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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第65話 失敗からのアボカド天へリスタート

 大袈裟なくらいに、失敗してしまった万智子は……覚に思いっきり謝罪したくなった。



「さとくん、ごめんぅううう!!」



 実際にはいないのでひとりごとになってしまっているが、謝らずにはいられなかった。


 せっかくの食材を、無駄扱いしてしまったのだ。それも、リメイク不可なくらいに。


 張り切って、揚げ物の料理をしようと試みたのが愚かなことだったと、今更自覚したのである。基本的に、レンチン、湯がきなどのインスタント食品しか調理しない万智子が。


 少しだけ、仕事のコツを掴んできたと思えてきて。それなら、普段のご飯のも少し挑戦してみようと意気込んだのだ。


 結果、何故かいきなり高難易度でもある『天ぷら』に挑み、キッチンをめちゃくちゃにしてしまった。


 料理初心者にはよくある、『片付けはあとでいい』『うまくいけば御の字』を表現したような惨状。


 おしゃれに、アボカドでフリットのようなものなら、天ぷらでも簡単だろうと挑んだら……割るときに軽く指を切ったり、種を抜くのにも苦戦したり。最後は形もまばらで衣もべちゃべちゃ。油もぎとぎとになってしまった。料理の『り』の字の証明にもなっていない出来だ。


 そして、手の手当てをしてから片付けに挑もうとしたところ、もう玄関から鍵を開ける音が聞こえてきた。


 当然、万智子がとった行動はひとつ。



「大変申し訳ございませんでした……」

「うん、まあ。この匂いでなんとなくわかったけど……」



 結婚二年目でも、ノリの悪い旦那でないのが幸いだ。無闇に叱りつけてくることもないし、ガミガミと責めたりもしてこない。


 ただし、キッチンの惨状を見たら……いくら、温厚な男性であれ、固まったように一瞬動かなかったが。



「ほんとーに、ごめん!! 調子乗ってた!!」

「……いや、まあ。逆に、すがすがしいくらいだけど。絵に描いたようなキッチンの惨状って」

「……指もいくつか切っちゃった」

「は? 手、怪我した!?」

「ひょ!?」



 キッチンのことよりも、万智子の怪我についての反応が大きかった。


 そこまで、ざっくり、と怪我をしてはいないものの。数か所指を切った手を見ると……絆創膏の数を見て、思いっきり落ち込んだ。こんな表情みたことないくらいに。



「……マチちゃん。しばらく、レンチン以外禁止」

「あ、うん?」

「俺もだけど。漫画描く大事な手でしょ? いっしょに仕事しているんだし、無茶は厳禁」

「……はい。さとくんのラノベでも使うもんね」

「とりあえず……片付けと同時に油をきれいにするか」

「出来るの?」

「見てるだけだよ?」

「……はい」



 油鍋に火をかけ、ちりちりの汚れで濁った油が泡立っていく。


 そこに、覚が掃除用の洗剤でも入れるのかと思いきや……入れたのは、炊飯器から少し取り出したご飯。


 さっ、と入れれば、あぶくがご飯に集まって揚げられていくように見えた。



「プロの和食料理人も使うっていう裏技」

「きれいに、なるの?」

「米の粘着質に引き寄せられるとか、だったかな? 理屈はちょっとわすれてたけど。かりかりになるまで放置。その間に片付けるから」

「……おぉ」



 万智子はじっと、してなくてはいけないので鍋の様子を見続けていたが。たしかに、ご飯がカリカリになるにつれて油の灰汁みたいに広がった汚れが引き寄せられていく。


 そして、黄色の美しい油が隙間からどんどん見えてくるのだ。IHコンロと調理台が覚の手できれいになった頃には、完全手前なくらいに油の中身もきれいになった。



「ん。この米は廃棄物になるから食えんけど」

「……油が元通り」

「アボカドまだあった?」

「あ、うん」

「んじゃ、手本見てて」



 出入り禁止とまでは言われなかったが、覚のゆっくり丁寧な教え方を見ていると……少し、泣きそうになった。


 一応主婦なのに、料理もほとんど出来ない女を馬鹿にしたりしない。


 何度も挑戦する機会をくれて、何度でも優しく丁寧に教えてくれる姿勢が嬉しかった。


 夕飯に、アボカド天だけだとお腹には溜まりにくいので、ほかに野菜などで揚げれそうなのも天ぷらに。



「「いただきます」」



 血は止まっているので、箸で天ぷらをつまむ。塩をちょんとつけてかじると……果物とは思えないクリーミーさに加え、ほくほくとした食感が堪らない。


 野菜室で眠っていた大葉はぱりぱり仕上がり。ちくわはウィンナーを入れてジャンキーに。


 ほかの屑野菜になりかけはかき揚げに。これでプロの料理人ではなくて、ラノベ作家なのが恐れ入る。



「ほんと、美味しい……」

「マチちゃんのも食えるよ、これ」

「え゛!?」



 処分してなくて、覚の胃袋に入っていた。血は付着してなくても、見てくれも食感も悪いはずなのに、ちゃんと食べてくれたらしい。覚の揚げ物の妙技に見惚れていて、片付けほかを見ていなかったのだ。



「捨てるのもったいないじゃん? ちゃんと頑張って作ったんだし?」

「お、お腹壊さない??」

「揚げ方くらいじゃ、大丈夫だよ。まずは、ペティナイフくらいから包丁慣れしようか? 果物切るとか」

「……うん」



 同じ果物でも、アボカドは少し上位ランクだったと今回で反省したため。次はリンゴやオレンジからスタートしようということになったが。


 指こそは切らないものの、そこは不器用過ぎて皮と実の境目がしばらくはめちゃくちゃになるばかりだった……。要修行だと、覚にも言い渡されるくらいに。

次回はまた明日〜

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