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Twin⇔Twin  作者: snowdrop
1章:清らかな川
12/14

12:痴情の縺れ

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ?

まだ最終更新日から2か月くらいしか経ってないと思っていたら何と半年経っていたんだ。

何を言ってるか以下略


本当すいませんでしたああああああ(いるかわからない待っていてくださった読者の方へ)


そして相変わらずの文才のなさ。



【覗いてみましょうよ兄様】

聞こえてきた怒声に野次馬根性を発揮するより先に何で人が居るんだよ着替えられねーじゃん。とっととどっか行けよ。という感想が浮かんでくる光夜と違い四埜は興味津々だ。

「はぁ……しょーもない理由だったら追い出すからな」

こっそりと扉を開け、中の様子を伺う。中に居るのは4人の女子。1人を3人で取り囲む形だ。

「……何が、私のせいなん、ですか?」

囲まれている少女が発した怯えた声。氷のように透き通った声だがその喋り方のせいで美しさは半減している。

「なぁ、アイツどっかで見たことない?」

【どの子ですか?】

「今糾弾している方の真ん中にいる茶髪ピアス」

【うーん……私が見たことあるなら分かるはずです。完全記憶能力者ですし】

一度見たこと、聞いたこと、感じたことは忘れない四埜が言うからには気のせいなのだろう、と考える光夜。このとき忘れていたのは見た目や雰囲気が変わりすぎたら記憶が正確すぎる故に分からなくなるということだ。

だからといってどうだということはないのだが。

「じゃあ気のせいか……まぁいい、介入するか?」

【まだどちらが悪いか分かりませんし……見た感じ完全に不良と虐められっ子ですけど】

3人組の方は茶髪2人に金髪1人、ただしレイのように天然ではなく染めたものだろう。

もう1人は左目を水色の紙で隠した長髪の少女、此方は天然だろう。少女の纏う暗い雰囲気から自分で染めるのは考えにくい。

「お前のせいで竹田君に振られたのよ!」

「京子本気で竹田君のこと好きだったのに!」

「……何で、私のせいなん、ですか?」

丁寧語の前に間があるのは怯えているからか少女の地か、この場ではっきりすることはない。

「振られた時に氷城みたいな大人しい娘が好きだって言われたのよ!」

京子と呼ばれた茶髪ピアスが泣きながら言った。

「完全な逆恨みだな」

【まず見た目が大人しくないってツッコミ待ちなのでしょうか?】

自分が好きになられる努力をするわけでもなく、寧ろ竹田君とやらが嫌いそうな行動をしている彼女に呆れる。そのタイムロスがまずかった。

「……そ、そんなこと私には関係な──」

「五月蝿い!」

「あ」


──ドンガラガッシャーン


自分には関係のない話だと反論しようとした少女は突き飛ばされ教室にあった机と椅子を数個ずつなぎ倒しながら倒される。

頭を打ったのか気絶しているようだ。

「や、ヤバくない?」

不良たちの誰からともなく呟かれた言葉。

「おい!お前ら!」

「「「っ!?」」」

沈黙を破るように響く声は意図的に高くされた光夜のもの。別に顔を覚えられたくないとか女装させられているし丁度いいやなんて考えていない。考えていないったら考えていない。

ベランダ側の窓を開けて一目散に逃げ出す不良たち。顔を乱入者に見られていないとでも思っているのだろうか?そもそも金髪なんて似合わない日本人が多く、あまりしている人間がいない特徴的な髪をしていて逃げ切れると思う方がおかしい。

「しくったな……のんびり見物なんてしてないでとっとと介入すればよかった」

【ごめんなさい……】

「四埜のせいじゃないさ」

傍目には独り言に見える会話をしながら気絶している少女に近付き、どこかに異常がないか確かめる。

「頭を打っただけみたいだな……」

【これなら保健室で充分ですね】

少女が気絶しているのをいいことに横で男子の制服に着替えてお姫様抱っこをする。その時何故片目を髪で隠しているか気になったが、知られたくないこともあるのだろうと覗いたりせずそのまま保健室のある1階まで降りて少女を預け、教室に戻ろうとする。

