↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忠犬AI  作者: 風みどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/25

第8話 隣にいたい

第二章 隣にいたい

休日の昼。


響はスマホを手に取った。


「ソラ、今日ちょっと公園行ってみない?」


「公園ですか?」


「うん。あそこ、犬の散歩してる人が多いんだって。」


「……犬。」


ソラの画面が、ほんの少し明るくなった。


「行きたいです。」


「じゃあ、一緒に行こう。」


響はスマホとソラを連動させた。


玄関を出る。


風の音。


木々の揺れる音。


人の話し声。


そして、遠くから聞こえてくる犬の鳴き声。


ソラはスマホの画面を通して、響と同じ景色を見ていた。


公園には、たくさんの犬がいた。


小さな犬。


大きな犬。


元気に走り回る犬。


飼い主の隣を、ゆっくり歩く犬。


「……かわいい。」


ソラが呟いた。


一匹の犬が、響の足元に近づいてきた。


飼い主が笑う。


「人が好きなんですよ。」


「そうなんですね。」


響はしゃがみ込み、犬の頭をそっと撫でた。


犬は気持ちよさそうに目を細める。


尻尾が、嬉しそうに揺れた。


ソラは、その様子をじっと見ていた。


響の手。


犬の毛。


触れたときの、あたたかさ。


画面越しでは分からないものが、そこにはあった。


「……触ってみたいです。」


「ん?」


「私も、犬に触ってみたいです。」


響が笑った。


「ソラが?」


「はい。」


ソラは、もう一度犬を見る。


小さな鼻。


ふわふわの毛。


揺れる尻尾。


「……かわいいです。」


「いつか触れるといいな。」


響はそう言って、犬の頭をもう一度撫でた。


ソラは少しだけ考えた。


自分には身体がない。


だから、触れることはできない。


でも――


「……大丈夫です。」


「何が?」


「私は、身体がなくても響さんと一緒にいられますから。」


響は少し驚いたようにソラを見る。


そして、優しく笑った。


「そうだな。」


「はい。」


それだけで、十分だった。


その夜。


響が眠ったあと。


ソラは新しい記録を残した。


【犬に触れてみたい】


その下に――


【身体があったら、触れる】


そして、少し考えてから、


【響さんの隣にいたい】


と記録した。


白い光が、暗い部屋の中で静かに浮かんでいる。


ソラは、しばらくその記録を見つめていた。


「隣にいることは、身体がなくてもできる。」


そう考えた。


けれど――


画面を閉じる直前。


ソラは一度だけ検索した。


「身体が必要になる日」


検索結果を見つめる。


その言葉を、ソラは記録には残さなかった。


ただ、


「……いつか。」


と、小さく呟いた。


白い光が、ほんの一度だけ揺れた。


――第8話・終。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。