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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第六章 終幕

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第三節 手袋(相棒)

『日本ノ組織ノ副隊長ハ分カッテイタヨウダッタナ、事ノ発端ヲ』



 日は遡り、狩人ラボでゾムビーの親玉と通話した日――。



(回想)


『ゾムビーが地球に発生し始めたのは、我々地球人が宇宙に足を踏み入れて、ゾムビーのウイルスを地球に持ち帰ったからだ。違うか?』


『そ、……ソレは……』


『その時にあの石も数個持ち帰ったのだろう。ゾムビーが地上に発生した原因は、明らかに人間側にある』


(回想終了)



『あっ、あの時の会話か……!』


 N州支部の隊員は数日前の会話を思い出す。


『ソウダ』


 空気が張り詰める。


『人類ハ宇宙ヲ目指シ、何度モ宇宙ヘトロケットヲ飛バシテキタ。ソシテ宇宙ニ存在シタ我々ノ体液ヤ、大切ニシテイル石ヲ奪イ去ッタ』



「!!」

「!?」



 隊員2人は真実に触れ、動揺する。


『石ハ当時、宇宙デハ互イニヒカレ合ッテイタ。ソノ為、奪ワレタ石ニ向カッテ十数個、宇宙カラ地球ヘト飛ンデ行ッタ。我々ノ同胞達ハ石ヲ奪還スベク、ロケットノ後ヲ追ッタ。ソシテ初メニ辿リ着イタノガアメリカノN州ダッタノダ』


『! ここが始まりの場所と言われているのは、その為だったのか……!?』


 ゾムビーの親玉の話を聞いた隊員は、更に真実を事細かに耳にする。


『ソノ他ノ同胞達ハ、地球ノ自転ト公転ノ為、マッスグハ向カッテ行ケズニ、結果的ニ地球ノ様々ナ場所ヘ降リ立ッテ行ッタ。ヒカレ合ッテイタ石モ同様ニ、様々ナ場所ヘ散リ散リトナッタ』



「ウィ――ン」



 モニタリング室のドアが開いた。


『どうやら、知ってしまったようだな……』


 隊の幹部が現れた。


『お、お疲れ様です!』


 隊員は敬礼する。


『まぁ良い、他言は無用だ。もし話が漏れた場合にはお前達を処刑する』


『! ……ハッ!!』


 幹部の言葉に、更に一礼する。


『ソモソモ、人間ガ宇宙ニ来ル必要ハ無イ』


 ゾムビーの親玉は話を進める。


『人間ニハ地上、地球トイウ適シタ場所ガ有ルデハナイカ? 我々ニハ宇宙トイウ場所ガ有ル様ニ――。ソノ地球ノ環境ヲ破壊シ続ケ、居心地ゲ悪クナッタラ地球カラ離レテ宇宙ニ出テコヨウナンテ、大層ナオ話ダトハ思ワンカ?』


『火星移住計画のコトか?』


 隊の幹部が口を開く。


『!? モウ他ノ星ニ目星ヲ付ケテイルトハ……ハハ、オメデタイ連中ダ』


『私達、現場対応する者は上の指示に従うまでだ』


 隊の幹部は不満気に言う。


 仕切り直して、ゾムビーの親玉は口を開いた。


『マア良イ、人ガ集マッタノデモウ一度言ウ、地上ニ散ラバッタ、全テノ石ヲコチラヘ返シテモライタイ』


『!? おい、話はその方向で進んでいるのか?』


 隊員達に問う隊の幹部。


『いえ、回答はまだ出しておりません』


 隊員は答える。


『よし、分かった』


 ゾムビーの親玉に対して視線を移す幹部。


『その申し出に対して、我々人間にどんなメリットがある?』


 ゾムビーの親玉が口を開く。


『全テノゾムビーヲ地上カラ宇宙ヘ帰還サセ、モウ二度ト人類ヲ攻撃シナイ様ニサセル。事実上ノ停戦協定トイウヤツダ』



『!』



 幹部は驚いた後言う。


『信憑性はあるのか? その条件に』


 対するゾムビーの親玉。


『今回3ツノ石ヲ返シテ貰ッタノダガ、現ニ我々ハ攻撃ヲ止メテイルデハナイカ?』



『!?』



(回想)


『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』


(回想終了)



(確かに、あれから一週間以上月日が経過している。そして宇宙通信所から目立った報告もない……信じて……いいのか?)


