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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第六章 終幕

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第五節 捕獲

「ゾゾォ……」


 うごめくゾムビー達。周囲にはぴちゃりという滴る音や腐敗臭が漂っている。



 それに対し――、


「準備は出来ているな?」


「ハイ!」


 会話を交わす身体と隊員。


「行けえ!」




「ゆんゆんゆんゆん」




 ゾムビーの動きを鈍らせる電波を送る機械が作動した。


「ゾ……ゾゾォ……」


 段々と身体の自由を奪われていくゾムビー達。4体ほど居たゾムビーはあっと言う間に戦闘不能になった。


「よし! 次だ!!」


 身体の指示で、隊員達は動き出す。特殊な素材の袋を持ち出し、ゾムビーの真上から被せる算段をする。



 すると――、


「hey!」


 遠くから外国人の声が。身体達が振り返ると、そこには武装した、十数名の在日米軍部隊が居た。


 英語で話し掛けてくる。


『アイツらをどうするつもりだ!? アイツらに手を出すなとの上から命令があった。なぜアイツらを殺してはいけないんだ!?』


 身体が右手で米軍部隊を制止した後、英語で答える。


『一つずつ答えよう。我々狩人はヤツらを生け捕りにするつもりだ。そしてヤツらを宇宙に還す。これはそちらの母国の組織、hunterでも承諾された事柄で、我々地球人とゾムビーはこれから和解の道に進む方向だ!』


『何……だと……?』


(今、settlementって聞こえたような……和解する方向にあるのを伝えているんだ……!)


(副隊長とアメ公のヤツら、何を言ってんだかさっぱりだい)


 主人公と逃隠の意見は割れていた。


 米軍部隊の一人は問う。


『成程、了解した。何か私達に出来ることは無いか?』


『……万が一、攻撃されそうになったら……殺さない程度に狙撃してくれ』


 身体は返す。


 厳重体勢の下、ゾムビー捕獲作戦が開始された。




「ゆんゆんゆんゆん」




 相変わらずゾムビーの動きを鈍らせる電波は照射されていた。身体は主人公と逃隠に呼びかける。


「ツトム! サケル! いつでも攻撃できる準備をしておいてくれ」



「はい!」

「だい!」



 二人はそれぞれ返す。


 狩人隊員はクレーン車を用い、真上からゾムビーに特殊な素材の袋を被せていく。今回は、やや大型のゾムビーだった。


「ウィーン……ガガッ」


 一体目のゾムビーに袋が被せられる。


「ゾ? ゾゾ?」


「やったか?」


 身体が声を漏らす。


「ガバッ」


 一体のゾムビーが袋に包まれた。


「ゾ……ゾ……」


 袋の中でうごめくゾムビー。しかし袋が破られる事は無さそうに見える。


「特注品の出来は上々だったか。次だ!」


 狩人部隊は次のゾムビーに目標を変える。


「ウィーン……ガガッ」


「ゾ……ゾ……」


 一体目と同様にゾムビーは捕えられていく。




「よし! 次!」




 次々とゾムビーは特殊素材の袋に包まれていった。


「ガバッ」


 最後の一体が袋に包まれた。


「やった!」


 主人公は歓喜した。


「次は紐をくくってゾムビーを閉じ込めるぞ!」


 身体の指示の下、ゾムビー達は紐で縛られる事になる。


 万が一、ゾムビーの体液が漏れ出す可能性を考慮して、特殊スーツを着た狩人隊員、逃隠、そして身体自ら、紐で縛る作業に取り掛かった。


「ふぅ……こっちは終わりだ! 他はどうだ!?」


「こちら終了しました!」


「こちらも終わりです」


「終わりだい!」


 身体が作業を終え、他の隊員に質問し、各々が返事した。


(今回は出番なし、か……。でも超能力が使える万全の調子じゃないし、仕方ないか……)


