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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第31話 ネタの迷い中に大判餃子

「はーい? マチちゃん、一旦休憩!!」



 残暑厳しい今日この頃。


 覚の有給の日に、同人活動の原稿に没頭していたらあっという間に夕方まで時間が経過していたらしい。


 つまり、晩御飯の時間まで集中しまくっていた証拠。以前の経験を踏まえて、作業に没頭してろくにご飯を食べずにいるとクリエイターとしてよくないと自覚したというのに、また同じ轍を踏むところだった。



「……ごめん。それと、ありがと」

「いいよ。それくらい、集中していたんでしょ? なんとか、形に出来そう?」

「お陰様で」



 まだまだ熱い新婚生活とやらで、日々の生活は物凄く充実していると言っていい。衣食住がどれも程よく満たされている生活を知ってしまうと、ゴミ生活をしていたようなあの一人暮らしの中にはもう戻れない。


 家族という存在を、覚が『大事なもの』だとしっかり教えてくれたお陰だ。仕事の伝手も見つけてくれたし、同人活動もうまくいっていると言っていい。アンソロジー企画になった合同誌の原稿はまだプロットだが色々試行錯誤した結果、形になりつつあった。



「あとで少し見て良い?」

「もちろん。あ、今回はアンソロだからNLにしたけど」

「いや、まあ。無理してTLの耐性つけたわけだし」

「いやいや、ほかの先生らも今回はNLにする感じだったから合わせてみた」

「あ、そういう」



 TLとはティーンズラブ、要はエロ本部類。NLについては通常のラブストーリー。その略称をとっているのだが、イベントで必ずしもTLが売れるわけでもない。


 二次創作であれ、オリジナルであれ、画力やストーリー構成のどれが気に入るかは購入者次第。


 下手すると商業誌よりも高価な買い物となるので、吟味するのは当然のことなのだ。万智子の本も、覚と相談した上でTLについてはそこそこいい値段にしたのである。


 そして、合同誌ではNLになったため、本気でプロットとネームにはいつも以上に力を入れているのだ。売れる売れないよりも、プロ作家の同人誌を購入するという客のために期待を持たせる作品に仕上げたいという気持ちもあって。



「テーマもだけど。扱う作品のジャンルも合わせたから、余計に力が入っちゃったんだよね?」

「なんのジャンル?」

「ん~、乙女ゲーム系。だから異世界ファンタジーもの」

「あ~、新婚で甘々なシチュにするならって感じ?」

「それもだけど……さとくんに影響されて、グルメ系取り入れたくて調べまくってた」

「おお、それは嬉しいね? とりあえず、ご飯にしよっか。あと焼くだけだし」

「なになに?」



 そうなると、焼きたてが美味しい食事ということなのか。


 ピザ、お好み焼き、焼きそばなど色々食べさせてもらってきたが……今回はどんな時短レシピなのかすごく気になった。もし、さっき言った作品のネタに使える料理なら、是非とも参考にしたい。


 と思って、キッチンのフライパンを見たのだが……中に入っているのは見覚えのないもの、のように見えた。薄い皮が敷き詰められていて、その下に何か具材が入ってるだけの状態。



「これは、時短の大判餃子さ」

「え? 餃子?? これで焼くの??」

「包むの面倒だけじゃない。ケーキのようにカットして、大口でかぶりつきたくない? サイズのでかい餃子のように」

「……したい、かも」

「でしょ? 上下に餃子の皮を使って、間に肉とかの餡を広げただけ。これを火が通るまで焼くのみ」

「……待つ間にすることは??」

「ほとんどないかな? 焼くとこ見てみる?」

「うん!」



 合同誌に入れるかはまだわからずとも、知らない料理のレシピを目にするのはすごく楽しいと最近よくわかってきた。


 特に、覚の作る時短レシピのそれは全部美味しくて堪らない。


 油は既に入れているのか、IHの電源を入れてしばらく待つとジュージューと音が聞こえてきた。



「音にぱちぱちが混じったら、ひっくり返して……普通の餃子のように湯か水を入れて蓋をする」

「お? ほんとに餃子の焼き色!!」



 底の部分があぶくのたったきつね色に焼き上がり、食欲を掻き立てる餡のいい匂いもしてきた。


 水がなくなるまでしっかり焼き上がったら、もう一度ひっくり返して焼き色を確認。しっかり焼けたら、ごま油を一回しして完成だそう。



「皿の上でカットしたら、食べれるよ」

「お米とかはやるね!」

「ありがと。スープは中華スープ作っておいたから」

「わーい」



 インスタントではなく、今日はちゃんとしたスープ。運んでから具材をみたが、わかめと卵のスープだった。


 大皿の上でカットされていく音は、サクッ……サクッと、小気味のいい音が万智子の耳にも届てくる。早く、食べたい欲求が高まっていくくらいに。



「「いただきます」」



 仕上げのごま油のおかげで、きらきらと輝いているように見えたのは気のせいじゃないと思う。まるでケーキのように綺麗にカットされた、大判餃子。箸で持ち上げても崩れることのないそれは、断面が見えると肉汁たっぷりの肉餡が。


 もう迷うな、とかじりつけば……想像以上の食べ応えがあった。しっかり餃子の味なのに、生地のもちもち感で別の料理を食べているような気がするくらい。



「おいひい!! 皮、もっちもちだね!!」

「しっかり火を通したし、少し湯の量も多めにしたからかな? 羽根つき餃子はこれの場合作りにくいけど」

「いやいや、一ピースだけでも食べ応えあるよ。餃子何個分だろ?」

「五か六じゃない? ……ん、タレ無しでも味付けちゃんと出来てる」

「あ、そういえばタレがない」



 準備するのを忘れていたのかと思ったが、そうじゃなかったらしい。


 味付き餃子だったと思えば、たしかに塩胡椒以外の病みつきな味わいがしっかりしているのでいくらでも食べれそうだった。



「オイスターソースとか、醤油を多めにしたからね? これなら、洗い物も少し減るし」

「ひとつずつ食べただけなのに、まだいっぱいある……」

「まだ作業するんでしょ? 半分以上お食べ?」

「そこはちゃんと半分にするよ」



 スープにも米にも合う最強のメインをしっかりと味わったあとは、お風呂に入るまでもう一度作業に戻り。


 さすがに、プロットに餃子を入れることはなかったが……時代背景とかを異世界限定にしなくても、現代パロディにしてもいいのでは?とか楽しくなったため。結果、その線で作り上げてから覚に確認してもらうと『面白いんじゃない?』と言ってもらえたのだった。

次回はまた明日〜

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