表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避とサイコとツトム改~ゾムビー~  作者: 時田総司(いぶさん)
第二章 日常と戦友

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/58

第八節 パトロール

「キーンコーンカーンコーン」



 放課後の始まりを告げる、学校のチャイムが鳴る。平々凡々中学校、主人公の教室にて――。


「あー、定期試験が近付いてきたよー」

「中学生にとっテ、避けられない課題だナ」


 主人公と逃隠が溜め息混じりに会話を交わす。


「よし、ツトム。いきなりだガ、今日は途中まで一緒に帰ろうゼ」


 逃隠が突拍子も無く、主人公を誘った。


「いいよ。でもどうして急に?」


「まァ、ちょっとナ」


「ふーん。ま、いっか」


 主人公の問いに、曖昧に答える逃隠。二人は一緒に学校を出る。



 ――、


 歩きながら主人公、逃隠の二人は話す。


「狩人に入隊したけど、任務としては、ゾムビーが出没した時の対処、現地調査、会議の参加や会議の結果を聞く事、等々で、ラボに常駐せずに済んで助かったよ。学校生活も大体普通に送れてるし……」


「俺は勉強の無い世界で一生暮らしたいかラ、ラボに常駐でも良いがナ」


「ハハ……」


 苦笑いの主人公。ふと、十字路で立ち止まる。


「ここから先は、サケル君ちと逆方向になるし、距離も遠くなるから、ここら辺でもう帰りなよ」


 主人公が気を使って言う。それに対して逃隠は反論した。


「いヤ……」


「?」


 キョトンとする主人公。


「今まで言わなかったんだガ、今日一緒に帰ろうと言ったのは理由があル。その理由ハ、今から単独、二人でゾムビーパトロールを行う為だァアア!!」


(え? ……それって単独って言うんだっけ?)


 逃隠の言葉に疑問を抱く主人公。すぐハッとなり、言う主人公。


「サ、サケル君! 勝手に二人で行動して、もしもの事があったらどうするの?」


「なぁニ、心配ないサ、ツトム。何かあれバ、たった今ゾムビーを発見しましたって連絡すればいいだけの事ダ」


「ホントに大丈夫かなぁ?」


 片や自信満々の逃隠に、不安で一杯の主人公。


「よシ! 決まりだナ! パトロール、出発進行ゥ!!」


(……僕はまだ賛成してないのに)


 逃隠の独断で、ゾムビーパトロールなるものが始まった。


 排水口、


 住宅地の溝、


 河川敷と、


 水の流れる場所を二人で探索して行く。


「ゾムビーは湿った場所を好むんダ! 次、行くゾ! ツトム!!」


 意気揚々と指揮を執る逃隠。


「ハイハイ……」


 一方で主人公は乗り気で無い。更に探索は続く。



 ――、


 二人はとある河川敷まで足を進めた。


「見ロ! ツトム! あの高架下、怪しくないカ!? 明らかにじめじめしてそうでゾムビーが好みそうダ!」


 相変わらずノリノリの逃隠。


「もう1時間半も何も無かったじゃん。今回だって何もないよ、きっと。母さんにちょっと連絡しないと」


 そう言って携帯を取り出す主人公。


「今日の帰りは、少し遅くなります、っと」


 メールを打ち込む。


「おイ……ツトム……」


 逃隠が戦慄の表情を浮かべながら言う。


「はいはい、どうしたの? サケル君……よし、送信完了っと」


 顔も合わせずに主人公はメールの送信を確認していた。


「居タ……」


 逃隠は言う。


「居たって何が?」


 主人公が問う。


「あ……アレ」


 逃隠が指をさす。指差した方向を主人公が見る。そこは道路の高架下で、日陰となっており、ゾムビーが3体、存在していた。




(ホントに居た――――!!)




