鏡とヤのつく反社だね。あれはやばかった
慎太郎視点
後書き碧視点
やっぱり避けられてしまった今日この頃。
みんなと一緒ならとだいぶ警戒されてるがやっとお許しが出たのでこいこい荘に会いにきた。
呼べばほいほいくるなと思われても良い、愛しのアリスちゃんに会えるなら、犬と呼ばれても一向に構わない。
出迎えてくれたのは残念ながら上田さんで、なんかいつもと違う気がするが別にいいか。
先客のお兄さんは白百合ちゃんと戯れている。
祇園様がウジウジしているが、何かあったのだろうか?
誰も相手にしてないのでまるっと無視した。
歩君じゃないから神様の相手は俺には無理だ。
お邪魔しまーすと言いながらキョロキョロ探すと俺の可愛い彼女が…いた?
久しぶりだからか?なんか別人な気がするのは気のせいか?
もしメイクや髪型などの変化でそう見えるだけなら怒られるどころではない。
また会えなくなるのは嫌だがどうしても違和感がある。
ここは慎重にちょっとずついってみよう。
「久しぶり?メイクかえた?」
違和感のある彼女?さんが首を横に振った。
なんか俺の反応みんな見てない?
視線を感じてキョロキョロするもみんな視線を逸らした。
なんかあるでしょ、これ。
まぁでもまずは久しぶりの彼女の方が大事なので他は気にしないことにして、じーと彼女?さんを見る。
見れば見るほど違和感しかないのに、俺が語彙力がないばかりに何と言って表現すれば良いのかわからん。
頭を掻きむしるが、なんと言えば正解かもわかんねー。
「あなた誰ですか?」で良いだろうか?
でもなー間違ったら怒られるだろうな。
あ!そうだ。
「ぶんじゃべー」
俺はそう言って片手をあげた。
みんなキョトンとしてる。もちろんアリスちゃんのそっくりさんもキョトンとしてた。
あ、これだんだんと恥ずかしくなるやつだ。
大学生にもなって二人の挨拶考えるんじゃなかった。
なんでかあの時は盛り上がって作ってしまった。
この言葉に意味があったような気がするがもう思い出せない。
恥ずかしさしかないのであげた手を下ろす。
「えーっと初めまして、アリスちゃんはご在宅でしょうか」
「そんな見分け方でくるとは思いませんでした」
あはははと笑われているけど意味がわからん。
見分け方ってなんだ?
結局このそっくりさんは誰なんだ?
俺が入ってきた扉とは別の扉から全身鏡をえんさんが取り出してきた。
そっくりさんの近くに置くとそっくりさんが手を伸ばしゆっくりと入っていく。
かわりにもう一人のアリスちゃんが出てきた。
なんだこれ?
全身鏡にそっくりさんが入ってしまうとかわりにでてきたアリスちゃんは本物のようだった。
今まで感じてた違和感は感じない。
でもまだ本物かわからないぞ。
もう一度手をあげて「ぶんじゃべー」と言うとあっちも手をあげ「ぶんじゃべー」と挨拶を返してくれた。
良かった本物だ。
嬉しくてハグしようとしたら拒否られた。
うん、俺の可愛いアリスちゃんだ。
「なんか意外と気づくね」
「そうだね。本物そっくりなのにね」
「あのー何これ?」
「ああ、鏡の付喪神だそうだ。その能力だな。
それで俺たちは試されてるらしい」
「やだなー紅稀さん。ちょっとしたドッキリですよ」
「ちなみにお兄さんはどんな感じだったんですか?」
俺の質問に上田兄は目を逸らした。
かわりに佐野さんを見ると苦笑いして教えてくれない。
言いたくないなら無理にはと言い出す前に上田妹が薄ら笑いで教えてくれた。
「その方は碧さんに化けたわっちを見て妹じゃない誰だ!と叫び草履も脱ぎ散らかしてこの部屋に入り、今度は美琴さんに化けたわっちを見て怯えておりんした。
縁切り様に何か必死に訴えておいででありんしたが、半分くらいは聞き取れず。
何と言われたかまではわかりかねござりんせん」
お兄さんいつもはスマートなんだけど女の人関わると壊れるからな。
妹と恋人ダブルパンチだとそれは怯えるよね。
ってあれじゃあこの人上田さんじゃないんだ。
なんか違うなと思ったけど正直違いわからんかった。
こんな顔じゃなかったっけ?
