂から教室に戻るティナの視界に、見知った上級生が親指を上げている姿が映った。仕方なしに、上級生の後を追って林の中に入った。上級生はガゼボの椅子に座った。
「まあ、座れ」
座ったティナは怯えていた。
「あの、今日の午後は魔法実技の授業なんです。早く移動しないといけなくて…」
そう言っている間に、侍従が水筒からコップにお茶を注いだ。もちろん常温だ。
「まあ、落ち着け。一口飲め」
この貴族の上級生にとって、ティナはただの道具だった。だから茶を出すなどした後では、どんな無理難題を押し付けて来るかとティナは不安になった。とはいえ、貴族に勧められて断れる訳もなく、ティナは一口飲んだ。渋めのお茶だった。
「あの、噂話を広めるとかは無理です…私は1組で小さくなっている以外出来ませんから…」
「分かっている。今まで通り、高貴な方の私的な行動を報告してくれれば良い。例えば、今日の授業でかの方がどの様な魔法を使っていたか見ておけ。今度尋ねるから」
「はい。それでしたら」
「もう一口飲んで、気を鎮めてから行け。あまりかの方をじろじろ見るなよ」
「はい。もちろんです」
せっかくお茶を出してくれたのだから、二口以上飲んだ方が良いかな、と気を使ったティナは、お茶をごくごく飲んだ。無理難題を押し付けられずに済んだ安堵のせいか、ティナは頬がほんのり赤らんでいる気がした。
アンジェリーナ皇女は1年棟で午後の授業を受けていたが、魔法演習場の方から煙が上がるのが見えた。
「煙?」
同じ教室にいる男子生徒が呟いた。それを聞いた教師は窘めた。
「授業中の私語は謹んでくれ」
しかし、続いてもう一筋の煙が上がったので、男子生徒は教師に告げた。
「魔法演習場の方から煙が上がっているんです。事故でもあったのかも」
「何だって?」
教師が窓に向かったのを見て、他の生徒も窓際に集まった。
「今って何組の魔法実技?」
「1年1組だろ!?」
皆が「えぇーっ」と声を上げた。1年1組で事故があったとなると、第二王子フレドリックの身に危険が迫っている可能性がある。
子爵子息にしてフレドリック王子の護衛寄りの側近候補のケント・ブルースは、思わず教室を出て魔法演習場に走った。皇女もこれに続いて教室を出て行った。
つられて他の生徒達も教室を出始めた。堪らず教師が大声を上げた。
「危険だ!教室から出るな!」
まだ教室にいる生徒はその指示で席に戻ったが、既に教室外に出ていた生徒は魔法演習場に急いだ。
ちなみに室外で待機している筈の、王家の派遣している皇女の護衛を兼ねた侍女は、煙を見て学院の護衛達に状況の確認をする為、教室横を離れていた。大人しい皇女が授業中に離席するとは思わなかったんだ。
ケント・ブルースは鍛えているから健脚で、どんどん魔法演習場に近づいて行った。置いてきぼりになった皇女は魔法演習場に行った事がない。一瞬どちらに進んだら良いか迷ったが、煙という目印がある為、そちらに向かう事にした。
小さい音ながら、風を切る魔法の音と防御にぶつかる破裂音が聞こえる。危惧された通り、魔法戦闘が行われている事を皇女は知った。
……いや、そのシーン入れないといけない気がして…テンプレって言えばテンプレ…




