表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第三章 旅先珍道中

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/58

第五節 熱と風


「ズズン……パラパラパラ」


 かに〇楽の看板であるかに(模型)がバラバラに壊れ、落下していく。


「あア……かニ……」


 逃隠が愕然とし、絶望の表情を浮かべる。抜刀がその肩に手をやる。


「気に病むな……アレは……食べられない……!」


「ケ、けド……!」


 思わず口を開く爆破。


「何をやっとるんだ! キサマらの寸劇に付き合っとる暇は無い! 進むぞ!!」


「ハ、はイ!」

「お、おう!」


 ギョッとし、我に返る二人。すると――、



「ゾ……」「ゾゾ……」



 通りの3時の方角から、ゾムビー達がぞろぞろと姿を現してきた。


「来たな……全員、銃を構えろ!」


 爆破の指示で、狩人隊員達が攻撃態勢になる。


「……撃てぇえ!!!!」




「タタタタタタタタ!」




 爆破の号令で、銃を発砲する隊員達。


「ゾ?」

「ゾゾゾ?」


 銃弾を喰らうゾムビー達。暫く発砲は続く。



「シュ――――」



 発砲が終わり、辺りに煙が立ち込める。暫くして煙が消え去ると、ゾムビー達が居た方向がしっかりと目視できるようになった。




「!」




 爆破が目を見開く。そこには幾つかのゾムビーの残骸と、それをよそに平然と立ち尽くすゾムビー2体の姿があった。


「……やはりここにも居たか……石の……ゾムビー!」


 爆破がつぶやく。


「!」


 即座に、爆破は通路の奥の方に目をやった。更にゾムビー達が、奥から現れてきたからである。


「まだ来るか……では、ここで試しておく必要があるみたいだな。保管小隊、例の物を」


 爆破が保管小隊に指示を出す。



 保管小隊とは、隊の物品の受領、検査、保管、払い出し等の業務を行っている小隊の事である。



「ハッ」


 保管小隊の隊員が返事し、とあるケースから小さなモノを取り出す。


「パッ」


 それを握りしめる爆破。


「(上手く行くかどうか……)石よ……指し示せ!」


 爆破は手にした例の紫色の宝石をゾムビーの方へかざした。


「キラッ」


 すると、前に立っていたゾムビー2体と、奥から向かって来ようとしていたゾムビーの内、1体の体の一部が、光り輝いていた。


「スマシさん! あの光は……?」


 主人公が爆破に問う。爆破は声を大にして言い放つ。




「ああ。皆! よく聞いてくれ! 今、体の一部が光り輝いているゾムビーは、石のゾムビーだ! 更に言うと、光り輝いている部分に、ゾムビーを強化している宝石がある!」



「……なるほド!」

「へっ、そいうことか!」



 そっと言う逃隠と抜刀。二人は走り出す。



「タあああああああ!!」


「オラアアアアアアアア!!」



 ゾムビーの、輝いている部分の付近を斬りつける二人。


「ゾォオ!」


「ゾ!」


 横に真っ二つになり、崩れ落ちるゾムビー2体。その切り口からは、光り輝く石が。



「ピッ!」


「スチャ!」



 二人はそれぞれ、剣先に石をのせた。



「やったぜ!」


「後は任せタ!」



 後ろを振り返る抜刀と逃隠。



「スタッ」



 二人は横に除ける。



「リジェクト!」


「バースト!」



 主人公と爆破は超能力を用い、石が無くなったゾムビーを攻撃する。



「ドシャアアア!!」


「ボボンッ!!」



 大破するゾムビー達。


「よし! 隊員達は、次に奥から来るゾムビー達を狙え!」


「タタタタタタタタ」


 爆破の指示を皮切りに狙撃が始まる。


「シュ――」


 ゾムビーは石を取り込んでいる1体のみとなった。


「よシ!」


「へへっ。お次も」


 ゾムビーに斬りかかろうとする逃隠と抜刀。しかし、



「待て」



『!?』


 爆破は言う。


「私事で本当に悪いのだが、見た所、相手は1体。暫く、新手は現れそうにない。そこで、自分の実力を確かめておこうと思ってな」


「それっテ……」


 逃隠がゴクリと、息を呑む。


「サケル、セツナ。下がっていてくれないか? 私一人でどれだけ通用するか、試してみる。だが、万が一危なくなったら、頼むぞ」


爆破は言いながらツカツカと歩いていく。道を開ける逃隠と抜刀。


(初めて……スマシさんが石のゾムビーと、一人で対峙する。やれるのか……? でも、スマシさんなら……!)


