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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第四章 破壊と達成

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第五節 戦い、終わって


 主人公の脳裏をよぎるのは敗北の二文字。




「うわああああああああああ!!」




 それを払拭するべく、ゾムビーに向かって行くが、考えのない只の突進に終わる。



「ゾム……!!」



 殴打を繰り出すゾムビー。


「ゴッ……!!」


「かはっ!!」


 主人公のみぞおちに入り、悶絶する主人公。


「ツトム君!!」


 叫ぶ尾坦子。その表情は苦悩に歪んでいた。


(なんで……? どうして? さっきのは簡単に倒せたのに……)



「おい……」


「!」



 声のする方を見るとそこには身体の姿があった。避難の補助をしていたが、たまたま通りかかったらしい。そして身体は叫ぶ。



「お前が護りたかった者は誰だ!? ツトム!!」



「!」



「民間人、そして身近に居る人間じゃなかったのか!?」



「!!」



「今、お前の傍に、真に守りたい大切なものが居る! その者を助けよ! ツトム!!!!」




「はい!!」




「ザッ」


 無心だった――。心を研ぎ澄ませて、何の理由もなく、主人公は左手の人差し指と中指の間に右手人差し指を置き、次いでそのほかの指を並べて置いていった。




「ハッ!!」


 主人公の手のひらは虹色に輝いて、光り始めた。石のゾムビーは光を浴び、徐々に消滅していった。



「ゾオオオオオオオ!!!!」


「カラン!」



 そこには例の石、宝石のみが残った。


「……やった」


 辛くも勝利した主人公は、安心し尻もちをつく。


「ツトム君! やった!」


 尾坦子も歓喜する。



「!」



 主人公は何かに気付いた。それは、尾坦子の体の一部が元の人間の色、つまりは肌色になっていることだった。


「これは……」


 何かを思い付いた身体が主人公に話し掛ける。


「ツトム、さっきと同じだ。さっきと同じ要領で、いや、気持ちでやってみるんだ……!」


「は……はい」


 主人公は先程と同じ構えをし、心身を集中させた。そして尾坦子にその手のひらをやる。


「ハッ!!」


すると、




「ぱああああああ」




 尾坦子の体はみるみるうちに人間の肌の色を取り戻していった。


「あっ、これって……」


 尾坦子が呟く。そして尾坦子は完全に人間の姿となった。


「尾坦子さん!」


 主人公は歓喜のあまり涙ぐんだ。




「ひしっ」




 尾坦子が急に主人公を抱きしめた。


「えへへ。ずっとこれがしたかったの」


「尾坦子さん……」


 主人公は涙を拭いそれに応えた。


「やったな、ツトム」


 身体も労いの言葉を漏らす。しかし、




「はいはい、いちゃつくのはいいけどよう」




 心無い一言が周りから放たれた。


「お前らが居たからじゃないのか? ゾムビーが湧いて出たのは」




「!!」



 主人公は怒りのあまり右手が震えた。


「え? そんなのって……」


 流石の尾坦子もその言葉には堪えたらしい。数秒後、ずいっと身体が身を乗り出して言った。




「何を言っているんだ、貴様ら!!!! もしそうだったとしても、現に助けられているじゃないか!?」




 周囲はどよめく。身体は言った。


「ツトム、行くぞ。こんな奴ら相手してても何にもならん」


「身体副隊長……」


 主人公は動揺しながらも身体に従う事と決めた。そして身体、主人公、尾坦子で小隊を結成、三人は団体行動をとるようにした。



 ――、


 一方その頃……




「セツナァアア!! 私が分かるか!?」




「ザンッ」


「ボッ」




 抜刀セツナだった者と爆破が戦っていた。


