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流行りの婚活したら、旦那の料理が美味しすぎた〜時短レシピに胃袋掴まれた同人作家嫁の日々〜  作者: 櫛田こころ


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第101話 続刊の決定に、鮭ハラミの丼もの

 定時で退社してから、スーパーに寄る。


 毎日通うわけではないが、自炊をする身としては冷蔵庫などのストックはだいたい把握しているのだ。


 在宅ワークで日夜頑張っている妻のために、手軽に出来て美味しい料理を振舞う。それが楽しみであり、結婚して三年目の今となっては生き甲斐と言ってもいい。


 実母の背中を見て、料理に興味を持って十数年。


 オリジナルレシピを作ることはそう多くはないが、スマホを手にするようになってからは料理アプリを検索して参考にしまくる日々。慣れれば、自分なりにアレンジはしても基礎はきちんと守っている。


 そして今日も、ストックがいまいちだったと思い出したので、スーパーに寄った。



(今日はなにをしようか……)



 コミカライズの配信日には、半額セールの肉とは言え、『和牛』で牛丼をつくった。


 その前の告知記念には、ガリバタキチンをつくったりはしたけれど。


 高カロリーで、ギルティな内容ばかりだが……祝い時だとそうしたいと思ってしまうは仕方がない。


 美味しいものは、『脂肪』と『糖』で出来ているのだから。


 と、謳い文句が浮かぶくらいに、今日のメニューもギルティなものを考えてみたかった。


 何故なら、



『続刊決定しました。10話から25話へどうでしょうか?』



 と、万智子と同じ編集の佐伯から連絡が来たのだ。喜ばしいことではないか。外だから、明確にはしゃいではいけないが。非常に嬉しいことこの上ない。


 原作は覚だが、作画は万智子。


 夫婦共同制作になったと告知したあとに、色んな反応が飛び交ったものの……まあ、半分は無視しておいた。賛否両論なんてあって当然。どうせ口利きしたんだろうとか、打診を持ち込んだだろうとかのアンチコメントもSNS以外でもあったのだ。


 万智子はその反応を見たかどうかはわからないが、多少のアンチでプレッシャーを感じるような女性でないのは知っている。逆に、覚の指摘があるかないかの方を気にしているようだ。それは、佐伯からこっそり聞いている。


 とにかく、ふたりの実力を世に認められたことには変わりない。


 祝う気分になりたかったから、祝いたいのだ。それをプレゼントよりも、食事で労ってやりたかった。だから、何を作ってやりたいか肉と鮮魚コーナーを行き来していたところ……。



「お?」



 これは、いいものが出来上がるのでは? と、手に取れば口角が緩むのを自覚したのだった。



「今日は刺身??」



 帰宅して万智子が調理台に乗せたパックを見て、そう思うのは無理ない。切り身に見えるそれを調理するとしたら、自分なりの厚みで刺身にしても美味しい部位だが。


 今日はその予想をいい意味で裏切る調理法をする予定だ。



「うんにゃ。炙りにする」

「炙り!?」



 テンションが上がるのも無理はない。


 切り身の正体は、鮭のハラミ。腹回りの部位なので脂っけが多いが、刺身で食べても美味しいことは美味しい。


 だが、せっかくの祝い事。それをさらに美味しくする手間くらいは時短をする必要はないだろう。



「さて、マチちゃんに質問」

「なに?」

「ブロックにするか、なめろうのようなたたきにするか。君の今の食べたい気分はどっち?」

「むむ! 究極の選択!!」

「……いや。別にまた買えるから、つくってあげるし」

「いやいやいや。それもいいけど……今の気分ぅ!!」



 見ていて面白いが、可愛いことこの上ない。


 惚れた欲目もあるだろうが、いちいち反応するリアクションが面白いのだ。オーバーリアクションではないけれど、きらきらした目で覚の料理をつくるのを見てくれる様子だけでも可愛くて仕方がない。


 結局、万智子が選択したのは叩きだった。半生部分を少しだけ味わいたいと言う理由だった。



(合わせるのは、卵黄もいいけど……温玉の方がいいかもしれない)



 万智子も少し手伝いたい様子ではあるし、それをお願いすることにした。まだ料理初心者から少し足が出た程度の腕前ではあっても。覚の常備菜づくりの手伝いが少しずつ出来るようになったから、十分な進歩だ。


 インスタントに頼り勝ちな生活も悪くはないのだが、栄養が偏ってしまうので自炊すると満足感が得られる。覚が、母親の背中を見て育った上で得たのは、その充足感なのだ。


 ハラミは叩きにして、塩胡椒で臭みを取るために放置したらキッチンペーパーで軽く水気を取る。もう一度味付け用の塩胡椒をしてから、丼に盛られたご飯の上に乗せる。バーナーで適度に炙り、さっとめんつゆベースのタレをかける。真ん中をくぼませたら、温泉卵と針唐辛子を順に載せて完成だ。



「「いただきます」」



 ほかの副菜や汁物も出来てから、テーブルにセッティングして手を合わせる。


 そのあとに、なんとなく万智子と目を合わせたらにこにこしていたのでハイタッチのポーズをしてみた。すると、すぐにパンっ、と乾いた音を立てて合わせてくれた。



「やったね!」

「数日でこの快挙!! マジでやばいよね!!」



 続刊の確約。


 覚のこれまでの仕事の中でも、かなり早い速度だ。


 昨今のアプリ利用頻度を考えても、原作の小説の売り上げと比較すれば……コミカライズになったことで期待値が上がったのか。もしくは、嫁の作画ということできちんと読んでくれるユーザーが増えたのか。


 どちらにしても、今日も祝っていいだろう。めでたいことなのだから。


 そして、たたきにして炙ったハラミサーモン丼は文句のつけどころがないくらい美味しく出来た。双方の食べたい欲を満たした出来になったが、次はとろたくのようにしてたくあんを入れてアクセントをつける食べ方をしてもいいかもしれない。



「25話って、一気に幅が広がったよね!!」

「まあ、構成練り直すのに連載が少し遅れるけど……それはなんとかしようか」

「うん」



 開始前には出来なかった会話が少し出来るのは嬉しいが、これ以上は踏み込めない。


 なので、万智子のプロットを待ちながら……覚も少し構成を練り直してみるのだった。


次回はまた明日〜

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