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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第87話 久しぶりのイベント参加にて

 まだまだ数えられるくらいの参加しかしていないが。


 同人誌の新刊を頒布出来るようになったのは、実に一年ぶりと言っていいかもしれない。最後は佐伯と出会ったきっかけだったあの時以来か。


 商業デビューまでの仕事を終えるまで、我慢に我慢を重ねて今日を迎えられたのだ。もちろん、まだ契約内容の仕事をすべて終えたわけではないため、のんびりと過ごしていくわけにはいかない。



「はい。一冊600円です」



 今日は売り子に何故か覚が参加するという、初の試みをしているので少し落ち着かいないが。新刊の内容はTLではなくNLなので、別に気恥しくなる必要はない。稀にだが、恋人とか夫婦で参加するブースもあるらしいから、問題はないのだ。


 ただ、万智子は旦那が女子だらけのイベントの中で浮いていないか、少し気にはなるけれど。



「さとくん。接客慣れてるね?」



 半分を売り終わったところで、少し水分補給を取りながら聞けば。覚は首を傾げながらも自分のペットボトルの蓋を開けていた。



「慣れてるっていうか。バイトしてた頃の名残? 俺一応、レストランとかのホールスタッフしてたから」

「あーね。それでか?」

「マチちゃんはなんかバイトした?」

「ん~。接客はしてないな。塾の講師してた」

「勉強得意だったんだ」

「決まった科目だけならね? 苦手なのは全然ダメ」



 英語はダメだったが、数学や歴史はまだマシな方。それなりにバイト料をもらえるくらいは稼いでいたと思う。なので、ある程度の資金が整ったあたりで即売会のイベントにデビューしたのである。


 とはいえ、頻繁に出せるくらい、新刊ネタも技術も最初はまったくなかったが。それでもここまでこれたのは……オフ会がきっかけでも、覚と出会えたことが大きいだろう。


 最初は緊張したが、愚痴を言える相手になると遠慮も減り……そこから、原稿も見てもらうなどと。結果は、恋人期間が短かったが、夫婦となって今ここに居る。


 その結果は予想外過ぎたものの、満足しているのでなんら問題はない。きちんと式も挙げれたし、夫婦としての次の課題はあるが、そこについてはお互いに無理をしないようにしている。


 子どもが欲しくないわけではないが、健康面などを無理してまで叶えたい夢でもない。


 今はまだ、ふたりだけの生活をきちんとしたいところもあった。区切りとしては、あと数か月で配信開始のコミカライズが始まってからだが。



「お疲れ様~」

「うん、お疲れ~」



 イベント閉幕時間になる少し前に、既刊も含めてだいたいは売れたので撤収作業を始めることにした。途中で、ドミノ・パンが突入してきたのには驚いたが、時間を作れたのがここだけだったらしく……新刊をきちんと買ってからすぐに帰ってしまった。通販もあるが、言ってくれれば郵送するのにと思うのに。そこは本人の意思なのでむげには出来ない。


 突然の来訪があった以外は特になにもなかったため、スーツケースに荷物を詰めてから駐車場まで並んで歩いた。



「寒いなぁ。なに食べたい?」

「ん~。温かいのなら、なんでもいいけど。ちょっと、悩む」

「だよね? イベントの打ち上げも兼ねてだし……つまみも兼ねてなら、あれがいいかな?」

「あれ?」

「チーズフォンデュ」

「マジ!?」

「マチちゃんの最近の包丁使いも安定してきたから。ふたりで準備したら、そんな時間かかんないよ」

「ご飯のためなら、やる気も出た!!」



 スーパーに寄って、足りない食材を買い足してからの帰宅後。


 万智子は指に気を付けながら、ホットプレートで火を通す野菜のカット。


 覚は、フォンデュ用の器に入れるチーズを溶かす工程。そのままピザ用チーズとかを溶かすのではなく、片栗粉を適量混ぜてから鍋の中で牛乳を少量加えて溶かすそう。レシピによれば、白ワインで溶かす方法もあるらしいが、そこは飲む方に回すので今回は無し。


 バケッドも一部はガーリックバターで仕上げ、セッティングが完了したら。



「「いただきます」」



 ホットプレートの上に、耐熱用の器が置かれているが。その中には溶かしたチーズがなみなみと入っていた。周りには、適温に焼いたり温めたりした野菜たちが。肉や魚もいいが、チーズフォンデュは野菜を適度に食べやすいからと……今日は野菜とバケッドだけに。


 フォークで適量絡め、口に運べば至高の出来栄えとしか言いようがない。温度も熱過ぎず、程よい感じだった。



「んま!」

「そこに、すかさず白ワインを軽く!」

「……わ。さっぱり!」

「度数低めにしたけど、チーズと相性よかったな~」



 覚も追うようにしてフォンデュを食べていた。レンチンで軽く火を通したジャガイモとも相性がいいのか、いい笑顔だ。万智子も試してみると、チーズ焼きとはまた違う味わいで頬が緩んでしまう。



「ゆっくり食べれるし、いいね。こーゆーお鍋って言うの」

「野菜もたっぷり食べれるけど。次回は燻製肉とか入れてもいいな?」

「だね。今日はこの感じでいいかも~」



 何故なら、イベントの昼休憩にがっつりと肉巻きおにぎりを食べたせいであまりほしいとはお互いに思っていなかったからだ。


 イベントは戦場。


 完売は最終目標ではあるが、英気を養うにはまず事前準備も大事。


 肉巻きおにぎりにはにんにくは使われていなかったので、口臭には気を付けなくても大丈夫だった。


 満足のいく結果と、のんびりゆったり過ごせる晩酌がいい気分を助長させ。


 万智子は久しぶりに結構飲んでしまい、気が付いたら覚に抱っこされながら眠っていた。またやった……と、夜中に一旦起きたが、いい気分のままではあったから抱き返して寝直すことに。


 翌日も休日だったから、しっかり起きたあとの覚からのリクエストは『洗いっこ』。飲酒したせいで覚も入っていないから……と、万智子は少し恥ずかしかったが、それもまたネタにしようと決める。


 いつもの日常、にまた戻る日が始まるのだ。

次回はまた明日〜

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