「おいっ! セツナ!!(物事は大抵が悪い方に転ぶものだ。ゾムビーの数だって統計開始以降最悪の数字だ。だが、ここまでの事は……)」


「隊長! 抜刀隊員は! いえ、奴は攻撃対象では!?」


「分かっている! だが……」


 隊員と爆破は会話を交わす。




「ええい!」




 隊員の内の一人が堪え切れずに発砲した。



「タタタタタタタタ!」




「!! !」


 抜刀はその銃弾を全て切ってのけた。


「まさか……!」


 爆破は驚愕した。次の瞬間、


「スパッ」


 抜刀は隊員の首を切り落とした。




「ピピッ」




 何かが爆破の顔に当たる。


「体液では……ないな」


 爆破はそれを手で拭い、確認した。


 血だった。


 首を切り落とされた隊員から吹き出た血が、爆破の顔に当たったのだった。




「ひいっ……ひいいいい!!」




逃げだそうとする一人の隊員。




「ザッ」「トスン」


「がはっ……」




 その隊員も抜刀によって葬られた。


「! おのれ!!」


「ボッ!!」


 抜刀の刀が爆破される。


「セツナ!! 私だ! 攻撃を止めろ!!」


 次の瞬間、




「ザンッ」




 再び刀を発現させる抜刀。


「!」


 そして周りに居たゾムビーを斬りつけた。




「スパッ」


「ゾムゥウウ!!」「ゾムバァ!!」




「セツナ……通じたのか……?」


 安堵の表情を浮かべる爆破。――と、



「スパッ」


「ああっ!!」



 狩人隊員の首を再び斬る抜刀。


「何っ!? やはり……か」




「スパッ」「ぐあああ!!」


「ザンッ」「ああああああ!!」




 次々に襲われる狩人隊員達。爆破はその光景を見て自身に言い聞かせる。


(……本質を見極めろ、爆破スマシよ。そして迷うな、一遍の迷いもなく攻撃しろ。奴はもう、人間じゃない……!)


「バースト!!」




「ボンッ!! ボンッ!!」




 抜刀の刀、次いで右腕が弾け飛んだ。


「! 許せ……」


「ボッ! ボッ! ボン!」


 抜刀セツナは木端微塵になっていく。最後は頭が弾け飛び、抜刀の命は尽きた。



(これが……現実か……)



 爆破は静かに思う。




「隊長!」




 隊員が叫ぶ。ふと見上げると、そこには普段より一回りか二回りほどの大きさのゾムビーがそびえ立っていた。


「壁……」


 爆破は思わず声を漏らした。


「隊長!」


「クソッ!! ラボ周辺のバリケードを突破されるな!」


 隊員が叫びながら応戦する。




「タタタタタタタタ!」




「ガギィン! ガギィン!! ガギィン!!」


 全ての弾丸はそのゾムビーの体によって弾かれた。



 狩人隊員達の攻撃をものともしない壁、まさに壁のゾムビーと呼べるゾムビーだった。



「ゴッ!!」


 ゾムビーは殴打を繰り出す! 吹き飛ばされる隊員。


「小癪な!」


 隊員達は束になってゾムビーを囲い、攻撃していく。しかし――――




「ガギィン! ガギン! ガギィン!」




 全ての弾丸は弾かれた。そして――、




「ゴッ! ドゴッ!」




 その全ての隊員達は吹き飛ばされていき、狩人は爆破のみとなった。


「バ……バースト!!」


「ボンッ」




「……ゾ?」




 バーストをも無力化するその防御力。


「ハッ!!」


 ふと、思い出したように例の石をかざす爆破。


「二つ……だと……」


体内で光るのは二つの石だった。爆破は距離を置いて再びバーストを放つ。




「ボッ! ボンッ!! ボンッ!!」




しかし――



「コォオオオ」


 爆風が砂煙を上げていた。煙から姿を顕わにした壁のゾムビーは無傷だった。


「おのれ……もう一度、今度は近距離で、――だ」


 爆破は壁のゾムビーに近付きバーストを放つ。


「ハッ!!」


「ボボンッ!!」


 しかし、先程と同じで壁のゾムビーは無傷だった。


(コイツの耐久力に対してのダメージ量が少なすぎる)




