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■JIN短編集■  作者: JIN
3/5

第2話 「既読をつけない理由」

スマホは、見ていた。


 

何度も。

 

 


通知も来ている。

 

 

名前も、表示されている。

 

 

 

でも——

 

 

開いていない。

 

 

 

「……はぁ」

 

 

小さく息を吐く。

 

 

 

分かってる。

 

 

 

逃げてるだけだ。

 

 

 

 

画面を伏せる。

 

 

 

でも、数秒後にはまた手に取っている。

 

 

 

バカみたいだ。

 

 

 

 

『ごめんね』

 

 

 

通知の一文は、それだけ。

 

 

 

短い。

 

 

 

でも——

 

 

 

重い。

 

 

 

 

「……今さらかよ」

 

 

 

思わず、口に出る。

 

 

 

 

あの日のことを思い出す。

 

 

 

「なんで分かってくれないの?」

 

 

 

彼女は、そう言った。

 

 

 

 

正直、分からなかった。

 

 

 

何に怒ってるのか、

 

 

何を求めてるのか、

 

 

どうすればいいのか。

 

 

 

 

「分かってるよ」

 

 

 

そう言ったのは——

 

 

 

終わらせたかったからだ。

 

 

 

 

これ以上、こじれたくなかった。

 

 

 

 

でも、

 

 

 

あの顔を見た瞬間、

 

 

 

分かった。

 

 

 

 

“何も伝わってない”って。

 

 

 

 

 

帰り道。

 

 

 

何度もスマホを見た。

 

 

 

 

何か来るかと思って。

 

 

 

 

でも、何も来なかった。

 

 

 

 

「……あぁ、そっちか」

 

 

 

 

その時、なんとなく理解した。

 

 

 

 

“終わったな”って。

 

 

 

 

 

それから、

 

 

 

何日か経って——

 

 

 

 

今だ。

 

 

 

 

『ごめんね』

 

 

 

 

「……遅ぇよ」

 

 

 

 

小さく呟く。

 

 

 

 

怒ってるわけじゃない。

 

 

 

 

責めたいわけでもない。

 

 

 

 

 

ただ——

 

 

 

 

“今じゃない”んだ。

 

 

 

 

 

あの時なら、

 

 

 

ちゃんと話せたかもしれない。

 

 

 

 

あの時なら、

 

 

 

まだ間に合ったかもしれない。

 

 

 

 

 

でも今は、

 

 

 

 

「……もう、無理だろ」

 

 

 

 

そう思ってしまう。

 

 

 

 

 

返信を打とうとして、

 

 

 

止まる。

 

 

 

 

なんて返す?

 

 

 

 

「いいよ」?

 

 

 

「気にすんな」?

 

 

 

 

どれも違う。

 

 

 

 

どれも、嘘になる。

 

 

 

 

 

だから——

 

 

 

何も打てない。

 

 

 

 

 

既読をつけるってことは、

 

 

 

“まだ続く”ってことだ。

 

 

 

 

でも、

 

 

 

それはもう——

 

 

 

 

「……無理だろ」

 

 

 

 

同じ言葉が、また出る。

 

 

 

 

 

画面を閉じる。

 

 

 

 

 

それで終わるはずだった。

 

 

 

 

 

でも、

 

 

 

ふと手が止まる。

 

 

 

 

 

「……なぁ」

 

 

 

 

誰に言うでもなく、呟く。

 

 

 

 

 

“ちゃんと話したい”

 

 

 

 

あの日、自分が言った言葉。

 

 

 

 

 

「……俺かよ」

 

 

 

 

苦笑する。

 

 

 

 

 

結局、

 

 

 

一番逃げたのは自分だ。

 

 

 

 

 

分からなかったんじゃない。

 

 

 

 

分かろうとしてなかっただけだ。

 

 

 

 

 

でも——

 

 

 

 

それに気づくのも、

 

 

 

やっぱり遅い。

 

 

 

 

 

スマホを見る。

 

 

 

 

『ごめんね』

 

 

 

 

その一文が、まだそこにある。

 

 

 

 

 

指が、少しだけ動く。

 

 

 

 

 

でも——

 

 

 

止まる。

 

 

 

 

 

「……ごめん」

 

 

 

 

小さく呟く。

 

 

 

 

 

それは、

 

 

 

送られないまま、

 

 

 

消えた。

 

 

 

 

 

既読は、つかない。

 

 

 

 

 

それが、

 

 

 

今の自分にできる

 

 

 

唯一の答えだった。

 

 

 

 

             (最終話へ続く)

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