 主人公は少し残念そうだった。身体が口を開く。


「よし! 終わったな。輸送部隊、これからコイツらを鹿児島へ運ぶぞ」



「!!」

「!?」



 主人公と逃隠に衝撃が走る。咄嗟に主人公が口を開く。


「鹿児島って! ……このゾムビー達を飛行機にでも乗せるんですか?」


「無論、そうだが?」


 あっけらかんとした様子の身体。


「! ……(副隊長、何だかスマシさんに似て来たような?)」


 思いを巡らせる主人公。


「どうして鹿児島なんデスか!? 副隊長!!」


「それはな、サケル。鹿児島には、宇宙観測所があるからだ。そこではロケットを打ち上げる事が出来る。ロケットを用いて、コイツらを宇宙に還すんだ」


「なるほど! ガッテンだい!!」


「……」


 大声で答える逃隠に、無言の主人公。主人公は何か思う事がある様だ。


(この前はアメリカからロケットを飛ばしたけれど、日本にもロケットを飛ばす施設は存在するんだ……。続く宇宙開発……やっぱり人間は地球を捨てて、宇宙に滞在できる星を探すのだろうか……)


 周囲はゾムビーを輸送する準備をする中、主人公に長い沈黙が続いた。



「ツトム!」



「!」


 振り返ると、そこには身体が居た。


「副隊長……」


「これから鹿児島まで着いて行って、ゾムビー達がどうなるか見届けないか? ゾムビー達が宇宙に還れるか気になるだろう?」


「は、はい! 行きます!」


「俺も行くんだい!!」


 身体と主人公、逃隠の三人は、鹿児島へ行く事となった。



 鹿児島、宇宙観測所――、



「わぁ」



 大型のロケットを見上げる主人公。


「おっきいんだい」


 逃隠もロケットを見て興奮していた。


「今回使用するのはこれじゃあないぞ」


 身体が声を掛ける。



「!」



「あちらだ」


 身体の指差す方向には、人がぎりぎり6人は入れるほどの小型のロケットがあった。


「Boo! こんなちっこいのじゃあダメだい」


 ブーたれる逃隠。


「まぁ待てサケル。今回、ロケットは宇宙に飛ばすだけで、帰りの算段や燃料が要らないんだ。だからこの小型のロケットを使うんだ」


「! 副隊長……」


 身体の言葉で何かに気が付いた主人公は口を開く。


「ロケットは、飛ばされた後、どうなるんですか? そのまま、宇宙に放り出されたままなんですか?」


「……」


 暫くの間、身体は口を閉ざした。


 そして数秒後、口を開く。




「その通りだ、宇宙に置き去りとなる」




「!!」


 主人公は驚愕した。


「それって、問題じゃないんですか!? 宇宙に置き去りって!?」



「宇宙ゴミ、スペースデブリと言う物を知っているか?」



 主人公の言葉を遮る様に身体は言葉を発した。


「い……いいえ……」


 身体は続ける。


「文字通り、宇宙開発によって生まれた、宇宙にあるゴミだ。それらは元は人工衛星だったり、衛星などの打ち上げに使われたロケット本体や、多段ロケットの切り離しなどによって生じた破片等、様々ある。近年でも宇宙開発によって年々増え続け、対策が必要になってきている」


「そ……そんなものが……」

「だい……」


 驚きを隠せずにいる主人公と逃隠。


「今回のロケットも、作戦遂行後は例に倣ってスペースデブリと化すだろう。ゾムビーの親玉にでも溶かしてもらえれば良いのだがな。ハハ、おっと今のは冗談だ」


 身体の言葉をよそに考え込む主人公。


(まただ……また人間は地球の自然や宇宙の空間さえも破壊し汚して、侵略して行く……ゾムビーの親玉が言ってるコトも、もっともなのかも知れない)



