第四節 宇宙デビュー?
一行はサンフランシスコに着いた。時刻は現地で夜中の2時を回ったところだった。
「よし! 全員居るな? 今からホテルに泊まる!!」
爆破は威勢よく指揮を執る。
(……真っ暗だ。ホントに時差があるんだなぁ……)
主人公はというと、ぼけーっと突っ立っているコトしかできなかった。
「……ツトム」
と、ここで爆破が話し掛けてきた。
「あっ……ハイ!」
「今日はもう泊まるだけだが、気を抜かないようにな」
「はっ……ハイ! 気を付けます……」
見られていると、意識づけられる主人公であった。
――、
一行はホテルに到着した。
『爆破、で予約を取っている20人だ。……そうだ。宜しく頼む』
爆破は英語でチェックインの最中だ。
「スゲー!! 隊長、英語ペラペラだい!」
逃隠は両手を上げている。
「すごいね」
主人公も感心する。
「フー、終わりだ。ツトム、お前はサケルと同じ部屋で、この鍵の部屋だ」
ぺら……と、鍵を渡す爆破。
「……紙の鍵だ。初めて見た」
唖然とする主人公。
「どうやって開くんだい!? 貸してみるんだい!!」
部屋まで逃隠が持って行く様だ。
「ピピ――」
逃隠が鍵を通し、部屋のドアが開いた。
「おおぉ!」
部屋は真っ暗だった。
「どうしたんだい!? どうしたんだい!?」
混乱している逃隠。
「サケル君、落ち着いて。ここを見ようよ」
主人公が何か見つけたようだった。
『電気を付けるなら鍵をここに差し込んで下さい』
そう英語で書かれた場所に、何か鍵を入れる所があった。
「ピッ」
鍵を入れたところ、明かりが灯った。
「おおォ――!! 科学の力ってスゲー!!」
「どこかで聞いたコトがあるような……」
興奮する逃隠に対し、目が座っている主人公だった。
(今日はもう遅いから、シャワーは明日にしよう)
「サケル君、僕はこのまま寝るよ、シャワー使いたかったら使っていいよ」
「了解だい! その日の汚れ、その日のうちにって言うだろウ? 俺は風呂に入らないと寝れない性分だから入るんだい!!」
どうやら逃隠はシャワーを浴びる様だ。
「ガチャン」
シャワールームのドアが開く。
「ボフッ」
「ふぅ……」
一方の主人公はベッドに腰を掛けた。
「……そうだ!」
何かに気が付く。
「バッ!」
携帯に手をやる。
「あっ! 返信がある。尾坦子さんからだ……『アメリカ行きって何よ!? 急すぎる、何の相談も無しに!』とほほ、怒らせてしまっている」
ことの発端を考え始める主人公。
(回想)
「因みに、断ると日米安全保障条約にも引っかかるぞ」
(回想終了)
(こっ……これだ! 急な出動で、日米安全保障条約にも関わる事態だったんです、と)
「ピロリロリ!」
返信が返ってきた。
「『日米安全保障条約と私、どちらが大切なの!? もう知らない!!』って……」
主人公、完全に沈黙。
「ピロリロリ!」
「!」
再び携帯が鳴った。
「尾坦子さんからだ。……『さっきのは冗談! ゴメンね、一度言ってみたかったの……!』っはー、びっくりしたぁ。もう! 心臓に悪いよ。それで? ……『私のコトも大切だからその条約も守るんだよね! 頑張ってきて!』……(尾坦子さんが、理解ある女性で良かった……)」
感涙する主人公であった。
「バタン!」
逃隠がシャワールームから出て来た。
「何だい! ココの風呂は! 湯船に浸かろうと思ったのに湯が張ってなかったんだい!!」
(……そりゃそうでしょ)
無理難題をホテルに押し付ける逃隠に、心の中でツッコむ主人公。
「まァ良いんだい! ツトム! 明日は早イ。寝ることにしよウ!!」
「分かった。お休み」
「おウ!!」
お休みを交わす主人公と逃隠。
(そうだ……! 尾坦子さんに……)
