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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第80話 レストランウェディング開幕

 結婚式当日。


 ついにその日を迎え、万智子はガチガチなくらいに緊張していた。


 プランナーから紹介されたメイクアーティストに、フルメイクとヘアアレンジを施されるのに……レストランの個室のひとつを借りていた。


 覚もタキシードに着替えて、ヘアアレンジくらいはちゃんとされているのだろうか。それくらいは、新郎としての装いなのでなんら問題ない。


 ただ、リハーサルもしたけれど。万智子のドレス姿を招待客の前できちんと披露出来るかが心配だったのだ。リハーサルでは覚とスタッフだけだったので、ほぼふたりきり。客がいないのを想定に行ったので、そこまでは緊張しなかった。



「はい、万智子さん。出来ましたよ」



 メイクアーティストの里中が目を開けるように言ってくれたので、正面にある姿見をきちんと見ることにした。


 『目を開ければお姫様~?』な謳い文句がどこかで聞いた覚えはあるが、まさしく、鏡に映っている女性は『可憐なお姫様』に仕立て上げられていた。いつもはひとつに縛るだけの万智子の髪もきれいにまとめ上げられ、適当メイクなんてもんじゃない上品な化粧が施されていた。


 ぱちぱちと瞬きしなければ、これは別人か誰かをすり替えたのかと思うくらい。自分にそんな魅力はないと思っていたのに、まさかまさかの大変身だった。



「……私、ですか?」

「はいっ。肌艶すっごくおきれいなので、アイシャドウとかも控えめにしたんですよね?」

「え、はい? ありがとうございます……」



 肌艶については、おそらく覚が作ってくれる毎日の食事のおかげだろう。どこかの番組かSNS情報だが、化粧水程度の手入れをしていない万智子の場合はそちらが重要になっているかもしれない。



「里中さーん。新郎さんの準備出来ました~」

「あ、はーい。新婦さんもちょうど今完了しました」



 スタッフ同士のやり取りに、軽く肩が跳ねたのは仕方がないと思う。きちんとした覚の装いを見るのなんて、これが初めて。いつもは眼鏡以外はラフな格好ばかりなため。


 写真のときもしっかりした衣装を着ていたにしても、そこまで『着飾る』ことはしていなかった。だから、リラックスして写真が撮れたと思う。


 里中からは『大丈夫ですよ~』と励まされても、後ろを振り向く勇気がなかなか持てない。


 扉の開く音と同時に靴音がこちらに近づくのがわかって、緊張がさらに増していく。



「……マチちゃん、きれいだよ」



 耳元で囁かれたので、ふ、と、そちらに振り返れば。眼鏡をしていない覚の笑顔がそこにあった。今日のために、わざわざコンタクトをしているのか。それにしては、髪型と軽いメイクだけで……こんなにも『かっこいい』旦那に変身するとは予想外。


 メイクアーティストはやはり、素材をうまく活かす技法をお持ちなのだろう。



「……さとくん、も。かっこ、いいよ」

「どーも」



 少し緊張がほぐれたのか、互いにくすくす笑い合う余裕が出てきた。


 里中たちは端に移動して見守ってくれていたのか、こちらもにこにこ笑っているだけだ。



「もう、移動?」

「うん。母さんたち、一応控室に来たみたい」

「ああ、美和さんたちも?」

「うん。マチちゃんのお母さんも」

「……そっか」



 入籍したときは、それぞれの家に婚姻届けの同意書欄に書いてもらうのに出向いただけ。


 なので、母同士はリモート挨拶以来、特に面識がないのだ。


 富山からと、愛知から。


 どんな話題で語り合っているのか、気にはなるし心配にもなる。


 世代もそこまで変わりないはずだから、ズレも少ないだろうが……そちらの待合室に行くと、少し騒がしい声が外まで聞こえてきた。



「まあ、ねぇ? お互い似た者(?)同士ですし?」

「いえね? うちんとこが年下でしょ? 息子さんはようけしっかりしてはりますわ」

「そうかね? 末っ子だけど、上を見て育ったようなもんで」



 既に意気投合しているのか、母同士の大声が響き渡っていたのだった。



「失礼いたします。新郎新婦のご用意が出来ました」

「「あらそう?」」



 ハモるくらいに、やはり仲良くなったのだろうか。今後の交友も気になるが、とりあえず両家挨拶をきちんと終えてから披露宴会場であるレストランのホールに向かわなくてはいけない。


 親しい者同士。立食パーティー風の料理をたくさん用意してもらったので、千郷とかは今頃堪能しているのか。


 ともあれ、家族の前でウェディング用のドレス姿を見せたら……母たちは感極まったのかはらはらと泣いてしまった。



「……お母さん?」

「お袋、そんな?」

「そんなもんと言わんとかし!」

「化けるとも言わんけど……娘がきれいになんのに感動しない親がいないわけないやろ?」



 美和と敏也は軽く拍手しているが、表情はそれなりに緩んでいた。前回の食事会と違って、そこそこ整えているから少し別人に見えたのは少し内緒にしたいくらい。



「では、お母様方のお涙が落ち着きましてから、会場へ移動しましょう」

「「もう止まったです」」

「あ……わかりました」



 強がっているのか、そうでないにしても。いつものように振舞えるくらいには落ち着いたのか。


 このあと、いよいよ結婚式の開幕となるのだ。

次回はまた明日〜

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