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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第71話 アレンジ大なタルトカップを

「あ」

「おん?」



 休日のとある日。


 原稿で引きこもりがちな万智子と覚が商店街に、散歩ついでの買い出しに行っていたのだが。製菓店のひとつを通り過ぎる前に、覚が足を止めた。


 お菓子屋と言っても、材料が並んでいる専門店という感じ。料理を趣味にしている覚の興味を引くなにかがあったかもしれない。彼のあとに続くと、万智子はそれを見て首を傾げた。



「これこれ。なかなか売ってないんだよなぁ?」

「……なんの、材料?」



 道具にも見える、器のようなもの。素朴な茶色のカップにしか見えない。形も丸、星、ハートとあるが。なんのお菓子に使うのか、料理をあまりしない万智子にはさっぱりだった。



「これはタルトカップ。ほら、友チョコとかでチョコ流し入れて固めたとかでも見かけない?」

「……残念ながら、銀紙のでしかもらったことがないんだ」

「用途は似てるよ。違うのはこれも食べられるということ」

「おお!」



 要は、食べられる器ということ。それには物凄く興味が持てた。しかし、まだ秋なのでバレンタインには遠いが、なにかに使おうとしていたのだろうか。



「甘いものもいいけど。つまみにも使えるんだよな?」

「え? お菓子の材料で?」

「クリームチーズとかで、味付け変えれば出来たりもするし。マリネでデコっても美味しいよ」

「……美味しそう」

「んじゃ、ふたつくらい買って。甘いのといっしょに作ろうか?」

「お~」

「マチちゃんは、原稿の続きあるんでしょ? 差し入れついでに、おやつ用は先に作ってあげる」

「感謝!」



 間食を滅多にしなくなった万智子たちだが、甘いものを避けているわけではない。


 休日に出かけるときがあれば、カフェとかでお茶をしたりすることもある。今日は買い出しついでの散歩だったが、タルトカップを買ったのでお茶は無しになった。


 代わりに、どんなタルトを食べれるか非常に気になる。その店で足りない材料を買ってから帰宅し、万智子は早速仕事に取り掛かった。



(なんだろうなぁ? タルトだから、チョコ? レモン? チーズ??)



 色々浮かぶが、覚の作るものならどれも美味しくて当然。


 機材の起動をしてから、グローブをはめて専用のペンを持つ。ペンだことかができやすいため、万智子はグローブをしないとすぐに指などがこすれて腫れるからだ。


 佐伯からの指示は、次の下絵を起こすところから。


 プロット、ネーム、清書の順に進めることも出来なくはないが、万智子の場合、まだまだ画力が少女向きになってしまうため……三話目までは、下絵も挟んだスケジュールで進めているのだ。



「マチちゃん。出来たよ~」



 帰宅して一時間も経っていないのに、もう差し入れのタルトが出来たらしい。


 部屋に入ってきてもらうと、小さい皿に盛り付けられているのはたしかに『タルト』たちだった。おやつということもあって、具材と焼いたもの。ぱっと見はベイクドチーズケーキのように見えた。



「わぁ~」

「しょっぱいのは晩酌用にと思ってさ。今はチーズケーキぽくしてみた」

「ありがと~」

「コーヒーもすぐに持ってくるから、食べてていいよ?」

「せっかくだから、コーヒー待つよ」

「ちょっとだけ待っててね」



 宣言通り、すぐに戻ってきてくれたのでマグカップを受け取ってからグローブを外した。機材をスリープモードにして、覚には念のため見られないようにした。


 本当は見てもいいのだが、佐伯経由でしか見れない契約なので、そこはきちんと守らなくてはいけない。


 それもだが、三つくらい乗ったタルトはひと口では食べきれないほどのサイズ。小腹を満たすにはちょうどいい感じだった。



「いただきます」

「召し上がれ」



 タルトカップは初めて食べるが、ケーキのタルトと同じようなサクサクしたクッキー生地に近いものだった。内側はまだほの温かいベイクドチーズケーキの味わい。ひと口咀嚼したあとに、コーヒーを飲めば……至福の時間だと実感した。



「美味しい~。さっぱりしてるし、カップのサクサク感がちょうどいいね?」

「ムースとかチョコ。ゼラチンと果物使えば、ピンチョス系のデザートにもなるよ」

「おお、豪華そう」

「それはまた今度にして。今日の晩酌には、クリームチーズとスモークサーモンのつまみタルトにする予定」

「ぐ。魅惑の組み合わせ!!」

「その前に、ご飯は具沢山のミートソースパスタ。そのときは手借りたいけど、出来そう?」

「うん。〆きりはまだあるし、気分転換に手伝いたい!!」

「おk。じゃ、ごゆっくり~」



 覚も仕事というか、休日は平日にあまりかかりきりになれない『WEB投稿』や原稿の改稿作業があるのに……こんな美味しいおやつを用意してくれるのだから、本当に出来た旦那様だ。


 結婚式についても、候補の店を探すところからまだなかなか決まらないため。次は、プランナーさんとやらに協力をしてもらうことを始めた。ドミノの伝手で事務所を紹介してくれたため、ふたりで今度行く予定も決まっている。


 ささやかだが、精一杯の会場になるために。


 招待する人数もぐっと減らすとか色々あるが、楽しい結婚式と披露宴にしようと思っている。そのための費用にはならないが、今手掛けている仕事がこれからの生活に役立つようにもしたかった。


 タルトをまたかじり、コーヒーを流し込む。


 完食してから、グローブをはめて作業に戻るときはやる気に満ち溢れていた。

次回はまた明日〜

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