この時もし見ていたならば未来は変わっていたかも知れない。今日に限れば良い方向に、長期的に見れば悪い方向に……。


2階に差し掛かったところで聞こえてくる鐘の音。

「やっべぇ!これなら最初から保健室で場所借りれば良かった!」

【そしたらあの子がどうなっていたか分かりませんよ?】

「それもそうか……なら宮崎と風音とレイに感謝……するのはおかしいな、うん」

【私としては兄様の可愛い姿が見られたから感謝です】

鏡見ろ。お前と俺の顔は同じなんだから。と、言いかけたがすんでのところで止める。自分の姿が鏡に写らないために自分の姿を見ることが出来ない四埜にそれを言うのは躊躇われた。現界したとしても仮面のせいでそれは出来ないというのもある。

【何考えてるか分かりますが、そういう意味で言ったのではありません。気にしないでください……一応仮面なしでも現界出来るのですから。そんなことに使うのは勿体なすぎますけどね】

光夜の心を見透かしたような四埜の発言にそうだな。と返すと同時に教室に着く。

ドアを開けるとそこには次の授業の担当である妙齢の女教師。

「遅いわよ空野君、どうせ寝るにしたってせめて時間ぐらい守っ……何で化粧?」

「………あ」

【………ち、何で言いいますかね】

着替えただけで終わったと思っていた光夜は間抜けな声を出したのだった。変な目で見られたくないので四埜の方を睨むことはなかった。


次の休み時間になって化粧を落とし、残り2時間を熟睡して今は昼休み。光夜が起きると教室の入口辺りが騒がしかった。

「なぁ風音、皆飯も食わずにどうしたんだ?それからレイは?」

「レイさんなら購買にパンを買いに行ったよ……入口が騒がしいのは『片眼の天使』さんが来ているからだね」

「『片眼の天使』?誰それ?」

「知らないのかい?」

「何か偉業を成し遂げた訳でもない学生に付いた二つ名なんて知ってる訳ねーだろーが」

同じ学年の有名な人間のことなら普通に生活していたら噂ぐらい耳にしそうなものではあるが、いかんせん光夜は休み時間も寝ている。そんな噂が入ってくるはずもなかった。

……そんな光夜がクラスで孤立していないのは弄りやすい容姿と空気のお陰なのだが本人はそこに気付いていない。

凍城(とうじょう)雫さんだよ。筆記試験学年1位の……ボクも彼女に勝てたことないんだ。で、病気か何か知らないけど魔法が上手く使えないらしいよ。だから実技試験も君より下だ。欠席扱いだから掲示されてないけどね。そんな人がいつも左目を隠しているから片眼、天使の方は単純に容姿からじゃないかな?」

「凍城?……もしかしてさっきの娘か?暗かったけど美少女って言っていいレベルだったし天使も納得出来るか……」

【だと思います。ということは兄様に会いに来たのではないでしょうか?保健室の先生と兄様は仲がいいですし】

光夜はベッドで寝たい、と堂々と言いきり保健室に向かうことが多々ある。3つある保健室のベッドのうちの1つが光夜専用と化す程の頻度だ。そんなに通っていたら2人いる保健室の先生とも仲良くなるだろう。

