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■JIN短編集■  作者: JIN
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最終話 「既読がついた日」

ここからは、アナザーエンディングとなります。


こちらは【ハッピーエンド】Ver. をお楽しみ下さい。

その通知は、

 

あまりにも普通に来た。

 


 

「……っ」

 

 

一瞬、息が止まる。

 

 

 

画面には、

 

 

あの名前。

 

 

 

しばらく、何もできなかった。

 

 

 

既読がついていないはずの会話。

 

 

 

終わったはずのやり取り。

 

 

 

それが——

 

 

 

「……なんで、今さら……」

 

 

 

震える指で、開く。

 

 

 

 

そこには、新しいメッセージ。

 

 

 

 

『元気?』

 

 

 

 

それだけ。

 

 

 

 

たったそれだけなのに、

 

 

 

心臓が、うるさい。

 

 

 

 

(なんで今さら——)

 

 

 

 

そう思った瞬間、

 

 

 

別の感情がよぎる。

 

 

 

 

“まだ、終わってなかったのかもしれない”

 

 

 

 

 

スマホを握りしめる。

 

 

 

 

返す?

 

 

 

 

返さない?

 

 

 

 

 

その選択が、

 

 

 

あの頃とは違う重さで、のしかかる。

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

 

深く息を吐く。

 

 

 

 

 

思い出す。

 

 

 

 

あの時、

 

 

 

 

『ごめんね』を送った日。

 

 

 

 

既読はつかなかった。

 

 

 

 

 

でも——

 

 

 

 

それで終わったはずだった。

 

 

 

 

 

なのに今、

 

 

 

 

こうしてまた、

 

 

 

 

“続き”が来ている。

 

 

 

 

 

「……ズルいだろ」

 

 

 

 

小さく笑う。

 

 

 

 

 

でも、それは責める笑いじゃない。

 

 

 

 

どこか、救われたみたいな顔だった。

 

 

 

 

 

ゆっくりと、指を動かす。

 

 

 

 

 

文字を打つ。

 

 

 

 

消す。

 

 

 

 

また打つ。

 

 

 

 

 

何度も繰り返して——

 

 

 

 

やっと、残った一文。

 

 

 

 

 

『元気だよ』

 

 

 

 

 

送信。

 

 

 

 

 

既読がつく。

 

 

 

 

 

今度は、すぐだった。

 

 

 

 

 

少しだけ、笑ってしまう。

 

 

 

 

 

「……前と逆じゃん」

 

 

 

 

 

数秒後。

 

 

 

 

 

返信が来る。

 

 

 

 

 

『そっか。よかった』

 

 

 

 

 

また、短い。

 

 

 

 

 

でも今度は、

 

 

 

 

ちゃんと“会話”になっている。

 

 

 

 

 

少しだけ、間が空く。

 

 

 

 

 

そして——

 

 

 

 

 

『今度、ちゃんと話さない?』

 

 

 

 

 

その一文を見た瞬間、

 

 

 

時間が止まった。

 

 

 

 

 

“ちゃんと”

 

 

 

 

 

あの日、

 

 

 

できなかったこと。

 

 

 

 

 

避けたこと。

 

 

 

 

 

 

「……今さら、かよ」

 

 

 

 

 

でも——

 

 

 

 

 

今回は、

 

 

 

 

逃げなかった。

 

 

 

 

 

 

『うん、話そう』

 

 

 

 

 

送信。

 

 

 

 

 

既読がつく。

 

 

 

 

 

すぐに。

 

 

 

 

 

 

 

その数日後。

 

 

 

 

 

カフェ。

 

 

 

 

 

向かいに座る、彼。

 

 

 

 

 

少しだけ、大人になった顔。

 

 

 

 

 

でも、

 

 

 

 

変わらないところもある。

 

 

 

 

 

「……久しぶり」

 

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

少しだけ、ぎこちない沈黙。

 

 

 

 

 

でも——

 

 

 

 

今回は逃げない。

 

 

 

 

 

 

「……あのさ」

 

 

 

 

 

同時に、口を開いて

 

 

 

二人で少し笑う。

 

 

 

 

 

 

「先いいよ」

 

 

 

 

 

「いや、そっちから」

 

 

 

 

 

 

また、少し笑う。

 

 

 

 

 

 

その空気が、

 

 

 

前とは違っていた。

 

 

 

 

 

 

「……あの時、ごめん」

 

 

 

 

 

彼が、先に言った。

 

 

 

 

 

 

「俺、ちゃんと話してなかった」

 

 

 

 

 

 

その言葉に、

 

 

 

胸が、少しだけ締め付けられる。

 

 

 

 

 

 

「……ううん」

 

 

 

 

 

今度は、自分の番。

 

 

 

 

 

 

「私も、ごめん」

 

 

 

 

 

 

「ちゃんと聞いてなかった」

 

 

 

 

 

 

 

沈黙。

 

 

 

 

 

でも、それはもう怖くない。

 

 

 

 

 

 

「……なぁ」

 

 

 

 

 

彼が、少しだけ真剣な顔で言う。

 

 

 

 

 

 

「もう一回、やり直すとかじゃなくていい」

 

 

 

 

 

 

「ただ——」

 

 

 

 

 

 

「ちゃんと話せる関係でいない?」

 

 

 

 

 

 

その言葉は、

 

 

 

昔の彼じゃ言えなかった言葉だった。

 

 

 

 

 

 

少しだけ、考える。

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

頷いた。

 

 

 

 

 

 

それは、

 

 

 

 

 

 

“元に戻る”じゃない。

 

 

 

 

 

 

“新しく始める”でもない。

 

 

 

 

 

 

 

ただ——

 

 

 

 

 

 

“ちゃんと向き合う”という選択だった。

 

 

 

 

 

 

 

テーブルの上。

 

 

 

 

 

 

二人のスマホが、並んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

画面は、開かれたまま。

 

 

 

 

 

 

 

もう、

 

 

 

 

 

 

 

既読がつかないことに、

 

 

 

 

 

 

 

怯える必要はなかった。

 

 

 

 

 

(完)

初の試みでしたが、いかがでしたでしょうか?


ご購読ありがとうございました。

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