第76話 レンタルドレスに悩む。合間に、揚げシュウマイ
ドレスとひと口に言っても、色々ある。
フォーマルなものから、カジュアルなものまで。
レンタルするにしても、それは同じだ。
メインのレストランウェディングで着用予定のドレスと、二次会用のドレスを同じにすべきか別々にすべきか。
値段はともかく、それを選ぶのにネットのカタログを見ても非常に悩んでしまう。仕事の合間に見ていても、どれがいいのか万智子は自分でわからなくなってきていたのだ。
「色も迷う~~。デザインによって、印象変わるからぁあ」
普段もそこまでお洒落をしないため、いざ着飾るとなれば悩むのも仕方がない。フォトの和装のときは、覚との話し合いもあったから出来たこと。今回もそうしようとしたが、せっかくなら自分で決めるのも有りなのでは?と、指摘された。なので、自分なりにカタログとにらめっこしているわけである。
「決まらん」
結論、やはり自分ひとりでは決められないため、覚の意見も取り入れたいことになった。
覚の帰宅までに、気分転換も兼ねて軽く家事を済ませ、米も炊く。
そのあとに、今進めている原稿にとりかかっていたら、その時間になったのだ。
「……決まんないか?」
「……難しぃ」
「色とかで限定しても?」
「えぇ? さとくん的には?」
「和装で紫着ちゃったし、それ以外?」
「……だと、グリーン系?」
「うん。いいんじゃないかな?」
それだと、着てみたいものがあったのと、価格もお手頃だったのを思い出した。自分のタブレットを持って来て、これ、と告げればいい笑顔になってくれたので問題ないと決定。
実際に申し込みするのは明日以降にして、今日はもう夕飯づくりに取り掛かることになったが。
覚がメインに取り出したのは、冷凍庫に入れてあったジップロックのひとつだ。
「あ、シュウマイ」
冷食でも、覚の手作り。大ぶりのシュウマイは、気が向いたら大量に仕込んで一部は冷凍しておくようにしている。これを適度にレンチンしたら、蒸しシュウマイ風になるので……万智子のために冷凍分は余らせてくれていたのだが。
「今日は趣向を変えたメインにしようってね」
「どんな?」
「揚げちゃう」
「揚げシュウマイ!」
「ただし、軽く解凍して……バッター液につけて揚げちゃうんだ~」
「串カツの感じ?」
「そっそ~」
小麦粉。
卵。
少量の水。
パン粉。
油。
これで、揚げシュウマイを作ってくれるのだと言う。串カツは前にミニ串揚げパーティー風な夕飯にしてくれたこともあるので、作り方を見ていたのだ。
菜箸を使って、コロコロと油鍋の中で転がすように揚げていけば。きつね色がきれいな、揚げシュウマイの完成だ。
そのままでも美味しいだろうが、万智子にポン酢や塩の準備を頼んできたので他のセッティングと同じタイミングに用意した。
「「いただきます」」
揚げ餃子もあるのだから、揚げシュウマイもあることは知っていたけれど。
串揚げ風に仕上げるのは盲点だった。ソースにつけても美味しいかもしれないが、さっぱりと食べるのも有りなのだろう。
少しだけ塩をつけて、まずはひと口かじりついてみる。
「あっふ! あっつ~」
「そりゃ出来立てだしねぇ?」
「けど……塩と合う~。スナックみたい」
「ホットスナックには違いないね? うん、ポン酢だとさっぱりだ」
「実にギルティな食べ物だ」
数年前ならともかく、最近の創作料理は特に奇抜なものが多い。
冷食やインスタント食品もだが、『こんな組み合わせ』というものが多過ぎるのだ。
万智子も覚も、コンビニを利用することはするので、たまにはあのチープな味わいのするホットスナックを買ったりもしている。
そんな感じのおかずが目の前にあるのだから、味わって食べたいのに箸が止まらないのだ。あちち、と言いながらも口も咀嚼するのを止められない。
さっくりとした衣には塩かポン酢で。その下のシュウマイには既に濃いめに味付けされているから、食感とともにゆっくりと味わう。ふたつを組み合わせたことで、飲みもいいが米も非常に進むのだ。ワンバウンドさせて、交互に食べると頬が自然と緩んでしまうほどに。
「素揚げでもいいかもだったけど。衣があった方が、やっぱりいいね? 食べやすいし」
「少しのひと手間でこうも姿を変えるのは面白いよね~?」
「マチちゃんのドレス姿も、どれでも似合うは失礼だから……ごめんね? 悩み増やして」
「いやいや? 優柔不断だった私も悪いし」
いきなりドレスの話題に戻ったので驚いたが、万智子の悩み方が深刻に見えたせいもあるかもしれない。
たしかにめちゃくちゃ悩んではいたが、覚のアドバイスもあったおかげであのデザインを思い出したくらいだ。逆に、今回も助けられたと言っていい。
「……女の子って、おしゃれに口出ししてほしいとかでも。反論するとかあったしさ?」
「……今までの彼女さんたち?」
「そ。聞いても適当に褒めたら、そんな感じになってた。マチちゃんは全然違うからさ? ちょっと心配になってたんだ」
「そう? 色々言ってくれた方が、こっちとしてはありがたいけど」
万智子のあやふやな考え方を、すっきりとまとめてくれる覚の存在は大きい。
結婚式の内容も、手順もそう。
レストランウェディングなんて、考えもしなかったし。万智子の負担を少しでも軽くしたいと考えてくれるのは非常にありがたいと思っている。それゆえ、無理しているとかは全くないのだ。
「いや~。そう言ってもらえると俺も安心できるね?」
「これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ」
なので、少しずつ、準備は進んでいくのだった。
次回はまた明日〜




