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集宴-虚ろなる祈りの果て-  作者: くゆー(蜘蛛蘭燈)
婿取り -破炭大牙外伝-

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9/15

あなたさま

すみません。

編集前の箇条書きの状態で投稿しておりました。

修正し 投稿しなおしました。

 夜だった。

 バイクのエンジン音だけが、やけに残る。

 静かすぎる。

 海沿いの道のはずなのに、波の音が、しない。


「……こんなに静かだったか?」


 ヘルメット越しに、呟く。

 返ってくるのは、エンジンの振動だけ。


 その時。

 ひゅる

 ひゅぅ……

 風のような音。

 だが、風は吹いていない。


「……なんだ今の」

 指が、ブレーキにかかる。

 止まるほどじゃない。


 だが、気になる。妙に、懐かしい。

 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


(……知ってる?)

 思い出せない。なのに、“知っている側の感覚”だけが残る。


 気づけば、道を外れていた。


「は?」

 舗装が途切れ、タイヤが砂を噛む。


 減速し停車した

 目の前には古い鳥居。

それは、苔むしている。青緑色の灯りが、ゆらゆらと揺れている。


「……こんな場所、あったか?」


 スマートフォンを見ると 圏外。


 画面が、ふと点灯する。何気なく、視線が落ちた。

 表示されたディスプレイ

破炭整備場。


(……当たり前、か)

 自分の工場、見慣れているはずのそれに、わずかな引っかかりが残る。


 ぽつりと、口にする。

「……破炭工場」


 音にして、確かめるが、違和感は、消えない。だが、それ以上は続かない。


「……だよな」


 小さく息を吐く。普通なら、引き返す。

 はずだった。


 だが。

(……上だな)

 理由はない。

なんなくそう思った。


「……少しだけ見るか」

 自分に言い聞かせた バイクを降り、エンジンを切る。

音が消えた。 静寂が、落ちる。

鳥居を潜る。


 その瞬間。


 潮の匂い

 それと、 甘い匂い。ミルクのような。

 だが、どこか懐かしい。


「……なんだこれ」


 違和感がある。なのに、嫌じゃない。


 一歩。

 また一歩と進むたびに、匂いは濃くなる

そんな感覚が、あった海の底に、沈んでいくような。

 

その時。

 声が聞こえた。

女のような声だ「……あなたさま」

足が自然に止まった。


「やっと、来てくれた」


 優しい声。懐かしい。


 温かい。


 母のような。


 恋人のような。


 どちらでもない。


 だが、拒めない。「……誰だ」


 問いかけるが、返事はない。それでも、足が動く。


 自分の意思じゃない。

 導かれるように。

 拝殿へと。


 歪んでいる。

 柱が湿っている。

 水の音がする。


 ぴちゃ、ぴちゃと、どこからか。


 そして——

 女がいた。

 一目で分かる。

 美しい。それだけで、思考が鈍る。


 青白い肌。

 濡れた髪。

 黒い瞳。

 深い。

 底が見えない。


(……あれ)

 違和感。浮かびかけて、消える。

 女が微笑む。


「あなたさま……」

 一歩、近づく。水の音。

 だが、距離が、変わっていない気がする。


「やっと、戻ってきてくれたのね 」


 胸が、熱い。

 締め付けられ、 安心する。

 ここでいいと、思いかける。


 その時。

女の手が左腕に触れた。

「……っ、冷た」


 皮膚だけじゃない。内側まで、入り込むような感覚。

何かが。自分の中で。愛撫している。


 “触られている”。


 内側を。

(……なんだ、これ)

視界が揺れ、その瞬間。違和感が、形になる。


(……違う)

 これは、 人じゃない。

 何かだ。 理解した瞬間。

 温かさが、冷たく反転する。


 逃げろ。

 そう思う。

 だが——


 足が動かない。女が微笑む。

 変わらない。ずっと同じ顔で。


「どうしたの?」

 優しい声。なのに、どこか、深すぎる。

 覗き込まれている。

 底まで。

 

想像以上に伸びてました。

ですので 不定期になりますが、追加で書いていきます。

ただし作品の都合ですがセッションが終わるまでまお待ち頂く場合があるのでご承知くださいませ。

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