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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第96話 猫の日から、ツナ尽くしの日に

 あとひと月ほどで、コミカライズの配信が始まる時期になってきたのだが。


 あくせく働くこともなく、少しずつ一歩前進をこなしている万智子に覚が少しばかりの癒しだと、とある場所に連れて行ってくれたのだ。



「いらっしゃいませ~」



 店員だけが出迎えてくれるわけではない。


 足元には、たくさんの『影』があったが怖いものではないのだ。


 むしろ、可愛い影たちばかり。



『にゃ~~』

「にゃんこぉお!!」



 今日は2月22日。バレンタインデーと似た感じで、日本独自の記念日が設けてある。それは、『猫の日』。『2』が猫の『にゃん』と呼べなくもないということで、『にゃんにゃんにゃんの日』とも言われているのだ。語呂合わせとも言うべきか。


 とにかく、万智子は猫の日に、大好きな猫と触れ合える特別休暇を覚にプレゼントしてもらえた。


 今のマンションでは飼えなくもないのだが、『誰かが面倒を見る』『いのちを預かる覚悟』というのを万智子が出来ないと自覚しているため……愛でる範囲でいいからと、飼うのは反対しているのだ。



(今は家にいるけど。再就職はもしかしたら……ないとも言い切れないし)



 毎日の世話が苦じゃなくとも、人間よりも短い生涯を預かることなんて重大な責任を負うことはとてもではないが無理だ。覚も猫や犬は嫌いではないらしいが、実家で昔犬を飼っていたときはそれなりに大変だったと聞いている。


 なので、子どもが出来てからどうするか。まだそれくらいの曖昧さでいい。


 今日は、万智子を癒したいがために猫カフェに連れてきてくれたのだ。



「今日は二時間コース。好きなだけ愛でていいんだよ~」

「ふにゃ~。にゃんこたくさん~~」



 時間制限はあるが、好きなだけ愛でていい。ここは極楽浄土か天国か。どちらも似た意味合いだが、万智子にとってパラダイスなことには変わりない。


 まずは、よく手を消毒してからマットの上に座り……警戒心がないことをアピール。猫たちは客慣れしているので寄ってはくれるが、万智子と覚の様子をしばらく観察。


 そして、うち一匹が万智子の膝の上にちょんっと、乗り出した。



「あら、大ちゃん? お姉さんのお膝借りたの? 撫でてほしいのかな~?」

「だ、大ちゃんって言うんですか?」

「大福ちゃんって言うんです~」

「さ、触っても?」

「リラックスしているので、ゆっくり顎からどうぞ~」

「は~い……」



 ふかふかのグレー一色の猫。スタッフの言う通りに、顎から撫でてみると『ごろごろごろ』と喉から鳴き声を出してくれた。たしかに、懐いてくれている証拠だ。



「お? 俺んとこにも来た」



 覚のとこにはアメリカンショートみたいな柄の細身の子が。


 あぐらの中にちょこんと納まり、同じように触ってやると鳴き声が店に響く。



「餌やりは種類によってお値段が変わるシステムです。いかがなさいます?」

「チュール! ありますか!?」

「ありますよ~? 大ちゃんはカツオが好きなので、300円追加ですが」

「問題ありません!」

「俺のとこの子は?」

「緑ちゃんはささみが好きなので、200円ですね~」

「会計、いっしょにしてください」

「かしこまりました~」



 チュールをあげるときのぺろぺろする姿も癒しそのもので、足の痺れなどどこ吹く風かと思いたかったが。大福が満足して下りたときには、盛大に痺れまくっていてなかなか立ち上がれなかったのだった。



「くっ! 大ちゃん、待って~」

『にゃぁ?』

「なでなで、させて~~」

『にゃぁん』



 言葉がわかっているのかはわからないが、万智子の必死さに頭を手にこすりつけてくれた。それだけで、痺れがひゅーっと取れた気がしたのは癒しの効果かもしれない。


 そんな時間を、わずか二時間でも過ごすことが出来て満足し切った万智子は……帰宅してから、食べたいものが決まっていた。



「……なんか。ツナ使ったものが食べたい~」

「触発された?」

「ぽい~~。なんだろ? ツナ料理って、トーストくらいしか思い浮かばない~」

「ふむ」



 ツナマヨたっぷりのトーストなら朝食向きだが、今は夜手前の夕方。


 夕飯にそれだけでは軽めなのでお腹が空いてしまうだろう。覚も少し考えていたが、万智子が猫カフェの余韻に浸っている間にキッチンでカチャカチャ音を立てながら、すぐに作ってくれたのは。



「マチちゃんの言ってた、ツナトーストに和風ツナパスタ。あと、オイル漬けをあっためたの」



 妻がぼーっとしている間に、ささっと作れる手際の良さ。本日も満点と言いたくなるくらいの出来栄えだった。パスタには普通しめじが多いのに、万智子の好き嫌いを考慮してえのきにしてくれていた。



「「いただきます」」



 ふわふわしていた気分も少し落ち着き、きちんと食事に向き合う。


 和風ツナのパスタには大根おろしが入っていたので、温かくてもさっぱり食べやすく。


 ツナトーストの玉ねぎは辛味が薄くて、マヨネーズとの相性が抜群。オイル漬けについては、スパークリングワインと合わせてつまみにするのが最適解だった。どれもこれもがシンプルなのに、食欲を適度に満たしてくれた。



「いや~。今日は癒されまくった~~」

「俺も動物嫌いじゃないし。今度は変わったとこ行ってみない?」

「変わったとこ?」

「フクロウとかハリネズミとか」

「そんなとこもあるの??」

「関東のあちこちに、あるんだよ。興味ない?」

「行ってみたい!!」



 ただ、後日行ってからわかったことだが。フクロウカフェの餌やりは生肉とかがメインだったので少々グロテスクになった。ふわふわには癒されたが、鳥だと改めて認識して帰宅後の食欲は少し間を置かないと復活しなかったくらいに。

次回はまた明日〜

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