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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第85話 推し活は資料費になるかどうか?〜つまみに、明太子ディップを添えて〜

 去年はそこまで気にしていなかったことが一件あった。


 確定申告。


 ドミノのアシスタントなどの給与が定期的に入ってきたのが、主に今年だったため……もう逃れられない。


 万智子は、まず年が明けるまでに整理しようと覚と手分けすることにした。たまたま週末に思い出したので、相談したらレシートからだと部屋の中を確認し始めた……ら。



「おおぅ。これ、資料費になるぅ?」



 レシートの大半は、というより、領収書は主に『同人誌購入費』。


 作家としてのデビューするにあたり、イベントでの直接購入ではなく『通販』がほとんどになったせいだ。領収書と細かい段ボールが山となり、収集日にどれだけタフロープで縛ったことか。その領収書の方が、適当な箱にわさっと入っていたのだ。日付を軽く確認すれば、ほとんどが今年購入したものばかり。



「うーん。まあ、マチちゃんが『漫画家』になるわけだし。同人誌でも自費出版された本に変わりないから……電子書籍のと同じ扱いでいいと思う」

「これでも……これでも、厳選したんだぁ」

「いや、責めないけど? 書籍よりはかさばらないし、本当に欲しかったんでしょ?」

「……うん」



 佐伯との出会いがあった、あのイベント以降新刊も出せていないしイベントにも不参加続き。


 相互フォロワーには曖昧な返答をして、イベントに行けないことを伝えていたが。なんとなく、商業デビューを控えているだろうと察してはいるかもしれない。


 ともあれ、新刊については次のイベントまでには間に合っているので問題ないが……そちらでの副収入扱いもきちんと帳簿につけていたので、データ入力はしなくてはいけないとのこと。


 覚も、WEB投稿でのインセンティブなどについては『広告収入』のような扱いなため、きちんと入力をしているそうだ。その額だけは、親戚の税理士に伝えてあるとか。



「マチちゃんはどーする? 俺も最初の頃は自分でやったけど、一回経験してみる? 確定申告の面倒さ」

「……そうだね。今回は、頑張ってみる!」

「んじゃ。入力用のエクセルファイルは貸してあげるよ。やり方教えたら……嫌になるかもだけど、ひたすら入力していくこと」

「う、うん」

「俺はその間に。晩酌込みの夕飯を作るから」

「晩酌!?」

「ちゃんと頑張ったご褒美くらいは用意するとも」

「わーい」



 ただ、ここからが大変だった。


 普段から、文字打ちに慣れていない万智子がカタカタするのは覚と比較するまでもなく遅い。しかも、領収書と交互に画面を見て打つという作業にも慣れていないため、ちまちました動きになるのも仕方がなかった。


 結果、半年分のところで覚に呼ばれたため、今日は打ち止めするしかなかった。



「は~い? 今日は今日でお疲れ様。ほろよい晩酌セットだよ」

「ぉお~~……」



 メインは以前に作ってくれた、コトコト出汁スープ。


 主食はバケットだが、添えてあるのはピンクのディップ。つまりは、女子の大半が好む明太子のディップだ。明太子の値段はたしか生鮮食品だとそれなりに高いのに、わざわざ買ってくれたのか。



(労わり過ぎだよ……)



 万智子はただ、データ入力をちまちまとしていただけなのに。このご馳走は反則的過ぎる。また明日から頑張れる気力が湧いてきてしまうではないか。



「「いただきます」」



 コトコトスープについては、寒い季節になったのであったかい料理は身に沁みる。熱くないのに、ふんわり優しい温度は胃袋を労わってくれた。やわらかな野菜たちのほろほろ加減も抜群。


 ジューシーな肉たちとのハーモニーも相変わらずの仕上がりだ。ここに、軽く微発砲のワインを添え……待ってましたと言わんばかりに、明太子ディップをバケットに。


 クリームチーズかと思ったら、もっと滑らかでさわやかな味わいのクリームと混ぜてあった。覚えはあるのだが、どれだったかまでは当てられない。



「ん~~? これ、食べたことあるけど。わかんない??」

「正解はサワークリーム。酸味のあるやつだよ」

「あーね。思い出した。前はポテチ爆買いしてたやつに入れてたのに」

「久しぶりに食べて満足?」

「クリームチーズもいいけど、舌触りがいいね? 明太子のぷちぷち感とマッチしてる!」



 ひょいぱく、と食べそうになるがバケットの数はそこまで多くない。追加してもいいよとか、覚は言いそうだがそこは我慢だ。


 まだデータ入力は全部出来ていないので、もう少し頑張りたい。ワインもそこまで飲んでいないこれくらいなら、なんとかなると思っていると。


 いつのまにか、寝てしまったのか。はっ、としたら、ベッドに寝転がっていた。隣に覚はいない。



「起きた?」



 ベッドを見ると、覚のではなく万智子の部屋のベッド。組み立て式のそれに運んでもらったのか、PCには覚が向き合っていた。手元にはまだ残っていた同人誌の領収書たちがある。



「え? まさか、残り全部??」

「ちょうど、今終わったとこ。いやまあ、資料代にしてはぼちぼちな金額だね?」

「……怒った?」

「いや? 俺も電子書籍爆買いしてるから、他人のこと言えないし?」

「あ、そっか」

「項目が違うだけで、資料代にしていいんだよ。大丈夫」

「うん……」



 まだ確定申告の提出期限ではないので、今日はこれくらい。


 明日以降は、ほかの項目を埋めていく作業に移ればいい。覚も疲れたと口にしたため、今日は引っ越してきてからはじめて万智子のベッドで共寝することになった。狭すぎて落ちそうになるが、がっしりと抱きかかえられなかったので最初はうまく寝付けなかった。


 しかし、日々の疲れがすぐに出たのかで、またすよすよと互いに眠ってしまったのである。

次回はまた明日〜

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