お休みなさいと、一言メールに添える主人公だった。
翌日――、
「朝食は済んだな? 皆!」
ホテル前に狩人隊員達が20人ほど集まっていた。その前方に、爆破が立っている。
「今日は目的の地、N州まで足を運ぶ! 気を引き締めておく様に!」
「ラジャー!!」
隊員全員が気を引き締める。
「さて、もう知っていると思うが、ここからN州までの道のりは、ここサンフランシスコからラスベガスへ、まずは国内線で向かう。約一時間半のフライトになる。各自、体調を崩さない様に! 以上だ……」
――、
朝六時からの移動だった。
(少し早いけど、そんなにしんどくはないな)
そっと思う主人公であった。
サンフランシスコの空港へ到着した。飛行機に乗り込む一同。物々しい雰囲気を醸し出していた。爆破の言っていた通り、フライトは特に事故も無く、一時間半ほどで終わった。
「ラスベガスへ着いたな! 点呼を執るぞ!!」
爆破の号令とともに、点呼が始まった。狩人部隊は全員無事、ラスベガスへ到着した様子だった。
「ここからはとある車両に乗り、北西へ移動する!」
一同は軍事車両へ乗り込む。
「ア……暑いんだい……」
N州近辺の気候は、夏場に52度に上がる事もある、砂漠気候である。一同はその気候の洗礼を受けた。
(た……確かに暑い)
じりじりと、肌を刺すような日差しに、反射してくる地熱。
主人公も汗ばんできた。
「全員に告ぐ」
「!」
「!?」
爆破がトランシーバーで何か話しかける様だ。
「水分補給を怠らない様に!」
『ラジャー』
――二時間半ほどかかっただろうか。一同は遂に、目的の狩人N州支部、通称hunter.N州支部に到着した。
「oh! How are you!」
支部の者が爆破を歓迎した。
「……fine」
「スゲー!! 隊長が英語を話してるんだい!!」
「はは……(fineくらい分かろうよ?)」
興奮状態の逃隠に、主人公はジト目で相槌を打った。
『遠路はるばるようこそここ、hunter.N支部へ』
支部の者が握手を求める。
『いいえ、これが私たちの仕事ですから』
握手を交わす爆破。
(流石にこの会話は中学生の英語レベルじゃあ分からないなぁ)
二人の英語は、主人公や逃隠には話の内容が分からなかった。
『さて、今回ジャパンの狩人関東支部の方をお呼びした理由を、単刀直入に話しましょう』
N州支部の者が話を切り出す。
「ゴクリ」
息を呑む一同。
『宇宙に居るゾムビー達を倒してもらいたいのです』
「!」
「!?」
「!!」
(今、spaceって……)
主人公は、数ある英語の中で、一つだけ聞き取れた単語があった。space、つまりは、『宇宙』という単語が――。
『それは――』
爆破は口を開く。
『遂に足を踏み入れるのですね? ヤツらの根城に――』
『oh! それでは話が早い。ヤツらを全宇宙から消し去ろうではありませんか!』
「……」
爆破の表情は曇っていた。
『ご存知でしょうが、ヤツらゾムビーは宇宙からやってきた生物。そこで、ヤツらの発生源を潰してしまえばもう、地上でヤツらからの脅威に怯える事も無くなるのです』
『……その住処を先に荒らしたのはどちらでしょうか!?』
爆破は強い口調で言い放った。
『? 今、何と……?』
『! あ、いや。何でもありません。失礼した』
N州支部の男の反応で、冷静になる爆破。その様子を見て、主人公は疑問に思う。
(スマシさんがあんなに感情的になるなんて……今、何て言ったんだろう? Whichとか言ってたような……)
『……まぁ、いいでしょう。今回、宇宙に出て、戦ってもらう人員を、最低6人、用意して頂きたい』
『分かりました』
男に対して、答える爆破。
