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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第49話 ど忘れバレンタインに甘いお菓子?

 それぞれの実家に、ウェディングフォトの額縁を送ったあと……万智子は、たまたまスマホのカレンダーを見て、思い出すことがあった。


 あと三日くらいで、一大イベントがあることに。


 同人誌即売会とかではなく……世間的なイベントについて。


 2月14日。バレンタインデーだ。


 去年は何かしたか?と思い出そうにもなにもしていなかったことを、だいたい思い出すことが出来た。


 ちゃんと結婚して二年目だというのに、恋人期間が短かったからって誕生日やイベント行事をまともにしていなかったのはよくない。



(よくない! せっかく、式に向けてお互い頑張ろうってことになったんだから……ここは、女として少しは)



 と思ったが、お菓子作りもまともにしたことがない万智子には……冷やして固めるくらいの簡単なものしか出来そうになかった。いきなり、内容のハードルを上げて、途中で怪我したら覚に心配をかけるだけで済まないだろう。


 そのため、ここは覚もちょいちょいお世話になっているというレシピサイトで……初心者の万智子でも作れるお菓子があるかどうかを探すことにした。



「へぇ? アイシングクッキーはちょっと難しそうだけど。マフィンやブラウニーは、なんとか出来そう??」



 会社ではともかく、家で間食を取らないふたりなので、家にお菓子は常備していない。つまり、覚の好みを知る機会がほとんどないのだ。


 だけど、好き嫌いがピーマンくらいだったのを思い出したので、ここは簡単かつ美味しいものを作れるように……材料を買いに行くことにした。自転車でスーパーに向かうと、まだバレンタインフェア真っ最中だったので、お菓子コーナーにも材料は充実していた。



「……なんと。コラボチョコもあるだなんて!!」



 推しのイラストがプリントされているチョコも、展示コーナーにあるのを見て……そこは、自分用にと買うことにした。少しお金を使い過ぎた気もするが、たまには……と、目をつむることに。


 帰宅してからが本番なので、コラボチョコは冷蔵庫に入れてから……覚へのチョコを作るのに、準備を始めた。



「え~と。包丁で刻まなくても、板チョコは銀紙に包んだまま砕いて」



 作るのは、濃厚チョコのブラウニー。湯煎で溶かしたチョコを使うタイプの簡単バージョンでいくつもりだ。


 ナッツ類は無塩の素焼きしてあるのを袋の上から、麺棒で叩いてくだく。溶かしたバターやふるった粉類と混ぜ合わせ、型に入れてオーブンで湯煎焼き。


 片付けは少々大変だったが、部屋中がチョコの濃厚な香りに包まれたので……仕方ないが、むせる前に換気扇をつけることにした。



「よ~し、焼きムラのチェックもしたし、あとは粗熱を取って……」



 冷ましたら型から取り出し。別で用意していたラッピング素材でそれなりに整えていく。


 バレンタインは明後日なので、シリカゲルを入れた袋の中で……じっくりと熟成させればしっとりと食べやすい食感になると、レシピ様には書いてあったのだ。冷蔵庫に入れるとばれるし、カチカチになるので自室の奥に隠すことに。


 そして、それから二日。


 同人活動再開もだが、ドミノの紹介で別のアシスタントの仕事も増えてあたふたしてしまい……腐らせてはいないものの、せっかく作ったバレンタインプレゼントのことをすっかりと、忘れてしまっていた。


 気づいたのは、覚が帰宅してから『ハッピーバレンタイン』と、花束を買ってきてくれたあと。



「あ~~~~!?」

「え? なに!?」



 久しぶりに土下座したい勢いだったが、自室に戻ってブラウニーを隠しておいた場所に向かえば。なんとかラッピングしたあとの状態を維持できていたため、中は無事だと確認できた。


 あとから追いかけてきた、覚には『あーね?』と苦笑いされたが。



「……作っていたのに、うっかり忘れてて」

「この前、少し甘い匂いしてたけど。そのため、にか……嬉しいよ」

「……もらって、くれる?」

「もちろん。俺も、昨日作ったものがあるからいっしょに食べよう?」

「昨日?」



 寝る前になにか作ったのかと、冷蔵庫を覗いてみると。小振りのガラスカップがふたつ。中身はチョコ色の……プリン??


 作っているような感じなかったのに、いつ仕込んだのだろうか。万智子がまったく気づかないにしても泡だて器の音とかほとんど聞こえなかったはずだ。



「これは、糖質抑えめのテリーヌだよ」

「チョコのテリーヌ??」

「材料のメインは絹豆腐とココア」

「え?? それ、豆腐で出来るの!?」

「別にダイエットの続きじゃないけど、昔作ったときも美味かったからさ? マチちゃんに食べさせてあげたくて」

「……うん」



 こっちは忙しいからと、用意していたにも関わらずにバレンタインのために準備をしてくれていた。花束は定番のバラだったが、真っ赤っかなベルベットで触り心地のよいもの。日持ちはあまりしないらしいからと、それは後日薔薇風呂の材料になったが。


 それぞれ用意したお菓子は、互いの想像以上に美味しかった。チョコムースはココアとはちみつだけだと言うのに、本当にさっぱりしていて滑らかで口どけの良い味わい。



「抹茶でも出来るらしいから、今度それも作ってあげるよ。マチちゃんのブラウニーいいな。おかわり」

「そんな美味しい?」

「奥さんの作ってくれるものに、文句どころか賞賛あげたいよ。初回なのに、このなめらかさ癖になりそう~」

「ちょっと、言い過ぎ……」



 ど忘れしたというのに、それを補うくらいに喜んでもらえたのだから。次は、もうひとつ忘れかけていた誕生日にしっかりとお祝いしてあげようと決めた。万智子自身のことは二の次でいいからと、頭の隅に置いておいて。

次回はまた明日〜

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