まぁいっか。
と勝手に納得している間に次のターゲットが決まったようだ。
三嶋が近くまで来ているらしい。可哀想に。
「さぁ、三嶋君どんな反応するかな?」
「あいつ気づかないと思いますよ。結構大雑把ですし」
「まぁまぁそれはそれで面白いと思うよ。
じゃあかりんちゃん準備してー」
気づかないと思うなーと言いながらアリスちゃんとは逆のことしてた。
本物が鏡に入りそっくりさんが出てくる。
マジマジ見てもわからん。
さっきと違うのか?
すごいなーと感心してたがふと思い出した。
「歩君に知ってるんですか?」
一条さんのそっくりさんと上田さんのそっくりさんを除いた周りの女性陣がびっくと体を揺らした。
あ、言ってないやつだこれ。
後でがっつり怒られるんじゃないの?
「碧さん曰く、歩殿は花粉症で来ないから大丈夫とのこと。
そんなに歩殿は怖いのでありんすか?」
「怖いねーなんか有無を言わせない威圧感があるっていうか。
本当に十六歳なのかなあの子。
まだ何かしらの神って言われた方がしっくり来るんだけど」
歩君が聞いたらまた笑って怒りそうだが、いないので大きく何回も頷いとく。
逆らってはいけない何かを感じるよね。
しばらく喋ってたらインターフォンがなり上田さんのそっくりさんが出迎えに行った。
入ってきた三嶋が一条さんのそっくりさんを見るなり険しい顔をし近づいたと思ったら首を鷲掴みにした。
え?これやばいのでは?
「かりんをどこやった」
「ああ」
「声は出るだろう?
最初だからな見逃してやる。
だが次はないと思え」
聞いたことないような低い声にビビってしまい、アリスちゃんを隠して様子を見ることしかできない。
一条さんのそっくりさんが全身鏡を指差す。
「お前人間じゃないのか、ッチ。
さっさと鏡の中から出せ」
「こ、うた、いしな、いと」
「ッチ、面倒だな。
まず質問に答えろ
お前の本体お前か?違うなら本体を出せ」
そっくりさんが首を横にふり数秒後全身鏡から一人の女の人が出てきた。
めっちゃ美人さん……と今考えることではなかったな。
そっくりさんから手を離すと次は美人さんの首を掴んだ。
三嶋首は掴むものではないよ。危ないからと言える雰囲気ではない。
「本物のかりんを出せ」
アリスちゃんの時のように片方が入るとその分片方が出てきた。
三嶋は目を見開き、美人さんをビンタした。
「あれのどこがかりんだ。
目の形も鼻の高さも耳の形さえ違う。
次はないと言っただろうが、嘘を重ねるたびに骨を一本ずつ折らないとわからないようだな」
「落ち着けって」
お兄さんが三嶋を羽交締めにして動きを止めようとしてるが暴れて手こずってるようだ。
俺もぼーっと見てるわけにはいかないので一緒になって三嶋を押さえにかかる。
こいついつもビビって見てるだけのくせになんで今日はこんな攻撃的なんだよ。
やっとの思いで美人さんから引き離さすが、まだ諦めてないようでめっちゃ暴れて抵抗するし目線が美人さんから離れない。
怖いもうこいつ高校生じゃなくて反社だろ。
どうする?どうしたらいい?
俺とお兄さんは三嶋を押さえるので精一杯だし、他の女性陣はビビってそれどころではない様子だった。
何かないかと辺りを見渡すとえんさんがいた。
縁さんが泣いたのを宥めてるようだけど、その前にこいつをどうにかしてくださいよ。
「えんさんどうにかしてください!」
「わかった歩を連れてくる」
そこはえんさん頑張ってよ。
連れて来るって時間かかるだろと言いたかったが、言う前に全身鏡にえんさんが飛び込んだ。
三嶋も暴れるので押さえつけなきゃだし理解も追いつかなくて俺も一緒に暴れたい。ってか泣きたい。
俺人相が人より悪いだけで喧嘩とか暴力とか無理なんです。
アリスちゃん連れて家に帰りたい。
「あ゛ぁも゛うな゛んでずがぁ」
歩君の声だと顔を上げると、ティッシュを箱で持ってダル着を着た男の人がいた。
多分歩君だと思う。
声は鼻声だし、瞼は腫れ上がって瞳は見えないし頬も所々赤い。
全体的に覇気もなくしんどそうだ。
え?花粉症じゃないの?
