表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第四章 破壊と達成

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/58

第六節 告白

 爆破スマシ――。深夜、満月の下ライダースーツを身にまとい、バイクを走らせている。


(軍隊である私たちは常に死と隣り合わせ――。其れがどうした事か、その事実とは裏腹に、互いに傍らに居り、笑いあっている姿が当たり前のように思えていた。あの笑い合っている瞬間が、確かに私たちの日常だった。なのに――)


「何が隊長だ! 名倒れも甚だしい! クソっ!!」



爆破は自責の念に駆られていた。街道を少し飛ばし目に走る。



(喉が渇いた。何か買おう)


 爆破はコンビニに立ち寄る事とした。


「いらっしゃいませ!」


 店内に入る。


(コーヒー……は深夜帯は体に悪いか……)


 ペットボトルのほうじ茶を手に取る。


「いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!」


 店員に促される。



ふと顔を見上げると、抜刀セツナが接客を行っていた。



――様に見えた、爆破スマシには――。



「セ……セツナ!?」



 爆破は店員を凝視する。すると、抜刀によく似ただけで、店員は彼では無い、赤の他人であることが分かった。


「なっ、何でしょうか……?」


「いや、何でもない……これを下さい」


「ありがとうございましたー」


 店を後にする。満月を見上げながら、爆破は思う。


(世間は狭くて世界は広い――か。……この国でもまだ行った事の無い場所がある。しかしそんな場所でも、似たような人間に出くわすのかもな。性格も、容姿も似た、人間に)



 ――学校にて、逃隠のクラス。逃隠は窓際で、虚空を見つめていた。


「あのヤロウ……」


 右手を強く、握った。


 

 ――、


 主人公のクラス。


「セツナ……さん……」


 ガラス窓に寄りかかっている主人公。そこで




「ブ――、ブ――、ブ――」




 主人公の携帯が鳴る。


「! 尾坦子さんからだ」



『今週末、凡々駅で会いませんか?』



(……これって! デートのお誘い!?)



 ――、


 そして週末に。主人公は精一杯のオシャレをして凡々駅で尾坦子を待つ。


(一番高い靴に上着にあーだこーだ! 行ける! はず……)



「お待たせー」


(来たー!!!!)



 そこには私服姿の尾坦子が居た。




「ぶわべらぁああああ」




 主人公に致命傷を与えるには充分な威力だった。


「じゃあ、マックでも行く? 私のおごりでいいから。でも、マックくらいじゃあ、あんまりいいカッコできないかな?」


 尾坦子の声も、主人公には届いていない。


「じゃ、行こっか?」


「行くってどこに!?」


 主人公は急に声を荒げた。


「聞いてなかったの!? もう!」


 ぷんすか! といった擬音でも聞こえてきそうな態度の尾坦子。


「マックだよ! マック!」


「えっ? あ、ハイ!」


 主人公の服の裾を引っ張り、尾坦子は進む。



「何々?」


「何だアレ」



 行き交う人はその様子を見ておどける。次第に恥ずかしくなっていく尾坦子。


「手! 繋いで歩こう!」


「あ……うん」



 この間とは違い、尾坦子と主人公を隔てるモノはなく、手と手は重なった。



 今度は、周りから見ると微笑ましい光景に見えただろうか? 二人の身長は主人公の方がやや高いだけで、つり合いが取れるものだった。


「あ!」


 気付けば、マックに着いていた。


「ウィ――ン」


「いらっしゃいませ!」



 店員のその笑顔は0円だった。



「とりあえず! Aセットで!」


 主人公は座り、スプ〇イトを飲む。尾坦子もまた座り、烏龍茶を飲む。



「あのさぁ」


「?」



 尾坦子は話を切り出す。


「私って、今まで狩人の施設に居てテレビもろくに見てなかったから、最近、話題合う人いないんだよね」


「あ! うん。最近月9の……」


 とりとめない会話が続く。


(そういえば、狩人の話題ばっかり話していたから、普通の何気ない会話ができてなかったんだよな)


 主人公は、なけなしのテレビに関する話題を振りまいて、その場を繕った。自然と笑顔で答える尾坦子の姿が嬉しかった。



 ――、


「ウィ――ン」

「ありがとうございました!」



「じゃあ、次、どこ行こうか?」


「うーん(マズい、デートスポットなんて知らないからどこに行くかなんて分かんないよ……)」


「ならウィンドウショッピングとかどう? 服を見たいわ!」


 主人公は、尾坦子に促されるままにアパレルショップを訪れる。



 ――、


「どう? 似合うかな?」


 尾坦子はワンピースを持ち、体の前に合わせて見せる。


(か……カワイイ)


 主人公もご満悦である。



「何か言ってよ! もう!」



 ズイっと尾坦子が迫ってきた。


「あ……似合ってるよ、うん……」


「やた! 次はこれ、その次にこれ、お次はこれ、そして――」


 歓喜するも束の間、尾坦子は次々と服を持っては体の前に合わせて見せた。


(そういやぁ尾坦子さんって)


 ゴクリと息を呑む主人公。


(欲しがりだった――!)


