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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第20話 これまた豆腐のお好み焼き

 たまに食べたいと思う料理が、万智子にはあった。


 定期的にというよりは、不定期かもしれないが。覚がよく使う調味料のせいかもしれない。


 その調味料というのは、ケチャップとウスターソース。二つを合わせた香ばしい炒め料理などを嗅ぐたびに思ってしまう。


『あれ』が食べたくなってしまうと。



「さとくん! 今日の晩御飯にお好み焼きって頼めるかな!?」



 通常の平日に戻ったとある日に、万智子は出勤する前の覚に『このとおり』のポーズをしながら提案したのだった。ネクタイを締めていた覚は別段困った表情はしていなかったが。



「お好み焼き? 関西風? 広島?」

「え? どっちでも作れるの?」

「時短したいなら、ちょっと手間が違うくらいかな? 希望は?」

「……ふわふわの、関西風」

「おk。じゃ、マチちゃんにも少し手伝ってほしいことがあるんだ」

「なになに?」

「近所のいいとこのお豆腐買っておいてくれる?」

「……え? お好み焼きに豆腐??」

「原理はチヂミに似てる」

「おお!」



 それは期待大だと頷き、ほっぺにキスを贈ったらとびきりの笑顔で出勤していった。おかえしにある濃厚なものが来ると少しだけ身構えたが、来なかったことにはほっとしてしまった。


 ともあれ、ミッションを頼まれたからには、少しだけ気分をあげるのに軽く身嗜みを整えてから商店街に向かった。自転車で数分程度の距離にあるここでは、それなりにいい食材が買えるのでたまに利用している。


 覚とドライブがてらで行くスーパーはあくまで普段使い。値上がり上昇が激しい年々、家計にも優しくない物価高はどこもどこも戦々恐々。


 それもあって、こだわりのある商店のあるここでは……万智子もたまにしか買い物に来ない。ほかに誘惑もあるからだ。



(あ~~……女心をくすぐる新作スイーツとかの看板あるけど。我慢、我慢!!)



 地域発展を目指しての観光スタイルも含んだ飲食店などの誘惑が多いのだ。メニューの単価がそれなりにするので、余程のご褒美のときにしか買えないと自負しているくらい……魅惑的過ぎて危険視している。そのため、覚に言われた以外のミッションをこなすためだけに、それらの誘惑を引きずりながらも豆腐屋さんを目指した。


 別に食べてもいいのだが、いい感じに体型維持が出来てきたのは覚のお陰。次の新刊の打ち上げなんかに、彼といっしょに来た方が絶対いい。それくらいの切り替えは妻として出来るようになってきたので、今日の提案の方を優先したのだ。万智子自身が、どうしても食べたいと言ったのだから、余計なカロリーを増やしたら元も子もない。



「はい、いらっしゃい」



 目的地の豆腐屋さんでは、がんもやおからの総菜も売っていたけれど。今日は豆腐だけにしようと注文をすることにした。



「あの。豆腐300gってふたつあります?」

「はいよ。木綿と絹どっちにします?」

「あ……絹で」



 いつも使うのがそれだから大丈夫だよね、と勝手に注文してしまったが。


 RINEで確認しようにも仕事中だと既読にはならないし、多分大丈夫だと信じて買うことにした。あと、詫びも兼ねておからのクッキーだけは購入しておくことも。



「絹でいいよ?」



 覚の帰宅後に、改めて確認したが問題ないと言われたのでよかったと息を吐いた。



「聞かなかった私も悪いけど。つい、絹ばっかりだったからさ?」

「全部が全部じゃないけど。絹の方が使い勝手いいからね? 豆腐デザートも木綿よりは絹の方が多いし」

「豆腐デザート?」

「今度作ってあげるよ」

「わーい」

「生地の手伝い。もうちょい頼みたいんだけど」

「なになに?」

「さらにふわふわにするために、山芋すろうか?」

「あ、なんか関西風には使ってたかも??」

「専用の粉にもパウダーとかで入っているらしいけど。生は格別」

「やるやる~」



 豆腐、片栗粉、米粉、調味料少しに水を入れて混ぜ合わせる。そこに、万智子がすりおろした山芋を投入。



「キャベツ、ネギ、イカ天の天かす。……紅ショウガいる?」

「ん~。嫌いじゃないけど、今日はいいかな?」

「気分によるよね。紅ショウガ有り無しのお好み焼きって」

「さとくんもそうなの?」

「俺は親元が関西圏に近いとこだから、習っただけだね。兄貴らは普通になんも言わないまま食べてたけど」

「私もそうかな? 関西に近いけど、紅ショウガはお母さんたちも気分次第だった」



 むしろ、それは焼きそばに添えてある方がお互いの家で多かったらしい。父親たちが生きていた頃はどうだったか、少し昔なのであまり覚えていないのも同じだった。



「肉のっけて、両面焼いて。念のため、竹串で火の通り確認して……ソースは専用ソースより、ケチャップとウスターソースで充分」

「あとは、マヨにおかかと青のり!」

「米は?」

「味噌汁もいる!」

「んじゃ、それで完成」



 ひとまず、互いに一枚ずつ。


 ほかほかに焼き上がって、香ばしいソースの匂いが漂うこれが……万智子は、色々我慢した今日の中でやはり、食べたくて仕方なかったものだと再確認出来た。甘いものもいいが、間食が少し減った日々の生活の中で、食事に傾くとこういうのが食べたくなったのである。



「「いただきます」」



 箸で切れ目を入れ、ひと口運ぶ。ふんわりやわらかで、求めていたやわらかさがソースと抜群に相性が良くて美味し過ぎた。そこに、味噌汁、米を運ぶ。


 ふたりとも、実家の県は違うが関西圏に近い箇所なので、『お好み焼き定食』に違和感を持たない家庭で育ったのだ。オフ会のときに出身県の話をしたとき、そんな話をしたのもあって意気投合した理由のひとつにもなっている。



「ふんわふわ。昔お母さんが作ったよりもふわふわの気がする~」

「山芋だけでもいいけど。豆腐も入れるとなおふんわり感がアップするんだよね~。レシピで知っただけなんだけどさ?」

「いやいや、これはこれですっごく美味しい。米が進む!!」

「関西風だと、デンジャーな焼き方があるんだよね?」

「え、なに?」

「間に溶けるチーズ挟む」

「……ごくり」

「二枚目、決定?」

「それで、二丁頼んだの?」

「その通り! 俺も食べたい!!」

「食べよう!!」



 二枚目のデンジャータイプには贅沢にチーズ二枚という危険を伴ったが。


 少し残念なのが、ジャンク過ぎて米にはあまり合わなかったのが意外だった点である。覚もそこは予想外だったので、これからは入れるか入れないかで米の支度も変えようと言うことになった。


次回はまた明日〜

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