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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第42話 観光地のお宿ご飯(軽井沢編)

 ソフトクリーム、おやきをデザートにして堪能したあと。


 土産を買うのはまだ早いかなと、覚と意見が合致して宿に戻ってから温泉に入ることになった。


 露天風呂付き客室のお風呂もいいのだが、まずはお互いゆったりしたいと万智子が提案したため、大浴場に入ることになった。


 観光地だが、平日ということもあってそこまで混んでいなかった。使っている人数もちらほら程度だったので、万智子は体を流してから湯舟のひとつに浸かり、ぐっ、と腕を伸ばした。



「ふわ~……いい気持ぃ」



 溶けてしまいそうになるのは少し言い過ぎかもしれないが。それくらいに適温のため、外の寒さと比較したら蕩けてもおかしくない温もりだ。


 まだ完全に冬でないとは言え、秋も終わりに近い。


 世間でいう冬休みでないのに、食い道楽をして温泉を堪能して。贅沢過ぎやしないかと思うが、新婚旅行だからいいのだ。もうすぐ、付き合い始めも合わせて一年になるが、まだまだ新婚でいたっていい。


 とここで、万智子はあることを思い出した。



(……結婚記念日はともかく、交際記念日って特になにもしてないような??)



 オフ会を開いたのが、去年のいつぐらいだったか。今更過ぎて、なかなか思い出せない。


 それに気が付くと、至れり尽くせりの日々を満喫しているだけではダメだろうと自覚が表に出てくる。たしかに、同人活動からアシの仕事のアポももらえたのは覚のおかげなのに……頼り過ぎていて、今回の旅費もほとんど彼が支払っているはず。


 万智子にも貯蓄がないわけではないが、失業保険を使っても微々たる額。せめて、生活用品とか日用品。たまの食費は出しているが、それでも家賃光熱費等はほとんど覚持ちだ。


 たまの外食も、ドライブも。


 考えてみれば、覚の好意に甘え過ぎなところがほとんどではないだろうか。覚が万智子を甘やかしたい気持ちがあることはわかっているが、それで本当にいいのか。交際記念日すら、忘れている女を愛すのに十分だと仮に言い切られたとしても。



(いやいや、ダメだダメだ~~。ご飯のあとに、部屋のお風呂にいっしょに入るだけじゃ足りない~~)


 かと言って、なにか形に残すものを渡しても意味がないと思う。いっしょに生活するようになってわかってきたが、彼は万智子が活き活きしている姿とかご飯を美味しく食べる姿を見るのが好きらしい。


 でなければ、コスパは抑えつつも、美味しいご飯を仕事で疲れて帰ってきたあとで作ったりもしない。それで満足しているのなら、今回もいっしょに旅を楽しんで……今晩はそこそこなくいにいちゃいちゃするのも有りか。


 結果、正直に話して、謝罪込みでそんな提案をしようと決めるのだった。温泉は湯当たりしそうになったため、適度なところで上がることにした。



「え? 気にしてたの?」



 そんなこと、と、一瞬言いかけたりはしてたが、部屋に戻って茶を飲んでいた覚に話せば……予想していたとおり、ぽかんとした表情にさせてしまった。


 本人も気にしていないくらい、今の生活が『普通』過ぎたため、特に何も感じてなかったのか……逆に、幸せ過ぎていたのか。とりあえず、傷ついていないことに関しては、万智子もほっと出来た。



「だって。負担大きいんじゃないかなって」

「俺がマチちゃんのこと好きだから、交際も結婚も提案したんだよ?」

「……流された感はあるけど。い、今は……す、好き、だよ?」

「いいよ。それで。マチちゃんらしいし」

「……ありがと」



 しかし、結婚記念日くらいはなにかしたいと思っていたが、覚から『これ、結婚記念日も兼ねてたんだけど?』と言われて……去年の今頃に退職したのを思い出して、また再度土下座をしたのだった。



「お待たせいたしました。お夕食をお持ちいたしました」



 若女将らしきスタッフと仲居が持ってきた料理の数々。海の代わりに山と川の幸。


 旬の食材をふんだんに使った豪勢な料理たち。普段ではお目にかかれないものばかりだ。温泉でしっかりあったまってきたので、お腹が空くのも仕方がない。


 色々考えることはあるが、今は冷めないうちに旅路の料理を楽しむことにした。



「甲州の牛さんをメインに、時期の山菜などを使わせていただきました。どうぞ、ごゆっくり」

「「ありがとうございます」」



 スタッフが準備を整えたあとに、礼を告げれば部屋から去っていく。覚と目が合うと、互いに苦笑いしてしまったが、今は今、とやはり思うしかない。



「「いただきます」」



 甲州のブランド牛の肉は、簡単コンロで火が消えるまで焼いておけば大丈夫だそう。その間に、山菜の天ぷらやご飯にミニのおそば。あと、川魚の塩焼きなどを堪能していく。


 これが、地酒の冷酒に合わないわけがない。水のように飲みやすくて、ついつい猪口を煽ってしまいそうになる。



「マチちゃん、ちょっと飲み過ぎ」

「いや~、だって。美味しくて~」

「このあと、俺と風呂だよ?」

「……そうでした」

「そのあとのことも考えてくれるんなら……ね?」

「……そう、です、ね」



 つまりは、『夜』のことも含めて……結婚記念日を兼ねた豪勢な新婚旅行にしたかったのだろう。結婚式をするかしないかというと、費用がそれなりにかかるのでまだしない方向だ。


 結果、酒は控えたおかげで湯当たりもせずに露天風呂は堪能し……そのあとも、まあ、しっぽりと睦み合ったわけである。


 旅の一日目は、そんな感じに。


次回はまた明日〜

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