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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第82話 胃もたれに、釜揚げしらすの卵おじや

 きらびやかな時間は終わりを迎え、日常に戻ろうとしていたが。


 今日からまた、万智子も覚も仕事を再開しなくてはいけなかった。万智子は在宅ワークでいいが、覚は午前休を取ってからの出勤。


 少しだけ寝坊した時間に起きて、コーヒーメーカーで作ったコーヒーに牛乳を足す甘くないカフェオレを作った。


 お互いまだパジャマで、椅子に座ってからマグカップ片手にぼーっとしてしまう。


 無理もない。あの夢のようなイベントからまだ半日と少ししか経っていないのだから。



「……ひと段落ついたねぇ?」

「うん。……終わったねぇ?」



 元から入籍して三年目ではあっても、きちんと結婚式を挙げることが出来たのが昨日。


 両家を招き、参列者も親しい人たちを集めたこじんまりとしたレストランウェディングではあったが。充実した時間を過ごせたのは本当。二次会も同じ会場にしたため、さらに満足したのは言うまでもない。



「……ご飯、どうする? 俺、そろそろ食べないと支度あるし」

「軽くでいいかな? ……実は、胃もたれしてて」

「わかる。二次会でたらふく食わされたしな? 築城先生に盛り付けられた……」

「私も、みぃたんに……」



 そして、手づくりのウェディングケーキを軽いホールくらい切り分けられたため。食事よりもそっちで満腹以上に胃もたれになったのだ。


 それは覚も同じなのか。冷蔵庫の中身を確認してから、すぐに包丁でなにかを刻む音が聞こえてきた。



「軽くなら、雑炊とかおじやにしようか?」

「お、いいね? 卵の?」

「そう。それに、釜揚げしらすが結構残ってたから、仕上げに入れるくらい」

「いいねぇ? 今何切ってんの??」

「ネギが痛みかけてたから、刻んでタッパーにいれようかと。少しは使うし」

「ほーほー」



 甘くないカフェオレを飲み干したあと、少し作り方を見ようとキッチンに回ったら。もう卵を割って鍋に入れようとしてるところだった。



「ふわふわ卵のコツを知りたい?」

「……温そうめんのように、混ぜ過ぎない感じ?」

「それでもいいけど。とろとろ仕立てだと、菜箸でぐるぐる。かきたまにしたいなら、さっくり混ぜる感じかな?」

「むむ。違いがあるんだ……」

「今回は胃を労わりたいし、とろとろ仕立てだね」



 鍋の中身をくるくるかき混ぜていくだけで、たしかにとろんとした卵が出来上がっていく。


 そこに、釜揚げしらすと刻みネギを加え。仕上げに、もひとつ、と、ごま油を足して完成だそう。



「ちょい、香ばしさもプラスしてみました~」

「美味しそう~」

「「いただきます」」



 出来立て熱々なので、スプーンですくっても息を丁寧吹きかけて。


 ぱくっ、と、端から食べてみると。味わいは白だしだとわかるのに、ごま油の風味としらすの淡い塩味が絶妙過ぎて……胃腸が昨日のせいで疲れていたはずが、ぐぅ、と音を立てて動き始めて気がした。


 つまり、とても優しくて美味しいおじやである。



「はふっ。……釜揚げしらすって、ご飯に乗せるイメージしかなかったから。煮込んでもいいんだ?」

「じゃこはあんまり得意って言ってなかったでしょ? これなら食べやすいんじゃないかなって」

「うん。風邪のときとかにも食べたいくらい」

「あんまり引いてほしくないけど。ま、覚えとくよ」

「うん」



 そして、軽く済ませるはずなので、お互いに一杯ずつのはずが。


 意外にぺろりと食べれたため、鍋の中身を空にするくらいそれぞれ調子が戻ったのだった。



「今日は午後から出勤だし。腹いっぱいになったから、ちょうどいいな~」

「私も今日は少し原稿進めたいし。夜どうする?」

「マチちゃんはがっつりとかにしたい感じ?」

「……何故、わかった?」

「原稿がひと段落したら、結構お腹空くっしょ? 俺も自分の原稿明けは、色々がっつり食べたいし」

「……じゃあ、内容はお任せするので。お願いします」

「おk。そこんとこは任せて」



 美味しいものを食べれば、気力も快復するとは本当のことだった。


 温かい食事を口にすれば、そのあとの予定も立てやすい。


 万智子はそろそろ、ストックが貯まりつつあったので、佐伯とも連携して次の段階に移らねばならない時期だったから……しっかり、食べたかったのは本当。


 以前、リクエストした天津炒飯みたいなのでもいいし。なんなら、勝負に勝つとかにあやかってカツ丼でも食べたい。時短ではないにしても、最近の覚のレシピは色々こだわりがゆるくなってきたせいか……少し凝った料理を振舞ってくれるようになったのだ。


 無理をしてないか気になったが、楽しんでいるのなら邪魔したくない。


 主婦にあるまじき発言かもしれないが、どれもこれも美味し過ぎて相変わらず胃袋を掴まれたまま。それに甘えなければ、原稿も頑張れないとクリエイターとしては少々情けない。


 しかし、ふたりの合作になる『コミカライズ』は本当に待っている読者がいると信じて……少しでも早く、世にだしたかったのだった。

次回はまた明日〜

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