アレルギーの酷い人みたいな…あ、花粉症もアレルギーか。
三嶋もあんまりな歩君を見たからか暴れるのをやめた。
そうだよね、こんな重症な人に頼って申し訳ない。
家で寝たいよね。
ダル着のロンTにも書いてるもんね「俺がラスボスだが今から寝るのでちょっと待って以上」って。
意味わからんし好きにしなって感じだけど歩君にはぴったりの言葉だと思う。
でもごめんんね、寝ないでほしい。
「歩どうにかしろ」
「え゛んざんはいづも゛ぞう「わかったから悪かったから」
「歩、我はどうするば良いと思う!」
あ、そう言えば祇園様もいたんだったってこの神様は周り見て、今それどころじゃないでしょ。
カオスが増えただけじゃないか。
「あ゛ーーーーも゛うーーーー」
歩君が大きな声を出したのでみんなびっくりして固まる。
「ひどりづづぎぎま゛ずがら。
うぅぎづい」
「…歩これ食べなさい。少しは鼻の通りが良くなるよ」
歩君は躊躇いもなく怪しい葉っぱを口に入れてた。
よっぽど体が怠いのだろう。可哀想に。
「あ、すご鼻が通る!めっちゃスースーする。
はぁじゃあこれで」
「いやいや、どうにかしてくれ」
「どうにかって言われましても、とりあえず一人ずつですね。
三嶋君はなんで取り押さえられてるんですか?」
「かりんを返せ!この人外め」
「あーはいはい何となくわかりました。
えーと鏡子さん何故子さん連れてきてください。
本人が嫌って言ってても引っ張り出してください。
これ以上怪我人出したくないので」
「あい分かった歩殿」
「三嶋さんちょっと待ってくださいね。
で、次は祇園様、一旦お帰りください」
「なんでだ歩!!」
「たぶん葵様恥ずかしくて顔を合わせられないんだと思います。
一旦お帰りなっていただいてる間に僕が葵様に聞きますから。
その際頑張って祇園様に会っていただけるよう誘導しますので、今日はお引き取りを」
「絶対だからな、絶対取り合えよ」
「はいはい、答えはわかりませんが会って頂けるように説得しますから」
ぶつぶつ言いながら祇園様が消えた。
言い方上手だな。神様特に祇園様との約束とか怖いしかないのに逃げ道作っておくとはさすが歩君。
「電之介、葵様に至急来られたしと伝えて」
「失礼ながら私めはダイヤという「今はどっちでも良いでしょ、鏡子さんの顔腫れてるんだよ。
名前と鏡子さんどっちが大事なの電之介」
「伝えました。その際祇園様が居られるかきかれたのでNOと答えてます。すぐ来られるそうです」
「よしよくやった」
でんのすけって何?
AI?今流行ってる人工知能なの?
何俺が知らない所でこいこい荘は最先端機器を導入したの?
最近のAIは神様にも繋いでくれるの?
俺の知ってるAIはこんな機能なかったけど?
怖い、この家怖すぎるんですけど。
「かりん!」
鏡の中からそろっと出てきた一条さん(たぶん本物)は三嶋の声にビビって座り込んで泣き出してしまった。
「はーい泣かない。
怖かったのはわかりますけど、自分たちがした結果ですからね。
イタズラもほどほどにしないとっていつも言ってるでしょ。
それに本気で心配した人を悪者扱いして可哀想ですよ。
三嶋も怖かったと思います。
婚約者が知らない人物になって、しかも人間じゃない何かわからない者に誘拐された、どうにかしないとって思った結果でしょうし。
驚いたら手が出るのは三嶋の癖なんですからそこを配慮しなかったのは何故子さんも悪いですからね。
長い付き合い性格も把握しとかないと。
イマイチ納得してないようですが、考えてください。
逆に自分だったらどうですか?三嶋がいなくなってそっくりさんがそこにいたら怖くないですか?」
「……怖い」
「でしょ、遊んでも良いですけど、三嶋みたいな頭カチカチさんタイプは考えないと。
まぁそれだけ何故子さんが大事だってことにしといてください」
おお、うまくまとめたな。
暴れなくなったのでお兄さんと目配せして三嶋を押さえるのをやめた。
起き上がった三嶋はあうあう言って手を伸ばしたりやめたり戻したりを繰り返していた。
「三嶋、安心したら鏡子さんに謝ってください。
この人達の遊びに付き合ってくれただけの方なんですから」
「今きたおまえがわかるのか?」
「そこは大丈夫。えんさんと僕で善良じゃない場合この世からさよならバイバイしてもらってますので。
じゃなきゃ、この三歳児みたいな人達に怖くて持たせませんって。
いやーまじさよならバイバイするのも疲れるんですよ。
心配なら選別する時僕の代わりに三嶋が行ってください。
遠慮しないで刀貸しますよ。普通のじゃ攻撃かすりもしないですからね」
「いや、無理だ。
その鏡子さんすまなかった」
「わっちも紛らわしいことして悪かったでありんす」
良かった許して貰えたみたいで。
三嶋の返答に歩君はハハハって笑ってるけど、目が笑ってない。
あわよくばと言うより本気で代わりを探しているようだ。
まきこ巻き込まれないように少しずつ離れてアリスちゃんの横に行く。
ありがとう歩君。知らない所で頑張ってくれてたんだね。
俺は無理だからこっち見んな!
