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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第三章 旅先珍道中

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第一節 兆し


「えー、4X+Y=3とありますが、こちらの式に先程出したXの値を代入し……」




 平々凡々中学――、その主人公と逃隠の教室の授業風景である。数学の授業。主人公は真面目に教師の言葉に耳を傾けている。その後ろの席、逃隠はがっつりと教科書を盾にするように熟睡している。


(なるほど、式を変形するのか……移項したり、式全体を四則演算……代入も間違えて入れないようにしないと……)


 と、そこへ――、



「ブ――、ブ――、ブ――」



「!」


「!?」




 主人公、逃隠の携帯が鳴る。その音にはたと気付く主人公。逃隠も目を覚ます。




「すみません!」




 授業の中、バッと手を上げる主人公。


「ん? 何だ、ツトム」


「ちょっと頭がボーっとして……風邪みたいなので早退します」


 少し気まずかったが、教師に嘘を吐いてしまった。


「あー、そうかそうか。しっかり休めよ」


 すっかり騙される教師。


「失礼しまーす」


 そそくさと教室を出る主人公。




「ハイッ! ハイハイ!」




 逃隠も手を上げる。


「何だ? サケル」


「俺モ体調が悪いんデ早退しまース」


 悪びれる態度も取らず、あからさまにバレそうな嘘をつく逃隠。


「本当かぁー? サケル」




「あははははは!」




 教室が少し賑やかになる。


「……まぁいい、信じてやる。気を付けて帰れよ」


「あざッス! 失礼しまッス!」


 逃隠は教室を出る。


(……元気そうに見えるがなぁ……)


 教師は少し疑問に思う。



 廊下を走る主人公。


「もしもし! ツトムです。今、教室を出ました。」


「ああ、ツトムか。ゾムビーが発生した。場所はY市T町2丁目の、とあるオフィス街だ。今、そちらへ車を向かわせている」


 爆破からの、任務の電話だった。


「ハイ! 校門付近で待機します」


「ああ。じゃあ、また後でな」




「プー、プー、プー」




 電話は切れた。




「ツトムゥ!」




 後ろから逃隠が走ってきた。二人で階段を駆け下りる。


「ゾムビーが発生したのカ⁉」


「うん、T町のオフィス街でだって。移送用の車がこっちに来るから……」


 走りながら会話を交わす逃隠と主人公。



 ――1時間後、T町2丁目、オフィス街にて。


「キキー……」


 3台の車が道路の端に止まる。各車から、爆破、身体、逃隠、抜刀、狩人隊員、そして、主人公が姿を現す。


「この路地の奥、ゴミ箱が数個置いてある場所に発生したと、連絡があった。住民の避難は完了しているらしい。行くぞ!」


 爆破が指示を出す。


『ラジャー!』


 一同、応える。



 ――、


「ザッ」


 部隊が現場に到着する。




「ゾ?」


「ゾ?」


「ゾゾ?」




 そこには3体のゾムビーが存在していた。ごみ箱を開け、カラスや猫の様にゴミをあさっている最中だったようだ。


「現れたな……」


 爆破は言う。左手を、敵に向けようとゆっくりと上げていると――




「おぉっと」


「!」




 誰かが爆破の肩に手をやる。


「ここは俺にお任せあれ……ってな!」


 抜刀セツナだった。そのまま身を乗り出した抜刀は数歩進み、ゾムビーと対峙する。


「ハッ」


 右手で左腰から何かを取る動作をする抜刀。右腕には、光り輝く超能力の刀が。次に、抜刀は剣道で言う正眼の構えをとった。2秒後、真上に刀を振り上げる。


「だりゃっ!」


 刀を振り下ろす抜刀。ピシという音と共に、ゾムビーは縦に真っ二つになる。


「ズズズ」


 崩れ落ちるゾムビー。



「ゾ!」


「!?」



 斜め後ろに居たゾムビーが抜刀に襲い掛かる。




「ゾムバァアア」




 体液を吐き出してくるゾムビー。


「おっと!」


 タンッと後ろに飛び、それを避ける抜刀。


「ジュウウウウ」


 地面が溶け出す。


「うはぁ! 危ねぇ危ねぇ」




「バースト」


「ボボンッ!」




 先程抜刀が真っ二つにしたゾムビーの死骸を爆破が爆破する。


「やれやれ、威勢がいいのは最初だけか? それに私に後掃除をさせるとは」


 少し頭を掻きながら言う爆破。


「こぉんな狭い場所じゃあ、俺の刀を振り回せねぇっての! ってぇコトで、チェンジチェンジ! 選手交代な!」


 抜刀は振り向いて超能力の刀を消し、部隊の方へ歩いていった。爆破はその様子を見て、ため息をつきながら言うのだった。


「フゥ――、仕方ないな。ツトム、行けるか?」


「ハイ! やります!」


 主人公がゾムビー2体と対峙する。


「ゾ?」


「ゾ?」


「……行くぞ! リジェクトォオオオ‼」




『ドシャアアア』




 ゾムビー達は2体とも、リジェクトの餌食となった。


(やった! 2体同時に倒せた。威力も上がってきているな)


