最終話 「既読がつかなかった日」
ここからは、アナザーエンディングとなります。
こちらは【バッドエンド】Ver. をお楽しみ下さい。
その通知は、
来なかった。
あの日から、ずっと。
画面を開く。
変わらないトーク画面。
『ごめんね』
その一文だけが、
ずっと、そこにある。
「……まだか」
小さく呟く。
もう何日経ったのか、
正確には覚えていない。
最初は、何度も確認していた。
仕事の合間に。
帰り道に。
寝る前に。
でも——
最近は、
“なんとなく開く”だけになった。
期待していないふりをして、
ほんの少しだけ期待している。
「……バカみたい」
自分で言って、少し笑う。
あの日のことは、
何度も思い出した。
なんであんな言い方したんだろう。
なんであの時、聞かなかったんだろう。
答えはもう、分かっている。
“余裕がなかった”
それだけだ。
でも、
その“それだけ”で、
全部が終わることもある。
スマホを伏せる。
もういい。
そう思おうとする。
でも——
ふと、また手に取る。
「……ほんと、やめたい」
指が、画面に触れる。
送信ボタンの横。
一度だけ、
打ったまま消した文章がある。
『ちゃんと話したい』
結局、送れなかった。
“今さら”だと思ったから。
その時、ふと気づく。
あの日——
彼も、同じことを言っていた。
「ちゃんと話したいんだよね」
「……あぁ……」
遅い。
全部、遅い。
その瞬間、
やっと分かった。
既読がつかない理由。
“もう、必要ないからだ”
怒ってるわけじゃない。
無視してるわけでもない。
ただ——
“終わったものに、触れていないだけ”
それが一番、
優しい終わり方なのかもしれない。
「……そっか」
小さく頷く。
スマホを閉じる。
今度は、
もう開かなかった。
数日後。
街の中。
ふと、足を止める。
向こうから歩いてくる人影。
見覚えのあるシルエット。
「……あ」
彼だった。
一瞬、
時間が止まる。
でも——
彼は気づかない。
こちらを見ない。
ただ、
普通に通り過ぎていく。
「……」
呼べなかった。
声をかける理由が、
もうなかった。
すれ違う。
ほんの一瞬、
距離がゼロになる。
それでも——
何も起きない。
「……そっか」
さっきと同じ言葉。
でも今度は、
少しだけ軽かった。
振り返らない。
それでいいと思った。
その夜。
久しぶりに、トーク画面を開く。
『ごめんね』
その一文を、しばらく見つめる。
そして——
削除した。
履歴ごと、
全部。
画面が、空になる。
少しだけ、寂しい。
でも——
「……これでいい」
小さく呟く。
スマホを置く。
その瞬間、
どこかで、
“既読がついた気がした”
でもそれは、
もう確認できない。
(完)
初の試みでしたが、いかがでしたでしょうか?
ご購読ありがとうございました。




