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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第44話 イベント最中にお弁当を添えて

 待ちに待った……オタクにとっての大型イベント。


 通称『祭り』とも言えるそれは、同人活動をする者のみならず……推し活を日夜嗜んでいるオタクたちにとっても憧れのイベント。人によっては聖地とも言える場所とされていた。


 大行列で済まない人混みもだが、出展するサークルも多数参加のため、万智子はいくらインドア派じゃなくても購入者としての参加は諦めていた。


 神絵師とも言われるブースに辿り着ける自信がなかったからだ。なのに、合同誌とは言え……いきなり初の出展参加。


 原稿も仕上がったあとは、主催のもこもこに送信して『本』になるようにあとは費用を彼女の口座へと振り込む。ドミノの時も思ったが、本当に垢名と本名は一致する箇所がないな……と。


 その完成品はブースへ配送済みだそうなので、まだ献本も見ていない。表紙の画像は知っているが……実物を見ないと、少し落ち着かないのは当然。


 ブース準備のために、あらかじめ送付されたサークルチケットを手にして参加者の列に並ぶ。外ではコスプレイヤーたちは衣装を着てはいけないルールなため、今回売り子にも参加してくれるメシネと途中で合流していた。メイクだけは事前に仕上げてきたとかで、冬場なのにかなりフレームの大きいサングラスで目元を隠している。



「いや~、雪降らないけど。それなりに寒いねぇ?」

「ほんとですね……。関東って結構寒いって、上京してくるまで知りませんでした」

「三ツ星ちゃん、西方面の出身?」

「親は、ですけど。愛知生まれです」

「そっか。あたしは東北だけど、こっちが長いからこれくらいの寒さでも身に沁みるよ……」

「はぁい。ふたりともめっけ」

「あ、もこちゃんー」

「私もいるわよ~」



 背の高いメシアがいるお陰で、ほかのメンバーとも無事合流。そして、参加者の入場ゲートが開門されてからが、本番の一歩手前というべき戦準備だ。設営のために、万智子は合同誌以外の段ボールの中から既刊である自分たちの同人誌を取り出し。ブースの長机にセッティングしていく。


 四人で設営するので、宣伝用のポスターの配置などもばっちし。詩音は左右のブースに軽く挨拶して自分たちの名刺を渡してくれた。連携が取れているというべきか、役割がしっかりしていると準備がさくさく進むものだ。次のイベントでも、万智子は自分で出来るように見習いたい。


 設営が完了し、SNSに投稿したあとは閉幕まで売り子のシフトを確認しまくる。サークル側とて、別に購入者になっても構わない。ひとりだと離席の札を立てたりするが、今回は四人もいるので交代で回るのだ。祭りを楽しむために、万智子も神絵師らの本を購入したかった。今まで、尻込みしてこんな大きなイベントに参加出来なかったので。



「あ。皆さん、うちの主人がお弁当作ってくれたんですけど」

「「「マジ!!?」」」



 途中、昼ご飯はカロリーメイトくらいでいいかなどと、もこもことかがぼやいていたので……万智子は言い忘れていた皆さんへの差し入れ弁当のことを伝えた。小振りの弁当箱を事前に購入し、満腹にならない程度の量を詰めたものらしいが。


 コスの準備から帰ってきたメシネは、すぐにでも食べたいのか、受け取ってからすぐに蓋を開けてくれた。



「わぉ! 可愛い!!」



 ピックに刺した小さい唐揚げや茹で野菜。あと、海苔のない表面を焼いた小振りのおにぎり。


 詩音ももこもこも『可愛い!』と言っていたし、万智子も仕上がりを知らなかったのでこんな女子力高めのお弁当になっているとは思わなかった。



「ん!? おにぎり、結構しょっぱいけど。中の魚なに?? クリーミー!!」

「ね? たらことか思ってた」

「あ、たしか。かますって言ってました」

「「「何の魚??」」」

「えっと…………白身魚の一種?」

「塩焼きなのかな? めっちゃうっま。これ、すっごく満足感ある~~」

「焼いてるからぽろぽろこぼれないし、お米の美味しさが引き立つ感じ~~」



 米は富山の義母が仕送りしてくれているので、まず間違いないブランド米。


 おにぎりは覚が昨日のうちに具材といっしょに仕込んでいたようだが、それ今朝焼いてお弁当箱に詰めていた。万智子はしっかり睡眠を取るのにぎりぎりまで寝ていたので、中身をほとんど知らなかったのだ。


 ひと口食べただけで、米に少しまとわりつく塩気と。かますにもしっかりと塩が効いていて、なおかつ蕩けるような食感が堪らない。それに、焼きおにぎりにしたことで本当に手が汚れにくいのが、またいい仕事をしていた。



「よぉし! 三ツ星ちゃんちの差し入れで英気は養えた!! 今日の祭りは楽しむぞ~~!!」

「「「おお~!!」」」

『まもなく、一般客の入場時間です』



 念のため、持ってきたウォッシュタオルで念入りに手を拭き。あと片付けをしていると、アナウンスの音声が会場内に響き渡る。


 祭りの開始時刻は12時。閉幕は17時。


 それまでに、完売はいかずともどれほどここにある商品が売れていくか。


 今回は壁サーではないので、行列がどれくらい並ぶかも予測がつかない。万智子は、分担として最初に会計を担当することになっていた。


 奥の方に見える、入り口のところからぞろぞろと人がなだれ込んでくるのが見えてきて。


 少し以上の緊張はするが、ひとりじゃない心強さに囲まれている。少し大きめの深呼吸をしてから、ブース前に立ったお客を見て『いらっしゃいませ』と声をかけたのだった。

次回はまた明日〜

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