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こいこい荘はそこを曲がったところですよ  作者: 蜂蜜
Q.こいこい荘にきた理由は?

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上田紅稀の場合

紅稀視点

後書きは美琴視点

昔から女性は苦手だった。

物心ついた時には化粧臭い女性にこねくり回されてたし、幼稚園に行けば俺を独占する奴が出てきて他の友達と遊べず、小学校は女子全員で監視する勢いで見られ、中学では物が頻繁になくなり、高校ではアクササリー扱い。

じゃあ共学じゃなくて男子校行けよって話だが、男子も気がおけなかった。

女子の目がない男子なんてやりたい放題で、やめろと言っても写真を無断で撮られたり、私物を貸せば返ってこないなんて当たり前だった。

挙句裏で賭けの対象になってたり私物や写真を売られてると知った時は誰も信じられなくなっていた。

彼女も友達もいらない引きこもって生きていたい。

そんな時期を愛犬のタロウが慰めてくれていた。

高校入学した頃、タロウは病気でこの世を去った。

泣いて泣いて泣いた。

もっと早く病気に気づけていたら助かったかもしれない。

その思いばかり募ってやけをおこそうとした日、タロウの仏壇からお気に入りのボールが落ちた。

いなくなっても俺を慰めてくれているみたいで、また泣いた。

そうだな、やけをおこしても何にもならない。

タロウみたいに病気で苦しむ子を一匹でも多く救ってやりたくて獣医を志した。


大学は同じ志しと高い偏差値と言うこともあり、常識的なやつが多く初めて友達と心から呼べる存在ができた。

嬉しい出来事と同時に何故か自称彼女とストーカーもわんさかできた。

訳がわからない。

俺以上に綺麗な顔の妹と弟は楽しそうに学校に通ってるのにこの差はなんなんだ。


いつもどう対処したら妹みたいに普通の生活が送れるのかと恥を忍んで妹に相談したところ、何故か彼女(仮)ができた。

意味がわからない。

時々妹にはついていけない時があったが今回ほど訳がわからないことはない。

その上人様まで巻き込んでどうするつもりだと問えば、義姉にしたいと返ってきた。

相談の内容と真逆すぎてついていけないまま当日を迎え、慌てふためく中紹介されたのはおっとりした美人。

こう言う系は腹黒いと警戒して会話してたが、見た目によらずサバサバしていてでも細やかな気遣いできる人で少し警戒をとく。

あっちもあまり乗り気ではない様子だったが、妹の圧に負け引き受けてくれることになった。


言われた通り、待受を二人のにかえ、週一で一緒に出かける。

一ヶ月経つ頃には自称彼女がめっきり減り、三ヶ月経つ頃にはストーカーも減った。

彼女が言った通りになった、このままいけばいなくなるのではと思ったのも束の間。

三ヶ月も半ば過ぎたころ最近見かけなくなったと思ってた自称彼女が急に増えてきた。

暑い時期に繁殖する害虫のようだと思ったが、あまりにも失礼だと思い自分の胸だけにとどめた。


どうしようかと迷ったがすっかり呼び慣れた名前が思い浮かぶ。

美琴ならどうにかしてくれるという信頼と美琴は俺に嫌なことしないという信用。

週末のデートの時に相談することにした。

今回は暑くて出たくないからとこいこい荘によばれていたのでちょうどいい。


週末になり美琴の好きなフルーツタルトを持って美琴の部屋を訪ね、俺とソファーに並んで座りタルトを目の前にはしゃぐ美琴に最近の出来事を説明し早速相談する。


「と言った感じだ。どうしたらいい美琴?」

「あーたぶん倦怠期狙ってるんだと思いますよ。

カップルも赤ちゃんも魔の三ヶ月って言いますし。

言っては何ですが私たちあまりかわりばえしないデートばかりですから、あちらはそれを終わりが近いと勘違いしてるのかも。

紅稀さんが上手いこと話盛って惚気ることができるならいいんですが無理でしょうから、手っ取り早く指輪でいいんじゃないでしょうか。

目に見えるって結構効くみたいですし」

「婚約指輪か?」

「いやそんな大それたものではなくて、気軽につけられるペアリングですよ。

紅稀さん金属アレルギー大丈夫そ?」

「ないと思う。

時計をつけてかぶれたことはない。

ところで、指輪は俺もつけないといけないのか?」

「そりゃあ私だけしてても自称彼女達には見えませんし、見られてるのは紅稀さんなんで。

恋人いますっていう目印とラブラブですって証拠なので、できるだけつけてもらって、邪魔になりそうな時はネックレスにする方がいいと思いますよ。

自称彼女に勝手にペアリング作られたくなければ、肌身離さずが一番かと」


確かにと頷く。

美琴は美味しい美味しいと言いながらフルーツタルトを食べている。

自分の分の皿も美琴に渡す。


「いっぱい食え」

「いやいや食べませんよ。

自分の分だけで大丈夫です。

紅稀さんも食べてくださいよ」

「俺は別に、美琴の方が美味しく食べられるだろう」

「そう言うことじゃないんだって。

私は独り占めしたいわけではなくて、貴方と分かち合いたいんです」

「そうか」


分かち合うか。

自分の分のフルーツタルトをフォークで切り一口食べる。

ちょうどいい甘さで美味しい。

ケーキなんていつぶりだろうか。


「ペアリングいつ買いに行きます?

紅稀さんこだわりないなら私選んでもいいですか?」

「ああ、好きにしてくれ。

ただ金額は20万くらいにおさえてほしい」

「そんな高いの買いませんよ。

でもあんまり安いとすぐ自称彼女に大量生産されそうだし、うーん、2〜3万くらいでいいですか。

私、あんまり出せないのでこの辺で妥協して欲しいです」


首を傾げる。

何故美琴が金を出すのだろうか?

俺のせいで窮屈な思いをしてるのに、これは必要経費だろう。


「あ、お兄さんまた。

その貢ぎ癖やめた方がいいですよ。

安くても何でも奢ろうとしない!

たとえ百円でも指輪なんて勘違い女なら一発で自称彼女を通り過ぎて自称妻になりますからね」

「何故だ?奢った方が後腐れなくていいだろう」

「いつも仏頂面で冷たい上田君が、私にだけ奢ってくれた?