「そろそろ打ち上げだ」



「!」


 身体の言葉で、顔を上げる主人公。


「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」


 地響きがするような爆音と共にロケットが打ち上げられた。


「ゾムビーが……宇宙へ還って行く……」


 主人公は、何か思う事がある様だった。


「よし! ロケットの発射も見届けた事だし、K県へ帰るぞ」


 身体が主人公達を連れて帰ろうとした時――、




『ヨクヤッテクレタ……』




 主人公達の頭に、謎の声が響く。


「あ……アイツだ……!」


 主人公達の脳内に音声がこだまする。


『コレデ同胞達ヲ無事、コチラヘ連レ帰ル事ガデキル……』


「見ていたのか……?」


 身体が口を開く。


「次の要求は何だ? 答えろ」


『質問ハ、一遍ニスルモノデハナイ。シカシ、答エテヤロウ』


 音声は途絶える事無く鳴り響く。


『今、月ノ軌道上ニ居ルノデ、ココカラ同胞ノ様子ヲ感ジ取ッテイタノダ。次ノ要求ハ、アノ石ノ返還ダ』


「!」

「!」


 顔を見合わせる主人公と逃隠。身体は言う。


「石の返還、か……。そう簡単に言っても、こちらは現在ある石と一緒にしらみつぶしにあの石を探している状況だ。その要求に応えるのは困難を要するだろう」


 ゾムビーの親玉は身体の言葉に対し、すぐさま返してきた。


『ソコデ、ダ……コチラデ感ジ取ッタ石ノ在リ処ヲワタシガ教エル。人間達ハソコニ行ッテ石ヲ入手スレバイイノダ』


 身体は問う。


「毎度の如く思っていたんだが、そこまでの事をしてくれるのか? それなら自分で地球に降りて自分で回収した方が早いんじゃないか?」


 親玉は返す。


『ハハハ。ソウ思ワレテモ仕方ナイカ。ワタシハ地球ノ環境ニ適サナイ体質デナ。地上デハ活動ガデキナイノダ』


 フーと溜め息をついて身体は言う。


「分かった、では石の在り処を教えろ」



『パンタナルダ』



「!」

「!?」



 親玉の言葉に反応する一同。身体は驚愕した。


「パンタナル……だと……?」


『知ッテイルノカ? 人間』


「副隊長! パンタナルって……?」


 主人公は身体に問う。身体はすぐに答えた。


「ああ、パンタナルとは、南アメリカ大陸のほぼ中央に位置する世界最大中の湿原だ」



「南……アメリカ……?」



 主人公は唖然とした。


(今度はそんなに遠いところに……!)


 更に親玉は音声を送って来た。


『知ッテイルナラ話ハ早イ。ソチラノ……狩人ト言ッタカ? 狩人ト、アメリカノ部隊トデ協力シ合イ探索シテクレレバ石モ見ツカルダロウ』




「……待て」




 身体が口を開く。


『?』


「パンタナルは限りなく広い。そんな湿原を数十名で捜したところで全て見つけることができるのか? 俺は不可能だと思う」


音声は返って来る。




『ソウカ……ナラバ今マデ通リ我々ト敵対スルツモリカ……?』




「! そ……それは……」


 動揺する身体。


『因ミニ石ハソコニ5個アル。人間ガ保持シテイルモノト合ワセテ、地上ニアル全テノ石ガ、ソノ5ツデ揃ウ』


「何!?」


 親玉の言葉に、更に虚を突かれる身体。主人公は口を開く。


「副隊長! あと5つあれば、全部の石が揃って、全てのゾムビー達と和解することができます! スマシさんの悲願が叶います!!」


「……」


 暫く考え込む身体。


「……分かった。石を集めに行こう」


 身体の言葉に、ぱぁっと明るくなる主人公と逃隠。


「副隊長……!」

「だい!」


「皆、聞いてくれ!」


 身体は口を開いた。


「今回の任務が、対ゾムビーにおいての最終任務になる。石を入手する際、ゾムビーに襲われる可能性もある。更に今回はゾムビーを捕獲しなければならない。厳しい戦いになるが、誰一人としてこの戦いの犠牲になるなよ。生きて、日本に帰ろう」


「副隊長……段々隊長に似て来ましたね」


 主人公はそっと呟いた。


「ツトム、よせ」


 身体は少し、はにかんでいた。




『盛リ上ガッテイル所悪イガ、モウイイカ?』




「!」

「!?」



 音声が飛んできた。身体が口を開く。


「ああ、こちらこそ、悪かったな。何か話があるのか?」


 再び音声が飛んでくる。


『アア、少シダケ、ナ。コチラカラ石ヲ集メルノニ期限ヲ提示スル。期限ハ今日カラ1カ月ダ』


「成程、妥当な期間だな。分かったそれで手を打とう」


 身体は納得した様子でそう返した。


『最後ニ、ロケットノ処理方法ダガ、コチラデ体液ヲ用イテ溶カシテシマッテ良イナ?』


「構わんぞ」


 親玉に対し、二つ返事で答える身体。


(これで、宇宙ゴミ、スペースデブリは発生しないから、宇宙が汚れずに済む。宇宙の環境問題の観点から言うと、人間よりもゾムビー側の方が正しいのか? 分からない)