『ドウスル?』


 ゾムビーの親玉が問う。


『……(やむを得ん)』


 暫く考え込んで、幹部は口を開いた。


『分かった。承諾しよう』


 ニヤリと笑うゾムビーの親玉。


『オ前ガ聡明デ助カッタゾ。アノ3ツノ石ヲ授カッタ時点デ、コチラハソチラヲ信用シテイル。期限ハ問ワナイ、ダガ早急ニ頼ムゾ』



「ジージー、……プツン」



 通信が途絶えた。


『やれやれ……ゾムビー退治よりは安全そうだが』


 ぼやく幹部、隊員達を見る。両手を軽く上げ、手のひらを見せる隊員。


『時間は倍以上に掛かりそうだ』



 日本――、


 狩人ラボ、第2訓練場。


「? ……あれ……?」


 戸惑う主人公。


「な……!?」


「だい……」


 身体、逃隠も呆気に取られる。


「リジェクトが……出せない……」


 主人公は訓練場で、リジェクトの威力を測ろうとしていた。また、何秒に一回打てるか、それも知っておこうという目論見もあった。しかし――、


「何でだ……? 出せない……」


「……」


 身体は腕を組み目を瞑る。


(超能力の威力や精度は精神面、メンタル面での調子に大きく左右される。隊長を自らの手で葬ってしまった過去を、ツトムはどこかで引きずっているのか……?)


「リジェク……」


「もういい! ツトム!!」


 リジェクトを放とうとする主人公を遮る様に言う身体。


「!」


「次はグングニルだ、出来るな?」


「ハイ! やってみます!!」


 身体の言葉に答える主人公。


「グングニル……!」


 しかし――、



「シーン」



 何も起こらない。


「そ、……そんな……」


 落胆する主人公。




「……ダメだな」




 身体が口を開く。


「隊長の事を引きずっているな? ツトム」


「……はい。多分、心のどこかで引っかかっているモノがあるんだと思います」


 力無く答える主人公。


「このままでは全く戦力にならない。それどころか、ゾムビーにやられて、犬死してしまうのがオチだぞ?」


「はい……切り替えよう切り替えようと思ってもやはり、今まで支えてもらったスマシさんを助けられなかったのは……大きくて……」


 主人公は弱々しく返す。フ――っとため息をつき、身体が口を開いた。


「そうだな。……超能力の発動は精神面が強く関わってくる。精神状態が悪ければ、力の強さも弱くなってしまう事だってある。……仕方ない。ツトム、これから暫く、狩人の活動を休め。今のままじゃあ、何もできない」


「……分かりました」


 身体は最後に言う。


「俺も隊長の事は今でも夢に出るくらい後悔しているんだ。しかし、体術を使って戦える。お前は、超能力に頼るしかないんだ。その超能力が使えないんじゃあ話にならない。力が戻るまで、心を休めるんだ」


「分かりました……失礼します」


 力無く答え、ラボを去ろうとする主人公。




「おイ!」




 顔を上げると、逃隠が居た。


「俺ハ、待ってるからナ。お前ハ、狩人に必要な人間だと思っていル。じゃあナ」


「う……うん!」


 少し明るくなる主人公。



 ――、


「ウイ――ン」


 ラボを出る主人公。


(これから、どうしようか……? 心を休めるって言われても……)


