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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第16話 苦味気にならないピーマン肉詰め

 覚にも嫌いな食材があったらしい。


 過去形なので、今はほとんど何でも食べるすんばらしい人間である。


 その苦手だった食材というのが。



「ピーマンだったんだよねぇ?」

「典型的な嫌いな食べ物代表」

「今は好きだけど」

「他はあった?」

「んー? 強いて言うなら小松菜? ハズレだと炒めても辛いし」

「あーね」



 万智子の場合はまだキノコの大半が苦手以上に嫌いのまま。それ以外だと、こんにゃくが難しいと思っている。ゼリーはともかく、白滝も含めて塊のこんにゃくはNG。


 食感もだが微妙な灰汁の香りで、しいたけと同様に吐く気分になってしまうのだ。覚に話せば、難しいよねとまだ食卓には出たりしない。


 休日の買い出しの帰りの車で、そんなことを話し合うくらい夫婦仲は良好。運転中なので手は繋いだりしないが、買い出しの間では大荷物でないとすぐに手を繋ぎたくなるのは覚の好意の表われなのか。大きな手に包まれる感覚にはまだ慣れないが、万智子は嫌ではなくなってきた。


 恋人繋ぎに関しては、いきなりされると緊張が高まるのでびっくりするけれど。



「今日のメニューはピーマンの肉詰めだよ」

「おお。それだと食べられるんだ?」

「母親が苦労して、俺たち兄弟に食べさせようと頑張ってくれたんだ。だから、これは半分おふくろの味ってやつ?」

「半分?」

「そ。半分は俺のアレンジ込みだから」



 帰宅してからその手順を万智子も教わることになったのだが。なんと、ピーマンは縦ふたつに割った以外はそのまま利用するとのことなので驚いた。



「綿とか種抜かないの?」

「基本、ヘタくらい除けば食べられるんだよ。果物でも結構そうだし」

「果物……キウイとか?」

「あと、パッションフルーツやベリー類」

「あーね? けど、苦くない?」

「意外とそうでもないんだよね」



 肉タネを作ったあと、万智子にはホットプレートの準備をするように頼んできた。今回は大量に食べるということで、フライパンではなくホットプレートで一度にたくさん焼くそうだ。



「おお。なんか壮観」



 焼く直前の肉詰めはきれいに仕上がっており、焼いたあとにどんな味付けで食べるのか楽しみになってくるほどだ。



「ソースで煮詰めてもいいなら、今から準備するけど?」

「ケチャップとウスターソース?」

「そうそう。あと醤油足してって感じ。マヨはお好みで添えておこうか」

「異議なし!」



 まずは肉の面からしっかり焼き色をつけ、焦げ目がある程度ついたらひっくり返してホットプレートの蓋で蒸し焼きにしていく。覚が焼き加減を見たら、ソースを流し入れてまた蓋をするのだった。



「この料理のデメリットがひとつあるんだ」

「デメリット?」

「米がめっちゃ進む」

「それは……デメリットだ」



 だから、あえてひとり茶碗二杯くらいの米を炊くように万智子に頼んでいたというわけか。それだけ美味しいのであれば、炭水化物の取り過ぎはよくないと調整するのも仕方がない。万智子はそこまで太っているわけではないが、すこーしばかりふくよかな体型ではある。


 覚と外食しないわけでもないが、手料理の方が断然美味しいのでついつい米が進んでしまうのはいつものこと。ちなみに、米は覚の実家である義母が農家から定期購入しているのを仕送りしてくれるブランド米だ。新米の時期は期待していてと義母に言われているので、秋をそれなりに楽しみにしている。


 ともあれ、白米のお供になるメインが焼き上がると……ソースの関係もあって、お好み焼きのような香ばしさが鼻に届いてきた。



「ん。多分、もういいね?」



 ふたを開けたら、もうよだれ確実のメインディッシュの出来上がりとなっていた。ピーマンが程よくしなっとなっているが、肉汁をたっぷり吸っている証拠だろう。ソースとの絡み方も目の毒なくらいに仕上がっている。



「「いただきます」」



 今日は野菜はカット野菜ではなく、浅漬けくらい。汁物は覚の手作り味噌汁で具材はワカメとねぎのみ。


 メインが濃い味付けと野菜があるので、サイドは軽めと言う感じだ。直箸で肉詰めを取り、ワンパウンドと言う感じに白米の上に。種や綿を抜いていないのに、本当に大丈夫か少し気になるが。落合家の肉詰めを食べるのだから問題はないだろうと信じて、ひと口かじった。今回は大口で。



「はふ。おいひぃ!!」



 ケチャップとウスターソースでじっくり絡めたお陰もあるだろうが、ピーマン独特の苦みはほどんど感じられなかった。むしろ、甘みすら感じられて食べやすい。肉の下にあるはずの種や綿はどこにいった?と言わんばかりに一体化していた。肉タネが落ちない分、この方が食べやすいくらいな仕上がりになっている。



「うん、まあ。こんな感じだったかな?」

「ん? お気に召さない感じ?」



 覚も食べていたが、なにか納得がいかない感じではあった。



「いや、おふくろにはまだまだ遠く及ばないって感じ」

「あーね。お義母さん、凄い料理上手って感じだったもん」

「魚捌くとか、漬物とかも敵わない。いつか追い付きたいもんだけど」

「……それはすごい」



 味噌まで手作りとまではいかないが、浅漬けとかぬか漬けは覚の手作りなのだ。落合家で覚は末っ子なのだが、料理に興味を持ったのは上の兄と姉ではなく彼だけらしい。


 ふたりにはまだ挨拶したことはないのだが、まあ、いつか、くらいでいいそうだ。姉弟仲が悪いわけではないらしいが、地元が遠いので挨拶がリモートにするのが面倒と言うだけなのは……本当かわからない。


 とりあえず、思い出のピーマンの肉詰めはそれなりの仕上がりになっているのには満足していたらしく。万智子といっしょにすべて完食したのだが……。



「このソースがもったいないから、焼き飯にもしてた」

「くっ。デメリットはそこにも!!」



 さすがに食べ過ぎなので、明日の朝にソースはホットサンドに活用されることに。

次回はまた明日〜

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