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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第28話 帰省中の食い倒れ(氷見うどん編)

 峰子とは落合家の墓参りをしたあとに、別れた。


 せっかくの夏休み、短いけどたくさん富山の美味しいものを食べ回りまっし、と言われたらからである。


 盆休み前の墓参りは、三人で丁寧に掃除をしたあとであっさりと終わった。万智子の実家も父親を亡くして長いので、他所もこんな感じなのかと思ったのだが。



「さーて、夕飯は俺のおすすめでいーい?」



 覚はレンタカーを乗りこなしながら、万智子に今日の夕飯のことを尋ねてきた。と言うか、昼が豪勢過ぎたので少しリーズナブルに抑えて欲しいところだった。



「え? 何があんの?」

「んー。地元チェーンのラーメンや焼き肉もいいけど。俺としては氷見うどんがいいかな?」

「うどん?」

「暑いけど、鍋焼きうどんが結構人気の店。ホテルからもそんな離れてないし、どう?」

「……鍋焼きうどんかぁ」



 夏といえど、夜は少し冷える。北陸だからこそ、涼しい気候なので温かい食べ物は嬉しかった。


 もちろんだと頷き、少し夕飯には早い時間だったが行こうと覚の運転で目的の店にむかったのだが……予想外のことが、また起きているのにびっくりしてしまう。



「あ、ここも行列凄いんだよ?」

「……富山県民の食の熱さに、びっくりだよ」



 まだ夕方5時だというのに、もうそれなりの列が出来上がっていたのだ。暑いのに、鍋焼きうどんはそんなにも美味しいものなのか、と、期待と同時に昼の回転寿司くらいのお値段を想像してしまったが。


 列に並んでから覚に聞くと、そこまでいかないと首を振られた。



「モツと味噌の鍋焼きうどんだけど。そんな高くないよ? 小麦粉の物価が上昇してても、そんな凄い値上がりしてないし」

「……味噌煮込みうどん?」

「いやいや。氷見うどんの煮込み時間が長いから、そっちは作り置き。出汁とかは激熱だけど」

「へ~?」



 もとは愛知の出身だった万智子だが、名古屋の味噌煮込みうどんは正直言って『苦手』だった。店で食べると麺は固いし、米は絶対のような組み合わせだったため……逆に、某食品会社のインスタント麺の方が好みだった。


 なので、今回の鍋焼きうどんに関してはそっちに似ているのかと勝手に思ったのだ。


 順番が回ってくると、食券で先に支払うシステムらしく。覚に進められるままに、鍋焼きうどんのトッピングとかはおまかせで頼むことにした。


 それぞれの席では、夏でも関係ないと言わんばかりにもうもうと湯気が立った鍋焼きうどんを食べている様子が見れた。カウンター席も満員なので、作っているところは見れないがそれだけ美味しいと評判なのだろう。


 万智子たちが席に着くと、食券を渡してから数分後にもう出来上がっていた。客足はともかく、提供時間が早い店である。



「はい、モツ味噌うどん。お待たせしました」



 店員がひとつずつ持ってきてくれた『鍋』は板の上に乗せられていた。湯気の下には、半熟の卵にモツ、ニラ、ネギにナルトのようなかまぼこ。えのきもあったが、覚のおかげでほとんど克服したから万智子で食べられるラインナップだ。


 とにかく、熱そうで危険な食べ物。しかし、香りが胃を直撃してきて食欲を掻き立ててくる。夏なのに、鍋焼きうどんを食べるだなんて誰が想像しただろうかというくらい。



「「いただきます」」



 ぐつぐつが少し落ち着いてきてから、まずは具をひとつと、茶色のモツを食べてみることにした。富山県を含め、北陸では魚と同じくらい焼き肉文化が根強くて、『モツの下処理』も丁寧で臭みがないくらいに美味しいらしい。


 明日の帰宅前には、ランチで焼き肉にしようと言われているのため、今日はこのメニュー。どんな味なのか、と、口に運んだ途端……臓物の部位の認識が大きく変わった気がした。



「え、え? やわらか! こってりしてるのに、くどくない!!」

「マチちゃん。本当に美味いモツ食べてこなかったっしょ?」

「……いや~。概念変わったわ。トッピング多めにしてくれてありがと。これ、ご飯と食べたいくらい」

「だから、明日は焼き肉で色んな部位を味わうようにプラン立てたんだ」

「そんなに多いの?」

「関東でも別に食べられるけど。俺としてはまだ地元には及ばないと思ってるんだよね?」



 けど、仕事を得るために上京した。それは仕方がないので、故郷の北陸を去るしかなかった。それは結果としての話。今は、久しぶりの帰郷だから思いっ切り食事を楽しみたい。万智子にはそんなことを言われた気がしたが、たしかにその通りだと納得出来た。



「ん!? うどん、もちもち!? けど、やわらかい!!」

「太麺だと、20分以上茹でるからね」

「へ? そんな長いの??」

「細めんでもそこそこ長いな~。名産品だけど、どっかで買ってく? 通販でも取り寄せ出来るけど」

「ん~~……これだけ美味しいなら、買いたい。風邪のときとか食べたいな……」

「りょーかい。出汁も美味いでしょ? ちょっとピリ辛で」

「うちの地元の辛いのより好き~~。北陸県民になりたかった」

「けど、雪やべーよ? 雪かき経験ないと、めっちゃしんどいくらい」

「……それは、嫌だな」



 愛知は雪の影響が少ない地域がほとんどなので、雪国育ちの覚に言われるとすぐに遠慮が前に出た。暑いのも嫌だが、寒いのも嫌なので日本の気候に四季があるのを少し恨んだ時期もあったくらい。


 とはいえ、そこそこ大人になったのと、覚との結婚で在宅環境も変わったから……今までにない、過ごしやすさは獲得した。下手に文句を言う必要はないし、覚への好意もlikeからloveにしっかり変わったから。


 主に、食事がきっかけではあるけれど。



「あ~。食った……」

「おつゆ飲み干すくらいとは思わなかった……」

「帰省するとき、ここの支店来たいと思ったからな~。マチちゃんには地元ラーメンより紹介したかったんだよ」

「……支店で、この込み具合?」

「本店は冬場が本気なくらいに、列えぐいよ?」

「マジか~~……」



 地元おすすめを紹介してくれたのが、本当に嬉しかったことあって。道の駅などで氷見うどんの値段を見た時は少し腰が引けたものの……覚が予算を出してくれたので、しっかりと細麺も含めて購入することが出来た。


 翌日の新幹線の時間まで堪能した焼き肉ランチも文句のつけどころがないくらいに、たっぷりと食べてしまい……関東に戻る帰路は満腹の理由もあってずっと寝扱けてしまったとさ。

次回はまた明日〜

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