「ゾォ!!」




 爆破の胸ぐらを掴む壁のゾムビー。そして、――爆破も隊員達と同じく吹き飛ばされた。


「ゴッ!! ……ドサッ」


「かっは……」


 爆破はその場に座り込んでしまう。




「スマシさん!」




 主人公の声がした。辛うじて開く爆破の目蓋。そこに映るのは身体、いつもとは違う姿の尾坦子、そして主人公の姿だった。


「俺も居るんダイ!!」


 そして見張りに飽きた逃隠も居た。


「後は……頼んだぞ。皆……健闘を……祈る」


 爆破はそっと目蓋を閉じる。



「隊長ォオオ!」



 身体が爆破の身を案じて叫ぶ。



「副隊長ォオオ!」



 それに呼応して逃隠も叫ぶ。身体副隊長に熱い抱擁を求めて走り出す。


「どうぞご無事で」


「オオォ――! ってアレ?」


 相も変わらず無視される逃隠。感動の再会となる抱擁も見事にスルーされる。




「やるぞ、サケル……」


「はっ!……あいあいサー」


「弔い合戦だ……!!」




「ザッ……」


 二人は身構える。身体は空手で言う正拳突きの前の構えを、逃隠はキックボクシングの様な構えをとる。


「今だ!!!!」




「ダッ!!」




 二人は走り出す。



「ガッ!!」「ガギィン!!」


「ゴッ!!」「ガギィン!!」



 身体は拳を、逃隠は蹴りを繰り出すも、硬い壁によって阻まれる。次に渾身の右ストレートを放つ身体。



「ビュン!!」


「ゾム!」



 それを左にかわす壁のゾムビー。




「ブン!!」



 すかさず右ストレートを裏拳に変えて繰り出す身体。


「ガギャ……」


 ヒットした。しかし……


「ピシッ」


 右拳にひびが入る。


「ぐぅ……なんの!」


 次いで左拳を掲げる身体。


 それも――


「ガギャ!!」


「ピシッ」


 両腕共にひびが入ってしまう。


「副隊長!! くっソおおおおオ!!」


 刀を振りかざす逃隠。



「フォン!」


「カッ!!」



 弾き返される。


「なァ!? なんのこれしキ!」


 両腕を体の前で組み、ダッシュする逃隠。


「行くゼイ!!」


 そのままタックルする。しかし――




「ガギャア!!」「バギ!!」




 逃隠の両腕は粉砕骨折した。


「!!!! がアアアアアア!!」


 阿鼻叫喚ともとれる悲鳴を上げる逃隠。


「サケル!! 下がってるんだ!!」


 身体が叫ぶ。


「サケル君!!」


 尾坦子を近くで守る主人公も叫んだ。




「クッそおおおおおおおお!!」




 身体は無謀ともとれるような行動に出る。考えなしに突進していったのだった。


「ゾム……」


「ゴッ!!」


 顔面にゾムビーからの重い一撃が入る。そして



「ゴン!!」


「かっは!」



 腹部への重い一撃。身体は吹き飛ばされ、肋骨は骨折した。身体副隊長、沈黙。


「副隊長ォオオ!」


 主人公は叫ぶ。


「ふく、たいちょウ……」


 逃隠は叫ぶこともできない。しかし遂には渾身の力を込めて叫ぶ。


「つ……ツトムゥ!! 行け、行くんだァアア!!」


 残るのはこの物語の主人公、主人公ツトムのみとなった。


「……行く……行くんだ……行くぞ……!!」


 主人公は自分に言い聞かせるように呟く。




「ザ……」




 身構える主人公。そして――




「リジェクトォオオ!」


 リジェクトを放つ。


「ガギィン!!」


 リジェクトは無効化だった。




(次はもっと近くで!)




「ダッ」




 主人公は壁のゾムビーの懐に入る。


「ゾ……」


 右拳を振りかざすゾムビー。


「回避の術!」


 主人公は自分の一番得意とする技を使った。回避の術で殴打を避け、リジェクトを繰り出す。


「ハッ!!」


 しかし――、




「ガギィン!!」




 その技も、当然の如く弾かれた。そして


「ゾム!!」


 主人公の腹部に、お返しと言わんばかりに一撃を加える壁のゾムビー。


「かっは……」


 吹き飛ばされる。




「ガッ」




 主人公は、ラボの壁まで飛ばされた。


「ガハ!! ガハ!!」


 余りのダメージに咳込む。


「ツトム――!! さっきのだ! さっきの技を使うんだ!!」


 目を覚ましたのは身体。持てる力をもって全力で叫ぶ。


「副……隊長」


 満身創痍の主人公。爆破も身体の声に目を覚ましたのか、目蓋をゆっくりと開いた。


「ツ……トム……行けぇ!! 行くんだ!!!」


 叫ぶ爆破。次いで


「行けェ――。ツトムぅ――!!!!」


 逃隠も叫ぶ。




 そして、




「ツトム君!! 頑張って!!」


 尾坦子も声を上げる。



 主人公は確固たる自信を持って進む。自分にとっての天敵、苦手とする石のゾムビーを倒し、文字通り自分が愛する者、その者を守ったという自信。それを持って、主人公は進む。


(尾坦子さん……皆を……守るんだ!!)