「これもね!」



 小一時間、服を合わせては笑い合った。



 ――、


「で、結局買わないんだ(僕もだけど)」


「うん、まだ就業先決まってないから、お金は計画的に使わないとね!」


「それにしても……(こんなに楽しそうな尾坦子さん、始めて見た。来て……良かった)」



「なになに?」



「な、何でもないよ!」


 会話を交わす尾坦子と主人公。ひと段落して、切り出す尾坦子。


「次、どこ行こうか?」


「どこ行こうかなー?」




「よし、決めた!」




「え?」


 キョトンとする主人公。




「噴水が見える公園!」




 公園にて――。


「ここって、昔よくお母さんとよく来てたんだ」


「へぇー。そうなんだ」


「ハトが遊びに来るんだよ……ほら、来た。よしよーし」


「ホントだ」


 噴水の音が、涼しさを呼ぶ。鳩の鳴き声が、平和を表しているようだった。


「よし!」


 急に立ち上がる尾坦子。




「?」




 続いて笑顔で言う。




「好きです、付き合って下さい」




 ――、



「はい…………ってえ――!?」



 思わずノリツッコミをしてしまう主人公。


「OKってことだよね?」


「え……で、でも。僕でいいの? しかも、女の人から告白って……」


「いいじゃん! そんなコト。それに、もうこの前、告白されたようなもんだから」


「この前…………ハッ!」



(回想)


「どうして? 抱き合う事さえ、手と手を触れる事さえできないのに、何でそこまで構ってくれるの?」


「あなたのコトが大切だから」


「!」


 尾坦子に対して、主人公が目を真っ直ぐに見つめながら言い放った言葉は、胸に深く突き刺さった。主人公は続ける。


「それに、こうすると……」


 あの日つくった手袋を、主人公は手にはめていた。


「ほら、手をつなぐことができる」


 二人の手と手は一切れの布越しではあるが、確かに触れ合った。


(回想終了)



(あ、あの時!)


「あの日、あの時から私はほの字なの。ほの字って分かる?」


「ほの字って……」


 尾坦子の意味不明な一言に、錯乱する主人公。


「まぁいいわ。それで、答えは……」



 真剣な表情の尾坦子――。


 ゴクリと息を呑む主人公――。



「……はい、よろしくお願いします」



「やた!」



 明るく笑う尾坦子。つられて少しはにかむが、急にハッとなる主人公。


(ちょっと待て、付き合うってどういう状態の事を言うんだろう、メ……メールとかをお互いに毎日送り合うとか? 何か変わったことをしなければならないとか……?)


 尾坦子は口を開く。




「ツトム君!」


「!?」




「付き合い始めた訳だけど、今まで通りのツトいいム君でいいから。今まで通りに接して。それと……」


「?」


 不意に顔を近付ける尾坦子。そして――




 二人の唇は重なった。




「! ! !? ! ! !?」




 ゆでだこ状態の主人公。


「えへへ。ゾムビーじゃなくなったから、こんなコトもできちゃう。ありがと、ツトム君」


 主人公は止めを刺された。失神する主人公。




「パタり」


「えっ」




 ――、


 ゆっくりと目蓋を開ける主人公。


「おっ、目が覚めた? ツトム君」


「!」


 尾坦子は主人公を膝枕して介抱していた。




(ああ、神様よ。貴方様に感謝します)


