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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第97話 ホワイトデーに豆腐ティラミスをば

 バレンタインは逆チョコになってしまったので。


 ホワイトデーは、万智子がお返しをしようと思ったのだが……覚に先手を打たれてしまったのだ。正確にはおねだりメニューについて。



「これだったら、俺のサポート付きでマチちゃんでも作れると思うけど?」



 と言って、いつものレシピアプリを見せてきたのだが。


 刃物もほとんど使わず、ただ混ぜるだけというお手軽レシピすぎやしないかと万智子は思ったものの。


 ホワイトデーのリクエストということで作ってみることにした。材料はほとんど家にあるもので出来そうだから……狙って作らせるつもりだったかと思うも、それはそれとして。



 材料は、



 粉ゼラチン

 水

 絹ごし豆腐

 プレーンヨーグルト

 砂糖

 レモン汁

 濃い目に淹れたコーヒー

 クッキー

 ココアパウダー



「……これでティラミスできるの??」



 そう、ティラミス。


 覚のリクエストは万智子と二人でティラミスを食べたいことだった。


 洋菓子店でも、コンビニで購入も簡単なのに。『作る』のは至難の業かと思っていたティラミス。


 しかしながら、用意して欲しいよりも『作って』と言われたらからにはやるしかない。それに、リクエストしてくれた覚のサポートもあるのだから多分大丈夫だと踏んで。


 まずは、粉ゼラチンを水適量でふやかしてから、他の材料のほとんどをボウルで混ぜていく。



「豆腐を少し崩してから、ヨーグルトとかを入れてなめらかになるまで混ぜる」

「ふむふむ」



 これにレンチンで溶かしたゼラチンを混ぜたら……クリーム部分は一旦完成。


 次は、クッキーとコーヒーの出番。



「クッキーにコーヒーを浸して」

「べちゃっとしちゃダメだよね?」

「持てるくらいの固さ残しつつ、かな? 用意しておいたグラスの底に敷いて、クリームと交互に詰めていくんだ」

「どのくらいまで?」

「プリンカップだから、三か四の層になるくらいかな??」



 あとは冷蔵庫に入れて、キンキンになるくらい……二時間くらい冷やしたあとに、ココアパウダーで化粧するだけ。



「簡単過ぎる!!」



 使った道具も、ほんとに少しだけ。漬け置きしておいたゼラチンの器以外、ボウル二つとホイッパーにシリコンのヘラ。


 片付けまで楽とか、覚の策略に乗ったにしては甘々な対応ではないだろうか。なので、待ち時間の間に理由を聞くことにした。



「無理してないない。手軽に作れるんなら、マチちゃんのレパートリーも増えるっしょ?」

「それ、後半が本音じゃない?」

「いや? 俺も自分の増やすのにあちこち参考にはしてるよ? それと同じだって」

「むー……そうだけど」



 なんか、もやもやしてしまうの美味しいお菓子が食べられることが出来ても、あんなにも豪華なチョコフォンデュのお返しになるのかといえば……質素過ぎやしないかと思うくらい。


 冷やす以外は時短過ぎるから、覚の得意分野を教えてもらった気にはなるが。


 奥さんとしては、こんな簡単でいいのかと納得しにくいのだ。それだけ、普段から覚に胃袋をがっつりと掴まれているせいもあるが。



「じゃあ、いきなり高難易度のティラミスレシピで作ってって言われて出来る?」



 やはり上には上のレシピはあったようだが。


 作れるかと突きつけられたら……万智子はまだまだ料理については素人なので、正直に首を横に振った。


 それをわかっていたのか、覚は苦笑いするだけだ。



「失敗した方が嫌だから?」

「誰だって失敗はするさ。俺の一等面倒なおにぎり作った話しようか? 実家にいた頃」

「失敗談??」

「そんなもん。ジャガイモの皮あるじゃん?」

「え、うん? おにぎりの話だよね??」

「片栗粉まぶして、揚げたらうまかったんだよ。それをおにぎりに混ぜたら……まあ、最悪な組み合わせになったわけ」

「なんでそんなことに??」

「ガキの発想力ってときには怖いもんだよ」



 それにしては、今の覚からは想像も出来ない組み合わせだ。


 皮付きポテトと米の組み合わせだったとしても合わないだろうに。食材を無駄にしないというか、実験的に作ってみても美味しいとは思えない。


 だが、子どもの頃でも失敗を繰り返してきたという、覚の経験談を聞けたのは少し面白く感じた。



「さとくんの失敗、はじめて聞いたかも」

「お袋も色々やらせてくれてたけど。そのおにぎりについては拳骨されたよ」

「あーね。お義母さんなら、そんな叱り方ありそう」

「親父は一応食ってくれたけどね」

「……いくつの時に作ったの??」

「んー? 小学生の高学年??」



 家庭科の授業でカレーくらいは学んでいるだろうが、食材を無駄にしない家庭環境が逆に仇となったのか。


 ユニークな発想ではあるが、いくら万智子でも食べたいとは思わなかった。


 そして、そろそろ冷え切ったティラミスにココアパウダーを振りかければ。


 デザートの皿に乗せれば、とてもおしゃれなティラミスの完成となった。



「……美味しそう」

「いい出来栄え。味は予想しやすいけど、マチちゃんが作ってくれた事に意味がある!!」

「……それでいいの?」

「いいの! じゃ、食べよう」

「「いただきます」」



 豆腐とヨーグルトがメインなのに、砂糖とレモン汁を加えたことで本当のクリームチーズのようななめらかな味わいと舌触りに。


 合間に、コーヒーを浸したクッキーがザクザクしながらも、甘さをキュッと引き締めてくれるようで素晴らしい脇役になっていた。


 かすかに豆腐の味わいはするが、ほとんどヨーグルトのおかげでわかりにくい。


 前に食べたチョコテリーヌよりも食べやすく、これは時々のご褒美おやつにしてもいいのでは?と思える出来栄えだった。


 そんな風に感じ取れたことにより、レパートリーを増やすきっかけと覚の好みはビターティストなデザートが好みだというのも理解出来たのである。




次回はまた明日〜

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