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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第78話 病み上がりには、たっぷり水餃子スープ

 一晩で風邪はだいぶ回復したが、まだまだ休んでいた方が良いと覚に言われたため。


 朝ご飯と薬を服用したら、次に起きた時はもう夕方。


 それだけ、コミカライズの原稿を無理してまで進めていたことと、体力の割合が釣り合っていなかったのだろう。


 しかしながら、それなりに空腹になったため、適当なものでも口にしないと薬も飲めない。



「あららぁ」



 冷蔵庫を開ければ、いつもよろしく常備菜のタッパーが勢揃いしているが。病人用にと、冷菓であるプリンやゼリーの器がたっぷりと。コンビニではなく、大量買いしやすいようにドラッグストアまで車を向けたのだろう。


 本当に、気遣い上手な旦那様である。


 とりあえず、プリンもいいが具材ゴロゴロのフルーツゼリーを食べることにした。



「ただいま〜」



 ゼリーを食べ終えたあとくらいに、覚が帰宅してきた。ガサガサとマイバックが擦れる音が聞こえてきたので、何か足りない材料を買い込んできたのか。


 返事をしてあげれば、『ん?』と、玄関から覚が顔を覗かせてくる。まだ万智子が寝ていたのだと思ったのだろう。



「さっき起きて、ゼリー食べただけだよ?」

「あーね? どう? 気分は」

「頭痛とか気持ち悪さはないかな?」

「ならよろしい。今日も少し消化に良さげなメニューにしてみようと思ったんだ~」



 と言って、マイバックから取り出したのは冷凍食品。普通なら『焼き』に多いはずのそれが全然違うパッケージになっていたから驚きだ。



「……水餃子??」



 久しく食べていないそれを、万智子は想像してみた。


 熱々のスープに浮かぶ、餃子の塊たちは魅力的な料理でしかない。


 野菜もあるだろうが、熱々とろとろだとスプーンで崩れてしまうだろう。それは餃子も。


 その食べたい、という気持ちが顔に出ていたのか。覚は軽く万智子の頭を撫でてからキッチンに行った。



「少し待ってて」

「……部屋で大人しく待ってまーす」



 まだまだ病み上がり以上に変わりないため、ゆっくりと養生するしかない。水分補給のため、スポドリではなく麦茶のペットボトルを取ってから部屋でぼんやりしているくらいでちょうどいい。


 怠さは軽減できていても、久しぶりに大風邪を引いたことに変わりないのだ。原稿が多少遅れてもいいのは、佐伯にも連絡済みであるし……今日も一日はほとんどベッドで寝ていた。きちんと、覚の言いつけは守っていたはず。


 何回か、麦茶で喉を潤していると。またうとうとしかけたが、ノックの音で目が覚めた。



「起きてる?」

「……うん。もう出来たの??」

「野菜はレンチンしてから煮込んだんだ。中華スープ仕立てにしたよ~」

「食べるっ」



 うどんの出汁もいいが、中華スープのあの優しくも濃い味付けは大好きだ。鶏がら出汁でコトコト煮込んだ野菜に椎茸が入っていなければ、万智子も今なら食べられる。きくらげはまだ試していないが、くにくに具合ならしめじと同様で八宝菜も食べれるようになるだろう。


 とにかく、味付けとしては大変好みの部類なので、トレーを置いてもらうと湯気の下には丼が置かれていた。


 水餃子が五、六個くらいと根菜類に青菜とかがとろとろに煮込まれたスープが。


 レンゲが用意してあったので、手を合わせてからまずはスープを口に運ぶ。



「どう? 濃過ぎない?」

「濃いめだけど、優しいよ~。求めてたジャンキーさもあって……あふっ」



 レンチンしたというにんじんなどの根菜類は、歯でかむ必要もないくらいにほろほろとした仕上がり。青菜は青梗菜ではなくて小松菜だがしゃきしゃきよりはとろとろしている。スープも、仕上げに水溶き片栗粉を入れたのかでわずかにとろみがあった。


 そこに、ひと口では頬張り切れない、水餃子を噛むと……ぷりっとした皮の歯応えのあとに、じゅわっと、内側から肉汁の洪水があふれてきた。熱いが、きちんと『肉』を食べている感覚が堪らない。


 誰も取らないというのに、昨日もだが、朝以来まともに食事をしていない万智子には待ちわびたご褒美とも言えるご飯だった。


 これなら、いくらでも入ると言わんばかりに食欲も戻ってきた気がする。



「焦りなさんな。もう一杯分は作ってあるから」

「……さとくんも食べないの?」

「俺は適当に済ませるから、気にしないで? 食べたいもの、他にない?」

「いいの?」

「もちろん。風邪関係なく、リクエストは聞くよ。節約も今は気にしないでいいって」



 あと少しで、結婚式の日取りが近いと言うのに。


 ちょっとでも、節約した方がいいと本心では思っているのに。


 ほんのちょっと、心とからだが弱ったせいか、その言葉が酷く心に沁みていく。


 まるで、覚の作品で得意とする『治癒魔法』のようなそれに。


 コミカライズ原稿も、二日とは言え停滞したままなのに、誰も彼もがとても優しく接してくれている。涙が出そうになるのを堪えた万智子は、まだ残っていたスープを飲みながら誤魔化した。


 泣くことで、逆に宥めてもらうのは大違いだからと。



「そうだなあ? あれ食べたいな。さとくんお手製の天津炒飯」

「いきなり、濃いもの? まあ、食欲戻っているし。熱も下がっているから、大丈夫かな?」

「ちゃんと、明日は昼ご飯になるの。適当でも食べるからさ?」

「起きてからの様子見もしなよ? 結婚式に合わせて、今は有給取れないようにしたからごめんだけど」

「そんなことないよ」



 これだけ、尽くしてくれている旦那様がいるのだから、それ以上の望みはない。


 まずは、食欲もだが体調も落ち着かせなくては……と、水餃子スープを二杯とも完食し、今日もお風呂は避けてしっかり寝た。


 翌日には、怠さもさらに軽減した感じだったため、昼ご飯は久しぶりに温そうめんパスタを作ることが出来たくらい。覚より若いとはいえ、免疫力はまだちゃんと働いているのだなと、実感したのだった。

次回はまた明日〜

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