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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第56話 結託のズボラチャーハン

「実は、三ツ星さんにコミカライズの作画を依頼したかったんです」

「こ、コミカライズですか?!」



 打ち合わせの日に、出版社へと出向き。


 佐伯と合流してから、個室に案内されたのだが……いきなりの話題に、素っ頓狂な声が上がってしまうのも仕方がないと言えよう。


 彼女も、万智子のような新人作家の反応は予想済みだったのか、にこっと微笑んでくれていた。



「ええ。レーベルは少年向けなんですが。三ツ星さんの作画にぴったりだと思いまして」



 ドミノと共同製作したポートフォリオも確認してもらったが、少女ではなく『少年向け』というのは少しがっかりしてしまった。


 一応、TLも描くので女性向けを意識していたつもりだったが、編集者がそういうのであれば……仕事の有無をとやかく言っている場合ではない。打診をもらえただけでもありがたいのだから、文句を言う資格もないのだ。



「えっと、コミカライズということは原作はラノベですか?」

「ええ。書籍はまだ二巻のみですが、これから好調するだろうと踏んでいる作品です。三ツ星さんは『高垣朝人』という作家さんはご存知でしょうか?」

「え!? あ、はい。先生のことは、SNSで」

「おや、相互さんですか?」

「そ、それもあるんですが。……内緒にしてくれます?」

「と言いますと?」

「…………主人、なんです」

「……偶然過ぎて、さすがに私も驚きましたね」



 たまたまだとしても、これは非常にまずいかもしれない。


 恋人はまだしも、夫婦で共同生活をしている身。


 守秘義務などを守れるかと言えば、理解し合っているところが多いので大丈夫だとしても。このパターンは非常に稀だ。


 佐伯も、さすがに驚いて冷や汗のようなものが出たのか、ハンカチで拭いてた。



「えっと……主人の方がベテランなので、私への口出しは必要最低限にしてくれるとは思うんですが」

「そう、ですね。うちのラノベ部門の方の編集に話は聞いていますが。高垣先生は、下手に我がままを通す方ではないと聞いています」



 だがしかし、コミカライズの作画担当が家にいるとなると話は別になるかもしれない。


 世間的に言えば、面白い組み合わせになるだろうが。契約関係上、口出しをし過ぎて両者の仕事が出来なくなると……ニュースどころか、SNSでも常に話題になることが多い時勢。


 間に編集者がいても起きたりなかったりの仕事内容なのだ。それを守りつつ、万智子が自宅で仕事を出来るかと言うと……自信はないが、正直言ってやりたかった。


 何故なら、覚の作品でいつか作画に携わることが出来たら、の夢が実現しそうになっているから。


 その返答権は佐伯や編集長にあるもだが、言うだけ言ってみようと、まず頭を下げることにした。



「先ほども言いましたが、主人は理解力のある人です。なんなら、仕事の作業を見せませんし。佐伯さんかほかの編集さん経由で、私にたくさん指示を出してくださっても構いません!!」

「……もしかして、ネームを見ていただいていたのは。高垣先生が??」

「それは、はい。同人活動だけのことだったので……」

「……本来なら、ここで『はい』とは言えませんが。少し待っていてください。編集長が来れないか声をかけてみます」

「はい……」



 少し無理難題を吹っかけてしまったかと思ったが、一応話は聞いてもらえるようだった。


 どんな感じになるか。数分待っているだけなのが、数十分くらい長く感じてしまう。


 そして、佐伯が連れてきた壮年くらいの男性が編集長のようだった。



「ん~。レア中のレアだけど。高垣先生んとこの身内さんなら、僕も信用しましょう。ただし、ネームと下書きは最初に彼に見せてはダメです。仕事を共にすることについては、家族なので話して大丈夫ですよ」

「……ありがとうございます!!」



 新しい仕事。初打診。


 ただの同人活動が形になった瞬間だった。


 何度も礼を告げてから出版社を出て、帰宅した頃には覚の方が先に帰っていた。


 それと、先に連絡が届いたのかで苦笑いしていたのだ。



「いきなり、共同作業かぁ……」

「さとくん、自宅で仕事するけど。……編集さん経由で、ビシバシとチェックお願いします!!」

「そりゃね? 自分たちだけでやり取りして、ぽしゃったケースは知り合いにもいたし」

「……ほんとに、いるんだ」

「そうならないように、俺たちは俺たちなりで頑張ろう。いや~、マチちゃんの最初の仕事がねぇ?」

「少年向きなのがびっくりしたけど。精一杯頑張るよ~」

「そだね。そして、すまん。うっかり、食材買い足すの忘れててた」

「え?」



 万智子が出版社に行くことで、どんな結果になるかハラハラしていたのは覚もだったらしい。定時よりもあとになって、万智子の帰宅メッセと同時に編集部から打診の連絡が来たため……ぽやっとしたのは、覚もだったそう。


 なので、今日は買い出し担当を自分がすると言っておきながらそのまま帰宅してしまったそうな。



「ある材料で……適当な、ズボラチャーハンでもいい?」

「全然いいよ~? むしろ、いつもご飯ありがとうなのに」

「頼れる旦那でいたいからさ~」



 米

 ツナ缶

 卵

 刻みネギ

 紅ショウガ

 刺身醤油

 塩胡椒

 ウェイパー



 を、使ってのズボラチャーハンだそう。



 卵をたっぷりの油で少し火を通し、米を投入してパラパラにしていく。ツナやほかの材料を順に入れて火を通し、味付けも濃いめにして。


 万智子がわかめスープやらお茶やらを準備している間に、さっ、と出来てしまうのだから全然ズボラに見えないのだが。本人が言うのならそうなのだろう。



「「いただきます」」



 ぱら、っと、仕上がった今回のチャーハンも絶品としか言いようがない。


 油加減もだが、紅ショウガを加えているので舌を休めてくれるさっぱり感もちょうどいい具合に。


 昔はチャーシュー以外に、チャーハンのメインの肉が違うのを苦手にしていたが。ツナの油もうまく馴染んでいるおかげで食べやすい。そこは、覚の調理スキルが高いせいもあるからだろう。


 ついつい、スプーンが止まらないでいた。



「今日も最高に美味しいよ~?」

「明日は適当にしないからさ?」

「なんで? 無理しないでいいよ?」

「いやいや。世に出すのは少し先でも、前祝いくらいしたいじゃんか?」

「前祝い?」

「俺たちの仕事」

「ふふ。ドミノ先生にもまだ言えないから、そこはそうだね?」

「だろ?」



 いくら、紹介ではあっても、そこは守秘義務の関係上仕方がない。


 それでも、SNSで発表出来る機会がきたら、真っ先に伝える相手ではある。


 まずは、覚の作品をしっかりと読み込んでから、キャラメイクするところからのスタートだった。

次回はまた明日〜

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