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回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 日常と戦友

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第九節 続く戦い

 ゾムビーの口から体液が吐き出される、


 正にその時――、




「ビュン!」




 何かがゾムビー目掛けて、猛スピードで飛んできた。


 それはゾムビーの口を裂き、背中を貫くように斜め下の地面へ突き刺さった。




「ザクッ」


「な、何だ!? あれは!」


 主人公が目を丸くし、ゾムビーに突き刺さった何かを凝視する。




 それは、一振りの刀だった。




「か……刀?」


 主人公は驚愕した。すると、聞き覚えのある男の声がどこからか聞こえてきた。



「……大丈夫か? サケル……」



 主人公が振り向く。そこには、顔に左目の眉毛辺りから鼻を通り、右頬にかけてまでの大きな傷がある男、逃隠カイヒの姿があった。


「サケル君の……お父さん!」


 主人公は歓喜の声を上げる。


「今日は変な胸騒ぎがしてな、有休をとっておいて良かった。こんなところでこんな事になっていたとは……」


 逃隠カイヒが言う。




「ジュウウウウ」




 突き刺さり、ゾムビーの動きを止めることに成功していた刀だったが、ゾムビーの体液により、遂には溶け出してしまう。


「ゾ……(なんだ……おまえ……)」


 ゾムビーは逃隠カイヒの方を向く。


「ふむ……やはり体液は強力だな。……先ずは……」


 逃隠カイヒは、ゾムビーの傍で蹲っている逃隠の元へ向かう。


「オ……親父……」


 瀕死の逃隠は、逃隠カイヒを向いて口を開くのがやっとだ。


「何も言うな……サケル……」


 逃隠カイヒはそっと言い、逃隠を担いだ。


「暫く、あの子の近くに居ろ……」


 逃隠カイヒは、逃隠を担いだまま、主人公の元へと向かった。


「ゾ……」


 ゾムビーの移動スピードでは、その動きは捉えられなかった。


「よし……」


 主人公の傍に、逃隠を降ろす。


「ツトム君、サケルをよろしく頼む……」


 逃隠カイヒはそう言い残すと、今度はゾムビーの元へ向かった。


「あ……」


 急な展開に、まともに返事する事ができない主人公。逃隠は疲弊しきっている。


 ゾムビーに対峙する逃隠カイヒ。



「……行くぞ」


「ダッ」



 逃隠カイヒは、ゾムビーの方へ間合いを詰めて行く!


「体液で刀が溶けてしまうなら!」




「スパッ」




 もう一つの刀で、ゾムビーの胴体を横一文字に斬る逃隠カイヒ。


「溶ける前に切り抜いてしまえばいいだけの事……」




「ピッ……ズズ」




 ゾムビーの胴体は切れ目が入り、斜めにずれ落ち始めた。




(すごい! ……でも……)




 感心しつつ不安に思う主人公。


「ゾ――――!」


 ゾムビーは、唸り声を上げる。




「ボコボコボコ」




 直後、ゾムビーの胴体の切れ目から細胞が吹き出始める。


「ボコボコ……」


 ゾムビーの胴体は程なくして、元通りに完治した。


(やっぱり、だめだ!)


 主人公は絶望し、落胆の表情を見せる。


「ほう……普通のヤツらとは、また一味違うという事か……」


 一方で逃隠カイヒは動じない。


「ゾムバァアア」


 ゾムビーが、逃隠カイヒ目掛けて体液を放つ。




「避け」




「サッ……バシャアア」


 必要最低限の動作で、逃隠カイヒはそれを避ける。


「ゾッ!」


 間合いを詰めていたゾムビーは逃隠カイヒの頭部目掛けて殴打を繰り出した。




「……首避け」




「サッ……ブン」


 逃隠カイヒはそれを避け、ゾムビーの拳は空を切る。


「ゾゾゾッ!」


 今度は、蹴りを繰り出すゾムビー。




「飛び避け!」




 逃隠カイヒはそれを大きく横に飛び、避け切った。


「ゾッ!」


 攻撃の手を緩めないゾムビー。


「なんの!」


 それを体にかすらせもせずに避け切る逃隠カイヒ。




「逃げ続けるは、己と他の命を守る為! 避け続けるは、新たな好機を掴み取る為!」




 逃隠カイヒは叫び、攻撃を回避し続ける。主人公は思う。


(そうだ。ゾムビーの攻撃は避け切らないといけない。避けなければ、命は無い! リジェクトは連続して打ち続けられない。避けて避けて避け続けて、力の回復を待たなければならない! ……回避は! サイキッカーにとって大事なんだ!)


