4−2. 騒動 (1)
黒装束から見ても、これが既に多数用意されている以上、いつばら撒かれるか分からない。スチュアートに薬を渡した翌日の晩には、大分時間をかけて平民領域の倉庫街や商店街の裏通りを走り回った。お陰で、最初に見つけた商店街の倉庫以外に2か所に置かれているのを見つけた。
とは言え、いつもより捜索時間の短縮を優先した調査は、薬物の保管者達も気付いていた。貴族の侍従と二人の商人が、薬物商の奥の部屋で話し合った。
「夜にネズミがうろついている様です。どの様にいたしましょう?」
「一度騎士団の手出しの出来ない場所に移動させた方が良いだろう」
「夜の移動はネズミに嗅ぎつかれる可能性がありますが…」
「なら、昼に移動させれば良いだろう」
「昼は逆に騎士団に呼び止められて荷を改められる可能性がありますが…」
「なら、騎士団の目を他に集めれば良いだろう。早速、明日の午後一に移動させろ」
約束の晩、前回と同じ公園の木に占い師の魔力を感じたスチュアートは、木の下に歩いて行った。先日より音を立てずに降りて来た黒装束は、紙を三枚渡した。
「明日の12時30分頃、商店街の倉庫で騒ぎを起こす。そこに踏み込め。残り2か所は13時の鐘に合わせて踏み込め。その時にはもう騒ぎで問題がある事が判明しているからな」
「私が同僚に声をかけた以上、12時30分の現場には私の隊が出向く」
「仲間は集められたのか?」
「ちょうど二人に声をかけたから、3か所に踏み込める」
「そうか。王都の平和は諸君らの双肩にかかっている。心してかかれ」
「…団長よりしっかりしてるな」
「しっかり働いて欲しいからな」
黒装束は姿を消した。
翌日、第一騎士団の3つの小隊は、昼前に臨時出動申請書を提出して駐屯地を出た。臨時の場合は申請を提出しただけで出動が可能だったのだ。そして、昼前にはもう騎士団長は食事の為に団長室を出ている。これで午後一までは騎士団長は何も言わない。部屋にいないのだから。
スチュアートの隊は真っすぐ目的地に向かったが、残り2隊は都内警らをしながらゆっくり現地に向かった。
王都の昼の平民街は、屋台などで軽食を買う平民で溢れていた。よって屋台や食堂、民家の竈から煙が立っていた。商家などではその煙に紛れる様にゴミを燃やす。だから12時30分頃には、問題の商家では下働きの男女が裏庭でゴミを焼いていた。
スチュアートの隊は近くの脇道の角から問題の商店を監視しており、裏口にも隊員が見張りをしていた。その裏通りを歩いて来る占い師の気配を感じたスチュアートは、脇道から裏通りに顔を出した。
男装の上、頭に布を巻いた人物が何食わぬ顔で問題の商家の裏側に近づき、親指で小さなものを弾いた。それは僅かな魔力に乗って、商家の裏庭の煙の中に落ちて行った。
(おい、煙にも効果があるなら、惨事になるだろう!)
スチュアートは脇道に小走りに進み、隊員に小声で指示した。
「物音がしたら正面から突入する、間もなくだ!」
商家の裏庭でゴミを焼いていた男は間もなく大声を上げた。
「こんな安月給でやってられるか!」
隣で一緒にゴミ焼きをしていた女も叫んだ。
「うるさいわね!あんたはいつも仕事が荒いから私は迷惑してんのよ!」
近くでゴミを運んでいた男も叫んだ。
「お前等いつも無駄口ばっかり叩いてやがって!真面目にやってるオレが馬鹿見てるじゃねぇか!」
そう言って最初に騒ぎ出した二人にゴミを投げつけた。それに怒った二人はこの男に殴りかかった。
スチュアートは裏で騒いでいる下男下女の事を不幸な連中と思ったが、場合によってはこの惨事が王都内に広がるかもしれない。心を鬼にして叫んだ。
「突入!」
二人の騎士が騒ぎの方向に押し入って行った。
「隊長!荷馬車の中です!」
問題の薬の捜査担当の風魔法師が荷馬車を指した。
「荷馬車を押さえろ!店の責任者は申し出ろ!」
隊では副長役のジムが裏庭に走って行った。ジムにも分かるほど裏庭の穴から立ち上がる煙の周辺の魔力が乱れていた。
「煙を吸うな!火を消せ!」
裏庭で暴れていた三人は縛られ、煙を吸った騎士達は表に出て深呼吸をする様に指示された。
店の責任者は平気そうな顔をして言った。
「騎士様、何でございましょう?当店は平常通りに営業しております」
そこで裏からやって来たジムが大声で報告した。
「ゴミを焼く煙に魔力攪乱成分が混じっていた!危険薬物がゴミに混じっていた可能性が高い!商品を改めさせてもらうぞ!」
それを受けてスチュアートは言った。
「既に騎士団が危険成分を確認した。摘発は免れないと知れ」
何かでイッちゃう人はマンガ的には目をぐるぐるに描きますが、おじさんおばさんが目がぐるぐるに描かれても絵にならない感じですね。




