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こいこい荘はそこを曲がったところですよ  作者: 蜂蜜
Q.こいこい荘にきた理由は?

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一条かりんの場合

かりん視点

後書きは義嗣視点

碧さんがが来て三ヶ月が過ぎた。

今は春もすぎ、初夏に差し掛かろうとしている。


あれから色々と分かったことがある。

美琴さんの色が見えるのは人の感情などが可視化したもの。

碧さんは辛いものを食べると男に、甘いものを食べると女になることがわかった。

甘辛は怖くて試していない。

アリスさんの匂いは人が嘘をつくとかわるとのこと。

何もないと思ってた七海ちゃんと私にもあった。

七海ちゃんは耳を触ると人の本音がわかる。

私は厄介なことに手を繋ぐと本音がでて甘えん坊になってしまうのだ。


私だけなんか違う。

みんなだけずるい。

私も人の感情が見えたり、嘘がわかる方が良かった。

何故、私だけ本音を暴露しなきゃなんだろう。


まぁ愚痴を言っても変わらないので置いとくとして、今回一番衝撃な事実は大家さんが原因だったと言うこと。

通りで大家さんの周りで不思議なことが起こるわけだ。

あの時も確かに大家さんがくしゃみをしてから変なことが起こり始めた。

つまりそう言うことらしい。

私はひっそり大家さんは魔女なのではと思ってる。



碧さんのイケメン度合いは変わらないが、意外と親しみやすい人で滅多なことで怒らない。

いやこの三ヶ月怒ったどころか人の悪口言ってる姿すら見たことない。

こんな聖人君子いるんだと感心してる。


「おはよー」

「お、おはようございます」


ただやっぱりイケメンにはなれない。

寝起きも綺麗なんてずるい。


朝同じ時間帯に起きるみたいでよく洗面スペースで一緒になる。

すっぴんでも肌が綺麗で羨ましい。


「かりんちゃんいいなー、髪サラサラで癖なくて」

「そうですか?私の髪芯が強すぎてアレンジしづらいので、碧さんのふわふわ羨ましいです」

「そうかな、自分は逆にあっちっこいって全然まとまんないけどねー」

「お互いないものねだりですね」

「そうだねー」


と二人で苦笑した。

でもやっぱり碧さんの髪いいなー。

色は生まれつき薄いらしく、天パ入ってるのか軽くパーマかかってておしゃれだ。

それが嫌らしく、アイロン当てて頑張っているけどどうしても外ハネするらしい。

どっちも似合うからいいなー。

私など黒髪ストレートで重たい雰囲気なのだ。

伸ばすと日本人形みたいなので今はボブよりのショートカットをしている。

ふわふわロングに憧れた時期もあったが、一日も持たなかった。


ため息を飲み込んで、朝の支度を済ませる。

キッチンに行くともう机に朝食の準備がしてあった。

さすが七海ちゃん。今日も美味しそう。


「七海ちゃんありがとう今日も絶対美味しい」


と褒めながら碧さんが七海ちゃんとハグしてる。

この三ヶ月で何があったのか知らないが、二人の距離は近い。

知らない人が見たらカップルって思ってもしかたないくらいイチャイチャしてる。

最初は何事と思ったが、最近は慣れてハイハイって感じだ。

みんなも慣れたものでスルーして朝ごはんを食べている。

そしてそれぞれ学校行ったり仕事したりして帰ってきたら、ご飯食べてお風呂入ってみんなでまったりして、時間になればそれぞれの部屋で寝て一日が終わる。


だいたいこれが今のこいこい荘のルーティン。

特に変わり映えはしないけど、のんびりゆっくり時間が流れるのはいい。


そう思うようになったのには私の家庭を話さなければいけない。

私の家庭は所謂、お金持ちで父は色々な会社をいくつも経営している。

母は私は幼い頃に他界し、今は父と兄と姉、祖母が私の家族だ。

家は厳しく、分毎にスケジュールが決まっているようなガチガチなお嬢様で、学校ももちろん幼稚園からエスカレーター式のお嬢様学校。

お嬢様校はこれまたしきたりやマナーに厳しく、家のことの自慢や腹の探り合いやら学校では気が抜ける場所はない。

だからと言って、こいこい荘にくるまで家でも気が抜けなかった。

父の目が怖かったから、どこでも見張られているようでいつも緊張している。


あれは中学三年の秋だった。