「まぁだから、安心して遊びに付き合って大丈夫ですよ。
何かあったらえんさんいますから。
一応これでも神様ですからね。
一応!これでも!神様!!で・す・か・ら・ね!」
「なんで二回も同じこと言うかな」
「大切なことは二回も三回も何回だって言ったほうがいいんですよ。
はい!みんなさんもいつまでもビビらない。
三嶋は何も関係ない人殴るほどクズじゃないですからね。
まったく、何故子さんが一番わかってなきゃでしょ。
それも含めて四人で話し合ってください」
「四人?」
「いきなり二人だと話が脱線しそうなので、三嶋と何故子さんとお義兄さんとお義姉さんで別室で話してきてください」
「歩君、まさかお姉さんって私じゃないよね?」
「え?お義兄さんと結婚するならお義姉さんですよね」
「ちょっと待って歩君、紅稀さんのことお兄さんって義兄でお義兄さんって呼んでたってこと?」
「そうですけど何か?」
「いやそこは正直どうでもいいけど、お義姉さんはやめて欲しいな。
結婚するかわからないし」
「歩、俺達も話合うことができた。
悪いがえんさんにお願いできないだろうか」
「いやないので、かりんちゃん達の話を聞こう。
さぁ行こうかりんちゃん、こう言うのは早めに誤解を解いて仲直りしたほうがいいんだよ」
あ、佐野さん逃げた。
一条さんの腕を取り逃げるように、いやお兄さんから逃げ出した。
どうせまた同じ部屋に行くのに……。
歩君はひと段落したのかさっきの謎の葉っぱについてえんさんに聞いていた。
捕まってしまう系だったら怖いので聞かないでいよう。
「アリスちゃん大丈夫?」
「今は大丈夫だけど、ごめんね」
「え、謝らなくていいんだよ。むしろ俺の方がごめんね。怖かったよね。俺喧嘩苦手だから咄嗟に何したらいいかわかんなくてさ」
「違う、イタズラごめんなさい」
「ああ入れ代わりのやつね。
俺は別にびっくりはしたけど、ちょっと楽しかったし有りだったよ。
あ、アリスちゃんが大事じゃないってわけじゃなくて、たぶんこいこい荘のは安全だろうなって勝手に思ってただけで、本当はもっと危機感持たなきゃだったよね。
って泣かないで、よーしよし」
話の途中で泣き出したアリスちゃんを抱きしめて、リズムよく落ち着くようにポンポンと痛くないように細心の力加減で背中を叩く。
「歩、何じゃ至急とは妾を呼びつけるとは…おまえ大丈夫か?!
きょうこと言うやつの頬が腫れてるのではなかったのか?
歩、死ぬな!生きるのじゃ!」
「生きてます。葵様だけですよ、心配してくれたの、あなたのお兄さんなんて僕を扱き使うことしかしないんですよ」
「人聞き悪いな、ちゃんと心配はしてるよ。
ただ言葉にしなかっただけ、だから 葉あげたでしょ」
「人間の世界にない物なんて違法薬物と変わらないじゃないですか。
僕はこれからどうやって生きていけばいいんだ。
もう世界中の草を燃やして回りたい」
可哀想。
えんさんサイテー、希望を見せびらかすようなことしないであげて欲しい。
「歩、花粉症というやつか?
一応薬はあるぞ。五人ほど生きた人間で継続して検体をしておるが、期間がな一年しかきかんのじゃ」
「それは素敵なことなのでは?
一年に一回薬を飲めば良いんですよね。
あ、副作用が酷いんですか?」
「そうじゃ、飲んだ最初の丸一日眠ってしまう」
「他は他は大丈夫なんでしょうか?
