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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第三章 旅先珍道中

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第六節 年の瀬


 ――冬、12月。K県にも、ちらほらと雪が舞い降りる季節となった。



 ――平々凡々中学校、主人公の教室。国語の授業中だが、何故か落ち着きが無い主人公。


(もうすぐ、クリスマスだ……尾坦子さんに何かあげないと……クリスマス? ネックレスとかかな? いや、中学生には早いし、高価過ぎる……クリスマス……クリスマス……クリスマス)


「ここー、分かるやつ居るかー? 居ないか。じゃあ、ツトム。答えろ」


 教師が主人公を指名する。




「く、クリスマス!」




「ワハハハハハハハ」


 突然の、主人公の失言に、笑いに包まれる教室。



「何だツトム、そんなにクリスマスプレゼントが恋しいか? お母さんにしっかりお願いしとけよー。因みに、不正解なー」



「ハハハハハハハ」


 教師の発言を聞き、再び笑いに包まれる教室内。


(! ……)


 カァーっと赤くなる主人公。


「はァ――、やれやレ」


 主人公の後ろで、逃隠はあごに手を掛け、ため息を吐いていた。



 ――放課後、主人公はトボトボと帰路に着こうとしている。


(赤っ恥を搔いてしまった……恥ずかしい……でも!)


 急に目をキッとさせる主人公。


(終わった事は終わった事だ。次の事を考えよう! クリスマスプレゼント……今日、選びに行こう!)


 駅へと走り出す主人公、その足取りは軽い。



 ――、


「ガタンガタン……」


 電車に揺られる主人公。電車の座席に座っている。



(次だ!)



 M駅で降りる主人公。二階建てで通路も立体感溢れる駅、いかにも都会じみた場所に、主人公は降り立った。


「……ゴクリ」


 若いカップルで溢れる、そんなソフトムードな雰囲気にのまれる主人公。しかし、


(こ……ここなら、いくらでもプレゼントを見つけられそうだ!)


 希望を持って歩みを進める。



 ――、


 駅周辺のアクセサリーショップに立ち寄る主人公。品物を見る。


「どれも……高い……あっ!」


 何かに目が行く主人公。


「このブレスレット……5千円だ……ギリギリだけど、買える……」


 それは、小さな花の飾りが幾つかついた金属製のブレスレットだった。


「デザインも悪くない……これだぁああ!」


 主人公は、即決でそのブレスレットを購入した。



「ありがとうございました!」



 店を出る主人公。


「買っちゃった……」


 ドキドキが止まらない。主人公は、ブレスレットがラッピングされたものを大事に大事に家まで持ち帰った。



 ――、


 そして、クリスマス。主人公が例のプレゼントを持ってラボまで来た。ラボの廊下を歩く主人公、硬くなり、ロボットの様な動きをしている。


(緊張する……なんて言って渡そうか……何も考えてない……)


「スタ……スタ…ピタッ」


 気付けば、研究室の前まで来てしまった主人公。


「あっ。もう着いてしまった……緊張するな……よし!」


扉を開ける。


「ウィ――ン」




「で、どうなんだ!?」




 扉が開くと、そこには抜刀の声が鳴り響いていた。


「!」


 目を見開く主人公。


「は……はぁ……」


 困惑する尾坦子。抜刀は、ガラス越しに尾坦子の目の前に居た


「もう一度言う! 俺と結婚してくれ!」




「ウィ――ン」




 抜刀の声を聞き、咄嗟に研究室から出てしまった主人公。


「ハァ……ハァ……そんな……(セツナさん……やっぱり、尾坦子さんのコト……)」


 息が荒くなる。


「尾坦子さんは……なんて答えるんだろう……」




 研究室内では抜刀が続けて話し掛けている。


「で、返事だ! 返事を聞かせてくれ!」


 暫くうつむいた尾坦子。そして、口を開く。


「……」



 ――、


「ウィ――ン」


 数分後、研究室の扉が開く。




「!」




 廊下へ出て来たのは、抜刀だった。


「よう、ツトムか……何でこんな所で突っ立ってんだ?」


 抜刀が主人公に問う。


「え……えっと、研究員の方に用があって……ほら、ゾムビーの事で何か新しい発見は無いか……」


 主人公は咄嗟に嘘をつく。


「ふーん、そうかよ。じゃあな」


 抜刀は去っていく。


「あっ、さよなら……(狩人に入隊してから、嘘をつく数が増えた気がする……)」


 抜刀が廊下の曲がり角を曲がるまで見届ける主人公。


「さて……(なんて答えたんだろう。尾坦子さん)」


 プレゼントを握りしめる。


(でも、このまま帰るわけには……!)