 唖然とする主人公。


「イ……行くゾ、ツトム!」


「へ? 行くって?」


「ゾムビーを倒しに行くんだヨ! 行くゾォ!! オラアアアアアアアア!!」


 叫びながら突進する逃隠。


「ちょ、連絡は!? 無茶だ、サケル君!!」


 逃隠を心配し、叫ぶ主人公。




「ダッ!!」




 突進する逃隠は物凄いスピードで走って行く。一歩一歩、力強く地面を蹴って行った為、逃隠が走った後には穴の様な足跡がついていた。その様子を見ていた主人公は思う。


(!! 凄い。スーツの力を使っているんだろうけど、あの日から、サケル君は確実にパワーアップしている。修行の成果と、自分の中での確かな自信が、サケル君にしっかりと身に付いている!)


「ウォオオオオオオオ!!」


 両手で、スーツの無い顔の部分をガードしながら、そのまま逃隠はゾムビーに向かって行った。


「ゾ……?」


 主人公達から向かって一番左のゾムビーが、逃隠に気付くもむなしく――、


「バシャアア!!」


 逃隠の体はゾムビーの胴体を貫いた。


「ゾォ……」


 崩れ落ちるゾムビー。


(やった! イケる……二人で、二人だけで……ここに居るゾムビー全てを、倒せる!)


 主人公は勝ちを確信する。遠くでくるっと振り返った逃隠は言う。


「何やってんダ、ツトム! お前も戦エ!!」


「あ、うん……!」


 主人公は答えて、ゾムビーの方向へ走り出す。リジェクトの射程圏内に入った。


「ハッ」


 両手が光る。


「バシャアア!!」


 向かって一番右のゾムビーを木端微塵にした。ゾムビーは、始め真ん中に居た1体のみとなった。


「やったナ! ツトム! 最後の1体は俺がもらったゼ!!」


「ダッ」


 そう言い放った逃隠は今度は向こう側からこちらへ、最後のゾムビー目掛けて走り出した。主人公も安心して逃隠の最後であろう戦いを眺めていた。逃隠がゾムビーの体を貫こうとした、寸前――、




「ガッ!!」



 逃隠はゾムビーの体に弾き返された。



「ぐァア!」


「ガッ……ゴッ……ズサァ」




 地面を転々と跳ね、崩れ落ちる逃隠。


「!? 何だ、あのゾムビー……。とてつもなく……硬い……!!」


 様子を見ていた主人公も、息をのむ。


「くっそォ……てりゃアアア!!」


 弾き返された逃隠は諦めずにゾムビーに向かって行く。


「ガッ!」


 右腕を振るう。顔面にヒット。しかし、ゾムビーは無傷である。


「くソ! ああァ!!」


「ガッ! ガッ! ゴッ!」


 今度は左腕、続いて再び右腕の殴打、最後に右足の蹴りを加えた。




「ゾ? ……ゾォオオ!!」




 再び無傷のゾムビー、今度は反撃に出て、逃隠の腹を殴る。


「ゴッ」


「ぐふゥ!」


 3メートル近く吹っ飛ぶ逃隠。


「ドシャア」


「ガハッ、ゴホッ」


 咳込む逃隠。腹部を押さえている。


「ジュウ――」


 殴られた腹部は、学ランが溶けてスーツが露わとなっている。


「サケル君! くそっ! リジェクトォ!!」


 応戦する主人公。





「ドムゥン」





 衝撃波は、確かにゾムビーに伝わった。しかし、妙な弾力性によってその衝撃は吸収され、ゾムビーを破壊するには至らない。


「! リジェクトが……効かない……?」


 何が起きたか分からず、困惑する主人公。


「何でだ!? 確かにリジェクトは命中した。他のゾムビーは倒せたのに!」


「ゾ? ……ゾゾ」


 背中にリジェクトの衝撃を感じたゾムビーは、振り返り、主人公を確認した。


「ゾ……」


 その後、再び逃隠の方を少し見たが、ゾムビーはぷいっと逃隠から視線を逸らし、主人公に標的を変えた。


(畜生、攻撃が効かないどころカ、相手にすらされてないのカ……)


 痛みを堪えながら、今ある状況を悔しがる逃隠。


「ゾ……ゾ……」


 不気味に主人公に近寄るゾムビー。主人公は思う。


(マズい、まだリジェクトが打てない。調子も悪いせいで、1発あたり15秒はかかる!)