 主人公は考え込む。


『デハ、待ッテイルゾ……』


 親玉の音声は段々聞こえなくなっていった。



「よし! では今度こそK県に帰るぞ、皆!」



 身体は一同に声を掛ける。


「……」


 未だに考え事をしている主人公。


「どうした? ツトム」


 身体が声を掛ける。


「あ! ……いえ、何でもないです」


 咄嗟に誤魔化す主人公だった。



 ――、


 一行は新幹線に乗り、K県に帰った。


「2日後、パンタナルへ向けて出発するぞ。皆、身支度を整えるように!」



「はい!」


「だい!」


「ラジャー」



 身体の指揮に対し、それぞれが応対した。



 1日後。夜、主人公宅――、



「父さん、母さん……」



 父と母を前に神妙な面持ちの主人公。


「これが最後の任務になります。暫くまた、家を空けます。許して下さい」


 頭を下げる主人公。


「顔を上げなさい、ツトム」


 父はそっと声を掛けた。主人公の両肩に手をやる。



「強い意志を持って、やり遂げるんだぞ」



「……うん!」


 主人公は答えた。


「母さんも、応援しているからね」


 母もまた、優しい言葉を掛けてくれた。


「母さん……」


 目頭が熱くなる。


「今晩は、ゆっくり寝て明日からの任務に備えるんだぞ」


「分かったよ、父さん!」


 涙を拭い、元気に答える主人公だった。



 その日の晩――、



 身体自室。


『俺だ。狩人部隊副隊長、身体だ。hunter.N州支部に繋いでくれ』


 電話越しに英語で、身体が何者かと話をしている。


『もしもし? 誰デスか』


 N州支部の者が電話に出た。


『俺だ、身体スグルだ。込み入って話がある。いいか?』


 身体は真剣な口調で話す。


『……何デスか?』


 N州支部の者は少し間を開けて問う。


『パンタナルにある石についてだ。もうそちらにも情報は入っているか?』


『ああ、あの例の念波の様なモノですネ? こちらにもその情報は入ってきていマス。ゾムビーの親玉モ、随分とご丁寧なものデス』


 淡々と会話を交わす身体とN州支部の者。


『それなら話は早い。明日からパンタナルへ向けて出発しようと思う。現地で、都合が合えば協力して任務に当たりたい』



『……』



 翌日――、



 狩人部隊は成田空港に集合した。



 身体がはつらつとした声で隊に呼びかける。


「皆! パスポート等は忘れていないか? すぐに搭乗するぞ」



 パンタナルへの旅路は長い。


 まず飛行機を乗り継ぎ、クイアバの空港へ行かなければならない。


 成田空港から出発の場合、北米都市及びブラジル国内乗り継ぎで最短32時間の長旅を経て翌日に到着する事となる。


 クイアバの空港に到着後、パンタナルのホテル(ロッジ)まではバスで約4時間かかる。


 その翌日から、本格的にパンタナル探索が始まるのである。



 さて、狩人部隊は成田空港にて、飛行機に搭乗した。座席に着くと身体が口を開く。


「ここから何度か飛行機の乗り継ぎをする。計30時間を超える長旅になるので、覚悟してくれ」


 それを聞いた主人公は頭を抱えながら呟く。


「さ……さんじゅう……」



「それと」



 身体は続けて言う。


「前回のN州行きの時の様に、人生のイロハ等は教えられないからな、俺は。……隊長とは違うのでな」


 少し笑顔になった主人公は言う。


「はは……無理しないで下さいよ、副隊長」


「だい!」


 逃隠も声を掛けた。


「そう……だな」


 身体は納得した様子で頷く。飛行機は飛び立った。

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