 主人公は左手の人差し指と中指の間に右手人差し指を置き、次いでそのほかの指を並べて置いていった。主人公の体は虹色に輝き始める。主人公の手のひらから光りの矢の様なモノが出始めた。



「ハッ!!」



 矢は大きさを増していく。主人公は手のひらを壁のゾムビーに向けた。


「行っけぇえええええええ!!!!」


 光りの矢は壁のゾムビーに向かって放たれた。


「ゾ……」


 壁のゾムビーは光り輝いて段々と消えていった。



「シュウウウン」



「やっ、やった……!!」



「カラン」



 そこには二つの宝石のみが残った。


「ツトム君!!」


 主人公に一番最初に近寄るのは尾坦子だった。抱きしめ、言う。


「ケガはない!?」


「おなか殴られちゃったから少しそこが……(今日は二回も殴られちゃったなぁ。でもその分二回も抱きしめられた……!)」


「ツトム!! よくやった」


 次に労いの言葉を掛けたのは爆破だった。


「何だったんだ? さっきの技は?」


「自分でもよく分かりません。でも、大切な人を守りたいと、切に願った時体が輝いて……」


「今の技になったんだな?」


「はい」


 爆破と主人公は会話を交わす。


「やったんダーイ……ってワー!!」


 近寄ろうとする逃隠の首根っこを掴んだ身体は言う。


「先程発現した技でして、こちらの女性を元の姿、人間に戻す性質も持ち合わせております」


「何!? それは本当か?」


「はい……」


「……」


 身体の言葉に、少し考え込む爆破。


「ところで隊長、セツナさんは?……」


「そうダイ! あのトサカ頭はどこダイ?」


 何の気なしに主人公は問い、逃隠もそれに続く。


「……」


 爆破は首を横に振った。



 ――、



「何……で。どうして」


「くソ……!」


「……」



 主人公は嘆き、逃隠は怒り、身体の顔は下を向いたままだった。


「あの……私は……」


「そうだ! 尾坦子さんは元に戻れたんだから、セツナさんだって……」


 尾坦子の一声に、反応し、続く主人公。


「ツトム、見たところあの技は体力を存分に使う技だと見受けられる。それに、この方はゾムビー化した後も正気を保ち、人の為に動けた。しかしセツナは違ったんだ。私たちに刃を向け、攻撃してきた……恐らく、元には戻れなかったであろう(今は、そう言い聞かせるしかない……)」


「そんな……」


 爆破の言葉に、ショックを隠せない主人公。爆破は続いて言う。


「子供じみた表現だが、ツトムとこの方との信頼関係と、思いが通じあってこその奇跡が生んだ産物だったのだろう」


(私って、特別だったのか……)


 尾坦子は静かに思う。




「救護班!! 急いで!!」




 ふと、隊員の声が聞こえ始めた。


「さて、……ラボはこの有様だ。上への報告からだな、私の仕事は――。今回はずさんな警備体制も惨事の原因となった……。ふぅ、皆は清掃班の手伝いでもやっていてくれ」


 爆破はそう言うと、少しふらつきながらラボの中へ歩いていった。


 爆破は自責の念に駆られていた。自らの抜刀セツナへの処遇は、遺恨の念しか残らなかった。


(狩人部隊……それは一種の軍だ。……軍を保有する上での責任の所在は……私は――もう動かなくては)



「……」



 身体、逃隠、主人公は声も出せなかった。


(もう次の事をお考えになってらっしゃるのですね……隊長。その様な忽然とした態度を取られなくとも……あなたは釈然としない事くらい分かります)


(クッ……死んでモ死なねェようなヤツが)


(セツナ……さん)


 ぼろぼろと涙を流す主人公。それを遠くで見つめる尾坦子。


(ツトム君……私、ツトム君の、あなたの助けになりたい。あなたを助けたい。あなたを……私、あなたのコトが好き)



 ――、


 ラボは数時間かけて清掃された。しかし、施設は所々破壊され、隊員達はラボ設立以来最悪の死傷者を出した。

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