『私を含む、ここに並んだ6人でどうでしょうか?』
『OKですよ、次はhunterラボ内へどうぞ』
男はラボへと進んでいく。
「スマシさん、これからどうするのですか?」
主人公は問う。
「これから宇宙へ飛ぶんだ」
「え?」
主人公の時が、止まった。
「ええええええええええええええええ!?」
主人公ツトム、絶叫。
「何だい何だい? ホンキかい!?」
逃隠も多少テンパっている。
「ああ、大マジだ」
平然としている爆破。
「それより、中に入るぞ。あちらを待たせてはいけない」
「まぢ……ですかぁ……」
愕然としている主人公。
「うちゅう……うちゅ……」
その横で、逃隠もまた、愕然としていた。
「宇宙って……」
窓を見上げれば、空。数時間前まで、移動してきた“道”だ。
普段は遠く見あがるだけの、空。
これから、それよりも遠い果ての宇宙へ行くのだ。
正に“未知”
主人公は足元が不確かな感覚に陥ってしまうのだった。
しかし、ふとした瞬間――
「! 宇宙へ行ク? 今や俺は国外デビューしているんだい。……それが、今度は宇宙へとデビューを……。よっしゃー! 全米を泣かせてやるんだい!!」
いきなりやる気を出し始める逃隠であった。
「サケル君、ちょっと縁起悪いよ……」
一方では、相変わらずテンション低めな主人公であった。
狩人部隊はhunterのラボへと入っていく。
「ツトム、ここの壁だガ、狩人のラボとは違った金属でできてるナ」
ひそひそ声の逃隠。
「うん、見たこと無いや……」
主人公もそのラボの造りに驚いていた。
『ここデス』
案内人の男が足を止めた。
「!」
「!?」
一同はとある扉の前まで案内されていた。
「ウィ――ン」
扉が開く。そこには、いかにも何か研究していそうな、白衣姿の男達が数名、楕円形の机に並んで座っていた。
「nice to meet you!」
男のうちの一人が、爆破に話し掛ける。
「nice to meet you……」
爆破は言葉を返し、二人は握手を交わした。
(挨拶は分かるけど……)
爆破を見る主人公。
(会話の全てはとてもじゃないけど分からない……分かるのは、中学生の知ってる単語だけだ……このヒト、弱点なし……?)
ジト目の主人公。
「ツトム、サケル。そして隊員達!」
爆破が口を開く。
「会話の内容は後で必ず話す。だから、暫く待っていてくれないか? 生憎、通訳は手配していないのでな」
『ラジャー!』
「だい!!」
「ら、ラジャー!!(サケル君、だい、て……)」
隊員、逃隠、そして主人公がそれぞれに応答した。
『さて、待たせて済まなかった。今回の任務について、話して頂きたい』
爆破が男達に英語で話し掛ける。一人の男が答える。
『使いの者がもう既に話した通り、これから少数精鋭で宇宙に行ってもらいマース。そちらの隊からは6名程、宇宙へ行ってもらう事となりマース』
『成程……承知しました。出発は今日になるでしょうか?』
『oh! 話が早くて助かりマース! 今日中に出られればベストデース』
ちらりと狩人部隊側を見る爆破。
敢然とした態度の身体、
自信満々な逃隠、
冷静な隊員達、
そして自信無さげな主人公。
(ふぅ……ツトムには少々頑張ってもらおうかな)
『分かりました。本日出発の予定で問題ありません!』
『Wow! 有り難いデース! それでは今回の航路について少し説明させて頂きマース』
先程より真剣な眼差しになる爆破と身体。
『今回、月に拠点を置いて、ヤツらを迎え撃ちに行きマース。月への行き方は月軌道ランデブー・モードという方法を執って行きマース』
男は、ホワイトボードの図面が描かれた面を指示棒で指した。
『月軌道ランデブー・モードとは、次の様な方法デース!
