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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第12話 糖質OFF、豆腐ピザ

 万智子の脳内はフルスロットルと言えるくらいに稼働していた。



「書ける。……あんなにもこんちきしょー!だったプロットが書ける書けるぅううう!!」



 次の新刊に向けての、企画書のようなもの。いわゆる、プロットを作成しているのだが。そのきっかけが二日前の『初夜』。


 昨日は起きたらネームとかに着手するくらいの気力はまったく湧き上がって来なかったが。覚に甘やかされるくらいに労わってもらった結果、夕方までベッドから出られず仕舞い。


 それくらいに、創作とリアル、あと演技でないものの差とはこのことだと実感したわけである。


 充分に事後飯もいただいてから、休んだ翌日。


 エネルギーも万全な状態になったのかで、家事もそこそこに済ませてから自分のノートPCに向き合った。台詞とト書きだけの文字の羅列でしかないが、まずはそこからスタートと覚にも言われているので問題ない。編集部分で読んでもらう相手の言葉がまず大事。


 本職の覚とは違って、万智子は同人作家でしかないからだ。この前は売れても、これからも売れるようにしないと趣味延長線から脱出は出来ないのだ。イラストレーターとして打診が来ないわけがないというのは……あくまで可能性だけ。これまでの没作品もWEBの投稿サイトでくすぶっていた垢の中で掲載し始めたが。先日のイベントで少し認知されたかで、フォロワーが少し増えたのだ。


 だから、可能性がゼロではない。頑張るしかない。意気込みを形にするのだ、とまずは指を動かした。



「ただいま~」

「お、かえり??」



 プロットに夢中になっていたにしては、昼ご飯も抜きに打ち込んでいたのかと電子時計に振り返る。しかし、まだ午後一時前。いくらなんでも早過ぎないかと、覚の方に向き直った。



「いや~? 今日先方との打ち合わせも早く済んで、直帰で良いって上司に言われたからさ? ちょっと材料買ってから帰ってきちゃった」

「……連絡」

「したけど。RINEの既読なかなかならなかったし?」

「……それは、私のミスです」



 スマホを近くに置いていても通知音に気づかないくらいに集中していたことは否めない。


 正直に謝ると、けら、と覚は眼鏡の奥で笑っていた。



「まあまあ。そんなけ元気なら、ご飯いっしょに作る?」

「うん。……今日、なに?」

「米粉ピザ」

「え、ピザ!?」

「と言っても、少し特殊な時短ピザ」

「ほー?」



 ふたりとも手を洗ってから材料を見てみると。生地の方でまたこれかというものがあった。



「あれ、って思ったでしょ?」

「また豆腐?」

「これがツナギ。糖質OFFって聞くと、いいもの食べているような気にならない?」

「なる! ……ただ、作り方の想像がつかない」

「はい。ビニール袋持ってて?」



 と言われ、中に豆腐二パック、オリーブオイル、米粉、ベーキングパウダーに塩を入れられた。これを揉んでまとめろということか。



「揉み込めばいいの?」

「その量で二人分作れるから、まとめはよろしく。その間に、具材とかソース作っておくから」

「ほーい」



 なんとなく、パンを作るイメージでぐにぐにしながら揉み込んでいけば。何度か粉をまとめる感じに手を動かせば、ぼろぼろした生地がしっとりしていく感じに。


 さらに、こねこねしていけば、つやっとまではいかないがそれなりのものが出来上がったと思う。覚に見せれば、いいね、と返事をくれた。



「フライパンにクッキングシート広げてあるでしょ? オリーブオイル垂らして生地半分乗せたら……それぞれ、ビニール袋でそれらしく薄くのばす。さらに、フォークで穴開けてしまえば土台の生地が出来上がり」

「あとは、好きにトッピング??」

「そうそう。家庭科実習みたいに、好きにやってみようか?」

「乗せすぎがよくないんだっけ?」

「火の通りが悪くなるから、薄く均一がベスト」

「なるほど」



 けど、好きに乗せていいのなら……と、用意されていたウィンナーとベーコンのスライスに玉ねぎとピーマン。あとは、ピザ用チーズにバジルたっぷり。ソースは今回、即席らしいが覚手製のピザソースで。


 覚のトッピングを見たら、とてもきれいに並べてあるのでセンスの差に軽くショックを受けた。絵は万智子の方が描けるのに、描写の差が歴然としているように感じたのだ。



「火を付けたら、底が焦げ過ぎないように……中火の弱めで、15分くらい焼くだけ」

「そこは少し時間かかるんだ?」

「下焼きしてない生地だし、火力考えるとね?」

「あーね?」



 スープはカップスープを準備。野菜は今回無し。少なくても、ピザに野菜を使っているからだ。飲むのも今回無し。まだ万智子のプロットを覚に見てもらっていないし、夕飯までの家事も手伝いたいから。


 焼き上がったら、まな板の上に乗せて包丁でカット。サクっとした音が聞こえるので、クリスピータイプに仕上がるのかと感心した。



「「いただきます」」



 オーブンで焼いたわけではないので、白い生地に仕上がっているが。一ピース持つと熱さが伝わってくる。ひと口かじれば、市販のともデリバリーのとも違うのは当然だが……ちゃんと、ピザに仕上がっていた。



「少し豆腐の匂いするけど、慣れれば美味しい!!」

「グルテンOFFなのと、米粉との配合差があるから匂いはね?」

「これ、オリジナル?」

「いやいや、投稿サイトからの参考。焼き方だけは、俺が調整入れているだけ」

「そーなんだ」



 みょーん、とチーズが伸びるところまで、このピザの美味しさの虜にはまった。プロットにも、事後飯はデリバリーでピザを頼もうとか入れても全然おかしくないと考えるくらい……一枚、ぺろりと平らげたら満腹で幸せを嚙みしめたほど。


 おやつタイムくらいに出来上がったプロットを覚に見せたら、『そんな気に入った?』と苦笑いされたのは仕方ないというべきか。


 それくらい、万智子は米粉がなくなるまでは昼ご飯を豆腐ピザで過ごした……けども。初回焼くときは、IHの火力を見誤って焦げ焦げにしてしまったのは仕様がなかった。

次回はまた明日〜

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