「ウィ――ン」



 主人公は再び扉を開けた。


「お疲れ様です」


 研究員達に挨拶をし、ガラス張りの場所まで歩く。そこには下を向き、椅子に座っている尾坦子が。


「あっ、ツトム君……」


 尾坦子がこちらへ気付く。心なしか元気が無いように見える。


「尾坦子さん、め……メリークリスマス!」


 主人公が謎の挨拶を行う。


「ぷっ、何それ?」


 尾坦子は手を口元に寄せて少し笑う。


「クリスマスだから、プレゼントを持って来ました! 受け取って下さい!」


 プレゼントを見せる主人公。


「なぁに?」


 尾坦子はキョトンとする。


「そこからじゃあ開けられないから……」


 主人公はそう言ってラッピングをほどき、開けていく。ブレスレットを取り出した。


「わぁ! ……綺麗!」


 少しの間、手に取って見せた後、主人公は前の様に百均のフックを取り出した。


「ここに付けてっと……本当は腕に付けてあげたかったけど……難しいから……」


 主人公は少し悲し気に笑った。


「いいわよ。仕方ないことだから。それに……充分嬉しい」


 尾坦子はそう言い、笑顔を見せる。と、少しうつむいた。


「どうしたの? 尾坦子さん」


 主人公が問う。


「……私ね、プロポーズされちゃったの。同じ人に2回も」


「! そ、それで……」


 尾坦子の言葉に、目を見開いて問いただす主人公。


「……振っちゃった」


 尾坦子がつぶやく。


(ホッ……でも、セツナさんは……)


 安心した後、少し顔を歪ませる主人公。



「……私ね」



「!」


 尾坦子が話し出す。


「一人の人を好きになったコトが無いの。患者さんはスキ。子供もスキ。おじいさんや、おばあさんもスキ。困っていたり、苦しんでいる人を助けることが大好きなの」


「尾坦子さん……」


 ポッと顔を赤らめる主人公。


「……でもね」


 続けて尾坦子が言う。


「恋愛とか、そういうスキが分からなくて、一人の男性を好きになったコトが無いの。だから……」


「だから?」


 主人公が問う。


「相手の人に、失礼だと思って、振っちゃった……これで、良かったのかな? 今では何だか、振った相手のヒト、かわいそうだと思えてきて、沈んじゃってるの……」


 黙り込む尾坦子。


「これで……良かったんだと思います!」


 主人公が言う。


「?」


 尾坦子が首を傾げる。


「本当に、好きな人とだけ付き合えばいいと思うんです。ましてや、プロポーズなんて、本当に好きじゃないのならば受ける必要なんてありません! それこそ、尾坦子さんの言う通り、相手に対して失礼です。だから……」


「だから?」


 尾坦子は問う。


「尾坦子さんにとって、本当に好きな人ができた時に、その人を大切にしてあげて下さい。その人と付き合ったり、その人と結婚してあげて下さい!」


 主人公は声を大にして言い切る。


「……うん!」


 尾坦子は満面の笑みを浮かべた。



 夕方――、とある路地。抜刀がトボトボと歩いている。手にはナイロン袋が。何か買い物したらしい。


(フラれたか……いい女だったんだけどなぁ……)


 下を向き、そのまま歩いている抜刀。すると、



「にゃあー」



 近くから猫の声が。顔を上げる。段ボール箱に3匹の子猫が捨てられていた。


「ひでぇことしやがる……待ってな」


 ゴソゴソと、ナイロン袋から何か取り出す抜刀。かつお節だった。


「手製のにぎり用に、買い溜めてみたんだが、運がよかったな、チビども!」


「にゃー……カリカリ」


 子猫たちはかつお節を食べ始めた。


「ふ――」


 その様子を見ながら深くため息をつく抜刀。すると、



「ザッ」



 何者かの足音がした。


「!」


 それに気付いた抜刀。徐々に口元が緩み、企みを含んだ笑みがこぼれる。


(ふふふ……俺の優しさに、心を打たれた子猫ちゃんが、正に現れたって訳か……)


「バッ」


 振り向く抜刀。


「ゾ……」


 そこに居たのは、ゾムビーだった。




「! てめえかよ……!」




 身の毛がよだつ抜刀。


「まぁいい。腹いせだ!」


 すぐに表情を変え、走り出す抜刀。



 ――5分後、そこには、バラバラになったゾムビーの残骸があった。


「ふぃ――。まぁ、こんなもんよ! ……あ、ラボへの連絡、しねぇと……清掃班だけ、呼んどくか」


 携帯を取り出す。


「もしもし、俺だ。抜刀セツナ。清掃班、頼む」


 数分後、歩き出す抜刀。


(さて、次だ次。くよくよ落ち込んでっと男らしくないからなぁ。星の数ほど女はいる! 奴だけが女じゃねぇ! ……でも、何度も告白した方がいいって言う話もあるしなぁ……どうすっかな?)


