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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第64話 第一段階完了して、アボカドのタイ風温サラダ

「……ひとまず、一話ぁ!」



 万智子はとうとう……下絵が没の荒波から脱出することが出来たのだ。


 何度も何度も、リテイクを繰り返し。ようやく、『これでいきましょう』と佐伯からの返信があったとき。


 気づけば、夏真っ盛りの夏休み手前まで時間がかかってしまった。


 だが、ここから二話、三話の下絵の前に、一話の清書が待っているものの。とりあえず、区切りがついたのだ。実に、長かったと思う。



(最初は電子配信かららしいし、ストックも合わせて五話。一年くらいで出来る……かな??)



 製作期間に時間がかかるのは当然であっても。新人作家として、来年にはデビューすることが確定したのだ。


 同人活動も同じくらいに続けたいが、今の段階では大人しくしていないと新刊をつくる余裕すらない。ドミノのアシについても、軽く事情を伝えてあるから休止しているものの……慣れたら復帰したいと思っている。


 底辺な自分が二足の草鞋を履くなんて、無謀なことをと思われるだろうが……彼女のところで修行させてもらったことで、今があるのだ。迷惑でなければ、また共に働きたいと考えていた。ドミノからは『無理だけはしないよーに』と釘を刺されているが。



「さーて。ご飯炊こう~♬」



 昼は今日も適当に済ませてしまったが、覚の美味しいご飯が食べれるようにお腹を空かせてもいいだろう。冷蔵庫の中身を確認すれば、常備菜はいつも通り揃っている。今食べてもいいかもしれないが、夕飯が入らないともったいない気がした。


 せっかくなら、余計にお腹を空かせるのに軽く掃除でもしよう。掃除機をかけて、部屋のほこりを丁寧に取っていたら……時間はあっという間に、覚の帰宅時間になった。珍しく家事をしていた万智子の様子を見て、覚は苦笑いしていたが。



「無理してない?」

「全然。最近サボりがちだったし、座りっぱなしもよくないもん」

「ふむ。ひと段落ついたと見た。内容は見れないけど、今日はもともとご褒美ご飯のつもりでいたから」

「なになに??」

「マチちゃんの好きなアボカドも使って、ちょい豪華なサラダを作るよー」

「おぉ! アボカド!!」



 手伝うことはないかと聞けば、最近ときどき使うレンチン用のゆで卵容器で半熟に仕上げてほしいと言われた。最近の家電対応の容器は、チョッパーもだがさらに進化を遂げている。ひと昔前なら、ゆで卵をレンジで作ると爆破確実とも言われていたのに……それを可能にするのだから、開発者たちの努力には恐れ入る。


 セッティングが完了すると、覚の方からスパイシーないい香りがしてきた。



「?」

「ああ、これ? タイカレーの缶詰」



 振り返れば、見慣れない缶詰の蓋を開けているところだった。中身を聞かないと、異物にも見えたのでびっくりする手前でよかったが。



「カレーの缶詰?」

「これ使って、温サラダ作んの」

「あったかいサラダ?」

「そうそう」



 半分にカットしたエビをバター、オリーブオイルとにんにくで炒め、一旦取り出す。そのあとに常備菜からサラダチキンを適当にカットして、軽く炒めていく。


 ある程度温まったら、エビと缶の中身を加えてひと煮立ちさせるらしい。このまま、ご飯にかけても美味しそうだが……これを、どうサラダにするのかも気になった。



「アボカドはブロック?」

「でもいいけど。今日はちょっと……よっと」



 小鉢を使うのか、薄くスライスしてレモン汁で変色防止したアボカドを……まるで、器のようにして花開かせていく。そんなお洒落な器風にしたところへ、ゆで卵といっしょに盛り付けるそうだ。



「か、可愛い!!」

「まだ具材は余っているから、そっちはカレーにしようか?」

「ご飯が無駄にならない!!」

「飲むつもりでいたけど……どうする?」

「飲む!!」



 ひと段落ついたのは本当だから、最近は少し控えていたため解禁日にしても問題ない。


 それでもしっかり晩酌ではなく、ほろよい程度の軽いものを選んで。



「「いただきます」」



 タイ料理はあまり食べたことはなかったが、普通のカレーよりもエスニックな香りが食欲を掻き立ててくるような気がした。


 箸じゃなく、フォークでサラダを突いてみるとアボカドも具材も、すっ、と、持ち上げることが出来た。口に運ぶと、さらに香りが強く感じてきた。ぴりっとしたスパイスの味わいと、まろやかなココナッツミルクの味が一緒くたになって舌の上に伝わってくる。


 辛いだけじゃなく、酸味も感じるカレーは久しく食べていないため、とても新鮮な気持ちになれた。



「面白い味! けど、アボカドとかと食べるとまろやかな感じになるね!!」

「グリーンカレーだと辛いから、これでも甘口ぽいの選んできたんだけどね?」

「そうなんだ。海外旅行の経験ないから、あんまり食べたことないんだよねぇ?」

「商店街に行けば、料理屋あるよ? 今度行ってみる??」

「行く行く!!」

「……元気いっぱいだねぇ?」

「……ご心配おかけしました?」

「まあ、修羅場って感じなのは扉越しでもわかったし?」

「はい……それはもう」



 これ以上は、佐伯経由で聞いてもらうしかない。それをわかっているのか、覚もそれ以上は突っ込みを入れることはなかった。


 ご飯と食べるカレーの方もなかなか美味しかったので、ルゥを少し残しておかわりしてしまうくらいにたくさん食べた。もちろん、用意した酒も少し飲んだが空腹の方が勝って……酒はほとんど、覚に飲んでもらったのだった。



「今度はしっかり、カレーにした方がいいかもな? 野菜たっぷりにして」

「アボカド入る?」

「トッピングにならね? そんな気に入った?」

「食べ易かったから……」

「んじゃ、今度缶詰選びもいっしょに行こうか?」

「うん」



 まだまだ修羅場から脱出し切ったわけではないが、息抜きも大事なので頷いた。


 それに、夏休みもまた、どこかへ出かけたいくらいには意欲も出てきていたから。



次回はまた明日〜

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