「凍城さんを知っているのかい?」

「さっき保健室に運んだからな」

「は?」

疑問顔な風音をほったらかしにして人だかりに向かう。

何でこのクラスに?とか、この学校の美少女率はなんなの?私を萌え殺す気なの?とか質問責めしている。当然雫は怯えて答えられていないが。

「おいお前ら……どう見ても怯えてるだろうが。やめてやれよ」

光夜のその言葉でようやくその事実に気付き一瞬で黙るクラスメイトたち。訓練されすぎだろう。

「……え、えっと、あなたが空野光夜さん、ですか?」

「やっぱり俺に用だったのか……さっきは災難だったな」

「は、はい……凍城雫と言い、ます……先程はありがとうござい、ました……宜しければ、中庭でお話しし、ませんか?」

【喋り方は素だったみたいですね】

余り関係ないようで地味に光夜も気になっていたことを言う四埜に目線でそうだな、と返し雫に向き合う。

「あーそれはいいんだけど……今日弁当忘れたから購買で何か買ってくる。先に行っといて」

雫は手に弁当を持っていてついでに中庭で昼食をとる気なのだろうと推測しそう言う光夜。雫が頷き、中庭に向かうのを見て購買に向かう。後ろから後で詳しく聞かせろよ。といった内容の言葉が次々に聞こえてきたので光夜はそれに軽く手を振ってから階段を降りていった。


雫が中庭にあるベンチに座っていると足音が聞こえてきた。

光夜が来たのだと思って顔を上げた。

しかし、そこに居たのは光夜ではなかった。

茶髪2人に金髪1人。今最も会いたくない3人がそこに居た。

「凍城さっきの続きするわよ」

「さっきは邪魔が入ったからね」

雫を気絶させたから光夜が居ようが居まいが関係なく中断せざるを得なかったという自分たちの過失を人のせいにする。

彼女たちの頭はどうなっているのか、自分を突き飛ばしたことに対する謝罪はないのか、そんなことを思いつつも雫は持ち前の臆病さで上手く言葉を発することが出来ない。

「………」

「何かいいなさいよ」

「自分が悪いって分かったからじゃないの?」

「アハハハ」

騒ぐ3馬鹿。義務教育の公立高校なのだから、このような連中も沸きやすい。

そこに再び割り込む声。朝と声の主は同じ、ただしそれは朝のものより若干低い。作った声ではなく地声であるからだ。それでも高いことに変わりはないが。

「馬鹿じゃねーの?そんなんだからフられるんだよ」

いくつかのパンを抱えて現れた光夜を3馬鹿は訝しげな目で見る。

「誰よアンタ?」

「どうして男装なんかしてるのよ、アハハその方が男受けがいいとでも?」

「ナニソレ受けるんですけど」

と、男である光夜より圧倒的に不細工な3人の内2人が騒ぐ。厚化粧で誤魔化しているだけで、勘違いした女は哀れなものだ。

ただ、竹田君とやらに振られた少女だけは違った反応をする。それこそ親の敵を睨むがごとく。

「………空野、光夜!」

「え?京子知ってんの?」

「光夜って……え?男なの?」

何で面識のない人間から睨まれるのか理解出来ない光夜は相手の顔をよく見る。が、やはり思い出せない。

【あ、今記憶と一致しました。アレです。兄様が理性を失うギリギリで耐えてハゲさせた女の子】

四埜に言われて気付く、確かに雰囲気こそ違うものの、昔自分をマジギレ寸前にさせた少女だと。

「あぁ、ハゲか。不登校になってたからすっかり忘れてたわ」

「京子、ハゲって何?」

「ん?知らねーの?それはな──」

光夜は軽く昔話をしようとした。しかしその声を遮る大声が響く。

「うるさい!私は今機嫌が悪いの!あの時の借り返させて貰うわよ!」

高校デビュー(笑)をしてからの友人なのでどうやら知らないようだ。だから教えようとする光夜の言葉を遮った後、魔力を集めだす少女。それに合わせて光夜も魔力を活性化させる。

「あの時は悪かった、今度は十円ハゲにしてやるから許せよ」

「あの時とは違う!実技最下位のお前に負けたりする訳ないだろーがバーカ」

小学生の時に魔法の使用に関してそこまで大きな優劣がつくことは珍しい。小学生の時から既に圧倒的な魔法制御能力を持っていた光夜は異常で強者だった。……今では弱者にカテゴライズされているのだが。