 不安と期待を寄せる主人公。



「ザッ」



 爆破とゾムビーとの距離は、バーストの射程圏内に入った。手にしていた宝石をしまう爆破。


「さて……これはもう、今は必要無い。一人になってしまったな、化け物。今からその体内にある宝石と……お前の命を、貰う!!」


 手をゾムビーにかざす爆破。


「……バースト」



「ボンッ!!」



 爆発するゾムビー。


「やったか!?」


 爆風から身を守りつつ、ゾムビーの方向を凝視する主人公。立ち込めていた煙が消える。すると、


「ゾ……」


 そこにはほぼ無傷のゾムビーが立ち尽くしていた。


「やはり、一筋縄ではいかないか、石のゾムビー……ならば!」


「ボッ!」


 再びバーストを放つ爆破。更に続けてバーストを放つ。




「ボンッ! ボッ! ボボッ! ボボンッ!」




(凄い! ……あんなに連続して……)


 息を呑む主人公。


「! ! ! ‼」


 攻撃の手を休めない爆破。


「ゾ……ゾ……ゾォ……ォ……」


 初めの内は再生できていたものの、連続した攻撃を受け、次第に体が欠けていくゾムビー。みるみる内に体が小さくなっていく。


「ボッ! ボッ!」


 爆風が立ち込める中、そこにいた全員に戦慄が走る。



「……ごくリ」「す……すげぇ」「隊長……」



 ただ立ち尽くす事しかできない逃隠、抜刀、狩人隊員。


(そろそろ、仕上げか? ……全力を超える一撃を、喰らわせてやる……‼)


 目をキッとさせる爆破。


「バーストォオオオ!!」





「ボボォオオオン!!!!!!」





ゾムビーが大爆発した。



「ゴォオオオオ!!!」




 さっきまでとは比べ物にならないほどの強い爆風が、辺りに吹き荒れた。


「ぐあっ」


 主人公達は思わず手で顔を覆う。


(凄い風だ……気を抜くと、吹き飛ばされそうになる)


 腰を低くして、なんとか持ちこたえる主人公。


「ビュォオオ……」


 暫く吹き荒れた風が、ようやく止んだ。



「!」



 前方を確認する一同。そこには、直径10mほどの穴が地面に開いており、ゾムビーの姿は跡形も無く消え去っていた。



「キラッ」



 穴の上空に光り輝くモノが。


「カランッ」


 上空から落下してきたもの、それは紫色の宝石だった。それを拾い上げる爆破。


「恐ろしく硬い宝石だな。これだけは破壊できなかった……まぁ、1体なら、なんとかなるな! よし、皆。次は周囲の状況確認だ」


 あっけらかんとしている爆破に、たじろぐ一同。



(1体なら……ねぇ)

(はわわわワ)

(凄い……本当に一人だけで倒すなんて……)



 抜刀、逃隠、主人公がそれぞれ思いを巡らせる。


「? どうした? 皆。行くぞ」


 爆破はキョトンとする。


『ハ、ハイ!!』


 一同は答える。――その後、3時間にわたる川周辺の探索が行われたが、ゾムビーは1体たりとも姿を現さなかった。ただ、ゴミ等による周囲の環境の悪さが目についた。



 ――、


「いやー、ほんまに助かりましたわぁ!」


 爆破に礼を言う狩人・関西支部の男。


「いやな、超能力者や武装部隊も、こちらの支部にも居りますねんけど、先刻のドンパチで負傷してもうてやなぁ、戦える状態では無かったんですわぁ」


「そうなんですね。お役に立てて光栄です。……一つ、質問しても宜しいですか?」


 爆破はそっと口を開いた。


「はぁ、なんでありますか?」


「市は、そして貴方の部隊はこの川の状況をどうなさっているのでしょうか?」


 真剣な表情の爆破。


「はぁ……そりゃあ、ゾムビーが出てきよったら戦うて倒してますわ。市の方は、えーと、緊急速報や避難警報を放送してるんとちゃいますの?」




「そういう事ではありません!」




 答えた男に、強い口調で言う爆破。


「なな、な?」


 動揺する男。


「川周辺の環境、酷過ぎると思いませんか? 川にも道端にも、ゴミ、ゴミ、ゴミ。異臭もしています。これではゾムビーが発生しやすいのも、無理はありません。いえ! もはやゾムビー以前の問題です。立って歩ける土地がある事に感謝し、綺麗に保とうとは思わないんですか?」


「ぐぐぅ……仰る通りですわ……」


 爆破の言葉に、言い返す言葉が無い男。


「これではいくらこちらが駆けつけようとも、再びゾムビーが発生する事の繰り返しで、キリがありませんよ? 川だけでなく、この土地全体の環境保護活動にも、力を入れて下さい」


「分かりました」


 頭を下げる男。



 ――数週間後、川周辺にはゴミ箱の設置、ごみのポイ捨て禁止を呼びかけるポスターの貼り付けや、声掛け等が行われるようになり、少しずつではあるが、環境改善の兆しが見えつつある。時間は掛かるが、いつの日か、川やこの土地の環境が綺麗な状態に保たれる日が来るだろう。



 ――大阪での戦いが終わった夜、かに〇楽にて。



「かんぱーい!」



「かにダァ――」

「こいつぁ旨いかにだぜぇえ!」



 逃隠、抜刀がおいしそうにかにを食べている。


「今日は私の奢りだ。じゃんじゃん食べてくれ。東店は少し破壊してしまったが、ここは無事だ。ここの店舗にお金を使い、少々詫びを入れなければな。それと、ホテルはもう用意してある。ゴク……ゴク……ゴク……プハァ――――、生き返る」


 爆破は明るく言い、ビールを飲む。一方で主人公。


(ああ、結局、泊まりか……明日の午前の授業も……出られない。勉強、追いつけるかなぁ?)


