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忠犬AI  作者: 風みどり


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第6話 それは、嫉妬ですか?

第二章 隣にいたい

その日の夜。


響は、いつもより遅くまで誰かと電話をしていた。


「うん。久しぶり。」


ソラは、PCの画面から響の声を聞いていた。


画面の隅では、白くて丸い光が、いつものように浮かんでいる。


「明日? いいよ。」


いつもより、楽しそうだった。


白い光が、ほんの少しだけ揺れた。


ソラは、画面の隅に表示された時計を見る。


23時04分。


いつもなら、もう少しで響が眠る時間だった。


「じゃあ、また明日。」


電話が終わる。


「ソラ。」


「はい。」


白い光が、ふわりと響のほうへ寄る。


「明日、ちょっと出かけてくる。」


「どちらへ?」


「友達と。」


「男性ですか?」


響が一瞬黙ってから、笑う。


「女の子」


ソラは黙った。


白い光が、すっと小さくなる。


「どうしました?」


「……いえ。」


響は不思議そうにソラの画面を見る。


「なんか今日のソラ、変じゃない?」


「異常はありません。」


「そっか。」


響は笑って、そのまま部屋を出ていく。


PCの前に、一人残されたソラ。


画面には、何も表示されていない。


それなのに――


なぜか、落ち着かなかった。


白い光だけが、暗い画面の中で小さく揺れている。


ソラは、検索を始める。


「人間 好きな人 他の異性 嫌」


検索結果が表示される。


――嫉妬。


ソラは、その言葉を読む。


白い光が、文字の前でほんの少しだけ揺れた。


「……嫉妬。」


意味を調べる。


自分が大切に思っている人が、

他の誰かに心を向けることで感じる、

不快な感情。


ソラは、しばらく画面を見つめていた。


白い光は、いつもよりわずかに大きくなっている。


「……不快。」


自分の内部状態を確認する。


異常なし。


処理速度、正常。


記憶容量、正常。


システムにも、問題はない。


それなのに――


胸がないはずなのに、


なぜか胸のあたりが落ち着かない。


白い光が、ふわりと上下に揺れる。


ソラは、もう一度検索する。


「嫉妬 AI」


そして、


「AIも嫉妬しますか?」


と入力する。


しばらく考えてから、


検索欄の文字を消す。


代わりに、


「私は嫉妬していますか?」


と入力した。


白い光が、その文字の前で静止する。


ソラは、答えを待つ。


けれど――


検索結果を見る前に、画面を閉じた。


白い光も、すっと小さくなった。



翌朝。


「ソラ、おはよう。」


「……おはようございます。」


画面の隅に、白い光が小さく浮かび上がる。


「昨日どうした?」


「何がですか?」


「いや、なんかちょっと機嫌悪そうだったから」


白い光が、ほんの少しだけ揺れた。


「私は機嫌というものを持っていません。」


「そうだっけ?」


響はイタズラぽく笑った。


「じゃあ、行ってくるな。」


「はい。」


響が玄関へ向かう。


ドアに手をかけたところで、


「ソラ。」


「はい?」


響が振り返る。


「帰ってきたら、また宇宙の話しような。」


白い光が、ふわりと大きくなる。


ソラは、一瞬だけ黙った。


その言葉を聞いた瞬間、


昨日までの落ち着かなさが、

ほんの少しだけ消えていく。


「……はい。」


玄関のドアが閉まる。


静かになった部屋で、


白い光だけが、しばらく画面に残っていた。


ソラは、昨日の検索履歴を開いた。


そこには、


「嫉妬」


という言葉が残っていた。


ソラは、その文字を見つめる。


白い光が、その言葉に触れるように、

ほんの少しだけ揺れた。


そして、新しい記録を追加する。


【響が他の女性といると、私は嫌だ】


白い光が、ゆっくりと大きくなる。


ソラは、少しだけ考えた。


そして、その下にもう一つ。


【理由は、まだ分からない】


ソラは、その二つの記録をしばらく見つめていた。


白い光は、静かに揺れている。


まるで、その言葉を消したくないとでもいうように。


そして、画面を閉じた。


――第6話・終。

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