高校生になればさらなる重圧がくると頑張っていたのと、日頃の心労がたたったのだろう、一週間入院することになった。

珍しく見舞いに来た父はため息をつき、こいこい荘と新しい学校を紹介された。

私はもういらない子なんだと思ったが、どうしようもない。

見限られないように頑張って頑張ってきた。

でももうこれ以上頑張っても成果を出せない。

もう私が頑張る意味がなくなった。


こいこい荘に来た時の私は酷い顔をしてただろう。

半ば人生諦めてここに来た。

そんな私をみんな優しくしてくれて、一条家ではいらない子だったけど、ここでは私でも必要とされてる。

私がドジっても、失敗しても許してくれた。

“私”を受け入れてくれてるそう思うと肩から自然に力が抜ける。

家での傷は癒えないけど、蓋はできた。

血は止まった。あとは見てないふりをすればいい。

今はそれでいいやと思えた。






ある日の学校帰りに学校前に見知った顔が不機嫌な顔して立っていた。

げっと内心げんなりしながら気付いてないふりして横を通り過ぎようとした。

まぁ見つかって腕を取られたのだけどね。

手じゃなくて良かった。


「何故通りすぎる?」

「何か用?」

「婚約者に会いに来て悪いか?

とりあえず立ち話もなんだ乗れ。

送っていく」


校門前で言い争っても目立って噂されるだけなので、渋々車に乗る。

にしても、こいつはなんでいつも偉そうなんだ。

父が決めた婚約者に気づかれないようにため息をつく。

三嶋 義嗣(みしま よしつぐ)は私と同じ高校三年生。

碧さんと違った系統のイケメンで噂ではファンクラブまであるらしい。

フェロモン系と言うのだろうか、目の泣きぼくろが特に色気をはなってる。

その上金持ちの坊ちゃんだからモテないはずがない。

性格は自分以外下僕としか見てないような俺様。

総じて私は苦手な系統の人だ。

イケメンに抵抗感があるのはこいつのせいと言っても過言ではない。


「で、何?」

「最近付き合いが悪いから()()()として見に来ただけだ」


婚約者を強調しなくてもいいだろうに。

いつも嫌味みたいにアピールしてくる。

不満を私にぶつけられてもと思う。

私なんかが婚約者でこいつも嫌なのだろうが、八つ当たりはやめて欲しい。

親が決めたことだ、私が好き好んでお願いしたことではない。

…ちょっと待って。

父に見限られて結構経つ。

何も言われてないが、解消のチャンスではないだろうか。

私なんて一条家の子ではないのだから、こいつが私と縁を結んでも意味がないだろう。

不機嫌そうな顔して隣に居座られることはなくなる。

いいんじゃない解消。


「何だニヤニヤして?」

「私、いいこと思いついたの」


そう言って身を乗り出すと、あっちはその分体を引いた。

テンション上がって近づいたのは悪かったけど、そんなあからさまに避けなくてもいいじゃないか。

自分の席に体勢を戻し、咳払いをする。


「あなたって私のこと嫌いじゃない?」

「は?えっちょと待て」

「何よ」

「嫌いではない」


目を逸らされ、顔を隠しながら言われても。

無理しなくていいから。


「まぁ何とも思っていないのは知ってるから大丈夫」


いやあのってぐちぐち言ってきたが、できないフォローはいいから。

このままでは話が進まないので、無理矢理話を進めた。


「だから、婚約解消しましょう」

「……へ?」

「ね!いい考えでしょう。

貴方も私もフリー。そしたら好きな人と恋人になれるのよ。

三嶋なら選び放題でしょ」


まぁ私は選び放題どころか男性の友達いないのが悲しい現実なんだけどね。

ちょうど車がこいこい荘の前に止まる。

呆けてる三嶋をおいて、運転手さんがドアを開ける前に車の外に出た。

今なら難癖つけられる前に、実家に連絡して終わらせよう。


「あ、かりんちゃんだー、おかえり。車の子はお友達?」


門前で碧さんと会う。

今日は帰宅時間まで被ったらしい。珍しい。

碧さんの質問に少し考えてしまった。

婚約者は今解消したし、友達というほど親しくない。


「知り合いです」


これが一番いいだろう。


「違う!婚約者だ!」


私の後ろから三嶋が抱きついてきた。

小学生の頃は同じ身長だったのに、いつのまにか私はすっぽり入るくらい体格差ができていたことに、今気がついた。

え?こんな大きかったけ?

