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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第53話 サプライズバースデーのために奮発

 四月にそろそろ入る時期になってきたが。


 万智子は以前のバレンタインやホワイトデーの時のように、ど忘れしないように注意していたことがある。


 覚の誕生日だ。


 四月九日が彼の誕生日。しかも、記念すべき三十になる歳だ。


 万智子の誕生日は正直どうでもいい……と、覚のことなのでさせないだろうからと、そっちはそっちで期待しておくことにして。


 万智子は万智子なりに、妻としてちゃんとお祝いしたいと思ったのだ。いつもいつも、旦那として労わってくれている彼には、自分自身も労わってほしい。


 だが、ちょっと以上にポンコツな万智子でどこまでサプライズが出来るかわからないが、やれるだけやろうと決めた。


 ひとつは、新婚旅行のときに覚から提案された貯蓄方法を今こそ活用しようと……ごく一部を、プレゼントと食材調達のために使うことにした。



「日常使い、特別感……キーケース?」



 クリスマスプレゼントも、そこまで値の張る物を渡していない。というか、お互いに好きなケーキを買うというだけで終わったささやかなものだった。


 なので、今回はいくらか奮発は出来る。思いっきり高価なものではなく、少しばかり値の張る物を用意してみよう、と。商店街へ顔を出してみたが、雑貨屋でたまたま『これ』というものを発見し、予算内で収まったので包装料も少し奮発してみた。


 あとは、食事。


 と言っても、覚に教えてもらった時短レシピサイトを検索して。それらしいものを作ってみることにしただけだ。それ以外には、久しぶりに作る糖質OFFの豆腐ピザも。



「えーっと? フォークで適度に刺して」



 仕事も同人活動も、今日は休みにするくらい覚のために動いている。初心者から脱した程度の料理技術であっても、覚のように趣味以上のプロレベルではない。


 会話しながら、さっ、と作り上げれるような、あんなにもすごいものを……いつか、子どもを持つ親としては出来るようにはなりたいが。覚自身は万智子の負担を強いてまで、欲しいとは思っていないと言っていた。


 身体とこころが壊れそうだった、結婚前の万智子自身へ振り出しに戻る可能性はゼロじゃない。


 たしかに、それはそう、なので。万智子も少し考えてみた。千郷のところのように、家族をつくる家庭もあるが。夫婦だけの家もなくもないのは、世間としてはあることも知っている。


 覚は、今は後者かもしれない。


 動画とかは趣味とかで観ていただけらしいし、その言葉に嘘はないだろう。


 なら、万智子も。無理強いしてまで、子作りに専念する必要は……今は、ないかもしれない。サプライズバースデーのためと、新刊の原稿が出来上がるまでは夜の方も遠ざけてはいたが、それも緩和していいだろう。


 あの、超絶ショックな表情を見ると、さすがにロールキャベツ男子にとっては大ショックだけで済まなかっただろうから。



「調味液に漬け込んで……さとくんが帰ってくるくらいに、オーブンで焼けばいいかな?」



 今作っているのは、簡単スペアリブ。肉の下処理と調味料をジップロックに入れて揉み込み、冷蔵庫で数時間寝かせたあとに、オーブンで焼くだけ。


 あとは、冷凍庫にあるフレンチフライも揚げればプラスになる。今日くらい、野菜についてはとやかく言わない。


 ピザの具材を準備し、ケーキだけは覚に買ってくるように『態と』調理時間を確保させてもらった。自分の誕生日くらい、ホールでなくても好きなケーキを買うのに文句をつけたくもなかったが。スペアリブをじっくり焼く時間は欲しかったのだ。



「ただいま~……ん??」



 焼き始めて、玄関にまで調味料の匂いが届いたのだろう。


 ちょっと早歩きな足音がすると、キッチンを覗き込む表情は満面の笑みだった。



「めっちゃいい匂い!! 作ってくれてんの??」

「おかえり~。ちょっと、頑張ってみました」

「マジ? ケーキ、これ。すぐ着替えて手伝うよ」

「今日の主役は、席について待っててくださいー」

「え~? いいの?」

「もち」



 ピザも焦げないように、タイマーを使って焼き上げ。


 飲み物は甘口のスパークリングワインを、グラスに注ぐ。


 ケーキ以外の準備が整ったら、覚の笑顔がさら緩んでくれたので万智子も嬉しさ倍増だった。



「「いただきます」」

「ハッピーバースデー、さとくん」

「ありがと。うわぁ、どれから食お?」

「どれも熱いから気を付けてー」

「じゃ、せっかくだし、肉から~」



 骨の部分を掴み、豪快にかぶりつく。口に入った途端、目じりがさらに緩むあたり……予想よりも美味しかったのか、がつがつが止まらなかった。



「……そんなに美味しい?」

「うん! 漬け込み具合もいいし、やわらか!? これ、ちょっといい肉買ったの?」

「うん。……貯蓄切り崩して、少しいいのを」

「ありがと。めっちゃ美味い!! 味わいたいんだけど、がっついちゃうな~?」

「がっつきついでに。……プレゼント、フォー・ユー」

「お?」



 ちょうど手拭きで指の汚れを拭いているタイミングに、プレゼントを渡すことにした。ケーキを食べるときでもよかったかもしれないが、早く渡した気持ちが急いてしまったのだ。


 紙袋を受け取った覚は、封を開けてから中身を確認すると、『あ』、と声を上げてくれた。



「ずっと使ってたの、古かったでしょ?」

「まあ、適当に買った安物だったけど。……これ、いい値段したんじゃ?」

「使えば使えうほど、革製品だから馴染みやすいんだって。いいでしょ?」

「うん。……大切に使うね?」



 特上スマイルをもらえたので、用意してよかったと万智子もつられて口角が緩んだ。


 金の使い道を生活費以外で、とても有意義なことに使えたのではと思うと嬉しくて仕方なかったのだった。


次回はまた明日〜

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