「どうした? ツトム。顔色が優れないぞ?」


 爆破が主人公を心配する。


「あ、いいえ。ゴク……ゴク……プハァ――、おいしいです。烏龍茶」


 烏龍茶を飲み、気丈に振る舞う主人公。


「そうか、はは。ならいい」


 爆破はお酒が入っているせいか、いつもより明るい。


「ははは、……ところで、今日もすごかったですね。スマシさん。一人で石のゾムビーを倒しちゃうなんて……」


 主人公が話を切り出す。


「いや、ギリギリのところだった。無理をしたせいで、もうクタクタだ。ふわぁ――あ」


 大きな欠伸をする爆破。顔を机に伏せる。


「……もっと……強くならないと、な…………すー……すー……」


 寝始めてしまう爆破。


(……超能力を使うのって体力がいるからなぁ。スマシさんですら、疲れちゃうコトだってあるんだよな)


 戦い疲れた女性の寝顔を、優しく見守る主人公。



「爆破隊長ー!」

「吞みましょオ――!」



 抜刀と逃隠がグラス片手に言う。


「しー」


 主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。


「ん?」「ア……!」


 二人は爆破の様子に気付く。


「寝てらぁ」


「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」


「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」


 三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。



 ――翌朝、主人公達が泊まったホテルにて。


「よーし! 皆居るか? ホテルを出るぞ」


 1階ロビー。狩人隊員たち全員が帰る支度をしていた。


「!」


 主人公が何かに気付く。


「スマシさーん! ちょっと、時間下さい!」


 遠目から爆破に頼み込む。


「ん? 何だツトム。5分以内にしろよ」


「はーい!」


 爆破に返す主人公。そのまま、お土産コーナーに立ち寄った。


(……これにしよう!)


 主人公はタコ焼きさんと言うタコ焼きをモチーフにしたキャラクターのキーホルダーを購入した。


「すみませんでしたー」


 走って玄関まで来る主人公。


「何かと思えば、お土産か、ツトム。誰にあげるんだ?」


 爆破が問う。


「えへへ。内緒です」


 主人公は答えなかった。



 ――、


「ファアアン!」


 新幹線は行く。大阪からK県へ向け、ひた走る。



 ――数日後、狩人ラボにて。主人公がいつものように認証キーを入り口で使い、ラボに入った。手には大阪でのお土産を握りしめている。


「ウィ――ン」


 とある部屋へ辿り着いた。研究室である。


「お疲れ様です」


 主人公は研究員に挨拶する。


「ああ、お疲れ」


 研究員は挨拶を返す。主人公は部屋の奥、ガラス張りの場所へと歩いていく。



「あ! ツトム君!」



 尾坦子が気付く。


「尾坦子さん! こんにちは!」


「こんにちは」


 二人は挨拶を交わす。


「今日は、渡したい物があって……」


 手にしていたお土産の袋を開ける主人公。


「何かしら?」


 尾坦子は興味津々の様だ。


「じゃじゃーん! キーホルダー! この前、大阪に行ってきて、そこで買ったんだ」


 タコ焼きさんを見せる主人公。


「ふふ! カワイイ! ……でも、この中に入れられないよ? あと、私が手にしたら、溶けちゃうかも知れないし……」


 少し表情を濁らせる尾坦子。


「ふっふっふ。そこでね」


 ガサガサとカバンから何か取り出す主人公。


「これ! メタルフック」


 百均の小さなフックを取り出す主人公。


「あら!」


 驚く尾坦子。


「これをガラスに付けて、と……こうすれば、飾ることができるでしょ!」


 主人公はフックをガラスに張り付けて、尾坦子に見えるようにタコ焼きさんをフックに吊るした。


「わぁ……ナイスアイデア!」


 尾坦子は上機嫌の様だ。


「研究員の方、ここにコレを飾ってても大丈夫ですか?」


 主人公は研究員に問う。


「ああ、内部に影響が無い様だからいいよ」


「ありがとうございます!」


 主人公は研究員に返す。


「ありがと、ツトム君」


 主人公に礼を言う尾坦子。


「喜んでくれて、嬉しいよ」


「またどこか行ったら、何か買って来てね!」


「ははは……(結構欲しがりなんだ、尾坦子さん……)」


 少しばかりたじろぐ、主人公であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