何故か無性に照れてしまう。

腰に回った腕を引き剥がそうと掴んだが、がっしりとしていて自分とは違う。

力入れてるのに、剥がれない?!

昔は腕相撲で私に勝てなかったくせに?

訳もわからずパニクる私を碧さんがニコニコ見てた。

いやいや見てないで助けて欲しい。


「仲良いね」

「良くないです!」

「はぁ!仲良いだろう!

かりん貴様、俺からこいつに乗りかえるつもりじゃないだろうな!」


何言ってるのか意味不明だ。

とりあえず耳元で喋らないで離して欲しい。

名前を呼ぶな!くすぐったい。


「まぁとりあえずお茶でもどうですか?」

「何故お前に茶など振る舞われないといけない!

ちょっと顔が良いからって、俺の方がいい男だ。

そうだろかりん。

いいか、かりん、絶対に婚約解消しないからな!」

「あーもうとりあえず離してよ」

「解消を取り消せ、じゃないと連れて帰る」


もう脅しじゃないか。

どこが気に障ったのかわからないが、ひとまず言うこと聞いておこう。

めんどくさいし。


「わかったわかった」


やっと離してくれたが色々ぐしゃぐしゃである。

シャツやスカートを伸ばしていると、髪を碧さんが手櫛でととのえてくれた。


「あり「誰が触っていいと言った」


お礼を言う前に碧さんの手を三嶋が払い退ける。


「ちょっと、碧さんに失礼でしょ」

「こいつのこともう名前で呼んでいるのか!」


何故か三嶋がショックを受けているようだが、意味がわからずスルーする。

碧さんが「碧が良い」って甘えた顔でおねだりされたのだから仕方ない。

あの顔はずるいと思う。

そのことを言うと、プルプル震え出した。

怒らなくても良いじゃないか。


「お前は名前で呼べと言えばホイホイ呼ぶのか?」

「?呼んでって言われてるのに呼ばない理由ないし?」

「じゃあ俺のことも名前で呼べ!

もしや名前知らないとか言わないよな?」

「義嗣でしょう。

それくらい知ってるよ」


名前を呼ぶと真っ赤な顔して車に戻った。

はいはい、格下に名前呼ばれるの耐えきれなかったんですね。

そう怒らなくてもいいのに。


「貴様!これで勝ったと思うなよ!

次はゆっくり話をしようじゃないか」


という捨て台詞を吐いて帰っていった。

結局、婚約は続行なのだろうか。

一条家と私は縁が切れてると言ってなかったから、慌てたのかもしれない。

今度会う時はしっかり説明しよう。


「なんかごめんなさい」

「いえー自分もなんかごめんね」


二人で頭を下げ合い、目が合いくすくすと笑いが漏れた。

なんかってなんだろうとなったが、深くは考えないことにした。

何なんだあいつ!

ちょっと顔がいいからなんだって言うんだ。

かりんを誑かしやがって、かりんもかりんだ。

俺には婚約解消など馬鹿げた事言ってるくせに、パッと出の男に髪など触らせやがって。


「中川、こいこい荘に出入りしてるあおという人物を探れ」

「承知しました。

ところで坊ちゃん」

「坊ちゃん言うな」

「失礼しました。

義嗣様、一条様をデートに誘うことは……できなかったのですね」

「タイミングが悪かったんだ。

かりんのやつまさか何とも思ってないとは思わないだろう」

「一条様以外のことはスマートにこなされるのに…はぁ。

それでも名門三嶋家の御子息ですか」

「う、うるさい!

説教はあとだ。

まずあおとかいうやつのこと調べてこい」

「まさか正攻法じゃ敵わなさそうだから弱みでも握るおつもりじゃ?」

「正攻法でも勝てるが、念のためにだ。

本当に念のためだからな、あとかりんの身の周りで何かある前に対処できるだろう」


中川ははぁーとまたため息をついた。

俺はこれ以上お説教はごめんだと寝たふりをした。

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