 二人の攻防は続く。と、逃隠カイヒが口を開く。


「サケル! もう体の方は大丈夫か!? 次、仕掛けるぞ!」


逃隠は答える。


「あア……親父……何とかしてやル……!」


「……よし!」


 逃隠カイヒは一歩引いて、鞘に収めた刀の柄に手を掛ける。



「はっ!」


「スパッ」




 鞘から刀を抜きつつ、またしてもゾムビーの胴体を切り抜く逃隠カイヒ。ゾムビーに切れ目が入る。



「そこっ!」



 次いで逃隠カイヒはゾムビーの上半身を、履いていたゲタで蹴った。


「ドッ」


 ゾムビーの体は横に真っ二つになっていたため、上半身は下半身を残し、飛ばされた。



「ゾ!」



 下半身は直立しているが、上半身は地面に横たわっている状態のゾムビー。と、ゾムビーの下半身の切れ目に何か輝くモノが。


「ん? あれは?」


 逃隠カイヒはそれに気付いた。


「ゾ……ゾゾ!」


 ゾムビーは腕だけで上半身を起こし、下半身へ向かいそのまま動き出した。


「サケル! ゾムビーの下半身に何か輝くモノがある! あれを奪うぞ!」


 逃隠カイヒが叫ぶ。


「合点承知の助ぇえええエ‼」


 逃隠はそう言い放ちながら走り出す。




「タンッ」




 ある程度、ゾムビーに接近した時点で、飛ぶ逃隠。サッと輝く何かを奪い取る。


「クルン……スタッ」


 そのまま宙で一回転した逃隠は地面に着地した。


「ツトムゥ! やつの心臓の様なモノを奪った。リジェクトをお見舞いしてやレ! 今なら効くかもしれねエ!!」


 主人公に向かって叫ぶ。


「う、うん! やってみる!」


 主人公は返した。


(頼む……効いてくれ!)


「リジェクトォオオオ!!」


 一抹の不安を抱きつつも、リジェクトを放つ主人公。




「ゾ?」


「バシャアア!!」




 ゾムビーの上半身、下半身は共に吹き飛び、破裂した。


「や……やった……」


「へへ、やりィ」


 安堵の表情を浮かべる主人公と逃隠。


「!」


 と、逃隠がゾムビーから奪ったモノを見て何かに気付く。


「これハ……」



 ――、


「沼地で見つけたものと……一緒だ……」


 主人公は呟く。


「どうやラ、アイツらはこれを体内に取り込むとパワーアップするみたいだナ」


「うん、強力な敵だった……ヤツらにこれを渡しちゃいけない。ラボに早急に送らないと……」


 逃隠と主人公はそう話し合った。



「……ツトム君」



 逃隠カイヒが口を開く。


「サケル君のお父さん……」


 ハッとする主人公。


「申し訳ありませんでした。以前、一緒に戦っていくとか、格好つけて言った癖に全く敵にかないませんでした! サケル君のお父さんが助けに来てくれなかったら、今頃どうなっていたことか……それと、サケル君を助けてくれと言われてたのに、危ない目に遭わせてしまって……」


 主人公の口から、謝罪の言葉が溢れた。


「……いや、最後にとどめを刺したのは、君だ。今日は、君がゾムビーと戦えるというのが確認できて良かったよ。それに、今回の敵は強力過ぎた。私一人でも、倒しきれなかっただろう……」


 逃隠カイヒが返す。


「あ、ハイ! ありがとうございます!」


 ホッとする主人公。




「ツトムぅ……」




 ふと、覚悟を決めた逃隠が話し掛ける。


「これから恐怖の戦果報告だナ」


「はっ! そうだった……」


 主人公はみるみるうちに青ざめていった。



 ――、


「――で、連絡もせずに、二人だけでゾムビーに戦いを挑んだんだな?」


 ため息を吐くように、呆れ返った爆破は言う。




「はい」


「うス」




 主人公、逃隠の二人は下を向き、答える。


「こんなボロボロになって……全く、サケルのお父さんが来なかったらどうするつもりだったんだ? こうして助かったからよかったものを」



『すいません』



 爆破の辛辣な言葉に対し、謝るしかない二人。ふう、とため息をついた爆破は続けて言う。


「まぁ、過ぎてしまったものは仕方ない。これから帰って始末書を提出するくらいで勘弁してやろう」




(ぎゃ――)




