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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第51話 もやもや解消になるか、常備菜づくり(たたききゅうり編)

 覚は、その日常備菜を仕込むときに……万智子が少し悩んでいたことを振り返っていた。


 結婚したからには、どうしても話題に上がってもおかしくない、『子ども』についてだ。


 それについては、考えていなかったわけではないのだが……覚としては、まだ早いと思っている。


 交際数か月、そこからの電撃婚のような入籍。


 SNSでのやり取りは数年でも、オフ会は片手で数えられるくらい。


 まだまだ、『万智子』という人間を深く知っているわけではないのだ。母親とも引き合わせたし、向こうの母親とも認識してもらえた。


 旅行にも行っているし、デートもぼちぼち。それは夜のことについても。


 だけどまだ、万智子に負担をかけたくない気持ちが強かった。


 交際宣言する手前で、心身ともに疲弊し切っていたあの頃の状態には戻したくない。だったら、それ以上に大変な育児なんてさせたくなかった。


 だけど、覚も促すような行為をしていたのだと知ったときは、思わずはっとしてしまった。



(俺の見てた動画とかで、逆に不安を煽るようなことしちゃってたのか……)



 ショートショートで、ピックアップに赤ん坊のにまにま笑顔とかハイハイとかを観たりしていたため……それが、覚の顔にも出ていたのかで、『妊活』への意識を傾けさせてしまっていたのか。


 たしかに、最初の頃はともかく。最近の夜の運動は避妊でしていたため……『何故?』『今更?』を意識させたのかもしれない。


 単に、覚は万智子とのふたりっきりの時間をもっと楽しみたかっただけだが。



(ホワイトデーのときに話し合ったけど。それだけじゃ、多分吹っ切れないよなあ……?)



 急ぐことはない。


 家族をつくることは、いのちをかけて行うべきこと。


 ただ、『欲しい』だけで決めるのも、万智子に一番肉体や精神の負担をかけるので……出来れば、無理に作らなくていいと、覚は逆に思っているくらいだ。


 動画視聴はツリーで流れてくるので、気分転換に観ていただけなのに。可愛いものを愛でていただけに過ぎないが、犬猫とも違うので誤魔化しのしようもない。



「よいしょっ」



 今作っているのは、たたききゅうり。


 きゅうりには低カロリーで脂質代謝を促す酵素や、むくみを解消する成分が含まれている。


 夏場じゃなくても、ハウス栽培などで通年手に入る食材になっているため、落合家ではよくこの常備菜を作ることにしている。


 まな板の上で、麺棒で叩き、ある程度割れたら……手で割く。


 それを醤油、酢、だしの素に輪唐辛子、砂糖に生姜チューブのタレをタッパーに入れて混ぜ合わせれば。半日以上漬け込んでおくと、いい漬物くらいの仕上がりになる。万智子も気に入っているため、毎回袋買いしても一週間で食べきるのだ。


 今、万智子は寝る前のスキンケアをしているところ。


 社会人になる前から、ちょっと覚えた程度だと言うが。万智子の肌はきれいなもち肌だ。毛穴詰まりもほとんど見られないし、ニキビ跡もわからないくらいにきれい。


 洗顔と化粧液を交互にしているくらいとしか言っていなかったが、化粧のクレンジングを丁寧にしているかと言えば、そうでもなさそうだ。シートでさっと拭き、あとはよく顔を洗って化粧液をつけるだけ。


 覚の歳の離れた姉はもっと色々使っていたと思うが、体質によるものか。


 ともあれ、肌には個人差があるので男が無闇に言っても仕方がない。


 悩みに戻るが、無闇に妊活をして不妊治療をどうにかするまでなるとも言い切れないのだ。どちらかの負担が大きければ、子どもは望めない。治療してまで欲しいかと言われると、今はなんとも言えない気持ちだ。


 万智子自身は、少しほしい雰囲気を出していたが。そこはあくまで、覚の様子を見て答えた可能性がある。覚との年齢差と、自身の身体への負担が少ない今の年齢なら……とか。


 ただ、本気で妊活して授かった場合。


 今の緩やかでのんびりした生活を失ってしまうのだ。せっかく、笑顔が増えて在宅ワークでもやりがいのある時間を得ているのに。



(それと、俺がマチちゃんを独占する時間が多く減っちゃう……)



 自他ともに認めるくらいの、『ロールキャベツ男子』なので、万智子への独占欲は人並み以上に強い。子どもとの時間は、それはそれで満足のいくものかもしれないが。


 いっしょのベッドで寝て。


 朝起きて、ご飯を食べて。


 夕飯はたまにいっしょに作る。


 それ以外は、常備菜を担当するのは主に覚の役目。


 これくらいの、のんびりルーティンワークから抜け出したくない気持ちが強いのだ。やはり、交際期間が短すぎたし、急かして結婚したのだから二年弱ではまだまだ独占し足りない気もする。


「……我ながら、黒いな?」



 冷蔵庫にタッパーを仕舞い、調理台の上を片付けてからほかの常備菜のタッパーを確認するが。


 少し、もやもやした感情が渦巻くと、どうも料理に逃げがちだ。時短レシピで世話になっているサイトで検索し、今ある食材で万智子の昼ご飯になにか作ってやれないかと……やりくりしながら、三十分強。


 万智子がなにか飲み物を取りにきたタイミングで、かなり驚かれてしまった。



「さとくん、どしたの??」

「……作り、過ぎた」



 たたききゅうり以外に、タッパー三つ分。日持ちはそこそこするが、すぐには食べきれない量の野菜などで作った常備菜。


 万智子にはもやもやをまだ言いたくないので、明日から多めに食べていいよと誤魔化すしかなかった。


 親になるとかそういう覚悟をしてないわけではないが、妊活についてはやはりまだ考えたくない複雑な男心の表われというわけで。



次回はまた明日〜

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