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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第27話 帰省中の食い倒れ(回転寿司編)



「……回転寿司だよね?」

「回転寿司だよ?」



 万智子の知る、『回転寿司』と言えば。百円単位から食べれるお手軽なジャンクフードを想像していたのだが。


 覚の実家でもある富山県に新幹線で移動したあと、彼の母親と待ち合わせしている最中に目を丸くしてしまったのだ。


 あまりの行列の多さと、メニューに書かれている価格の違いに。



「の、のどぐろ一貫で500円!!?」



 北陸代表の寿司ネタの値段にそれだけビビッてしまったのだが。ほかのメニューを見ても、ランチセットがそれなりに高いのに、背筋が凍ってしまうような痺れを感じた。一応、この店もチェーン店扱いらしいが、値段が違い過ぎて驚きが止まらない。


 それくらい、漁港があるところは鮮度もなにもかも違うと言うことなのか。



「や~、ごめんねぇ? 遅くなって」



 先に待合室にいたふたりに、老年の女性が声をかけてきた。覚の母である峰子だ。七十後半だというのに、服装もおしゃれで足腰もしゃっきりしている。普段から家事仕事を頑張っている女性は、年配になっても違うのかと、万智子は自分の母親と比較してみた。万智子の母はのんびりパートをしているが、足腰はしっかり者の六十後半だったと思う。



「まだ結構並ぶし、いいよ。母さん」

「北御前って言うから、ちょっと張り切っちゃってねぇ? 新幹線で疲れてない?」

「えと……大丈夫です。お義母さん」

「そんなら、ええけど。ここすごいでしょ?」

「あ、はい。びっくりしました」

「普段東京に住んでたら、そりゃ美味しいものいっぱい食べれるでしょけど? 北陸の寿司もええもんよ? 産地直送とかの距離が近いから、とにかく新鮮だしね」



 北陸の方言混じりで説明してくれる峰子は、とにかく万智子に会えたことで嬉しさ倍増がわかりやすかった。入籍前の挨拶以来だったが、万智子のどこを気に入られたのか未だ自信がない。覚が言うには、息子が惚れ込んだ女性だというのが大前提らしいが。



(いやぁ~~。若い頃、相当な美人さんだったんだろうなあ?)



 年齢相応の皺とかは仕様がないにしても。目鼻はしっかりしているし、言葉もはきはきしている。三人の子どもを育て上げ、今も針仕事を続けて収入も得ている。そんなバリバリの生き方を出来るかどうか、今の万智子にはわからない。もともと、覚の提案であっても半分不順な動機で交際と結婚をしたのに……周りの人たちは誰もが親切だ。


 まだアシの仕事は研修期間が終わったばかりとは言え、これからドミノのところで下地を積む作業が続く。自分の連載を持てるかどうかなんて、先のことはわからないままだ。


 それでも今は、少しばかりの家族との団欒を過ごすことが大事。


 覚の兄たちは、どうしても仕事の都合が重なっていてお盆シーズン手前でも来れないそうだ。少し残念だが、ほっともしている。いきなりの義兄、義姉らとの対面はまだ心の準備が整っていないからだ。



「258番でお待ちのお客様~」



 そして、万智子たちの順番が来たので……テーブル席に向かう。ボックス席でもよかったが、回るところ見とく?と覚に聞かれたのでせっかくなら、とパネルで予約したのだ。


 中に入ると、百円寿司のファンシーな装いとは真逆の厳かな雰囲気に吞まれそうになる。服装は観光向きの楽なものにしたのは間違いだったかと思いかけたが、ほかの客を見てもラフな格好はちらほらいたので安心出来た。



「さ。なんでも好きなの食べまっし」

「あ、えと?」

「食べていいってこと。母さん、マチちゃんは愛知とか関西の方言しかわかんないんだから」

「あら、ごめんね? つい、普段は方言だから」

「い、いえ……」



 関西弁にも似たイントネーションはまだしも、実際耳にする方言まではまだよくわかっていない。当然のことだが、なんとなくニュアンスで乗り切ろうとしたけれど、覚が隣で翻訳してくれるのは有難かった。


 峰子は標準語をあんまり話さないようなので、無理してほしくはないが気を付ければ大丈夫だそう。



「はい、のどぐろ」



 そして、さっとのどぐろの皿が普通に目の前に出された。味噌汁はあら汁を頼んだあとに、覚がなにも前触れなくその皿をレーンから万智子の前に置いてくれたのだ。



「これが……高級魚!?」



 詳しい情報は万智子にはわからないが、きらきら輝く寿司が目の前にある。一貫500円越えの寿司が目の前に……だが、取ってしまったので食べなくてはもったいない。万智子はガリに醤油をつけてからのどぐろのネタにさっと塗ってから口に運んだ。



「あら~。気に入った?」



 峰子の言葉が少し遠くに聞こえるくらい、万智子は口に運んだ初めての寿司ネタに感動を覚えてしまっていた。とにかく、脂のとろけ具合と身の歯応えが言葉にしにくいくらいに美味し過ぎたのだ。



「あーね。やっぱ、こういうの好きか? だったら、ちゃんとしたえんがわもいいっしょ?」

「取ろうかね?」

「母さんは、ランチの北御前?」

「今日はそうしようかね? 万智子ちゃんは好きなの色々食べた方がいいだろうし」

「……ありがとうございます」



 まだ序盤の序盤なのに、こんな美味しい食べ物が世の中にあっていいのかと感動が止まらないでいた。そのあとに来た、シャケのあら汁もだが、どの皿も美味しくて美味しくて覚が薦めまくるので箸が止まらない。


 結果、かなりの量を食べたお会計を耳にしたときには……銀座とか都内高級寿司店並みでは!?と心配になったが、峰子が専用の商品券を持っていたので大した痛手にはならなかったらしい。



「嫁が来てくれたんだし。これくらいお安い御用よ?」

「お義母さん!!」



 ウィンクこそはなかったが、覚の母親だと断言できるイケメン発言に……万智子は惚れそうになってしまったのは言うまでもない。


次回はまた明日〜

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