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集宴-虚ろなる祈りの果て-  作者: くゆー(蜘蛛蘭燈)
海底の扉

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Another

 大牙と魚名は、元の部屋へ戻っていた。

 腐臭はない。

 あの光景も、消えている。

 静かすぎる。


「……戻ってきた、のか」

 頬に、熱が残っている。


 龍二の手。

 あの一撃だけが、やけに現実だった。


 そして——

 龍二は、いない。

 言葉にしない。

 できない。


「……進むしか、ないのう」

 魚名の声。

 変わらない。


 何も感じていないような声。

 視線が、額縁へ向く。


 一枚、増えている。

 嵐・傾いた船。

 飲み込まれる寸前。

(……あの時だ)


 思い出しかけて、止まる。

 最後の扉。

 黒い。

 光を吸い込むような色。


 近づくだけで、 息が重くなる。

 手をかける。


 押す。

 ——軽い。


 あっさりと、開く。

 中は、白。 何もない。

 ただの空間。


 一歩、踏み入れる。

 二歩。


 その瞬間。

 壁に、文字が浮かびあがった。


 焦げ跡のように、ゆっくりと。

 読める形になる。


 海の見えるレストラン。

 ウミガメのスープ。

 一口だけ飲み、問いかけた。

 ——このスープは本物か。


 肯定される。

 そして、

 飛び降りる。


「……なんだ、これ」

 意味が、繋がらない。


 だが——

 “何か”だけが分かる。


 その時。

 声が 頭の中に、直接聞こえた。


「導き出された答えは、間違いではない」


男とも女とも区別がつかない、柔らかい。

 だが、歪んでいる。


「だが、それを変えられるのは限られた者だけ」

 一拍。


「賢者の、特権」


 思考が、回るが時間が足りない

 

 あと一歩。

 届かない。

「……分からない」


 沈黙。そして、「そうか」

 声は 笑った 。

「傍観…それもまた、一つの答えだ」


 声が、滲む。

 足元から。

 逃げ場はない。


「——沈めばよい」

 世界が、反転する。


 水。

 冷たい。

 重い。

 肺に、流れ込む。


「——っ!!」

 沈む。

 その時。

 記憶が、割り込む。

 湿った空気。

 港。

 揺れる水面。


「……釣れてますか?」

 自分の声。


「あっ?」

「見て分かるやろ、全然や」

 風見龍二。



「釣り、しちょるん?」

 柔らかい声。

「なら、おっちゃん船もっとるし、乗りな」


 魚名大漁。

 船。

 沖へ。

 波。


 静かな時間。

 そして——重い引き

 異様な手応え。


「……なんだ、これ」

 引き上げたそれは、イカではなかった。


 青緑色の肉。

 ぬめり。

 無数の目。

 崩れた形。

 生きている。


 理解できない。

 だが——どこか、見覚えがあった。

 あり得ないはずなのに。

 目を逸らしたくなる。

 理由のない確信。


 次の瞬間。

 叫びと混乱。

 船が揺れ海が荒れた 。


 暗闇へと沈む


(……ここに)

 最初から、繋がっていた。

 理解した瞬間。


 身体が、変わる、呼吸ができる。

 水の中で。動ける。

 自分だけが、違った。


 沈んでいく影がそこに、龍二と魚名。

 動かず、沈んでいく。


「……っ」

 迷いは、一瞬。

 動く。

 速く。

 深く。

 手を伸ばす。

 掴む。

 引く。


 もう一つ。

 魚名。「……仕方ねえな」

 それでも、手は伸びる。。

 上へ、光へ。


意識が、白く染まり、世界が、途切れた。


GM「(^言^)<ッチ」

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