 絶句の二人。



「それから――、今回の戦いでの報告……あれは本当なんだな?」


 爆破のその言葉に、真剣な表情に変わる二人。


「ハイ。前回沼地で見つけた、あの宝石のようなものを体に取り込んだゾムビーは、明らかに他と違いパワーアップしていました」


 主人公は言う。


「……そうか。分かった。これから緊急に会議を開き、この事を理事会に報告する! 二人とも、ラボへ帰るぞ!」


『ハイ!!』


 二人は爆破に、きびきびと返事した。



 ――数時間後。狩人ラボ、会議室にて。


「……以上が、今回の戦いの結果で分かった、新たな脅威です」


 爆破が10名ほどの男達の前で話す。ざわつく室内。


「どうしたものか」

「ここに来てヤツらが強力になるとは」


「……簡単にまとめると、耐久面の強さ、攻撃力の強さ、回復力。この3つが、宝石を取り込んだゾムビーの特徴となります」


 爆破が結論を示す。


「宝石を取り込んだゾムビーを、石のゾムビーと名付けます。ゾムビー達の手にあの宝石が渡るのを防ぎ、石のゾムビー発生を食い止めていく事を、今後の課題としていきます」



 ――主人公らが以前寝泊まりしていた部屋。


「だァアア――――! くっソ! 始末書なんテ、どうやって書けばいいんダ――――‼」


 逃隠が嘆く。


「……」


 無言の主人公。


「こーなったラ、テキトーに2枚くらい反省文書いテ、提出するゾ。ツトム!」


「あ……う、うん……」


 逃隠の言葉に、力無く答える主人公。



 ――爆破のオフィスルーム。大きな木製の机に爆破が腕を組んで座っている。その正面に、下を向き、うつむき加減で主人公、逃隠の二人が立たされている。



「パラ……」



 二人が提出した始末書を手に取り、目を通す爆破。だらだらと汗をかく二人。



「……」



「…………」

「…………」



 爆破の、数分の沈黙が二人を襲う。暫くして爆破は口を開いた。



「……ダメだ、書き直し」




「NOOOOOOOOOOOO!!」




 二人、絶叫。




 ――数日後、平々凡々中学校教室にて。窓を開け、桟に寄りかかりながら考え事をする主人公。


(まさか、ゾムビーが宝石を取り込むことで強くなるなんて……今まででも大変だったのに、これからの戦いはもっと厳しくなるよな……)


 ふと、空を見上げる。逃隠の影が浮かぶ。


(サケル君、強くなったよな……あんな敵にも臆さずに立ち向って行って……)


 手のひらを見る。それを力強く握った。


(僕も負けてられない。もっともっと、強くならないと。共に、戦い抜く為に……!)



 ――逃隠邸、庭にて。逃隠が、軒下に立っている逃隠カイヒの前で土下座をしている。


「どうした? サケル」


 逃隠カイヒは問う。


「親父、俺ニ……刀の扱い方ヲ、教えてくれないだろうカ」


 頭を地面につけたままの逃隠。


「フッ」


 逃隠カイヒは笑みを溢す。



 ――狩人ラボ、トレーニングルーム。身体がダンベルを持ち、トレーニングしている。


(隊長が仰っていた事が本当なら、俺はそのゾムビーを倒せるだろうか……?)


「ガチャ……ガチャ……」


 ダンベルを動かす。


(ツトムのリジェクトが通用しない相手、その相手に、今のままのパワーで通用するか……?)


「ガチャ……ガチャ……」


 ふぅ、と息を吐く身体。


「トレーニングのメニューを強化せねば」


 真剣な眼差しの身体はそう呟く。



 ――夕方、とある路地。抜刀が歩いている。


「尾坦子……オタンコ……おたんこ……。くぅ――あの日の返事、いつ返してもらおうかー。明日か? いや明後日か? いやいや明々後日。その次……。ん――、ガチであの狩人ラボとやらに住み込むか。そうすりゃ毎日会いたい放題……いやぁしかし、連れ出せねぇのが、辛いところだなー」


 独り言は続く。



 ――、


「ブロォオオオオオオ」


 一台のバイクが、河川敷を走る。乗っているのは爆破スマシ。


「(新たな超能力者が仲間に加わり、戦力も不足分を補い始めたと思った矢先、これか……)一難去ってまた一難、か……」


 小言を呟く。


(……いや、弱気になっている暇は無いぞ)


 キッと目つきが鋭くなる。


(石のゾムビーへの対策を考えねば。刃物は意外と効くと聞いた。あとは宝石を体内から素早く奪い取る事が出来れば、勝機はある……。それと……狩人の人材募集、ビラ配りでも始めるか?)


「ブロォオオオオオオ」


 1台のバイクは、スピードを上げた。



 周囲との理解、協力の下、決意を新たにゾムビーとの戦いに力を注ぐ主人公ツトム。精神的な成長を遂げ、パワーアップした逃隠サケル。筋トレを止めない身体スグル。新たな戦力として期待される抜刀セツナ。新たな課題を抱え、過労気味の爆破スマシ。そんな中、敵であるゾムビー達もまた、手強くなって来た。激しさを増す戦いは、これからも続いていく。


 第二章 日常と戦友、完

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