これって特別?私にアピールしてる?きゃー」

「そいつ思考がおかしいんじゃないか?」

「残念ながら貴方の周りそんな人ばかりですよ」


そう言われたら、言い返す言葉がない。

フルーツタルトをつつき、考える。

いやでも美琴の負担は減らした方がいいだろう。

納得してないのがわかったのか、美琴が口を尖らせる。


「成り行きはまぁ紅稀さんですが、俺のせいでって思わないでいいですから。

私が好きなの選ぶんですし、それに私の性分だと半分の方が落ち着きます。

あと三ヶ月とはいえ一応彼女ですし」


美琴の言葉にフルーツタルトをつつく手が止まる。

そうかもう三ヶ月も経ったのか。

あと残り三ヶ月したら美琴とこういう風に話せなくなるのだろうか。

最初は半年なんて長すぎると思っていたが、今では短いと感じる。

自称彼女やストーカーが増えることより、美琴が他の男と手を繋ぐ方が嫌だと思ってしまった。


「三ヶ月したら終わるのか?」

「ああ、自称彼女またきてますもんね。

指輪そのままつけてたらしばらくは大丈夫だとは思うのですが、心配なら紅稀さんの良いタイミングでやめて良いですよ。

妹さんには私がうまく誤魔化しますから」


心配してるのはそこじゃないのだが、下手に否定すると前言撤回されそうなので黙っておく。

都合が悪いとこは置いといて、大切なところを念押しして確認する。


「俺が終わりを決めて良いのか?」

「ええ、良いですよ。女性不審治ると良いですね」


治らなくて良いと思ったが、それは生きづらいなとも考える。

いざって時に女だからと美琴に任せっきりで逃げることはしたくない。

それに俺が終わりを決めて良いと言質をとった。

彼女はこんな大事なこと俺に任せるなんてとってもうっかりしている。

約束を破る人ではない誠実なのもの三ヶ月でわかっている。

俺の心を覗けたとしたら今悪い顔して笑っていただろう。

すぐ終わると思っているのだろう。

俺がずっと先延ばしにすると考えないのだろうか。

今更だが美琴に会わせてくれた妹に感謝する。


「今から買いに行こう」

「え?良いですけど何の準備もしてないので時間かかりますよ。

とりあえずタルト食べてからでもいいですか?」

「ああ」


つつくのをやめて三口でタルトを食べ終わる。

美琴をじっと見ると気まずそな横顔が目に入る。


「お兄さん、そんなはりきらなくても」

「そうか?それよりお兄さんはやめてくれ、紅稀だ。

あと思ったのだが、三ヶ月経つんだ敬語もやめて欲しい」

「あーそうですね。じゃあボチボチはずします」


うんうんと頷く。

髪が口にかかっていたので、耳にかけてやると耳まで真っ赤になった。


「すけべ。いいですかそんな簡単に触らない。

自称彼女がまた増えますよ」

「美琴にしかしない」

「またーそう言うのが勘違い彼女うむんですよ」

「でも美琴は彼女だろ?」

「…それはそうですが、そうじゃないと言いますか。

いやもうやめましょう。ミイラ取りがミイラになる」


もうと言いながら小さい口で頬張る姿はハムスターようで可愛い。

タロウもよく好物をこんなふうに食べてたな。

眺めていると、そうこんな感じでチラチラとこっちを見て困り顔するのだ。

仕草がよく似てる。


美琴はタルトを食べ終わると着替えるからと俺を部屋から追い出した。

行くあてもないので廊下に座って待っていると、しばらくしてドアが開いた。


「ごめんなさい暑いですよね。中どうぞ」

「いや大丈夫だ。そのワンピースもよく似合って可愛いな。

もう行けるか?」

「いえまだメイクも髪もセットしてないので」

「そうか?すっぴんでも美人だぞ」


