プロローグ
春も間近な今日この頃。
昼過ぎなのに外はまだまだ寒く、リビングで何すれでもなくみんなでこたつでまったりしているとインターフォンがなった。
誰も出る気がなくそのままでいたら、少しして「お邪魔しまーす」と聞こえてきた。
声は女にしては少し低く、男にしては少し高い声に一斉にパニックになる。
え?誰?
お客さん来るって言ってたっけ?
一斉に大家さんを見れば、あ!って顔した。
「新しい方の面接今日でしたわ」
それ早く言って欲しかった。
じゃあ女性だとみんなで安心する。
こたつから出たくなかったので大きな声で「開いてまーすご自由にどうぞー」と返した。
ガラガラとドアが開き閉まる音。
とんとあがって数秒間があった。
靴揃えてるのかな?
今度の人はどんな方だろうか?
仲良くなれるといいな
トントンと廊下を歩く音に期待が高鳴る。
襖が開いて入ってきた人にびっくりした。
「お邪魔します。
面接にきました、上田碧です」
めっちゃイケメンが来た。
目がくるっとしてて背が高く、顎らへんまで伸びた髪が外にはねてるがそれがかっこいい。
スエットコーデに手にはダウン持ってる。
だいたいこの服だっぼっとして着るからルーズに見えるが、なぜかイケメンにはダラっとしてない清潔感がある。
色もモノトーンなのに野暮ったくなく逆にスタイルの良さが際立ったおしゃれだ。
かわいい系でシュッとしたイケメン。
あと個人的意見としてアイドルの山吹くんに似てる。
っとイケメン観賞してる場合ではない。
大家さんを見ると一生懸命目を合わさないようにしてる。
どうするの?
男の人きたよ?
イケメン来ちゃったよ?
「あの、ここ女性限定で」
「はい知ってますよ」
キョドりながらも大家さんが頑張って伝えるも、イケメン知ってるって返してきた。
くそ笑顔が光ってる。
「ここで面接しますか?
座っても大丈夫です?」
「いえ、あのその…どうぞ」
「すいません寒いので入りますね」
イケメンが隣に来たので立ち上がり大家さんの横に行く。
無理、幼稚園から女子校育ちには横は無理。
あとイケメンいい匂いした。
あの横には無理。
逃げ遅れた七海ちゃんがブルブル震えて目線が合わないように真っ直ぐを向いている。
「ごめんね狭かったよね。えっとお名前は?」
「あ、その子喋れなくて、七海ちゃんです。江口七海ちゃん」
「ななみちゃんて言うんだよろしくね。
自分碧。青空の青じゃなくて漢字の王様の王の横に白色の白書いて下に石書いた難しい方のあおだよ。
ななみちゃんは七つの海って書いてななみちゃん?」
七海ちゃんが震えながら小さく頷く。
「マジー
自分すごくない?一発で当てちゃた。
これからよろしくね七海ちゃん」
イケメンが手を出してきた。
何するんだろう?
「ん?握手、いや?」
顔を下から覗き込まれてる。
上目遣いのイケメンとか反則だと思う。
私だったら死んでたね。
「はは、嫌われちゃった。
すみませんペラペラ自分ばっかり喋って、えっとお名前をお伺いしてもいいですか?」
「……です」
大家さん横にいた自分も聞こえませんでした。
イケメンもキョトンとしてる。
でもさっさと出ていってほしいので、さらっと自己紹介しよう。
「こちら大家さんの音女 縁さんです。
私は一条 かりん、私の隣で寝てるのが佐野 美琴さんです。
大家さんと七海ちゃんの間にいるのが朝川 アリスさんです。
見えないけど大家さんの膝の上で寝てるワンちゃんがキリさんです。
美琴さん起きて」
そして助けて!
私一人では荷が重い。
自己紹介だけでも頑張った。もう無理だよ。
「では来週からよろしくお願いします」
イケメンの言葉に一斉に視線が大家さんに向く。
どう言うことなの?
美琴さんお願いどうにかして!
男の人とまともに喋れるの美琴さんだけなんだから。
「お、女の人限定です!」
「はい、書いてありましたね。知ってます」
頑張ったもののイケメンのスマイルに負けた。
気合い入れて出した声がデカかったからか、美琴さんが伸びおしおきてくれた。
まだ眠いのか目を擦っているが、大丈夫と信じたい。
「…だ〜れ?」
「お休みのところすみません、来週からこちらに住む上田碧です。
よろしくお願いします」
「そうなんだ。よろしく。
あおくんはどうやってここ知ったの?
ネット?知り合い?
私はお母さんの知り合いのおばさんから」
「自分は駅から少し離れた掲示板に貼ってあるポスターです。
電話番号とかなかったので、手紙でのやり取りでした。
少し不安でしたが、アットホームな所で安心しました」
なるほど、手紙だからわからなかったのか。
そして何故このイケメンは性別を偽ってでもここに入所しようとしてるのだろう。
あ、心は女とかだろうか?