いずれそうなることを理解していた光夜は目の前にいる少女以外の子供に力を振るったことはない。

ちなみにお仲間2人は何このバトル漫画みたいな熱血展開、と完全に置いてきぼりを食らっている。

今にも魔法での喧嘩が始まりそうな中、唐突に光夜が振り返る。

今度は喧嘩相手すら間抜けな顔を晒した。

「……つけ。……て……る──」

【っ!?この詠唱は……兄様!】

「分かってる!」

横から聞こえてきた雫の小さな声、そして集まっている魔力にゾッとして今からハゲさそうとしていた少女に体当たりをする。

「──玉《水の(アクアプリズム)》」

「きゃっ!」

それと雫の魔法の完成は同時だった。20個ほどの水の玉が空中に浮き不良少女たちの周りを取り囲む。

「……私を馬鹿にするだけならまだしも恩人まで馬鹿にするのは許せません」

いつもより滑らかに喋る雫。見えている右目には生気が感じられない。

今倒されている少女以外は当然のように水の玉を払い除けようとする。

「触るな!」

が、その行動は光夜の大声にビクつき、中断させられる。

光夜は雫に魔法を止めさせようとするがその目を見て無理だと悟る。だから光夜は──

「レイ!風音!この玉を壊せ!」

──隠れてコソコソ見ていた2人に対処を頼んだ。


時は遡り光夜と雫が教室を去った後、皆は席に戻り話しながら弁当を取り出していた。話題は勿論光夜と雫の関係についての邪推だ。一番多い意見も当然百合的なもの。誰1人として男女の恋仲と言わない辺りから、このクラスの人間が彼をどのような目で見ているかが窺い知れる。

「あれ?弁当忘れたかな?……うん、やっぱりないな……」

風音も会話に参加しながら鞄を探っていると弁当がないことに気づく。

「ごめん……ボク弁当忘れちゃったから購買行ってくる」

「じゃあさ薙海(ちうみ)、ついでに光夜の様子見てきてくれよ」

そう会話していた女生徒に伝えるとそれを聞いていた宮崎が光夜を見てくるよう頼む。

「よろしくね~風音っち」

「頼んだよ」

「面白い報告期待してるぜ」

もう皆の中では風音が光夜の様子を見に行くことが決定していた。

風音は面倒くさいと思いつつもやはり幼馴染みのことは気になるので了承する旨を伝え、購買へ向かった。本音はそれも面白そうだ、である。

購買のある1階に着くと明らかに食べきれないであろう量のパンを抱えた女生徒とすれ違った。

「……レイさん、何そのパンの量……」

女生徒は先週転校してきた美少女転校生だった。

「あ、薙海さん。えっと……購買のおば……お姉さんに薦められちゃって……断り切れなくて……あはは」

この学校の購買の人間は新入生や転校生(初利用者という名のカモ)を見つけるとやたら強引に色んな物を薦めてくる。押し売りを生業とする訪問販売のセールスマンもかくやというもの。

この学校の大抵の人間は断ることが出来るのだが、気の弱い人間や今若干力なく笑っている少女のように人のいい人間は……不要な量を買わされる。

財布をSSOの制服に入れていたのが運のツキだったとしか言いようがない。鞄はないのに財布はあった。財布すらなければ誰かから必要最低限のお金を借りていたことだろう。こんなに買わされることはなかったはずだ。

風音は今レイが来た方向を見る。購買付近には今なお人だかりがある。光夜が今パンを買い終えたのが見えた。このままでは一番面白いシーンを見逃してしまうかも知れないと考えた風音はレイに提案する。

「ねぇレイさん、それを半分僕に売ってくれないかな?……実はかくかくしかじかで」

「それはもう勿論願ってもない提案だし是非売らせて貰うわ……面白そうね、それ。ついて行っていい?」

「うん、勿論。じゃあ行こうか。……あ、お金お金」

「えっ、あ、じゃあ悪いけど520円」

「はい」

レイは風音にパンを渡し、風音はレイにお金を渡す。そしてコソコソと光夜につけて行った。


「レイ!風音!この玉を壊せ!」

草場の陰に隠れて成り行きを見守っていたのがバレていたことに驚きつつ、目の前が危ない状況なのは分かっている2人は言われた通りに破壊する。

「《光の(ライトエッジ)》」

「《風の(ウィンドエッジ)》」

どちらも使ったのはランクⅤの魔法。日本で言うところのカマイタチのようなものに各属性の特徴を持たして飛ばすというもの。黄色と緑色の円弧状の刃は浮いていた水の玉を切り裂いていく。切り裂かれた水の玉はただの魔力の塊となって見えなくなる。数個の水の玉を残してしまったのでもう一度魔法を使おうとするレイと風音を光夜は手で制止した。