「貴方って人は」と恨めしそうに言われたが、耳が赤い。

なんとなく触りたくなったが思いとどまって、彼女が化粧する姿を後ろから座って眺める。


「紅稀さん、中に入れる刻印どうします?

無難なのは名前とか日付けとかでしょうか」

「なぁ何故そんなに詳しいんだ?

前の恋人とも作ったのか?」

「前の恋人なんていませんよ。姉がこう言うの好きなんです」


そうかいないのかと嬉しくなり、続いた言葉にお姉さんの影響下と納得する。

名前や日付もいいな。

何を入れてもいいのだろうか。


「好きな食べ物でもいいか?」

「いいのでは。そっちに方が面白いですね」


鏡越しに目が合い微笑まれた。

立ち上がり、美琴の背後に立つ。

櫛を取り髪を触るとビックっと肩が揺れた。


「何して」

「これでも妹がいるんだ。髪くらい結える。

といっても凝ったのはできないが」


ため息を吐かれ、好きにしてくださいと言われた。

もちろん好きにする。

長さがあるのでフィッシュボーンにし、きっちりより緩めの方が美琴っぽいのでところどころつまんで軽くほぐした。

全体を見て調節し、あとは服に合う髪飾りをつける。

サイドがたれすぎないよう、ピンで調節。

できた。久しぶりにしてはなかなかの出来に満足する。


「私より上手いのでは?」

「そうか?自分でやると見えないから難しいんだろう」


してやったりと笑えば、「もう」と困った顔で睨まれた。

その顔が可愛くて、写真撮って待ち受けにするのもいいなぁと思った。

三ヶ月も恋人ごっこをしてるせいか、最近お兄さんの距離がおかしい。

最初は緊張でガチガチ、不安でブルブル、恐怖で威嚇モードだったのに、今はあまあまでふわふわだ。

いい感じに力は抜け、恋人繋ぎも距離があったのに今では夏だと言うのにぴったり引っ付いてくるし、何故かやたらと触れてくる。

男性に面識ないのでつい赤くなるのだがそれすら愛おしそうに見てくるのだ。

これは自称彼女わいてでてくるのがわかる。


周りの色も街を歩いていても心なしか灰色と黒が少なくなってきた。

特に二人きりの時は、赤黒いのも混じっているが信頼のグリーンやオレンジが飛んでくるので喜んでたのも束の間、最近赤やらピンクやら増えて困ってる。

赤は警戒やら怒りとかかもしれないが、ピンクって何?

今の所友愛と思ってこの二色は考えないようにしてる。

じゃないと、お兄さんの言動も重なって本物の恋人のようなのだ。

お兄さん苦手な相手にも無自覚にやるので本当にタチが悪い。

最近は他の女性にはしなくなってきたが、その反動なのか私には増えてきた。


この間指輪買いに行った時も、女性店員フル無視なのに、特別だよとでも言うように私にだけ甘い声で話しかけてくる。

挙げ句の果てに、指を撫でられ

「細いな、指輪の重さで折れるんじゃないか?」

と訳のわからんこと言ってきた。

言ってる内容はこのさいどうでもいい、お兄さんが変人と思われるだけだ。

ただ何故指を触りあまつさえ撫でる?

店員さんが困ってやんわり注意するまでやめないし、何なんだろう。


最近のスキンシップの多さに私は特別なのではなんて馬鹿なこと考えたりした。

うわー本当にこのままあと三ヶ月持つのだろうか。

私もお兄さんの自称彼女の仲間入りしそうで怖い。

いやまて一応彼女だから、元カノからのストーカー?今予備軍?

どうしようそっちの方がやばい。


ミイラ取りがミイラになっては本気で笑えない。

よしと頬を叩き気合を入れなおした。

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