一回しか飲めないとか、途中で人間じゃなくなるとか」
「特にないぞ、さっきも言った通り年に一回も飲まなくてはいけないのだ。続けなくても効力が無くなるだけだが、毎年飲み丸一日眠りにつくとは面倒だろう」
「いえ、素晴らしい薬です。
もう今生きるか死ぬかみたいな状態なので、一日寝るくらいなら全然余裕です。
お願いします。処方してください」
「良いぞほれ、すぐ寝れる体勢で飲むのじゃぞ」
「ありがとうございます」
丸い黒いビー玉みたいなのを歩君は恭しく受け取っていた。
そりゃ彼くらい重症だとなんにでもすがりたくなるよね。
話は終わって次は鏡子さんの頬に湿布のような物を貼り、また戻ってきてトランスしてる歩君の周りをふよふよと葵様が浮いている。
「……その歩、祇園は何か言っておったか?」
「嫌われたと言ってましたね」
「嫌ってはおらんただちょーっと顔が見れないだけじゃ」
「いつまでも続けてると祇園様別の方にとられますよ。
何ですか祇園様気に入らないわけじゃないんでしょ?
嫌なとこあるなら葵様が言えば祇園様なら足でも手でも切り落としますって。
でも結婚は第三者例えば祇園様が逆らえないような位の高い神様に言われてしまったら無理ですよ。
恥ずかしいで逃げていてはまた逃しますよ婚期」
「うむだが」
「逃げないですよ葵様。
祇園様と誰かが結婚しても良いんですか?」
「嫌じゃ」
「好きか嫌いでいうと?」
「…好いてはおる」
「だそうです祇園様」
何処からともなく祇園様が現れ、目にも止まらぬ速さで葵様を抱きしめた。
あまりにも体格が違うので大人と子供のようだ。
見てはいけないような気がして目を逸らす。
「はいじゃあお幸せにー」
と歩君が言うと二神は消えた。
あっさりすぎないか歩君。
君いつの間に祇園様と連絡取り合ってたの?
あれかこいこい荘のAIか?
でんのすけ君か?
考えすぎてまたパニックになってきた。
とりあえずこの可愛い俺の彼女をこのままお持ち帰りしても良いですか?
やばいどうしよう。
先輩めっちゃ怒ってるんですけど。
それにびっくりしたのかかりんちゃんが怖いって泣き出してしまった。
正直自分も怖くて泣きたい。
歩は今日いないし、どうしよう。
ただのドッキリだったのに、こんなに怒るって思わなかった。
なんだかんだありえんさんが歩を連れて来てくれて事が落ち着いた。
腫れてる歩可哀想。代わってあげたい。
まぁ歩に怒られるの怖くて鏡の中から出ないんですけどね。
でもあいつもあいつで自分わかりやすく違うのに気がつかないってどう言う事だろうか。
兄を除く他のやつも気づかないし、自分そんなにどうでもいいのだろうか。
「僕、鏡片付けて来ますね。これいつものとこですね。
誰か、あ!一緒にお願いします。
ドア開けてもらえると助かります」
自分に化けた鏡子さんの分身と仲良く鏡なんて運んでやがるこの男。
やっぱ気づいてないんだろう。
ここで何かするなら浮気だ浮気。
「あ、鏡子さんこの辺でいいですよ。
じゃあ電気消しますけど、碧さんはいつまで鏡の中にいるんですか?
一人で大丈夫ですか?」
嫌だけど出れないんだから仕方ないじゃないか。
鏡子さんの分身がやれやれって顔で鏡の中に入ってきた。
自分は強制的に外に出される。
自分が完全に外に出たのを見計らって歩は鏡に布を被せた。
「いつから気づいてたの」
「最初からですよ。腫れて見えにくいですけど、碧さんを見間違えるはずないですから」
「ふーん、その服何?趣味?」
「違いますよ。ダチからの誕プレです。
この文字はどうかと思いますけど、着心地はいいんですよ」
「ふーん、誕プレありがとう」
「届きました?当日お祝いしたかったんですけど、あいにくこんな感じで死にかけだったもんで郵送ですみません」
「何でくし?」
「碧さん、髪の毛こだわって手入れされてるようだったので。
贈り物で櫛は縁起悪いって言う人もいますけど、僕はロマンチックな方で贈ってますからね」
何だ知ってたのか。
言葉とは裏腹に口の端が上がる。
ニヤつくとこ見られたくないので我慢した。
「ん」
「いいんですか?今顔腫れて酷いことなってますから」
「別にうつるわけでもないし、しないなら」
「しますします。遅くなりましたがお誕生日おめでとうございます碧さん」
そ言ってゆっくり近づいてきて、ぎゅっと力強く抱きしめてきた。
いつもより熱いからもしかしたら熱もあるのかもしれない。
そんな中来てくれたらのが嬉しくて申し訳なくて、自分もぎゅっと抱きしめた。