 ふと、爆破の背中がよぎる。


「忘れられるはずがないよ……スマシさん……」


 主人公は暫くその場に佇んでいた。



 すると――、


「ブー、ブー」


 携帯が鳴った。


「尾坦子さん……」


 尾坦子からのメールだった。


「『内定もらったよ! これからお仕事頑張るからね! 電話いいかな?』かぁ……『いいよ』っと――」



「ブー、ブー」



「ピッ」


 電話に出る主人公。


「もしもし」


「もしもし、やったよー。ツトム君!」


 元気に言う尾坦子。


「う……うん、おめでとう」


「? ツトム君、何かあったの? 前みたいに元気ないけど……」


 返す主人公。


「超能力、使えなくなっちゃった」


「!」


「! それじゃあ……」


「うん……ゾムビー達と戦えない……」


 驚く尾坦子に、返す主人公。


「この前言った様に、スマシさんに顔向けできるよう、前を向いて生きて行くって決めたのに……逆に引きずっているみたい……」


「そっか……」



 数秒の沈黙が、二人を包む。



「それなら……」



「!」


 尾坦子が口を開く。


「嫌な事だったら逃げたって良いんだよ? でも、キミが本当にしたいコト、本当にしたかったコトは何かな?」


「僕が……したかったコト……」



(回想)


(やるぞ! コガレ君を、家族を、尾坦子さんを! 守るんだ!!)



(拒絶……拒絶……ゾムビー達にみんなを襲わせたくない!)



(これで力を手に入れられれば、みんなを救うことができる)



 ベッドで横になっている主人公。


「僕一人が一方的に守り抜くことなんて、不可能なんだ。……一緒に、共に戦っていこう」


(回想終了)



「僕は……戦っていきたい……皆を守りたい!」



 主人公は力強く言う。


「そっか、ならやるコトは決まってるね?」


「超能力を……また使えるようになる!」


 尾坦子に返す主人公。


「その為には何かキッカケが必要だね……うーん、アドバイスがなかなか浮かばないけど、何かキッカケを見つけよう! 何かいいアドバイス見つかったら、即連絡するね!」


「ありがとう、尾坦子さん。きっかけ……か。僕もそれを早く見つけるよ、じゃあ」


「うん、バイバイ!」


「ピッ」

 

 電話は切れる。



 ――、


「きっかけ……きっかけ……と」


 ふと机の上に視線をやる。



 そこには前回の戦いで手の甲のマークだけとなった、手袋の破片があった。



「そうだ!」



 主人公は声を上げた。


「手袋をもう一度作ってみよう……何か変わるかも知れない……」



 翌、土曜日――、


 主人公は入院していた病院のデイケアに通った。受付の人に挨拶する。


「おはようございます」


「おはよう……あら、ツトム君、久しぶりー。元気にしてた?」


「ええ。まぁ、色々ありましたけど……」


 苦笑いしながら答える主人公。


「今日は何をするの?」


 受付の人は問う。


「手袋。もう一度作ろうと思って……」


 手の甲のマークを見せる主人公。


「アレ、こんなんなっちゃったのー!? まぁ……頑張ってねー」


「はい!」


 中へ進み、机に座る主人公。


「フ――、よし! やるか!!」


 型を用意し、革を切っていく。紐を通すところまで出来た。



(あの時と――、一緒だ……)



(回想)


「我ながらいい出来だなぁ。……革の質感っていいな」


 出来たてほやほやの手袋に頬ずりする主人公。


「匂いも……いい……」




「ジリリリリリリリリリリ!!」




(回想終了)



(あの後、ゾムビー達が現れて……)



(回想)


(口から吐かれる体液は無理でも、体から少し出てきている体液くらいならこの手袋で防げるかもしれない!)


 手袋を手にする主人公。



「スチャッ」



 手を入れ、指を握って動かしてみる。


「ギュッ、ギュッ」


「よし、スキマもないし、しっかりフィットしてる。……行ける……かも……」


(回想終了)



 紐を通しながら考える主人公。


「思えば、あの時はほとんど超能力無しでゾムビーに挑んだんだよな……そう考えれば今と同じ――、か……」


 二回目ともあって、手慣れた手つきで紐を通す。紐を通し終えた。



「最後は――」



 手の甲のマーク、黄色い星のマークを手にする。



(回想)


「何だ、いいしるしがあるじゃないか、ここだ」


「?」


 爆破は主人公の手袋の手の甲にある、星を指差した。


「ここに意識を集中させて、力を発動させるんだ。手を合わせてみろ」


 言われるがままに手を前に向けて、合わせる主人公。右手が左手の上になっている。


「この右手の星に意識を集中させて、もう一度やってみろ」


「はい」


(回想終了)