 主人公はモテ期の絶頂を迎えたようだ。




「私ね」




「?」


 尾坦子が話を切り出す。


「また働こうと思うの。昔みたいに、病院で」


「そっか」


「採用試験もまた、受けないとね」


「うわぁ、大変そう」


 表情が歪む主人公。


「大人になったら、誰もがするコトよ?」


「大人、かぁ」


 起き上がる主人公。


「気付けば中学2年生で狩人に入隊して、気付けば中学3年生になってた。いつの間にか、大人になっているんだなぁ」


「そう、そんなものよ」


 遠くを見つめる尾坦子。


「それと、大人は時間が無いの。本当にそれはどうしようもできないわ。だから……」


「だから……」


「だから?」


 主人公は問う。




「とっても少ない、会える日々を特別な日として、少ないながらも大切にしていく……いいえ、ふたりで大切にしていこうね。ツトム君」




「うん!」


 主人公は明るく答えた。その夜、主人公は久しぶりに日記を書いた。



 ――、


 爆破スマシ――、いつもの如く戦果報告を行っている。


「……よって、抜刀セツナ隊員がゾムビー化したため、攻撃対象として処理しました」


「なんと!」


「おいおい。せっかくの新戦力を、もうダメにしたのか?」


「ここの所、激務だってのに、そんなので大丈夫か?」


 爆破は冷静に言葉を返す。


「……お静かに。こちらとしても、今回の急な襲来に対して対応が取れていなかった部分もあります。しかし、ここまでの未曾有の事態は、他のどの支部でも起こり得なかったのです」


「しかしだなぁ……」


 遂にカッとなった爆破は言う。


「皆様方は現場の空気を知らな過ぎる。よって机上の空論ばかり並べていると見受けられます。しかしそれは、現場の空気を吸っていないので、空気が読めなくて当たり前、と言ったところでしょうか?」




「ガタッ」




「何を言うか!! この小娘が!!」


「我々がこの施設に出資した恩を忘れたのか!?」




 室内の空気はヒリつくような緊張感に包まれた。そして爆破は口を開く。


「失礼。口が過ぎました。……そして誠に勝手ながら、提案があります」


「まだ言うか!」


 左手を上げる爆破。


「前々から話題に上げている、例の宝石。あれの所持権をアメリカ支部に受け渡すつもりなのですが……」



 ――、


 十数分後。


「シャ――」


 爆破がシャワーを浴びている。爆破の脳裏をよぎるのは、抜刀セツナ。


(セツナ……愉快な奴だったな……なのに……!)



「キュ……」



 シャワーを止める。戦果報告後のシャワーはルーチンになっている様だ。下着を着て、上着に裾を通す。


(あの石……ゾムビーが大量に発生し始めたのは、あの石が我らの手に入ってからだ。確実にゾムビーとあの石には、何か関係がある。それと――)


 服を着替え終わる爆破。


(もう、この支部には、ヤツらを確実に仕留められる力が、無い――)



 ――、


 数日後――、爆破は、主人公を呼び出した。


「こう言っては何ですが、今さら訓練場に呼び出して、何のつもりですか? スマシさん」


「ツトム、ここへお前を呼び出したのは他でもない。この間発現した能力について、知っておきたいからだ」


「あ……あの技……」


 虚を突かれた主人公。続いて爆破は話を続ける。


「あの技を私に放つのだ。どのようなものか、直々に味わっておきたい」


「!? 本気ですか?」


 主人公は更に、驚愕した。


「ああ。本気で……もっと言うと殺す気で、来い!」


「……はい」


 爆破の一声で、主人公は手を構えた。


「……ハッ!」


 主人公の手は、この前の虹色とは違い、ワインレッドの禍々しい色となった。


「ギン!!」


 主人公は、爆破を睨み付ける。そして、




「トン」




 主人公は爆破に額を小突かれた。


「あて……」


「額面通り受け止めるなよ、ツトム。恐い顔していたぞ」


「はい……」


 爆破のお陰で、正気を取り戻す主人公。


「ふー、悪い。さっきの指示は、無しだ。今度は、あの時の気持ちになってもう一度だ」


「ハイ!!」


「ぶわっ」


 主人公の手のひらは虹色に輝いて、光り始めた。


(これだ。これで……)


「来いツトム!!」


「ハッ!!」


 爆破の指示で、士気を上げる主人公。遂に、光りの矢を爆破に打った。




「ぱああああああ」




 爆破の体は、虹色に輝いた。そして、



「何も、起きないだと……?」



 主人公が放った攻撃は、爆破には無効化だった。


「ふむ……」


 少し考え込む爆破。


(ゾムビーには効果があり、人間には無効の能力……体力を多く消費しそうだ。光りの矢の様なモノであり、1体だけの例だが、ゾムビーを人間に戻すチカラ……)


「どうでしたか? スマシさん」


 主人公が問いかける。


「分からない事だらけだが、ここでその力をこう呼ぶ事としよう。その力の名は『グングニル』!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