まず、司令船と月着陸船の二つの宇宙船をセットで打ち上げマース。月軌道到着後に両者を分離し、月着陸船は月に着陸する一方、司令船は月軌道で留守番をシマース』
男はくるくると、月の周辺を指示棒でなぞる。ここで爆破が口を挟む。
『私は昔文献で読んだことがある。月探査を終えた後、月着陸船は月軌道に戻り司令船とランデブー、つまりは出会うことからそう呼ばれるんだな?』
(何だか……例え日本語だろうと分かんない内容を話しているような……)
主人公は、専門的な内容の英会話に全くついて行けてない。
『そうデース! 2つの船はドッキングしマース。宇宙飛行士が司令船に乗り移った後、月着陸船は投棄され、司令船のみが地球に帰還する、月軌道でのランデブーが必要なため、この方法は『月軌道ランデブー・モード』と呼ばれていマース』
指示棒を折り畳んで、男はまとめる。
『アポロ計画でも用いられた方法で、アポロ計画の成功例を模範とした、宇宙へのフライトとなるでしょう』
男は話を展開していく。
『宇宙に何度も飛び、それが成功していくうちに私たちの目標である火星移住計画も無事、達成できる事でしょう』
「!」
火星移住計画、その言葉に反応する爆破。表情がこわばる。
『? 何か気に障る事でも?』
『いや、何でもないんだ。続けて下さい』
男の問いに、当たり障りなく返す爆破。
『? 分かりました。今回、月へ行くにあたって想定される日数、時間は4日と6時間デース。まぁ、火星に行くには8カ月ほどかかってしまうので、月へのフライトは、火星到着の参考程度のデータにしかなりませんネー』
(今私たちが住んでいる星、地球。そこに居させてもらっているのにも関わらず、環境を自分たちで破壊し、住みづらくなったら地球を捨て、他の星に住もうなどというおめでたい計画……。それもやはりいつか実現してしまうか……)
男の話を耳に入れず、爆破は考え事をしていた。
『ですガ!!』
強い口調で言う男。
『今回の目的はゾムビー撲滅。火星移住計画の参考にすらならなくとも、この任務を達成しなければならないのです』
ピクリと、爆破は再び男の話に耳を傾ける。
『ここからは重要機密情報になります、くれぐれも他言しない様に……!』
爆破は手を上げる。そして日本語で話し始めた。
「ここから先の話は重要機密情報になるそうだ。くれぐれも他言しない様に」
『ラジャー!』
『ありがとうございます。ではこのVTRをご覧下さい』
男が話し終えると、備え付けのモニタに何か移り始めた。それはゾムビーと同じ色の、紫色の物体だった。バックは宇宙ではないかと思われる映像だった。
「カッ……キィイイ」
映像にノイズが走る。謎の音波が流れだす。そしてその音波はアメリカ人であるhunter隊員と、日本人である狩人隊員どちらにも聞き取れる言語で話し始めた。
『ゴキゲンヨウ、我ガ同胞ノ仇達ヨ……君達ハ我ラノ物デアルアノ石ヲ我ラカラ奪イ、地球ニ持チ帰ッタ……』
顔を見合わせる爆破と主人公。
『コノ罪ハ重イ……ヨッテ幾人カノ我ガ同胞達ハ地球ニ降リ立チ、君達ヲ襲ッタ……其レデモ君達ハ私達ニ牙ヲムキ続ケル……』
ざわつき始める狩人隊員達。
『モウ、終ワリニシヨウ』
「!」
「!?」
「!!」
一同に戦慄が走る。
『コレカラ一週間以内ニ地球ヲ一斉攻撃スル。女ガ居ルヤツハ抱イテカラ戦イニ臨ムンダナ……サラバダ』
「プチュン」
男が話し始める
『この念波に近い映像は、丁度2日前にhunterラボとMASAに届いていマース。映像は以上となりマース。そして、MASAの情報によりますと、とある人工衛星が、猛スピードで地球に飛来してくる、紫色の物体を発見したとの事です。事態は一分一秒を争いマース』
暫くの沈黙の後、爆破が話し始める。
「フー、仕方ない……な。ツトム、サケル、副隊長、そうだな、そこの二名! 宇宙へ飛ぶ支度を始めるぞ!」
「ラ、ラジャー」
困惑気味の隊員達。一人ポツンと立ち尽くす主人公。
「……」
天を見上げた。
(そんなむちゃくちゃなぁー)
――、
宇宙服に着替える等、準備に取り掛かる隊員達。そんな最中、爆破は思う。
(やはり、か……危ない橋と言った具合になりそうだな。果たして渡り切れるだろうか……)
その表情を伺う身体もまた、想いを巡らせる。
(隊長、大丈夫です! もしもの事があれば私が……)
――、
『……』
『OKだ』
男と会話を交わす爆破。
そして遂にその時が――、
「宇宙服は着たか!? これからロケットに搭乗するぞ!!」