 主人公は笑みを溢す。


「お見事!」


 称賛の言葉を口にする爆破。


(……今回は俺の出番は無し、か……)


(相変わらズ、やってくれるゼ! ツトム‼)


 身体、逃隠がそれぞれに思う。


「よし! 後は周辺の探索だ! 他にゾムビーが発生していないか、隈なく探せ!」


 爆破が指揮を飛ばす。


 ――1時間半、周囲の探索が行われたが、他にゾムビーは発生していなかった。



「ご苦労! サケル! ツトム! 学校があったのにも関わらず、済まなかったな」


 爆破は二人に言う。


「いいえ」


「余裕だゼ!」


 照れ臭そうな主人公、一方で自信満々の逃隠。


「それにセツナ! バイトの方は大丈夫だったのか?」


 爆破が抜刀に問う。


「まぁ何とかなりますよ。もしもの時は狩人の方で雇って下せぇ」


 冗談交じりに明るく、抜刀は答える。


「そうだな。考えておく」


 爆破は、至って真剣な返しをした。


「これからもこのチームでゾムビー達と戦っていく。各々、協力する姿勢を忘れないように! では、帰るぞ!」


 爆破の言葉で、今回の任務は締めくくられた。



 ――狩人ラボ、会議室。爆破が男達の前で報告をしている。


「ここ1カ月間、抜刀セツナ隊員の加入もあったせいか、この狩人・関東支部は隊員の内、一人の犠牲者も出す事なく活動を続けられております」



「……順調だな」


「この調子を保ってほしいものだ」



 口々に感心の声が会議室に漏れる。



「しかし、気掛かりな事があります」



「!?」




 爆破の言葉に、静まり返る室内。


「例のゾムビーの細胞に似た性質の宝石が我々の手に渡ってから、ここK県でのゾムビー発生率がぐっと高まっています。他の九州支部や関西支部等のゾムビー発生事例の報告書を見ると、それは火を見るよりも明らかです」



「そんな事が……」


「あの宝石と何か関係があるのか……?」



 ざわつき始める室内。



「今後更に、宝石についての研究を進めると同時に、ゾムビー発生との因果関係についても調査を行っていきます」



 ――爆破のオフィスルーム。爆破が、何か資料を手に取り、椅子に腰かけている。


(やはり、おかしい。他の支部と比べて、差が大きいところでは4倍近くまでゾムビー発生率が増してきている。前年度の関東支部と比べても2.5倍……。ゾムビーの能力を高める宝石……。その宝石をゾムビーは取り返そうとしている……? 何にせよ、あの宝石はゾムビー撲滅のカギとなってくるな……)



宇宙――、


 ゾムビーの親玉が、ゾムビー達から得た情報から、地上での戦いについて考察している。


『人間共メ……妙ナ武器デ我ガ同胞達ヲ殺害スルトハ……アノ武器ニ対処スルニハ……数デ勝負シテイクトスルカ……』



 ――、


「しあわせー、広がるー、楽しいお買い物―、みんなのーみんなのーショッピンモー……」


 ――K県某所のショッピングモール。がやがやと人が賑わいを見せている。



 フードコートで食事をする者、


 服を買う者、


 布団など、寝具を見ている者、


 ゲームを試しにプレイする子供、


 ペット用の犬や猫を眺めている者など、様々である。


 このショッピングモールは、それなりに大型の、三階建てのショッピングモールだ。

 ――2階、男子トイレ。トイレ内は、軽く列ができるほど混雑していた。その個室にて――



「ふい――、間に合った間に合った」



 一人の男性が用を足していた。


「ザザ――」


 水を流す。


「ガチャガチャ」


 ジーパンを履き戻し、ベルトを留めている男性。と――、



「ゾ……」



「あん?」


 便器からの不気味なうめき声に気付く男性。何気なく便器を覗き込む。



「…………ゾゾ――――‼」


「バシャアア‼」



「シュイ―ン、シュイーン。映画泥棒は、犯罪です。○○年以下の懲役、または○○万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます」


 ――3階、シアター。映画の放映前のコマーシャル等が流れている。



「パッ」



 すると、突然スクリーンが真っ暗になり。シアター内の照明が点いた。シアターを含む、ショッピングモール内にアナウンスが響く。




「ご来店中のお客様方、落ち着いて聞いて下さい。只今、2階、中央の男子トイレにて、ゾムビーが発生しました。お買い物中申し訳ございませんが、直ちに2階中央のトイレを避けて、西側か東側のエレベータを利用するなどして、避難して下さい。繰り返します……」




 ざわつくショッピングモール内。




「ゾムビー? あの沼とか、きったねぇ所に出る奴?」


「何かの間違いでしょ? こんな街中に出没する訳ないわ」


「ハンバーガーとポテト食べたーい。その後、隣のアイスも!」



 ショッピングに来ていた客は、危機感を全く感じず、そのまま買い物を続ける。ショッピングモール内の店員も、連絡が遅れている事と、客の様子に流されたせいか、そのまま業務を行ってしまっていた。