 じりじりと忍び寄るゾムビー。


(こうなったら……! 回避の術で攻撃と体液を避けて時間を稼ぎながら戦ってやる!)


 覚悟を決める主人公。


「ゾム!」


 殴りかかってくるゾムビー。


「回避の術! 避け!!」


「ブン!」


 回避の術を使い、ゾムビーの拳を左に避ける主人公。ゾムビーの右手が空を切る。


「ゾム!」


 今度は左腕を振るうゾムビー。


「はっ!」


 再びゾムビーの拳を避け、今度は右へ跳ぶ主人公。刹那、主人公は思う。




(大丈夫だ。他のゾムビーよりもややスピードはあるけど、回避の術の前ではスローモーションだ!)




「ゾ!」


 再度ゾムビーが右腕を振るう。


「回転避け!」


 主人公は叫びながら右手の手袋でゾムビーの拳をいなす。と同時に右足を一歩斜め前へ踏み出す主人公。体を回転させ、ゾムビーの後ろを取る。




(今だ!)


「リジェクトォオオ!!」




 近距離でリジェクトを放つ主人公。しかし、




「ドムゥン」




 またしてもゾムビーは衝撃を吸収、破壊されない。


「そ……んな……」


 自信を喪失する主人公。


「ゾ!!」


 振り向いたゾムビーは主人公の腹に一撃を喰らわす。


「ゴッ」


「ぐあああ!!」


 吹き飛ばされる主人公。逃隠の隣まで飛んで行った。


「ジュウ――」


 主人公の学ランは、腹部が溶け始めている。


「うわあああ!」


 急いで学ランを脱ぎ捨ててTシャツ姿になる主人公。


「ジュウゥウウウ」


 投げ捨てられた学ランは殆ど溶けてしまった。


「よウ……ツトム……」


「!」


 仰向けで倒れている逃隠が主人公に話し掛ける。


「時間稼ギ、ありがとヨ……ダメージも大分、軽くなってきタ」


 むくっと起き上がる逃隠。


「さテ、ほいじゃア行きますカ」


「行くって……無理だよ……アイツは他のゾムビーとは違う。スーツによる攻撃も、リジェクトも効かないんだよ?」


 主人公はそう言って不安がる。逃隠が少し間をおいて口を開く。


「ツトム……俺ハ、全世界のゾムビーを駆逐すると声高に言っていたガ、本当はゾムビーが恐ろしくて仕方なかったんダ。だガ、身体副隊長に出会っテ、一緒に修行を積んだお陰デ、今はゾムビーと戦えるようになっタ。身体副隊長からハ、どんな時モ……どんな事にモ、恐れずに諦めない事を学んだんダ……今、この瞬間だってそうダ……絶対ニ……最後まで諦めるナ、ツトム…………行くぞォオオオ!!」


 走り出す逃隠。


「サケル君! 待って!」


 叫ぶ主人公。走りながら逃隠は言う。


「ツトム! 俺が時間を稼グ! お前は力を溜めテ、色々な方法でリジェクトを放つんダ! どんな方法でもいイ! 片っ端からやってくゾ!!」




「ダッ……ガッ! ガッ!」




 ゾムビーに飛びかかり、右拳、次いで左拳をぶつけていく逃隠。


「ゾ……ゾゾ!!」


 攻撃に対し、微動だにしないゾムビーが反撃する。右拳が飛んでくる。


「サッ」


 体を低くして避ける逃隠。


「喰らエ!」


 そこからアッパー。ゾムビーの顎にヒットした。


「ゾ?」


 しかし効いていない。


「ゾー!!」


 逆に裏拳が飛んでくる。


「なんノ!」


「ガッ!!」


 スーツの部分である両腕でガードする逃隠。


「ズサー」


 少し飛ばされるが、両脚で持ちこたえながら着地する。ゾムビーと逃隠の攻防は続く。




 一方で、主人公。


(どんな方法でもいいから……そうだ! このゾムビーに対しては、背中側からの攻撃しかしてない。正面からの攻撃なら……何か変わるかも……!)