そう言うことを配慮してという運動があることは知ってる。
私自身、どっちでもいいけど、ここには男性怖いと思う人もいるというか大半なので逆にこっちを配慮して欲しい。
じゃないと家まで心休まらないとか死んでしまう。
なんとかして追い出さないと。
「うんアットホームだよ。
ねーあおくんは何歳?学生さん?大学生なら私と一緒だね。
私あの丘の上にある姫榊女学院だよ」
「今16です。自分は藤が丘高校ですね」
「ここから近いけどどうしてまた中途半端な時期に」
「最初は家から通ってたんですが、やっぱり遠くて。
ここからなら今までの五分の一ぐらい時間しかかからないから近いなって。
街並みも素敵ですし、それに一番は不思議なことが起こると書いてあったので半分くらいはそれ目当てです」
「距離は大切だよね。
うん不思議なこと起こるよ。
特に大家さんの周り多いね。
所で、君男性?」
急なぶっ込みにビックっとしたが、言ってください、美琴さん。
お願いします切実に。
イケメンは、少し考えてああーと納得した顔をした。
「自分よく間違われるのですが、女ですよ。
脱ぎますか?それとも触りますか?」
女だったのか!
いやでも確かめないと…誰いく?
みんなで目線を右往左往する。
でやっぱり最終的に目線はアリスさんで固まった。
美琴さんはやれやれと言う顔でイケメンの近くによる。
「じゃあ失礼して」
両手でイケメンの胸にいった!!
嘘だろ。もっとこう指先とかだと思ってた。
「触って何だけど、保険証でよくなかった?」
「確かにです。でも手っ取り早いかなぁって」
美琴さんが離れ、親指を立ててる。
何がグッとなの?
「大家さん、あおくん私より大きい。
家賃、巨乳割増しましょう」
「ははは、普通ですって」
イケメンはそうか巨乳なのか。
男性と間違えてごめんなさいと心の中で謝る。
と同時に謎の敗北感に打ちひしがれている時、大家さんが五回続けてくしゃみした。
「あ、見てみてー不思議なこと起こった。
何だろうみんなの周りに色が見える」
「いえ見えませんよ」
私が否定して周りを見れば皆横に首を振る。
今日は美琴さんだけ不思議現象が起きてるらしい。
「えーあおくんもせっかくだから起こったらよかったのに」
「本当ですね。残念だ」
「残念だねー、せっかくで思い出したあおくん辛いの好き?
この七味煎餅美味しいんだけど、せっかく貰ったのに私しか食べる人いなくてね。
私もあまり辛いの得意じゃないからねー湿気る前に食べちゃいたいんだ」
「辛いにはそこそこです。ではいただきます」
イケメンが一枚煎餅を手に取り、口に入れる。
パリッと煎餅が割れる音がした。
数口噛んで、イケメンが止まる。
「あ、やっぱり辛い?無理そう?」
「いえ、自分も不思議なこと起こったのですが、どうしましょう、男になりました」
その申告にみんなが慌てる中、当の本人はシラーと煎餅食べてる。
いやいやそれどころじゃないだろうに。
「あの本当に男になったんですか?」
「うーん多分なんか股のところに違和感があるね。
一回脱ぐから確かめてくれる?」
「いえ結構です。廊下でご自分で確かめてください」
イケメンははははと笑いながら廊下に出て、すぐ戻ってきた。
「ついてましたー。うける、どうするよこれ、まじかー困るなー」
と言う割に大爆笑で楽しそうだ。
姿はあまりかわった様子はない。
少し声が低くなった?くらいだと思う。
「明日からどうしよう」
「うーんとりあえず原因探る?
ここにきていつもと違うことした?」
「特には」
「…はい」
「どうしたーアリス?」
「…甘い匂い」
「甘い匂い?あおくんから?」
美琴ちゃんは首を横に振る。
甘いもの食べたいのだろうか?
「…みんなが喋るとする」
「えー今甘いもの食べてないけどねー。
何だろう?
大家さんは何か変わったことありますー?」
「特には」
「ですよねー。
何だろう三人不思議なことあって三人はない。
共通点とかあればいいのに」
もう一度私も自分を見てみるが特に変わったことはない。
何故三人だけ?
「…甘いもの食べたい」
「何かあったかなー」
七海ちゃんが立ち上がりキッチンからクッキーを持ってきてくれた。
あー美味しそう。
そういえばさっき七海ちゃん作ってたなー。
七海ちゃんがどうぞーっとジェスチャーした。
「いただきまーす。
あおくんも食べて食べて。
お菓子作り、ななみちゃんプロ顔負けだから」
「そうなんですねすごい。
では遠慮なく」
イケメンが一口齧り、また停止する。
七海ちゃんが心配そうな顔をした。
「どうしたあおくん?」
「あ、すみません。なんか女に戻ったので」
「え!よかったねー」
そんな軽くでいいのだろうか。
と言いつつ、私もクッキーを食べる。
色々あったけど新しい人が来て嬉しい。
女の人と分かったがやっぱりイケメンで緊張する。
何はともあれよろしくお願いします。
碧と愉快な仲間たちでおおくりしたいと思います