 あまり男らしくはない抜刀であった。



 ――、


「ビュン! ビュン!」


 ――逃隠邸、庭。夕日が傾く中、逃隠が刀で素振りをしている。


「クリスマスだというのに、感心だな。サケル」


 逃隠カイヒが家の中から立って言う。


「親父……」


 少し素振りをやめる逃隠。


「どうだ、サケル。クリスマスプレゼントと言っては何だが、そろそろ犬でも飼ってみないか。良ければ買いに行ってやるぞ」


「……」


 父の言葉に、少し考え込む逃隠。


「いヤ……いイ……」


「!」


 逃隠の言葉に、逃隠カイヒは眉をひそめる。


「この戦いガ、全部終わったラ……その時頼ム。俺ハ、まだまだ弱イ……」


「……ビュン! ビュン!」


 そう言い終えて、素振りを再開する逃隠。


「ふぅむ……」


 少しだけ笑みを浮かべる逃隠カイヒであった。



 ――、


「ガッシャン……ガッシャン……」


 ――夜、身体がラボのトレーニングルームでウェイトトレーニングを行っている。



「やあ、ここに居たか」


「!」



 爆破が現れた。


「ケガの調子はどうだ? 副隊長」


 爆破が問う。


「ええ、お陰様で、後はリハビリを残すのみとなりました。この通り、引っ付いています」


 答え、手を動かして見せる身体。


「そうか……それは良かった。しかしまぁ、なんだ。クリスマスの夜と言うのに、お前はリハビリにトレーニングばかりなんだな……この後、食事にでも行かないか?」




「!!」




 爆破の言葉に衝撃を受ける身体。


「何だ? 嫌か?」


「いいえ! 滅相もございません!」


 咄嗟に答える身体、同様の色が隠せない。


「そうかそうか。じゃあ、30分後くらいに出発しよう。また後でな」


 明るく言い、トレーニングルームを出る爆破。


「…………」


 一人残される身体。


(どういうおつもりなのか……)


 夜は更けていく――



 ――、


 主人公宅、リビングに家族全員が揃って食事している。


「メリークリスマス、ツトム」


「メリークリスマス! 母さん」


 母と主人公が言葉を交わす。


「ツトム、プレゼントだ」


 父が何か箱を取り出す。


「何だろう……わぁ! NITENZObuttonソフトの、最新作だ! ありがとう、父さん!」


 主人公が礼を言う。


「ふふ、それは良かった。ところで、ツトムは何歳までサンタさんを信じていたんだ?」


 父が問う。


「えぇ? 何それぇ。……えっと、小学校4年生までかな?」


「ははは、そうか。プレゼントを前日まで隠すのとか、枕元に気付かれずにそっと置くのとか大変だったんだぞ?」


「はは、そう……」


 父と子のとりとめのない会話。


「あはははは」


 母は笑っている。平和なクリスマス(抜刀を除く)が過ぎていった。



 ――、


 ――年は明け、1月。世間で言う正月が主人公家に訪れる。


「ツトムぅ――、郵便受け見てきて。年賀状が届いているかも」


 母は2階の主人公に言う。


「はーい! 見てくるよ」


 主人公は玄関に出て、郵便受けを確認した。


「うわぁあ、来てる来てる」


 郵便受けには、たくさんの年賀状が届いていた。リビングまで入り、母に言う主人公。


「いっぱい来てたよ、母さん。父さん、母さん、僕宛てに仕分けていくね」


「はーい、頼んだわ」


 年賀状を仕分けていく。


「これは、父さん……母さん……父さん……あ、僕のだ!」


 差出人を確認する主人公。


「クラスメイトからだ! 良かったぁ、出しといて」


 仕分けを続ける。


「あ、スマシさんからだ!」




「明けましておめでとう! 今年も、ゾムビーを駆逐していこう!!」




「……」


絶句する主人公。


「まぁ、スマシさんらしいや」


更に仕分けていく。


「あ、身体副隊長からだ」




「明けましておめでとう。今年も宜しく」




「……無地に、文字だけって……いかにも飾りっ気が無い副隊長って感じだ……二人とも、ラボに送ったけど、良かったのかな? まぁ、届くよね?」


 次に、逃隠からの物を見つける。


「あ! サケル君の……」




「明けましておめでとうナ! 新学期モ、カンニングさせてくレ!」




「…………(そろそろ、勉強しようね)……あ!」


 最後の1枚は友出からのものだった。




「あけましておめでとう。今年も宜しくな! 親友!」




(……コガレ君!)


 ぽわぁっと夢心地な主人公。


(新学期、楽しみだなぁ……)


 皆にとって、束の間の休息となった年末年始であった……抜刀以外は。

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