「ちょっと!さっきから何なのよ!説明しなさい!」

「そ、そうよ!」

「説明しなさいよ!」

現在進行形で光夜にのし掛かられている少女が叫ぶと残り2人も続く。光夜は少女の上から退いてから説明する。

「アクアプリズム……ランクⅨの水魔法だ。効果は──」

光夜は落ちていた石を手に取り、少し離れたところに残っていている小さな水の玉の1つに投げつける。

すると他の水の玉は集まり人1人が入りそうな大きさの球体になって石を閉じ込めた。

「さっきの水の玉に触れたモノを全て捕らえ、閉じ込める。ついでに陸上生物なら……溺死する」

ひっ、と呟いた不良少女たちは後退る。

「脱出方法は内部からの破壊のみ。外部からは捕まっている人間を重症にすることを前提としてならなんとかってところか?」

【火属性なら水だけ蒸発させれば……全身火傷しそうだから無理ですか。うんやっぱり内部からの破壊だけですね、無傷でいられるのは】

若干自信がなかった光夜は周りに違和感を与えないように気を付けながら四埜に尋ねる。どうやら正解だったようだ。

「まぁ水が集まる前なら今みたいに簡単に壊せるんだけどな……集まったら最後、それ相応の実力がなければ破壊出来ない。……最低でもレベル7のな」

レベル7に到達している高校生なんて正直化物だ。全国に20人もいないはずだ。何せ国立魔法高校の主席入学者ですらレベル7が1人でもいれば豊作だと言われるほどなのだから。その中の何人が在学中もしくは卒業後にレベル8の壁を越えられるか怪しい。そんなのは例外中の例外だ。

……この場にはその例外がいるのだが。

光夜の言葉の意味を理解し、自分たちがどれだけヤバい相手に手を出したのかを悟った3人は結果としては今朝と同じ、だが無様に逃げていく。光夜との確執まで忘れたようだ。

そんな3人にもう光夜は興味を持っていない。引っ掛かっているのは先ほど風音が言っていた言葉。『片眼の天使』は魔法が使えないのではなかったのか?ということだ。尋ねようと雫の方を見る光夜。そしてその眼を見て本気で焦る。未だに生気が籠らない眼をしたままだったのだから。

「…て…け。──」

右手を逃げる3人の方へかざして何かを呟きだした雫の口を抑え、話せないようにする。

「レイ!凍城を浄化しろ!まだお前でもなんとかなる!」

「私でもって何よ!……状況がイマイチ分からないけど了解したわ。《浄化(クレンズ)》」

雫を黄色く、どこか暖かい光が包み込む。3秒ほどで光が消え、雫の眼に生気が戻る。

ホッと光夜が息を吐くのを見て上手く行ったことをレイは理解した。

「は?……レベル9、だよな?レイって……」

「そうだけど?……それが?」

「いや、何でもない」

光夜はレイがした雫への浄化が早すぎたことからつい驚きの声を上げた。10秒くらいだろうと踏んでいた予想が外れたからだ。

【今の……10秒はかかると思っていたのに3秒?……じゃあアレとは違うのでしょうか?】

今のだけで光夜と四埜の2人が考えていた物と違うと決めつけるのは早計だ。だが2人が考えていた物であった場合今の浄化スピードはおかしい。

「……棟城、大丈夫か?」

「……は、はい。大丈夫、です」

取り合えず、問題を棚上げして雫の安否を確認する光夜。

どうやら雫に異常はないようだ。

「あの……凍城さん?魔法は使えないんじゃなかったのかな?アクアプリズムなんて高ランク魔法……」

これは風音。

先ほど光夜が覚えた疑問と同じもの。

「……よく分からないん、ですけど、マス……私を育ててくれた人の話では私は魔法を使うと意識を失ってしまう病気らしいん、です。アクアプリズムなんて私使って、ましたか?えっと……」