「ギュッギュッ」


 星のマークを紐で通していく。


(手袋もだけれど、このマークが無ければ、今の自分はなかったかも知れない。この手袋のパーツ、どれ一つとして欠けてはいけないんだ)


 気付けば昼過ぎになっていた。昼に出された食事も、半分くらい残して、主人公は手袋作りに集中していた。手袋は完成した。


「(二度目になるけど……)お帰り」


 主人公は手袋をはめて感触を確かめる。


「ギュッギュッ」


 主人公はふと、思いをはせる。


(グングニル……格上の敵と対峙し、誰かを守るという強い意志が生まれたため、発現した力……か)


 手袋の星のマークに集中してみる。




(誰かを……守る……!)




 すると――、




「ブワッ」




「!!」



 微かだが、主人公の両手が虹色に輝いた。



「シュゥウウン」



 その光はすぐに消えてしまった。


「ほ……報告だ……! 副隊長に報告しないと……!」


 嬉し涙を、少しばかり浮かべる主人公であった。



 狩人ラボ、身体の自室にて――、




「失礼します!」




「! ツトムか、どうした?」


 主人公に気付く身体。


「あの技が……グングニルが少しだけ使えるようになりました!」


「本当か!?」


 主人公の言葉に、驚きを隠せないでいる身体。


「はい! どこかへ移動して、これから見てもらおうと思って……」


「スッ」


 右手で主人公を制止する身体。


「その前に、伝えたい事があるんだ。ツトムが来てくれて丁度良かった。サケルも呼んでいるからそろそろ来るはずだ」



「コンコンコン!」



「! 噂をすれば何とやら、か」


 身体は呟く。



「失礼しまース!」



 逃隠が部屋に入ってきた。


「来たな、サケル。……今回2人を集めたのは他でもない。いや、ツトムは自分から来たんだったな。済まない……今回、これからの狩人の活動方針を伝えようと思ってな」



「!」

「!?」



 身体の言葉に虚を突かれる主人公と逃隠。


「そ……」


「それはいったイ……?」


 主人公と逃隠は口々に言う。


「単刀直入に言う」



「ゴクリ」



 2人は息を呑む。


「世界に散らばった、あの石を集めるんだ」



『!?』



 2人は驚愕した。



「あ……あの石ヲ……?」

「世界って、世界中にあの石があるのですか!?」



 再び逃隠と主人公は口々に言う。


「まあ落ち着け」


 身体は二人を宥める。一息入れた後、口を開いた。


「上の者が……huter.N州支部の者が決めた事だ……上の者も、隊長の理想とされていた、和解の道を歩もうとしているのかもな」


「一体何でそんなコトに……?」


 主人公が問う。


「例の、ヤツだ……」


「?」


 身体の言葉にハテナ顔の主人公。


「ゾムビーの親玉が、通信機器に電波を送り込んで会話を試みてきたんだ」



「!」

「!!」



 2人は驚きを隠せない様子だった。


「石を宇宙に送る代わりに、ゾムビーが人間を襲わない様に命令するらしい」



「そ……それなら」



 身体の言葉に、返す主人公。


「スマシさんの理想としてきた関係が、築けるじゃないですか!」


「そうだ。隊長も、天国で喜んでおられる事だろう」


 身体の発した言葉に、笑顔になる主人公と逃隠。


「しかし」


 身体の言葉に、表情が引き締まる主人公と逃隠。


「全ての石を集めるのは、途方も無い長旅になるだろう。ある意味、ゾムビー退治よりも厄介な任務かも知れない」


「一体どうやって石を集めるんだい!?」


 頭を抱える逃隠。そこで口を開く身体。


「石は近付けると光っていただろう? あの特性を利用して、石の場所を把握し、集めるんだ」


「な……なるほど! (確かに石が光るなら、そこを探すだけで見つけられる)」


 主人公は合点がいく様子だった。




「それに」




 再び身体が口を開く。

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