 走り出す主人公。ゾムビーの正面、リジェクトの射程圏内に入る。


「行くよ! サケル君!」


「待ってたゼ! ツトム!」


 阿吽の呼吸で横へ跳びながら移動し、ゾムビーの正面を主人公に向けさせる逃隠。


(行くぞ!)


「リジェクトォオオ!!」


 リジェクトを放つ主人公。ゾムビーの正面にヒットする。




「ドムゥンドムゥンドムゥン!!」




 背中側に当てた時とは明らかに違う反応を見せるゾムビー。


(やった! 効いてる!)


 安堵する主人公。




「ドムゥン……ドムン……ピタ……」




 先程とは違う反応を見せたものの、やはり衝撃を吸収するゾムビー。


「そんな……」


 一転、絶望の表情を浮かべる主人公。




「まだダ!!」




 ゾムビーに飛びかかっていく逃隠。


「ツトム! 次の手を試セ! 次が打てるまデ、何秒ダ!?」


 攻撃しながら逃隠が叫ぶ。


「きょ……今日は、15秒くらい! 調子も悪いんだ!」


 返す主人公。


「ヘッ! 15秒の時間稼ぎだナ。余裕だゼ!!」


 強気な逃隠。敵の攻撃を回避の術で避けつつ、殴打、蹴りを当てていく。一方で必死の主人公。




(考えろ……考えるんだ。他に、何か手は……)




「もうそろそろだゼ! ツトム!! 行ケ!!」


 バッとゾムビーから離れる逃隠。


「(ええい! 一か八か……)リジェクト!」


 咄嗟に主人公は、ゾムビーの片足を狙い、リジェクトを放つ。




「バシュッ!!」




 ゾムビーの片足は弾け飛んだ。


「やった! 今度こそ、効いた!」


「よっしゃア!」


 歓喜する二人。


「ズズズ」


 崩れ落ちるゾムビー。


「行くゾ! 畳みかけるんダ! ツトム」


 逃隠は言う。しかし、ゾムビーの様子がおかしい。

 



「ゾゾ――――――!!」




 暫く蹲っていたが、急に叫び出すゾムビー。


『何だ!?』


「ゾ……ゾ!!」




「ボコボコボコボコ」




 ゾムビーの片足の欠けた部分から液体と空気が混じった音がし始めた。音のする場所から、泡が吹き出るように細胞が現れ始めた。




「!?」




「ゾ……ゾ――!!」


「ボコボコボコボコ……シュ――」


 増えだした細胞は、完全な足の形となって露わとなった。足からは煙が立ち込めている。


「う……うそ……でしょ……?」


 呆然と立ち尽くす主人公。


「チィ! ……ツトム! まだダ!! 絶対に諦めるナ!!」


 またしても果敢にゾムビーに立ち向っていく逃隠。




(無理だよ……サケル君……背中側への攻撃も正面への攻撃も効かない。足への攻撃は効いたけど……回復されてしまう……)




 完全に希望を見失う主人公。


「ガッ! ガッ!」


 一方で攻撃の手を止めない逃隠。ゾムビーの拳を避け、地面に着地する。


「スタッ……ガク」


 と、下半身の力が抜ける。


(!? しまっタ! もう体力ガ……)


 跪く逃隠。


「ゾム……ゾム……」


 ゾムビーが口一杯に体液を溜め込む。じりじりと、逃隠をゾムビー化させるべく間合いを詰める。


(やばイ、体液カ!?)


「ゾゾゾ!!」


 口から体液を吐こうと、目一杯顔を上に上げるゾムビー。




「サケルくぅううううん!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