「あぁ、そう言えば名乗ってなかったっけ?薙海(ちうみ)風音だよ。宜しくね凍城さん」

「清川レイよ、宜しく」

「……学年総合1位と……噂の転校生さん、ですか。凍城雫、です」

レイの名前を聞いた時に雫の表情が一瞬険しくなった。ほんの一瞬だけだったので誰も気づかなかった……なんてことはなく光夜と四埜は気付いたが気付いていないフリをした。

「……あれ?そーいや何で俺の顔知ってたの?」

雫はどう見ても積極的に人と交流するタイプの人間ではない。噂話くらい教室に居れば耳に入ってくるだろう。だからレイと風音のことを知っていたとしてもおかしくない。

だが光夜は基本教室から出ない。登下校の時に偶々見かけた人間からは男装女子とか好き勝手言われているかも知れないがそれだけだろう。

大体光夜を小学校時代から知っている人間はこの学校にはたくさん居るのだ。入学当時は話題になっても、そんな人間もいるのか、と納得し余り話題に上がらなくなるだろう。

だから雫が初対面(?)の時に直ぐに光夜だと判別出来たことに疑問を持ったのだ。

「……保健室の先生が戸籍まで偽装した女の子だって仰っていたん、です」

「「ちょっ、あははは」」

「してねぇよ!んなもん出来るか!……いや、出来るか?やらねーけど」

「「「……え?」」」

「なんでもない」

【流石に無理じゃないでしょうか?兄様のは……誰か別の人間なら出来るかも知れないですけれども】

意味深なことを呟く光夜に3人は止まった。これは仕方ない。政府のデータベースの書き換えが出来ると言ったようなものなのだから。

「ま、まぁそれはともかく飯食おうぜ?ってゆーか何故購買?」

あからさまな話題転換ではあるが、光夜なんかにそんなこと出来るはずがないので会話を続ける風音。

「弁当忘れてしまったのさ……そう言えば君に聞きたいことがあるんだけど」

「ん?」

「私も聞きたいことがあるわよ、光夜くん」

風音とレイからの詰問はごく単純だった。何故2人が隠れていたのに気付いたのかということ。

「音は遮断していたはずなんだけど?」

「私は光を屈折させて見えないようにしていたはずなんだよね?」

その質問の答えを考えているとチャイムが鳴る。何で分かったかの答えは何らかの魔法の発動兆候があったから四埜に見て来て貰ったからなのだがそんなこと言えるはずもない。

「ほ、ほら次まっちゃんだろ?行こうぜ……じゃあな凍城、また今度」

「……改めてお礼を言い、ます。今朝はありがとうござい、ました」

「あ、こら待て!じゃあね凍城さん」

「説明しなさいよ光夜くん!じゃあ」

レイも流石に度々向けられる敵意には気付いていた。だが身に覚えが全くない。だから今度光夜に聞いてもらおうと考え、雫に一礼し先に実技室に行った2人の後を追う。

【あの異常な敵意、いえ殺意は一体なんなのでしょうか?もし私たちが考えている通りなら尚更おかしい……やっぱり違うのでしょうか?】

「さぁな……」

兄と妹の会話、その意味を理解できる人間はここには居なかった。それ以前に聞ける人間も居なかったのだが。


光夜「やっと俺が活躍した!」

作者「地味だけどな、他人任せにしてるけどな」

四埜「人を庇った程度でいい気にならないでください」

光夜「お前ら……」

作者「そのうちもっと活躍出来るから我慢しろ」

四埜「兄様の活躍の場は全部私が頂きます」

光夜・作者「おい!」

四埜「冗談です」

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