 ――そんな中、2階中央男子トイレ付近にて。ショッピングカートを押す客がちらほらいる。



「ひた……」



 男子トイレの入り口から水気を帯びた足音が。


「ん?」


 その音に気が付く客。目線を向けたその先から聞こえた音は、ゾムビーがトイレから歩いて出てきた時の、正にその足音だった。


「きゃああああああああ!! ホントに居たぁぁああああああ!?」


 客は叫び声を上げた。ショッピングカートを置き、その場から逃げ去る。


「何だ何だ?」


 周辺に居た客達も、逃げて行った客の様子に異変を感じ、トイレの方を見る。



「!」



 ゾムビーが2体、トイレから姿を現していた。


「ぎゃああああああ! マジだったぁぁああああああああ!?」


 周囲は混乱した。トイレ内には10体ほどのゾムビーがうごめいていた。



「いやああああああああああ!!」


「うわああああああああああ!!」



 トイレ周辺の様子を見た客のほとんどは、その場から走り去る。




「まっ、待ってくれ!」




 腰を抜かした男性が一人、周りに助けを求めていた。しかし、助ける者はいない。




「ゾ……」


「ひっ」




 男性が振り返ると……、ゾムビーが体液を口一杯に含んで吐き出そうとしていた。


「あ……うわ……」




「ゾムバァアア‼」


「バシャアア‼」






「はい! かしこまりました! すぐ、そちらへ向かわせます」



 ――狩人ラボ、オペレータールーム。3人いる女性オペレーターの内の一人がヘッドホン付きのマイクで対応を取っている。




『O市M町のショッピングモールにて、ゾムビー発生。戦闘員は至急現場に急行せよ。繰り返す……』




「!」


「!」




 ラボ内のアナウンスに気付く、オフィスルームでお茶を飲んでいた爆破と、トレーニングルームで筋トレをしていた身体。



「ザッ」


 ショッピングモール駐車場に駆け付けた、爆破、身体、逃隠、抜刀、主人公、そして隊員数名。爆破が口を開く。


「一般市民の避難は円滑には行われなかったらしい。どうやら、ここ近辺ではゾムビーの発生事例も少なく、それによる避難などの経験も少なかった為であろうな。……全く、人は実際に自分の身が危険に晒されるまでは、それが危険と気付かないモノなのか?」


「……仕方ありません。皆が皆、我々の様な危機管理能力を持っているなら、交通事故などももっと減ると思われます」


 身体がそっと言う。


「……そうだな。さて、小言はこれまでとしよう。この建物の3階は副隊長とサケル、1階にセツナとツトムが向かうように! ゾムビー発生現場の2階は私が行く。隊員達は3つに均等に分かれて、それぞれの階に向かうように!」


「ラジャー‼」


 爆破の号令により、今回の戦いが始まった。



 ――3階、トイレ前。


「やヤ!?」


 逃隠が何かに気付く。トイレの入り口から、ゾムビーが歩いて行った痕が続いていた。


「副隊長! ゾムビーの体液が落ちておりまス!」


 逃隠は身体に報告する。


「……2階トイレで発生したと言われていたが……水道管を通って3階のトイレにも出没したか……。行くぞ、サケル」


「あいあいサ!」


 身体と逃隠は体液のしたたる先を追う。



 ――2階、トイレ前。


「ふん。この場所がそんなにお気に入りか?」


 未だに、発生現場である2階トイレの前に居る、ゾムビー数体を前に爆破は言う。



「ゾゾ……」



 不気味に呻くゾムビー。


「探す手間が省けて、好都合だがな……バースト!」




「バコォ!!」




 バーストを使い、トイレ入り口ごとゾムビーを破壊する爆破。


(修繕費、あとで出さないとな……)


 パラパラと建物の破片が舞う中、振り返り、隊員に指示を出す。


「少し気は引けるが、中も探索する! 行くぞ!!」


「ラジャー‼」




 ――1階、トイレ前。


「見て!」


 主人公が何かに気付く。3階と同様、ゾムビーが歩いて行った痕が、トイレから続いていた。


「コイツを辿って行きゃあ、奴さんとご対面できるってこったな」


 抜刀が手を顎に当てている。


「そうだね。行こう!」


 主人公が走り出そうとしたその時、



「ひた……」



 トイレから足音が。




「!」




 ゾムビーが入り口から現れた。主人公が応戦する。


「任せて! リジェクト!!」



「ドッ……バシャアア!!」



 壁にぶつかり、破裂するゾムビー。


「ヒュー。一丁上がり、だな」


 抜刀が上機嫌で言う。


「主人公隊員! 抜刀隊員!」


 狩人隊員の一人が口を開く。


「念のため、このトイレの中も我々で探索します。お二人は体液の痕を追って下さい」


「分かりました」


「おう!」


 主人公、抜刀はそう返事した。


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